受難週 
聖大土曜日



 聖大「スボタ」の早課
 

早朝定刻に及びて鐘を撞く。早課を始むること常例の如し。六段の聖詠の後に大聯

   「主は神なり」に讃詞、第二調。

尊きイオシフは爾の潔き身を木より下し、浄き布に裹み、香料にて覆ひ、新なる墓に藏めたり。

光榮、死せざる生命よ、爾死に降りし時、神の性の光にて地獄を殺せり。死せし者を地下より復活せしめし時、天軍皆呼びて曰へり、生命を賜ふ主ハリストス吾が神よ、光榮は爾に歸す。

今も、天使は香料を攜ふる女に墓の側に現れてべり、香料は死者に適ふ、ハリストスは朽壞に與らず。

   (右歌ふ時司祭偏く爐儀を行ふ。此の時衆人火を點じたる獵燭を持つ。)

右列詠隊傷感の情を以て「ネポロチニ」(道になく)を歌ひ始む、第五調に依る。聖詠の毎句の後に讃美詞一句を朗誦す。

   第一段

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1155]---------------------

主よ、爾は崇め讃めらる、爾の律を我に訓へ給へ。

 

道になくして、主の律法を履み行ふ者は福なり。

   讃美詞

ハリストスよ、爾は生命にして柩に置かれ給へり、天軍驚き懼れて、爾の謙遜を讃榮せり。

主の啓示を守り、心を盡して彼を尋ぬる者は福なり。

生命よ、如何に死し、如何に柩に居るか、亦死の國を壞り、死せし者を地獄より起すか。

彼等は不法を作さずして、主の道を行く。

イイスス王よ、我等爾を祟め、讃め、爾の葬と苦とを尊み敬ふ、爾は之を以て我等を朽壞より救ひ給へり。

爾は爾の命を固く守らんことを命ぜり。

地の尺度を定めしイイスス、萬有の王よ、爾死者を墓より起す者は今小き柩に居り給ふ。

嗚呼願はくは我が道は爾の律を守るに向はん、

吾がイイススハリストス、萬有の王よ、爾は何を尋ねて地獄に居る者に來りたる、

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1156]---------------------

豈人類を釋かん爲か。

 

其時我爾が悉くの誡を視て羞ぢざらん、

萬物の主宰は死者と見られ、死者の墓を空しくせし者は新なる墓に置かれ給ふ。

我爾が義の定を學び、心の直を以て爾を讃榮せん。

ハリストスよ、爾は生命にして柩に置かれ、爾の死にて死を滅し、世界に生命を流し給へり。

 

我爾の律を守らん、我を全く棄つる毋れ。

ハリストスよ、爾は罪犯者と偕に罪犯者の如く算へられて、我等衆人を古の誘惑者の罪犯より義ならしめ給へり。

少者は何を以て己の道を潔くせん、爾の言に循ひて己を修むるを以てす。

悉くの人より姿の美しくして、萬有の性を飾りたる者は華榮なき死者とて現る。

 

我心を盡して爾を尋ぬ、我に爾の誡を避くるを容す毋れ。

救世主よ、地獄は如何ぞ爾の降臨を忍び、爾の光の輝く電に目眩きて、昧まされて惱まざらん。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1157]---------------------

我爾の言を我が心に藏めたり、爾の前に罪を犯さざらん爲なり。

吾が甘愛なるイイスス、救を施す光よ、爾は如何に暗き柩に匿れたる、吁言ひ難く述べ難き寛忍や。

 

主よ、爾は崇め讃めらる、爾の律を我に訓へ給へ。

ハリストスよ、智識の性と無形の軍とは爾が葬の言ひ難く迹べ難き祕密を訝る。

我我が口を以て爾が口の悉くの定を傳へたり。

鳴呼異なる奇蹟、鳴呼新なる業や、我に呼吸を賜ふ者は呼吸なく舁かれて、イオシフの手にて葬らる。

 

我爾が啓示の道を悦ぶこと諸の貨財を悦ぶが如し。

ハリストスよ、爾は柩にも入り、敢て父の懐をも離れざりき、是れ奇妙にして亦至榮なる事なり。

我爾の誡を考へ、爾の路を仰ぐ。

イイススよ、爾は最小き柩に容れられたれども、萬物より天地の眞の王と識られたり。

我爾の律を以て慰となし、爾の言を忘れず。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1158]---------------------

造物主ハリストスよ、爾が柩に置かれし時、地獄の基は動き、人人の墓は啓けたり。

爾の僕に憐を顯し給へ、然せば我生きて爾の言を守らん。

手にて地を保つ者は肉體殺され、今地の下に鎖されて、死者を地獄の鎖より脱れしむ。

我が目を啓き給へ、然せば我爾が律法の奇蹟を觀ん。

我が生命なる救世主よ爾は死して死者に降り、地獄の柱を折きて、朽壞より升り給へり。

 

我地に在りて族客なり、爾の誡を我に隱す毋れ。

今神の肉體は燈の光が斗の下に隱るる如く、地の下に隱れて、地獄に在る黒暗を逐ひ拂ふ。

我が靈恒に爾の定を望みて憊れたり。

神靈の軍は多く集まる、イオシフ及びニコディムと偕に爾容れられざる者を小き墓に葬らん爲なり。

爾は誇る者、詛はれし者、爾の誡に逆ふ者を抑へたり。

生命を施す吾がイイススよ、爾は甘じて死を受け、地の下に藏められて、我苦き罪

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1159]---------------------

に殺されし者を生かし給へり。

 

悔と辱とを我より除き給へ、我爾の啓示を守ればなり。

言よ、萬物は爾の苦に因りて變易せられたり、蓋爾が萬有を保つ者たるを知りて、爾と苦を分てり。

 

牧伯は坐して我を謀る、惟爾の僕は爾の律を考ふ。

悉くの者を食ふ地獄は、生命の石を腹に受けて、古世より呑みたる死者を吐けり。

爾の啓示は我の慰なり、爾の律は我の共議者なり。

ハリストスよ、爾は新なる墓に藏められ、神に適ふが如く死より復活して、人の性を新にし給へり。

我が靈塵に投げられたり、爾の言に循ひて我を生かし給へ。

主宰よ、爾はアダムを救はん爲に地に降り、地には彼を覓め得ずして、彼を尋ねて地獄にまで降れり。

我我が道を陳べしに、爾我に聞けり、爾の律を我に訓へ給へ。

言よ、全地は懼れて震ひ、太陽は爾の至りて大なる光が地に藏さるるを見て、其光線を藏せり。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1160]---------------------

我に爾が命の道を悟らしめ給へ、然せば我爾の奇蹟を考へん。

救世主よ、爾は人として甘じて死し、神として死者を墓及び罪の深處より起し給へり。

我が靈は憂に依りて銷ゆ、爾の言に循ひて我を固め給へ。

鳴呼イイススよ、潔き者は母として泣き號びて、涙を爾の上に注ぎてべり、子よ、我如何に爾をらん。

詭詐の道を我より遠ざけ、爾の律法を我に授け給へ。

爾は麥の種の如く地の懐に入り、多く實る穗を生じて、アダム以來の人人を起し給へり。

我眞實の道を擇び、爾の定を我が前に置けり。

今爾は日の如く地の下に藏れて、死の夜に蔽はれたり、然れども至りて明に輝き給へ、救世主よ。

 

主よ、我爾の啓示を戀へり、我に羞を得しむる毋れ。

救世主よ、月が日輪を隱す如く、柩も亦今爾肉體にて死せし者を隱せり。

爾我が心を廣めん時、我爾が誡の道を趨らん。

生命なるハリストスは死を嘗めて、死に屬する者を死より釋き、今衆に生命を賜ふ。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1161]---------------------

主よ、爾が律の道を我に示し給へ、然せば我終に至るまで之に依らん。

救世主よ、爾肉體に顯れし新なるアダムは、昔猜に因りて殺されしアダムを、爾の殺さるるを以て生命に升せ給ふ。

我を悟らせ給へ、然せば我時の律法に遵ひ、心を盡して之を守らん。

救世主よ、神靈の品位は爾が臥せる死者たるを見て驚き懼れ、其翅にて己を蔽へり。

我を爾が誡の道に立て給へ、蓋我之を慕へり。

言よ、イオシフは木より爾死せし者を下して、今墓に置けり、然れども爾衆を救ふ神として起きよ。

 

我が心を爾の啓示に傾かしめ給へ、貪りに傾かしむ毋れ。

救世主よ、爾は天使等の歡喜たりしに、今肉體にて氣絶えし死者と見られて、其憂愁の所以となれり。

我が目を轉じて虚しきことを見ざらしめよ、我を爾の道に生かし給へ。

爾は木に擧りて、生ける人人を己と偕に擧げ、地の下に在りて、其下に臥す者を起し給ふ。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1162]---------------------

爾の言を爾の僕に固めよ、彼爾の前に愼めばなり。

救世主よ、爾は肉體にて獅の如く眠り、肉體の殻を脱ぎて、小獅の如く死より起き給ふ。

 

我が懼るる侮を除き給へ、爾の定は仁慈なればなり。

爾アダムの脅骨を取りて是よりエワを造りし者は、脅を刺されて、潔浄を施す泉を流し給へり。

視よ、我爾の命を慕へり、爾の義を以て我を生かし給へ。

救世主よ、昔羔は私に獻祭せられしに、爾惡に與らざる者は公に獻祭せられて、萬物を浄め給へり。

 

主よ、願はくは爾の憐は我に至り、爾の言に循ひて爾の救は我に至らん。

孰か能く畏る可き誠に新なる形を言ひ顯さん、蓋造物を司る者は今苦を受けて、我等の爲に死し給ふ。

然らば我を侮る者には、我對ふるを得ん、我爾の言を恃めばなり。

天使等は驚きて呼べり、生命の寶藏は何如にして死者と見られ、神は何如にして墓に鎖さるる。

我が口より眞實の言を全く離す毋れ、我爾の定を恃めばなり、

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1163]---------------------

救世主よ、爾は戈にて刺されし爾の脅より生命を滴らせ、此を以て我を生かし給ふ。

然らば我常に爾の律法を守りて世世に至らん。

イイススよ、爾は木に舒べられて、人人を聚め、脅を刺されて、悉くの者に生命を施す赦を流し給ふ。

我自由にして往かん、爾の命を求めたればなり。

救世主よ、尊き者は尊き行を顯す、一には爾死せし者を尊く葬り、一には爾の畏るべき容に驚き懼る。

我諸王の前に爾の啓示を言ひて耻ぢざらん。

イイススよ、爾は甘じて死者として地の下に降りて、天より墜ちし者を復地より升せ給ふ。

 

我愛する所の爾の誡を以て慰とせん。

イイススよ、爾は死者として見られたれども、神なるによりて生ける者として、天より墜ちし者を復地より升せ給ふ。

 

我が手を愛する所の爾の誡に伸べて、

爾は死者として見られたれども、神なるによりて、生ける者として、我を殺

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1164]---------------------

しし者を殺して、殺されし人人を生かし給へり。

爾の律を考へん。

鳴呼彼の喜、鳴呼多くの樂や、爾は暗き淵に光を輝かして、此等を地獄に充て給へり。

爾の僕に賜ひし言を記憶せよ、爾我に之を恃まんことを命ぜしによる。

人を愛する主よ、我爾の苦を伏し拜み、爾のりを讃め歌ひ、爾の權柄を尊み崇む。我此等を以て害を爲す諸慾より解かれたり。

爾が言の我を生かすは、斯れ我が患難の時には我の慰なり。

ハリストスよ、劍は爾に向ひて拔かれしに、強き者の劍は鈍り、エデムの劍は還さる。

誇る者は大く我を譏れり、然れども我爾の律法を離れざりき。

羊は羔の屠らるるを見て、刃に刺されて泣き、群をも偕に叫ばしめたり。

主よ、我爾が古世よりの定を記憶して自ら慰めたり。

ハリストスよ、爾は墓に葬られ、地獄に往きたれども、墓をし、地獄を空しくし給へり。

我惡人が爾の律法を棄つるを見て驚き懼る。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1165]---------------------

救世主よ、爾は甘じて地の下に降り、殺されし人人を生かして、之を父の光榮の中に升せ給へり。

 

我が旅する處に於て爾の律は我の歌となれり

三者の一は肉體に於て我等の爲に耻づべき死を忍びしに、日は懼れ、地は慄く。

主よ、我夜中爾の名を記憶し、爾の律法を守れり。

苦き泉よりするが若くイウダの支派より出でし者は、「マンナ」を賜ひし養育者イイススを坎に置けり。

 

是れ我が物となれり、我爾の命を守るに縁る。

審判者は審判せらるる者として審判者ピラトの前に立ち、十字架の木に死せんことを非義に定罪せられたり。

我謂へり、主よ、爾の言を守るは我の分なり。

傲慢なるイズライリ、殘忍なる民よ、爾等何を苦しみてワラウワを釋し、救世主を十字架に付したる。

 

我心を盡して爾にれり、爾の言に循ひて我を憐み給へ。

爾己の手にて土よりアダムを造りし者は彼の爲に性にて人となり、爾の旨に由り

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1166]---------------------

て十字架に釘せられたり。

我我が道を考へ、我が足を爾の啓示に旋らせり。

言よ、爾は父の命に從ひて、畏るべき地獄にまで降り、人類を復活せしめ給へり。

我爾の誡を守ること速にして遅からざりき。

鳴呼哀しい哉、世界の光や、鳴呼哀しい哉、我の光、吾が至愛なるイイススやと、童貞女は痛く泣きてべり。

惡人の網我を圍みたれども、我爾の律法を忘れざりき。

嫉妬、殘忍、傲慢なる民よ、ハリストスの復活するに及びて、其布と首巾にだに羞づ可し。

我夜半に興きて、爾が義なる定の爲に爾を讃榮せり。

來れ、不潔なる兇殺者門徒よ、我に爾の惡習、爾にハリストスを賣らしめし者を示せ。

 

凡そ爾を畏れて爾の命を守る者は、我之と儔たり。

愚にして瞽、殘忍にして不信なる者よ、爾は價を以て香料を賈らんと欲して、人を愛する者の爲をなせり。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1167]---------------------

主よ、地は爾の憐にて滿ちたり、爾の律を我に誨へ給へ。

天の香料を賣りて幾何の價を得たるか、價の最貴き者に當る何物を得たるか、爾狂を得たり、詛はれたる「サタナ」よ。

主よ、爾は已に爾の言に循ひて善を爾の僕に行へり。

爾若し貧者を愛して、靈を潔めんと欲して費す所の香料の爲に憂へば、何如ぞ金の爲に光り輝く者を賣る。

 

我に善き明悟と智慧とを誨へ給へ、我爾の誡を信ずればなり。

鳴呼神の言や、鳴呼我が喜や、我何如にして爾が三日のを忍ばん、今我が母たる心は裂かる。

我が苦の先に我迷へり、今は爾の言を守る。

神の聘女たる童貞女はべり、誰か我に水と涙の泉とを與へん、我が甘愛なるイイススの事を泣かん爲なり。

主よ、爾は善にして善を行ふ者なり、爾の律を我に誨へ給へ。

鳴呼山と陵と人人の群よ、涕を流して、皆我爾の神の母と偕に泣き號べ。

誇る者はを編みて我を攻む、唯我心を盡して爾の命を守らん。

童貞女は泣きてべり、救世主よ、我何の時にか爾永遠の光、我が心の喜と

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1168]---------------------

樂とを見るを得ん。

彼等の心は肥えたること脂の如し、惟我爾の律法を以て慰となす。

救世主よ、爾は角の截られたる石の如く截られたれども、生命の泉として、活ける流を流し給へり。

我が爾の律を學ばん爲に苦しみしは、我の爲に善なり。

我等は爾の脅が一の泉の如く流す所の二の河に飮ませられて、死せざる生命を獲るなり。

爾が口の律法は我が爲に金銀千千よりも貴し。

言よ、爾甘じて死者として柩に入りたれども生き、且吾が救世主よ、曾て預言せし如く、爾の復活を以て人人を興し給ふ。

 

光榮、言よ、我等は爾萬有の神を、爾の父及び聖神と共に讃め歌ひ、爾の神聖なるを崇め讃む。

今も、生神女讃詞、潔き生神女よ、我等爾を讃め揚げ、信を以て爾の子、吾が神の三日のを尊み崇む。

      復第一の讃美詞を歌ふ、兩詠隊共に。

ハリストスよ、爾は生命にして柩に置かれ給へり、天軍驚き懼れて、爾の謙遜

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1169]---------------------

を讚榮せり。

 

次に小聯。高聲、蓋爾父と子と聖神の名は讃揚せられ、爾の國は讃榮せらる、今も何時も世世に。

   第二段を始む。此の時司祭爐儀を行ふ。

 

   第二段

左列詠隊傷感の情を以て讃詞を歌ふ。

爾生命を施す主、十字架に手を舒べて、敵の權柄を敗りし者を讃榮するは誠に當れり。

爾の手我を造り、我を設けたり、我に悟らせ給へ、然せば我爾の誡を學ばん。

爾萬物の造成主を讃榮するは誠に當れり、蓋我等爾の苦に藉りて朽壞を免れて、苦なきを得たり。

爾を畏るる者は我を見て、我が爾の言を恃めるを喜ばん。

救世主ハリストスよ、爾暮れざる光が肉體にて柩に入りしに、地は慄き、日は匿れたり。

主よ、我爾が定の義なるを知る、爾義を以て我を罰せり。

ハリストスよ、爾は生命を産む寢にて柩に寢りて、人類を罪の重き寢より興し給

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1170]---------------------

へり。

願はくは爾の憐は爾の僕に賜ひし言に循ひて我の慰とならん。

潔き者は曰へり、子よ、女の中我獨病なく爾を生めり、今爾の苦に縁りて堪へ難き病を忍ぶ。

願はくは爾の憐は我に至らん、然らば我生きん、蓋爾の律法は我の慰なり。

救世主よ、セラフィム等は爾が上には父と離れずして居り、下には死して地に臥すを見て驚き畏る。

願はくは誇る者は辱しめられん、蓋彼等故なくして我を攻む、我爾の命を考ふ。

言よ、爾釘せられしに、殿の幔は裂かれ、爾日たる者が地の下に入りしに、諸の光體は光を隱せり。

 

願はくは爾を畏れて爾の啓示を識る者は我に向はん。

始に一の指麾にて地球を建てし者は、人の如く氣絶えて、地の下に入りたり。天よ、此を見て驚き懼れよ。

願はくは我が心爾の律になからん、我が羞を得ざらん爲なり。

爾己の手を以て人を造りし者は地の下に入りたり、全能の權を以て人人の群を墮落

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1171]---------------------

より起さん爲なり。

 

我が靈爾の救を慕ひて銷ゆ、我爾の言を恃む。

來りて、古の攜香女の如く、聖なる哭泣を死せしハリストスに獻らん、復彼等と偕に慶べよと聆かん爲なり。

 

我が目は爾の言を俟ちて銷ゆ、我謂ふ、爾何の時に我を慰めんか。

言よ、爾は誠に盡きざる香料なり、故に攜香女は死せし者に於ける如く、爾生ける者に香料を獻れり。

我は革嚢が烟の中に在るが如し、然れども爾の律を忘れざりき。

ハリストスよ、爾はられて地獄の國を滅し、死にて死を殺し、地に生るる者を朽壞より釋き給ふ。

 

爾が僕の日は幾何かある、爾何の時に我を窘逐する者を審判せんか。

生命の河を流す神の睿智は柩に入りて、地獄の至り難き處に居る者を生かし給ふ。

誇る者は爾の律法に悖りて、我が爲にを掘れり。

我壞れたる人の性を新にせん爲に、甘じて肉體にて死に刺されたり。吾が母よ、哭きて心を割く勿れ。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1172]---------------------

爾の誡めは皆眞實なり、彼等不義を以て我を窘逐す、我を助け給へ。

爾義の光は地の下に入り、地獄に在る黒暗を悉く逐い拂ひて、寢より起すが如く死せし者を起し給へり。

彼等幾んど我を地に滅せり、然れども我爾の命を棄てざりき。

今涕を以て二性の種、生命を産む者は地の懐に播かる、然れども生ひ出でて世界を喜ばしめん。

爾の憐に依りて我を生かし給へ、然せば爾が口の啓示を守らん。

アダムは神が樂園に歩みし時に畏れ、地獄に降りし時に歡ぶ、蓋彼の時は陷り、今は起さる。

主よ、爾の言は永く天に固められたり、

ハリストスよ、爾が身にて墓に置かれし時、爾を生みし者は涙の祭りを爾に獻りてぶ、子よ、預言せし如く起きよ。

爾の眞實は世世に在り、爾地を立てしに、地立つ。

救世主よ、イオシフは敬虔にして爾を新なる墓に藏むる時、神に適ふ輓歌を爾に歌ひて、之に涙を交ふ。

爾の定に循ひて皆立ちて今に至る、蓋皆爾に務むるなり。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1173]---------------------

言よ、爾の母は爾が釘にて十字架に付けられしを見て、堪へ難き哀の釘及び戈にて靈を刺し貫く。

若し爾の律法我の慰とならざりしならば、我は我が禍の中に亡びしならん。

母は爾萬有の甘味たる者が苦き飮料を飮ませらるるを見て、苦き涙にて面を霑せり。

我永く爾の命を忘れざらん、爾此を以て我を生せばなり。

至浄の者は爾が非義に屠らるるを見て、泣きて曰へり、言よ、我痛く刺され、心割かる。

 

我爾に屬す、我を救ひ給へ、我爾の命を求めたればなり。

イオシフびて曰へり、言よ、我如何にして爾の愛す可き目と口とを閉ぢん、如何にして爾を死者に適ひて葬らん、我懼るる耳。

惡人は我を伺ひて滅さんと欲す、惟我爾の啓示を究む。

イオシフとニコディムとは今死せしハリストスに輓歌を歌ふ、セラフィム等も彼等と偕に歌ふ。

我凡その完全の限を見たり、惟爾の誡は廣きこと測り難し。

救世主、義の日よ、爾地の下に入りしに、爾を生みし月は爾の容を見るを得ず

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1174]---------------------

して、哀に因りて虧く。

我幾何か爾の律法を愛する、我終日之を考ふ。

救世主よ、地獄は爾生命を賜ふ主が其富を奪ひて、古世よりの死者を起すを見て懼れたり。

爾の誡を以て爾我を我が敵より智ならしめたり、蓋此れ常に我と偕にす。

言よ、日は夜過ぎて光を放つ、爾も宮より出づるが如く復活し、死過ぎて明に光り給ふ。

我の智識は我が都ての敎師に逾えたり、我爾の啓示を考ふればなり。

救世主よ、地は爾造物主を懐に受けて、戰き震ひ、其震にて、死者を寢より起す。

我の多識は老人に勝る、我爾の命を守ればなり。

ハリストスよ、今ニコディム及び尊き者は恭しく香料を爾に傳りてべり、全地よ、懼る可し。

我悉くの惡しき道に我が足を禁ず、爾の言を守らん爲なり。

光を造りし者よ、爾入りしに、日の光も爾と偕に入れり。造物は戰きて、爾が萬有の造成者たるを傳ふ。

我爾の定を避けず、爾我を訓ふればなり。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1175]---------------------

削りたる石は屋隅の首石を蔽ひ、死す可き人は神を死す可き者の如く今柩に匿す、地よ、懼る可し。

爾の言は我が喉に幾何か甘き、我が口には蜜よりも甘し。

潔き者は泣きてべり、子よ、爾が愛せし門徒及び爾の母を見て、最甘き聲を出せ。

我爾の命を以て諭されたり、故に悉くの詐の道を疾む。

言よ、爾は生命を施す者として、十字架に舒べられて、イウデヤ人を殺さざりき、其死者をも復活せしめ給へり。

爾の言は我が足の燈、我が路の光なり。

言よ、爾は苦を受くる時、美しき姿も嘉き容もなかりき、然れども復活して輝き、神聖なる光にて人人を飾り給へり。

我爾の義なる定を守らんことを盟へり、之を成さん。

暮れざる光よ、爾肉體にて地に入りしに、日は見るに耐へずして、晝と雖光を失へり。

 

主よ、我痛く迫害せられたり、爾の言に循ひて我を生かし給へ。

救世主よ、日と月とは光を失ひて、黒き衣を着たる善智の僕に效へり。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1176]---------------------

主よ、我が口の自由なる獻祭を受けんことを悦びて、我に爾の定を誨へ給へ。

イオシフはべり、爾死を受けたれども、百夫長は爾を見て神と爲せり。吾が神よ、我何如にして手を以て爾に觸れん、我懼るる耳。

我が靈は恒に我が手に在り、然れども我爾の律法を忘れず。

アダムは寢りし時死を脅より出せり、神の言よ、爾今寢りて、爾の脅より世界に生命を流し給ふ。

惡人は我が爲に網を張れり、然れども我爾の命を避けざりき。

仁慈の主よ、爾は暫く寢ねて、死せし者を生かし、復活して、古世より寢ぬる者を復活せしめ給へり。

 

我爾の啓示を永き嗣業として受けたり、蓋此れ我が心の樂なり。

生命を流す葡萄樹よ、爾は地より取られたれども、救の酒を流し給へり、我苦と十字架とを讃榮す。

我我が心を傾け、永く爾の律を行ひて終に迄らん。

救世主よ、何如に神靈の軍將は爾裸體にせられ、血に染められ、罪せられ、釘殺者の強暴を忍ぶ者を觀る。

我人の虚説を疾み、惟爾の律法を愛す。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1177]---------------------

聘定せられたる背逆なるエウレイの族よ、爾は殿の建てられしことを知れり、何爲れぞハリストスを罪したる。

 

爾は我の帲幪、我の盾なり、我爾の言を恃む。

爾は天を固め、地を奇妙に妝ひ、萬有を飾る者に辱の衣を着す。

不法の者よ、我を離れよ、我我が神の誡を守らん。

言よ、爾は鵜の如く脅を刺され、生命の流を滴らせて、爾の死せし諸子を生かし給へり。

爾の言に循ひて我を固め給へ、然せば我生きん、我が望に於て我を辱しむる毋れ。

昔イイススは異民を撃つ時日を停めたり、爾は黒暗の首を滅す時隱れ給へり。

 

我を助け給へ、然せば我救を得、恒に爾の律を顧みん。

慈憐なるハリストスよ、爾は父の懐を離れずして、甘じて人となり、地獄に降り給へり。

凡そ爾の律に離るる者は爾之を仆す、蓋彼等の謀は詭なり。

地を水に懸けし者は十字架に釘せられ、下されて、氣なき者として今地の中に臥す、地

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1178]---------------------

は之に耐へずして大く震ふ。

凡そ地の惡人は爾之を銕滓の如くに除く、故に我爾の啓示を愛せり。

夫を識らざる者は泣きてべり、鳴呼子よ、哀しい哉、蓋我王と恃みし者が今罪せられて、十字架に在るを見る。

爾を畏るるに因りて我が肉體慄き、我爾の定を懼る。

ガウリイルは飛び下りし時、斯く我に知らせたり、彼は吾が子イイススの國は永遠なりと曰へり。

我定と義とを行へり、我を我が窘逐者に付す毋れ。

噫噫シメオンの預言は應へり、蓋エンマヌイルよ、爾の劍は我の心を刺せり。

 

爾の僕を護りて善を得しめ給へ、誇る者の我を迫害せざらん爲なり。

嗟呼イウデヤ人よ、爾等は嫉に縁りて生命を施す主を殺せり、彼が死より起しし者にだに愧ぢよ。

我が目は爾の救と爾が義の言とを望みて消ゆ。

吾がハリストスよ、日は爾無形の光が墓に隱され、氣なきを見て、懼れて其光を失へり。

爾の憐に循ひて爾の僕に行ひ、爾の律を我に訓へ給へ。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1179]---------------------

言よ、爾の無なる母は、爾測り難き無原の神が柩に在るを觀る時、痛く哭けり。

 

我は爾の僕なり、我に悟らせ給へ、然せば我爾の啓示を識らん。

ハリストスよ、爾の無なる母は爾の死せしを見て、憂ひて爾に謂へり、生命よ、死者の中に久しく淹まる毋れ。

主に事を行ふ時至れり、人爾の律法を毀てり。

光榮の日、死せざる主よ、兇暴なる地獄は爾を見て慄き、急ぎて其囚を放てり。

唯我爾の誡を愛すること金に愈り、純金に愈る。

大なる畏る可き顯見は今見らる、生命の原因なる者は衆人を生かさんと欲して、死を受け給へり。

我爾が悉くの命を承け認めて、皆之を正しとなし、悉くの詭の途を疾む。

主宰よ、爾脅には刺され、手には釘うたれて、脅より出でたる傷と原祖の手の不節制とを醫し給ふ。

爾の啓示は奇妙なり、故に我が靈之を守る。

曩にラヒリの子の爲に家の在る者皆泣けり、今童貞女の子の爲に門徒の會母と偕に泣き號べり。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1180]---------------------

爾が言の啓發は光を施し、愚蒙の者を悟らしむ。

手を以て人を造り、亦猛獸のを毀りしハリストスの頬を手にて批てり。

我口を啓きて喘ぐ、爾の誡に渇けばなり。

ハリストスよ、我等信者は皆爾のにて死より救はれて、今歌を以て爾の十字架ととを崇め讃む。

 

光榮、三者讃詞、無原の神、常に偕にする言、及び聖神よ、吾が皇帝の權柄を固め給へ、爾至善なるに因る。

今も、生神女讃詞、生命を生みし無至淨なる童貞女よ、敎會の誘惑を防ぎて、平安を與へ給へ、爾至善なるに因る。

   復第一の讃美詞を歌ふ、兩詠隊共に。

爾生命を施す主、十字架に手を舒べて、敵の權柄を敗りし者を讃榮するは誠に當れり。

次に小聯。高聲、蓋爾我等の神、ヘルワィムの光榮の座に息ふ者は聖なり、我等光榮を爾と、爾の無原の父と、至聖至善生命を施す爾の神とに獻ず、今も何時も世世に。

 

   第三段を始む。此の時司祭爐儀を行ふ。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1181]---------------------

 

   第三段

右列詠隊傷感の情を以て歌ふ、第三調に依る。

   吾がハリストスよ、萬族は爾のりに歌を獻る。

我を顧み、我を憐み、爾の名を愛する者に行ふが如くせよ。

アリマフェヤの人は爾を木より下し、布に裹みて墓にる。

我が足を爾の言に固め給へ、諸の不法の我を制するを許す毋れ。

吾がハリストスよ、攜香女は來りて、心を盡して香料を爾に捧ぐ。

我を人の迫害より救ひ給へ、然せば我爾の命を守らん。

造物よ、皆來りて、逝世の歌を造物主に獻らん。

爾が顔の光にて爾の僕を照し、爾の律を我に誨へ給へ。

我等皆心の中に攜香女と偕に、死者に於けるが如く生ける者に香料を傳らん。

我が目は水の流を注ぐ、人爾の律法を守らざるに縁る。

三重に福たるイオシフよ、ハリストス、生命を施す者の肉體をれ。

主よ、爾は義なり、爾の定は正し。

「マンナ」を以て育はれし者は其恩者に踵を擧げたり。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1182]---------------------

 

爾の命じたる啓示は義なり、全き眞實なり。

「マンナ」を以て育はれし者は救世主に膽及び醯を捧ぐ。

我が熱心は我を蝕む、我が敵爾の言を忘れしによる。

諸預言者を殺しし者の狂と、ハリストスを殺す罪や。

爾の辭は孔清し、爾の僕は之を愛せり。

門徒は無智の僕として智慧の淵を付せり。

我微小にして卑しと雖、爾の命を忘れず。

詭詐なるイウダは救贖者を離れて、となるを免れざりき。

 

爾の義は永遠の義、爾の律法は眞實なり。

ソロモンの言に依れば、不法なるエウレイ人の口は深き隍なり。

悲と憂とは我に及べり、爾の誡は我の慰なり。

不法なるエウレイ人の曲りたる徑には荊あり、網あり。

爾が啓示の義は永遠なり、我を悟らせ給へ、然せば我生きん。

イオシフはニコディムと偕に死者の如く造物主を葬る。

我心を盡してぶ、主よ、我に聽き給へ、然せば我爾の律を守らん。

生命を施す救世主よ、光榮は地獄を滅しし爾の權柄に歸す。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1183]---------------------

爾をぶ、我を救ひ給へ、然せば我爾の啓示を守らん。

言よ、至浄の者は爾の臥すを見て、母に適ひて泣けり。

黎明に先だちてび、爾の言を恃む。

於戯吾が最樂しき春、鳴呼吾が最甘き子よ、爾の華美は何所にか入りたる。

我が目夜更に先だちて寤む、爾の言を究めん爲なり。

言よ、爾死せしに、爾の至淨なる母は慟哭せり。

主よ、爾の憐に依りて我が聲を聆き、爾の定に依りて我を生かし給へ

女等は香料を攜へて、神聖なる香料たるハリストスに傳らん爲に來れり。

惡を謀る者邇づけり、彼等は爾の律法に遠ざかる。

吾が神よ、爾は神聖なる力を以て、死にて死を殺し給ふ。

 

主よ、爾は邇し、爾が悉くの誡は眞實なり。

吾が神よ、誘ふ者は誘はれ、曾て誘はれし者は爾の智慧に藉りて免るる   を獲たり

我昔より爾の啓示は、爾之を世世の爲に立てしを知れり。

主を賣る者は地獄の底、滅亡の井に下されたり。

我が阨を顧みて我を遁れしめ給へ、蓋我爾の律法を忘れず。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1184]---------------------

至りて禍なる狂へるイウダの途は荊なり、網なり。

我が訟を理めて我を護り、爾の言に循ひて我を生かし給へ。

言、神の子、萬有の王よ、爾を十字架に釘せし者は皆倶に滅ぶ。

救は惡人に遠し、蓋彼等は爾の律を求めず。

血を流す者は皆倶に朽壞の井に滅ぶ。

主よ、爾の恩澤は多し、爾の定に依りて我を生かし給へ。

神の子、萬有の王、吾が神、吾が造物主よ、如何にして爾は苦を受け給ひし。

我に窘逐者及び敵人は多し、惟我爾の啓示を離れず。

牝牛は犢の木に懸けられしを見て啼けり。

我悖る者を見て憂ふ、彼等爾の言を守らざればなり。

イオシフはニコディムと偕に生命を施す尸をる。

 

視よ、我若何に爾の命を愛する、主よ、爾の憐に依りて我を生かし給へ。

童貞女は心刺され、熱き涙を流してべり。

爾が言の本は眞實なり、凡そ爾が義の定は永遠なり。

吾が目の光、甘愛なる吾が子よ、何爲れぞ今柩に匿るる。

牧伯は故なくして我を窘逐す、惟我が心爾の言を懼る。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1185]---------------------

母よ、泣く毋れ、我アダム及びエワを釋かん爲に此の苦を受く

我爾の言を悦ぶこと大なる利益を獲し者の如し。

我が子よ、我は此の苦を爾に受けしむる爾の極めて大なる慈憐を讃榮す。

を疾みて之を忌み、惟爾の律法を愛す。

慈憐の主よ、爾は醯及び膽を飮ませられて、古の食ふ罪を釋き給へり。

我爾が義の定の爲に日に七次爾を讃榮す。

昔雲柱を以て其民を覆ひし者は十字架に釘せられたり。

 

爾の律法を愛する者には大なる平安あり、彼等に躓なし。

救世主よ、墓に來りし攜香女は香料を爾に捧げたり。

主よ、我爾の救を恃み、爾の誡を行ふ。

起きよ、慈憐の主、我等を地獄の淵より起す者よ。

我が靈爾の啓示を守り、我孔之を愛す。

復活せよ、生命を賜ふ者よ、爾を生みし母は涙を流して言ふ。

我爾の命と爾の啓示とを守る、蓋我が道は悉く爾の前にあり。

言よ、速に復活して、潔く爾を生みし者の哀を釋き給へ。

主よ、願はくは我が聲は爾が顔の前に邇づかん、爾の言に循ひて我を

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1186]---------------------

悟らせ給へ。

天軍は爾の死せしを覩て懼るること甚し。

願はくは我がは爾が顔の前に至らん、爾の言に循ひて我を救ひ給へ。

愛と畏とを以て爾の苦を尊む者に諸罪の赦を與へ給へ。

爾が我に其律を誨へん時、我が口は讃美を發せん。

鳴呼畏る可き奇妙の顯現や、神の言よ、何如にして地は爾を覆ふ。

我が舌は爾の言を迹べん、蓋爾が悉くの誡は義なり。

救世主よ、昔爾を抱きしイオシフは脱れ、今他の者は爾を葬る。

 

願はくは爾の手は我の助とならん、蓋我爾の命を擇べり。

吾が救世主よ、爾が至浄なる母は爾の殺されしことを悲しみて泣く。

主よ、我爾の救に渇く、爾の律法は我の慰なり。

諸神靈は爾萬物の造成主の奇異なる畏る可きを見て驚き懼る。

願はくは我が靈生きて爾を讃榮せん、願はくは爾の定は我を助けん。

朝早く來りし攜香女は香料を柩に傾けたり。

我は亡はれたる羊の如く迷へり、爾の僕を尋ね給へ、蓋我爾の誡を忘れざりき。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1187]---------------------

爾の起くるを以て敎會に平安、爾の民に救を與へ給へ。

 

光榮、鳴呼三者、吾が神、父、子、聖神よ、世界を憐み給へ。

今も、童貞女よ、爾の諸僕を爾の子の復活を瞻るに耐ふる者と爲し給へ。

 

   次に左の諸讃詞を歌ふ。第五調。

  主よ、爾は崇め讃めらる、爾の誡を我に訓へ給へ。

救世主よ、天使の軍は爾が死者の内に入れど、死の力を滅し、アダムを己と共に起し、衆を地獄より救ひ給ひしを見て驚けり。

  主よ、爾は崇め讃めらる、爾の誡を我に訓へ給へ。

墓の中に光る天使は攜香女に謂へり、女弟子よ、何ぞ香料を悲の涙に交ふる、墓を見て悟れよ、救世主は墓より復活せり。

  主よ、爾は崇め讃めらる、爾の誡を我に訓へ給へ。

攜香女は朝早く泣きて爾の墓に往きしに、天使其前に立ちて云へり、泣く時は過ぎたり、涙を止めて、使徒に復活を告ぐべし。

  主よ、爾は崇め讃めらる、爾の誡を我に訓へ給へ。

救世主よ、攜香女は香料を攜へ、爾の墓に來りて泣きしに、天使之に謂へり、何ぞ生ける者を死者の中にありと思ふ、彼は神として墓より復活せり。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1188]---------------------

光榮、三者讃詞、父と、其子と、聖神、一體の聖三者を拜みて、セラフィムと偕に呼ばん、聖、聖、聖なる哉主や。

今も、生神女讃詞、童貞女よ、爾は生命を賜ふ主を生みて、アダムを罪より救ひ、エワに悲に易へて喜を賜へり、爾より身を取りし神人は生命を落しし者を率いて、復生命に向はせたり。

   「アリルイヤ、」三次。次に、小聯

高聲、蓋ハリストス我等の神よ、爾は平安の王なり、我等光榮を爾と、爾の無原の父と、至聖至善生命を施す爾の神とに獻ず、今も何時も世世に。

   本日の坐誦讃詞を歌ふ。第一調。

イオシフは尊き屍をピラトより求め得て、潔き布に裹み、神聖なる香料を傳り、新なる墓に藏めたり。故に攜香女は朝早く來りてべり、ハリストスよ、預言せし如く、我等に復活を示し給へ。

   光榮

末辭、ハリストスよ、預言せし如く、我等に復活を示し給へ。

   今も、又、

天使の會は、父の懐に坐する不死の者が死者の如く墓に置かれ、天軍の環りて、

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1189]---------------------

造成者及び主として讃榮する者が死者と偕に地獄にあるを見て、驚き懼れたり。

 

次に福音經の講説の誦讀あり、マトフェイ百十四端に就きて。「ハリストスの復活を見て」を歌はずして、直に第五十聖詠を誦す。其後規程を歌ふ、「イルモス」二次、讃詞十二句に。畢りて後復イルモス、兩詠隊共に。規程は第一歌頌より第六に至るまでは、イドルントの主敎修士マルコの作、「イルモス」は、一修道女名はカッシヤの作。第六歌頌より終に至るまではコスマ師の作。規程の冠詞は、今日も大「スボタ」を歌ふ。第六調。

 

   第一歌頌

イルモス、昔逐ひつめし窘迫者を海の波にて匿しし主を、救はれし者の子は土の下に匿せり。然れども我等は童女の如く主に歌はん、彼嚴に光榮を顯したればなり。

主吾が神よ、我逝世の詞と葬の歌とを爾に歌はん。蓋爾は其にて我が生命の門を啓き、其死にて死と地獄とを殺し給へり。

吾が救世主よ、天上及び地獄の者は、爾が上は寶座に、下は柩に在るを見て、爾の死の爲に搖けり。蓋爾生命の源は悟り難くして死者と見られたり。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1190]---------------------

人を愛する主よ、爾は普く爾の光榮を満たさん爲に地獄に降れり。蓋アダムの内に在る我が性は爾に隠れざりき、爾は葬られて、我敗壞せし者を改め給ふ。

 

 

   第三歌頌

イルモス、造物は爾、全地を寄する所なくして水の上に懸けし者が、髑髏の處に懸かれるを覩て、大く懼れ、戰きてべり、主よ、爾の外に聖なるはなし。

主宰よ、爾は多くの預像を以て爾がの形を示せり。今又神人として、夫の地獄に在りて、主よ、爾の外に聖なるはなしと呼ぶ者にも、爾の秘密を顯し給へり。

救世主よ、爾は手を開きて、先に分れたる者を合せたり。布に裹まれて、夫の墓に縛られて、主よ、爾の外に聖なるはなしとぶ者を解き給へり。

容れられざる者よ、爾が柩に容れらるるも、封印せらるるも、爾の旨に因れり。

蓋爾は神に適ふ行を以て爾の力を、人を愛する主よ、爾の外に聖なるはなしと歌ふ者に顯はし給へり。

 

 

  坐誦讃詞、第一調。

救世主よ、現れて女等に復活を傳ふる天使の輝光に縁りて、爾の墓を守る兵卒等

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1191]---------------------

は死せし若くなれり。我等爾朽壞を滅す者を讃榮し、爾墓より復活せし我等の惟一の神に伏拜す。

   光榮、今も、同上。

 

   第四歌頌

イルモス、アウワクムは爾が十字架に於ける神聖なる謙虚を先見して、驚きてべり、至善の主よ、爾は地獄に居る者と偕に在りて、全能者として強き者の權柄を斷ち給へり。

吾が救世主よ、爾太初に工を息ふを以て祝福せし第七日を今聖にせり。蓋爾は安息して、萬有を己に就かしめて、之を興し且新にし給ふ。

言よ、爾が上の性の力にて勝つ時、爾の靈は體より分れたり、蓋兩ながら爾の權を以て死及び地獄の縛を斷つ。

言よ、地獄は爾を迎へて、死す可き者が神成せられ、傷を被りし者が全能者たるを見て惱み、此の懼るべき形に因りて唖と爲れり。

 

   第五歌頌

イルモス、ハリストスよ、イサイヤは我等の爲に仁慈に因りて行はれし爾が神聖なる顯見の暮れざる光を見て、夜中より醒して呼べり、死者は復活し、墓に在る者

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1192]---------------------

は起き、凡そ地に生るる者は歡ばん。

造物主よ、爾は麈に屬する者となりて、地に生るる者を新にす。言よ、布も柩も爾に在る祕密を顯す、蓋尊き議士は爾を生みし父、爾の内に奇妙に我を改むる者の旨を示す。

主宰よ、爾は死にて死す可き者を易へ、にて朽つ可き者を易ふ。蓋爾は受けし所の性を神に適ひて朽ちざる者となし、死せざる者となす、爾の肉體は朽つるを見ざりき、、爾の靈は奇妙にして地獄に遺されざりしに因る。

吾が造成主よ、爾は婚姻に與らざる者より出で、脅刺されて、彼に因りてエワを新にせり。アダムと爲りて、性を生かす寢にて性に超えて寢り、全能者として死の寢及び朽壞より生命を起し給へり。

   第六歌頌

イルモス、イオナは鯨の腹に包まれたれども、長く留められざりき。蓋爾苦を受け、に付されし者を像りて、猛獸より出でしこと宮より出づる如く、爾の墓を守る者に呼べり、徒に虚しく守る者よ、爾等己の矜恤者を棄てたり。

言よ、爾殺されたれども、受けし所の肉體より分れざりき。蓋苦の時に爾の殿毀たれたれども、爾の神性と肉體との位は一たりき、二の中に爾一にして、

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1193]---------------------

子、神の言、神人あればなり。

アダムの犯罪は人を殺す者たれども、神を殺す者たらざりき。蓋爾の肉體の塵の性は苦を受けたれども、神の性は苦に與らざりき、爾は己の中に朽つべき性を易へて朽ちざる者となし、復活にて朽ちざる生命の源を啓き給へり。

救世主よ、地獄は人間の上に權を執れども、永く保つを得ず。蓋爾權能者は柩に置かれて生命を司る手にて死の鎖を敗り、古世より彼處に居る者に詐なき釋を傳へて、死者の中より初果となり給へり。

 

   小讃詞、第六調

淵を閉ぢし者は死者として見られ、死せざる者は死すべき者の如く没藥及び布に裹まれて、墓に置かる。女等は之に香料を傳らん爲に來りて、痛く泣きてべり、此の「スボタ」は至りて讃美たる日なり、此の中にハリストスは寢ねて、三日目に復活せん。

 

   同讃詞

萬有を保つ者が十字架に擧げられしに、萬物は其裸體にして木に懸れるを見て哭き、日は光線を隠し、星は光を失ひ、地は大く懼れて震ひ、海に走り、磐は裂け、

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1194]---------------------

多くの墓は啓け、聖人等の體は起きたり。地獄は下に呻き、イウデヤ人はハリストスの復活を讒するを謀れり。女等はぶ、此の「スボタ」は至りて讃美たる日なり、此の中にハリストスは寢ねて、三日目に復活せん。

 

   第七歌頌

イルモス、言ひ盡されぬ哉奇蹟や、爐に於て敬虔の少者をより救ひし者は氣絶えし死者として柩に置かる、我等、贖罪主神よ、爾は崇め讃めらると歌ふ者の救の爲なり。

戈にて脅を刺されたる者を受けし地獄は其心を刺され、神聖なる火に焚かれて呻く、我等、贖罪主神よ、爾は崇め讃めらると歌ふ者の救の爲なり。

富める哉柩や、己の中に寢れる如き造物主を受けて、生命の神聖なる寶藏と顯れたり、我等、贖罪主神よ、爾は崇め讃めらると歌ふ者の救の爲なり。

萬有の生命は死すべき者の法に因りて柩に置かるるに從ひて、之を復活の源と顯し給ふ、我等、贖罪主神よ、爾は崇め讃めらると歌ふ者の救の爲なり。』

ハリストスの神性は地獄に、柩に、エデムに於て一にして、父及び聖神と分れざる者たりき、我等、贖罪主神よ、爾は崇め讃めらると歌ふ者の救の爲なり。

   第八歌頌

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1195]---------------------

イルモス、天よ、畏れて戰け、地の基は動くべし、蓋視よ、至高きに居る者は死者に加へられ、小き柩に置かる。少者よ、彼を崇め讃めよ、司祭よ、讃め歌へ、民よ、萬世に尊み崇めよ。

至りて浄き殿は毀たれたれども、己と偕にれたる幕を起す、蓋至高きに居る第二のアダムは第一の者に降りて、地獄の底に至れり。少者よ、彼を崇め讃めよ、司祭よ、讃め歌へ、民よ、萬世に尊み崇めよ。

門徒等は勇氣を失ひしに、アリマフェヤのイオシフは勇み奮ふ。蓋萬有の神の死して裸なるを見て、之を求め得て、葬りてぶ、少者よ、彼を崇め讃めよ、司祭よ、讃め歌へ、民よ、萬世に尊み崇めよ。

鳴呼新なる奇蹟や、鳴呼仁慈や、鳴呼言ひ難き寛忍や、至高きに居る者は甘じて地の下に封ぜられ、神は譌る者の如く讒せらる。少者よ、彼を崇め讃めよ、司祭よ、讃め歌へ、民よ、萬世に尊み崇めよ。

 

   第九歌頌

イルモス、母よ、我爾が種なくして孕みし子の柩に在るを見て泣く毋れ、蓋我起きて光榮を獲、神なるに因りて、常に信と愛とを以て爾を讃揚する者を光榮の中に高くせん。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1196]---------------------

無原なる子よ、我奇妙に爾を生む時、性に超えて苦を覺えずして讃美せられたり。今吾が神よ、我爾を氣絶えし死者と見て、痛く哀の劍にて刺されたり。求む、復活し給へ、我が讃揚せられん爲なり。

母よ、地は我が旨に依りて我を覆ふ、然れども地獄の門衛は我が血に染みたる復讐の衣を着たるを見て戰く。蓋我十字架に敵を敗りて、神として復活し、爾を讃揚せらるる者とせん。

造物は歡ぶべし、地に生るる者は皆樂しむべし、蓋仇なる地獄は虜にせられたり。婦は香料を執りて我を迎へよ、我アダムとエワとを其全族と共に救ひて、第三日に復活せん。

 

差遣詞、第二調、主我等の神は聖なり。三次

 

「凡そ呼吸ある者」に四句を立てて、自調の讃頌を歌ふ。第二調。

今日柩は手に造物を保つ者を保ち、石は徳にて天を覆ふ者を覆ひ、生命は寢ね、地獄は戰き、アダムは縛より釋かる。神よ、光榮は爾の定制に歸す、爾は此を以て萬事を成し畢へて、我等に永遠の安息として、爾の至聖なる死よりの復活を賜へり。

觀る所の現は何ぞや、今の安息は何ぞや、世世の王は苦を以て定制を成し畢へ

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1197]---------------------

て、柩に安息し、我等に新なる安息を賜ふ。我等彼にばん、地を裁判する神よ、起きよ、蓋爾量り難き大仁慈を有つ者は世世に王たり。

來りて、我等の生命が、柩に臥す者を生かさん爲に、柩に臥すを見ん。來りて、今イウダより出づる者の寢ぬるを見て、預言者の如く彼にばん、臥して寢ぬること獅の如し、王よ、誰か敢て爾を起さん。然れども爾、我等の爲に甘じて己を付しし者は、己の意に從ひて起きよ。主よ、光榮は爾に歸す。

 

第六調、イオシフはイイススの屍を求め得て、之を其新なる墓に置けり、蓋彼には宮より出づるが如く墓より出づること適へり。死の權を敗りて、人人の爲に樂園の門を啓きし主よ、光榮は爾に歸す。

 

光榮、第六調、大なるモイセイは此の日を奥密に前兆して曰へり、神は第七日を祝せりと、蓋此は祝せられし「スボタ」、此は安息の日なり。此の日に神の獨生子は其悉くの工を竣へ、嘗て定めし死に藉りて、肉體にて安息せり。復活を以て彼は舊の姿に囘りて、我等に永遠の生命を賜へり、獨仁慈にして人を愛する主なればなり。

 

今も、生神女讃詞、第二調、「生神童貞女よ、爾は至りて讃美たる者なり」。次に大詠頌を歌ふ。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1198]---------------------

規程を歌ふ時聖務者高壇に入る例あり。大詠頌を歌ふ前に、首聖務者は祭服を完装し、諸司祭は唯祭袍及び領帯を着し、大詠頌を歌ふに及びて高壇より出づ。詠隊最高聲を以て最後の「聖なる神、聖なる勇毅」を歌ふ時、首聖務者首に聖福音經を戴き、諸司祭の捧持する所の主の就寢聖像の下に在りて、西門を出で、聖堂を一周す。此の時諸輔祭前行して爐儀を行ひ、幇堂者蠟燭を持して之に先だつ。已に周りて聖堂に入り、聖王門の前に至りて、「聖なる神」の歌ひ畢るを俟つ、右終りて首聖務者高聲にして曰く、

睿智、肅みて立て。

次ぎて轉回して、就寢聖像を柩に擬する台上に安置し、其上に福音經を載す。

 

   詠隊讃詞を歌ふこと一次。

尊きイオシフは爾の潔き身を木より下し、淨き布に裹み、香料にて覆ひ、新なる墓に藏めたり。

   次に預言の讃詞、第二調。

ハリストスよ、爾は地極を保つ者にして、甘じて柩に保たれたり、人類が地獄に呑まるるを脱れしめん爲、又不死の神なるに因りて、復活して我等を生かさん爲なり。

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1199]---------------------

   光榮、今も、同上。

 

提綱、第四十三聖詠、第四調、主よ、起きて我等を佑けよ、爾の憐に因りて我等を救ひ給へ。句、神よ、我等は己の耳にて聞けり、我が列祖は我等に述べたり。

 

   イエゼキイリの預言書の讀。第三十七章。

主の手我に臨み、主は神を以て我を攜へ出して、谷の中に置けり、谷には人の骨盈ちたり。彼我を攜へて、其周圍を廻れるに、視よ、谷の面に骨甚多くあり、皆甚枯れたり。彼我に謂へり、人の子よ、此の骨生きんか。我曰へり、主神よ、爾之を知る。彼我に謂へり、此の骨に向ひて預言して、之に言へ、枯れたる骨よ、主の言を聽け。主神は是くの如く此の骨に謂ふ、視よ、我爾等の衷に生命の神を入れん、爾等生きん。我筋を爾等の上に置き、肉を爾等の上に生ぜしめ、皮を以て爾等を蔽ひ、我が神を爾等の衷に入れん、爾等生きん、且我が主たるを知らんと。我命ぜられし如く預言せり。我が預言する時、音あり、視よ、動あり、骨相近づきて、各其合ふべき骨に聯る。我觀しに、視よ、其上に筋あり、肉生じ、皮之を蔽へり、唯其衷に神なかりき。彼又我に謂へり、神に向ひて預言せよ、人の子よ、預言して神に謂へ、主神は是くの如く言ふ、神よ、四向の風より來りて、此の死せし者に嘘きて、其生くるを致せと。我彼の命ぜし如く預言せしに、神彼等の中に入り、彼等生きて、其足

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1200]---------------------

にて立てり、甚大なる群衆なり。主又我に謂へり、人の子よ、此の骨はイズライリの全家なり。視よ、彼等云ふ、我等の骨は枯れ、我等の望は亡び、我根より斷たれたりと。故に爾預言して彼等に謂へ、主神は是くの如く言ふ、我が民よ、視よ、我爾等の墓を啓きて、爾等を其墓より引き出し、爾等を攜へてイズライリの地に入れん。我が民よ、我が爾等の墓を啓きて、爾等を其墓より引き出さん時、爾等我の主たるを知らん、我我が神を爾等の衷に入れん、爾等生きん。我亦爾等を爾等の地に置かん、其時爾等我主の曾て之を言ひ、又之を成ししを知らん、主之を言ふ。

 

提綱、第九聖詠、第七調、主我が神よ、起きて、爾の手を擧げよ、苦しめらるる者を永く忘るる毋れ。句、主よ、我心を盡して爾を讃め揚げ、爾が悉くの奇跡を傳へん。

 

   使徒はコリンフ書、百三十三端。其終は二〇六端に

兄弟よ、僅なる酵は盡くの溲麪を酸くす。故に爾等舊き酵を除け、新なる溲麪とならん爲なり、爾等酵なき者なればなり、蓋我等の逾越節羔なるハリストスは我等の爲に宰られたり。然らば我等祝ふに、舊き酵を以てせず、姦惡と詭譎との酵

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1201]---------------------

を以てせず、乃潔浄と眞實との酵なき餅を以てすべし。ハリストスは我等の爲に詛と爲りて、我等を贖ひて、律法の詛より免れしめたり、蓋録せるあり、凡そ木に懸れる者は詛はれたりと。是れアウラアムの祝福がハリストスイイススに由りて、異邦人に及ばん爲、我等信に由りて許約せられし聖神を受けん爲なり。

 

「アリルイヤ」、第五調、神は興き、其仇は散るべし、彼を惡む者は其顏より逃ぐべし。句、煙の散るが如く、爾彼等を散らし給へ。句、蝋が火に因りて融くるが如く、斯く惡人等は神の顔に因りて亡び、惟義人等は樂しむべし。

 

福音經はマトフェイ百十四端、「明日備節日の翌日」、終は番兵をして墓を固めしめたり。次に聯「我等皆靈を全うして曰はん」。又聯「我等主の前に吾が朝のを増し加へん」。其他常例の如し。并に發放詞。

 

其後就寢聖像に接吻す。就寢聖像なき處には他の救世主の聖像に接吻す。此の時左の讃頌を歌ふ。第五調。

來りて、恒に記憶すべきイオシフを讃美せん。彼は夜ピラトに至り、萬衆の生命を求めて曰へり、請ふ我に此の孤獨の者を與へよ、彼は首を枕する處なし。

請ふ我に此の孤獨の者を與へよ、兇惡の門徒は彼を死に付せり。請ふ我に此の

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1202]---------------------

弧獨の者を與へよ、其母は彼が十字架に懸れるを覩て、泣き號び、母の情を以てべり、嗚呼哀しい哉我が子、嗚呼哀しい哉我が光、我が至愛の腹よ。蓋シメオンが神の殿に預言せしことは今應ひたり、劍は吾が心を貫けり。然れども悲を易へて爾が復活の喜と爲し給へ。ハリストスよ、我等爾の苦に伏拜す、ハリストスよ、我等爾の苦に伏拜す、ハリストスよ、我等爾の苦及び聖なる復活に伏拜す。

 

   第一時課を誦すること常の如し。

           ~~~~~~~~~~

 

第三、六、九時課を常例の如く誦す。其中に讃詞は「尊きイオシフは爾の潔き身を」。小讃詞は「淵を閉ぢし者は死者として見られ」。第九時課の後に眞福詞。「我信ず一の神父全能者」。「神よ、我が自由と自由ならざると」。「天に在す我等の父よ」。高聲の後に小讃詞。主憐めよ、十二次。祝文、「至聖なる三者、一性の權柄」。并に發放詞。

            ~~~~~~

 

---------------------[聖大「スボタ」 早課 1203]---------------------

 

 

 聖大「スボタ」の晩課及び聖體禮儀

 

定刻に及びて鐘を撞く。司祭祭服を着し、祝讃して後、誦經者常例の如く始めて、首誦聖詠を誦す。次に大聯「主よ、爾にぶ」を第一調に依りて歌ふ。「不法者は己の網に罹り」の句に至る時、他の司祭及び輔祭は拜を爲して退き、祭服を完装して奉獻禮儀を行ふ。歌ふ者八句を立てて、八調經の主日の讃頌三章及び挿句の一章を歌ふ。

   主日の讃頌、第一調。

聖なる主よ、我が晩のを納れて、我等に罪の赦を與へ給へ、爾は獨世界に復活を顯しし者なればなり。

人人よ、シオンを廻り、之を圍みて、是の中に死より復活せし主に光榮を歸せよ、彼は我等を不法より救ひし吾が神なればなり。

人人よ、來れ、歌ひてハリストスを拜み、其死より復活せしを讃榮せん、彼は敵の誘惑より世界を救ひし吾が神なればなり。

ハリストスよ、爾の苦にて我等は苦を免れ、爾の復活にて我等は淪滅より救はれたり。主よ、光榮は爾に歸す。

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1204]---------------------

又大「スボタ」の自調の讃頌三章、其一は二次。第八調。

今日地獄は呻きて呼ぶ、我若しマリヤより生れし者を受けざりしならば、我の爲に善かりしならん。蓋彼は我に至りて、我が權を滅し、銅の門を破り、我が曩に収へたる諸の靈を神として復活せしめたり。主よ、光榮は爾の十字架及び爾の復活に歸す。

今日地獄は呻きて呼ぶ、我死せし者の一の如くに死者を受けしに因りて、我が權は滅びたり。蓋敢て此の者を留むる能はず、乃彼と偕に我が權下に屬せし者を失ふ、我古世よりの死者を有てり、然れども視よ、此の者は衆を起す。主よ、光榮は爾の十字架及び爾の復活に歸す。

今日地獄は呻きて呼ぶ、我の權は呑まれたり、牧者は十字架に釘せられてアダムを起せり。我が權下に屬せし者は奪はれ、我勝ちて呑みたる者を皆吐き出せり、釘せられし者は墓を空しくせり、死の權は力を失ふ。主よ、光榮は爾の十字架及び爾の復活に歸す。

光榮、第六調、大なるモイセイは此の日を奥密に前兆して曰へり、神は第七日を祝せりと、蓋此は祝せられし「スボタ」、此は安息の日なり。此の日に神の獨生子は其悉くの工を竣へ、嘗て定めし死に藉りて、肉體にて安息せり。復活を以て彼は

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1205]---------------------

舊の姿に回りて、我等に永遠の生命を賜へり、獨仁慈にして人を愛する主なればなり。

今も、生神女讃詞、第一調、人より生れて主宰を生みし全世界の光榮と天の門なる童貞女マリヤ、諸天使の歌、諸信者の飾なる者を讃め歌ふべし。彼は天と均しく、神の宮と均しき者として顯れたり、彼は仇の隔を破りて和睦を結び國を開けり。我等は彼を信の固と爲し、彼より生れし主を扞ぎ衛る者と爲す。勇めよ、神の民よ、勇めよ、主は敵に勝たん、全能者なればなり。

 

福音經捧持の聖入。「穏なる光」。

提綱を誦せずして、直に睿智。是に於て誦經者喩言を讀み始む。

 

   創世記の讀。第一章。

元始に神天地を造れり。地は形なく虚しくして、暗は淵の面に在り、神の神水の面に覆育せり。神曰へり、光あるべし。光成れり。神光を觀て善とせり、神光を暗より判てり。神光を晝と名づけ、暗を夜と名づけたり。夕あり、朝あり、是れ一日なり。神曰へり、水の中に穹蒼ありて、水を水より判つべし。斯く成れり。神穹蒼を造りて、穹蒼の下の水を穹蒼の上の水より判てり。神穹蒼を天と名づけたり。神之を觀て善とせり。夕あり、朝あり、是れ第二日なり。神曰へり、天下の水は一區に

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1206]---------------------

匯まりて、陸顯るべし。斯く成れり。天下の水其區に匯まりて、陸顯れたり。神陸を地と名づけ、水の匯を海と名づけたり。神之を觀て善とせり。神曰へり、地は青草と、種を其類其肖に從ひて蒔く草と、地上に其類に從ひて、己の内に核を懐く實を結ぶ所の果の木とを生ずべし、斯く成れり。地は青草と、種を其類其肖に從ひて蒔く草と、地上に其類に從ひて、己の内に核を懐く實を結ぶ所の果の木とを生ぜり。神之を觀て善とせり。夕あり、朝あり、是れ第三日なり。

 

   イサイヤの預言書の讀。第六十章。

イエルサリムよ、光り、光れよ、蓋爾の光は來り、主の光榮は爾の上に輝けり。視よ、暗は地を蔽ひ、昏黒は諸民を蔽はん、然れども爾の上には主輝き、其光榮は爾の上に顯れん。諸王は爾の光に來り、諸民は爾の上に升る所の輝煌に來らん。爾の目を擧げて周邊を視よ、彼等皆集まりて爾に來る、爾の男子は遠方より來り、爾の女子は手に抱かれて攜へらる。其時爾見て喜び、爾の心は躍りて廣まらん、蓋海の富は爾に歸し、諸民の貨財は爾に來らん。衆多の駱駝、マディヤム及びゲファの小駱駝は爾を蔽はん、彼等皆サワより來り、黄金と乳香と寶石とを攜へて、主の光榮を傳へん。ギダルの羊は悉く爾に集まり、ナワェヲフの牡羊は爾に來り、

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1207]---------------------

納れらるべき祭として我が祭壇に登り、我が祈の家は榮せられん。雲の飛ぶが如く、鴿の其に歸るが如く飛び來る者は誰ぞ。然り、諸島は我を俟つ、ファルシスの舟は其先に在り、遠方より爾の諸子、亦彼等と偕に其金銀を、主爾の神、イズライリの聖者の名に因りて、攜へ至らん爲なり、蓋彼は爾を榮せり。其時外人の諸子は爾の垣を築き、其諸王は爾に事へん、蓋我怒に於ては爾を撃てり、恩に於ては爾を矜まん。爾の門は常に啓かれ、晝も夜も閉されず、諸民の貨財の爾の中に攜へられ、其諸王の導かれて來らん爲なり。蓋爾に事ふるを欲せざらん諸民と諸王とは亡び、此くの若き諸國は全く荒らされん。リワンの光榮は爾に來り、松と杉と黄楊樹とは共に來りて、我が聖所の處を飾り、我は我が足を置く所を榮せん。爾を苦しめし者の諸子は服して爾に來り、爾を藐りし者は皆爾の足下に拜し、爾を主の城、イズライリの聖者のシオンと稱へん。爾曾て棄てられ、憎まれて、爾を過ぐる者なきに至りしが、之に代へて我爾を永遠の華美、世世の歡樂と爲さん。爾は諸民の乳を哺ひ、諸王の富を食ひ、而して我が主爾の救者、爾の贖罪者、イアコフの全能者たるを知らん。

 

   エギペトを出づる記の讀。第十二章。

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1208]---------------------

主はエギペトの地に於てモイセイ及びアアロンに告げて曰へり、是の月を爾等の月の首と爲し爾等此を歳の第一月と爲すべし。爾等イズライリの諸子の全會衆に告げて曰へ、是の月の十日に、家の父たる者各羔を取るべし、家ごとに一の羔なり、若し家族少くして、其羔を盡すこと能はずば、其家の鄰の人と偕に、人の數に循ひて之を取るべし、各人の食ふ所に循ひて、爾等羔を計るべし。爾等の羔は疵なき當歳の牡なるべし、綿羊或は山羊より之を取れ、是の月の十四日まで之を守り、其暮に及びて、イズライリの諸子の會衆皆之を屠り、其血を取りて、之を食はんとする家の門の左右のと楯とに塗るべし、此の夜其肉を火に炙きて食ひ、又酵なき餅に苦菜を添へて食ふべし。之を生にても、水に烹ても食ふ勿れ、火にて炙くべし、其首と脛と臓腑とを皆食ふべし、之を明朝まで遺す勿れ、其骨を折る勿れ、其遺りたる者は明朝までに火にて燬き盡すべし。是くの如く之を食へ、爾等の腰には帯を束ね、爾等の足にはを穿き、爾等の手には杖を持ちて、急ぎて之を食へ、是れ主の逾越節なり。

 

 

   イオナの預言書の讀。第一至四章。

主の言アマフィヤの子イオナに臨めり、云く、起ちて、大なる邑ニネワィヤに往きて、之に宣べ傳へよ、蓋其惡の聲は上りて我が前に至れり。イオナ起ちて、主の面

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1209]---------------------

を避けて、ファルシスに逃れんと欲して、イオッピヤに至り、ファルシスに往かんとする舟に遇ひて、値を給して之に登れり、主の面を避けて、彼等と偕にファルシスに往かん爲なり。然れども主は大風を海の上に起して、烈しき颶風海に在りたれば、舟幾ど壞れんとせり。舟人懼れて、各其神にび、又舟を輕くせん爲に其載貨を海に抛てり、惟イオナは舟の内層に下りて、臥して熟睡せり。舟師彼に就きて曰へり、爾何ぞ熟睡する、起きて爾の神にべ、神或は我等を念ひて、亡びざらしめん。人衆互に言へり、我等籤を掣きて、此の災の誰に縁りて我等に臨みしかを知らん。乃籤を掣きしに、籤イオナに當れり。其時皆彼に謂へり、我等に告げよ、此の災の我等に臨みしは何の故ぞ、爾の業は何ぞや、爾は何より來れるか、爾の故土は何の處ぞ、爾は何の民に屬するか。彼曰へり、我はエウレイ人にして、主天の神、海と陸とを造りし者を敬ふ。是に於て人衆大に懼れて彼に謂へり、爾胡爲れぞ此を行ひたる、蓋此の人衆は彼が主の面を避けて逃るるを知れり、彼自ら之を告げたればなり。乃彼に謂へり、我等爾に何を爲して、海の我等の爲に靖まるを致すべきか。蓋海は愈甚しく蕩れたり。イオナ彼等に謂へり、我を取りて海に投げよ、然らば海は爾等の爲に靖まらん、蓋我知る、此の大なる颶風の爾等に臨みしは我が故に縁りてなり。此の人衆務めて漕ぎて、陸に進まんと欲したれども、逐に能は

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1210]---------------------

ざりき、海彼等に向ひて益烈しく蕩れたればなり。

其時彼等主にびて曰へり、主よ、爾に求む、此の人の生命の爲に我等の亡ぶるを致す毋れ、辜なき血を我等に歸す毋れ、蓋爾、主よ、爾の旨に適へる事を行へり。乃イオナを取りて、海に投げたれば、海の盪るること息みたり。此の人人大に主を畏れて、主に祭を獻じ、誓願を立てたり。

主は大なる鯨に命じてイオナを呑ましめたり、イオナは此の鯨の腹の中に居りしこと三日三夜なりき。時にイオナは鯨の腹より主己の神に祈りて曰へり、

 

 

     

我我が患難の中に主にびしに、彼我に聽けり、地獄の腹より呼はりしに、爾我が聲を聽き給へり。爾我を淵の中、海の心に投げたるに、流水我を環り、爾の波濤、爾の巨浪は悉く我が上を度れり。我曰へり、我爾の目の前より逐はれたり、豈復爾の聖なる殿を覲んや。水は我を環りて我が靈に及び、淵は我を圍み、我が首は巌の間を潜れり。我地の中に下れり、其永遠の柱と關とは我を閉せり、主我が神よ、願はくは我が生命は淪亡より救はれん。我が靈我を離れんとする時、我主を記念せり、願はくは我が祈は爾に至り、爾の聖なる殿に至らん。虚しくして僞なる諸神を敬ふ者は己の矜恤者を棄てたり、然れども我讃美の聲を以て爾に祭を獻ぜん、

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1211]---------------------

我が誓ひし事は、之を償はん、救は主に在り。主は鯨に命じたれば、イオナを陸に吐き出せり。主の言再イオナに臨めり、云く、起ちて、大なる邑ニネワィヤに往きて、之に我が爾に命ぜしことを宣べ傳へよ。イオナ起ちて、主の言に循ひて、ニネワィヤに往けり。ニネワィヤは神に在りて大なる邑たりき、其歴程は三日なり。イオナは邑を廻り始めて、一日程を往きつつ呼びて曰へり、猶四十日ありて、ニネワィヤは滅されん。ニネワィヤ人神を信じ、齋を宣れ、大なる者より小き者に至るまで麻を衣たり。此の言ニネワィヤ王に至りたれば、彼位より起ち、朝服を身より釋ぎ、麻を衣て灰に坐せり、又王及び諸大臣の名を以て命を下して、ニネワィヤに宣れしめて曰へり、人も、畜も、牛も、羊も、皆何をも食ふべからず、牧場に出づべからず、水を飮むべからず、且人も畜も麻を纏ひ、切に神に呼び、又各其惡しき途より、及び其の強暴より離るべし。孰か知らん、神或は轉じて悔い、其烈しき怒を息めて、我等の滅ぶるを致さざらんことを。神は彼等の行爲、彼等が其惡しき途より離れたるを見たれば、彼等に降さんと言ひし災を悔いて、之を降さざりき。イオナ甚斯の事を哀しみ、且憤り、主に祈りて曰へり、鳴呼主よ、我猶本地に在りし時、斯の事を言ひしに非ずや。此に縁りて我先にファルシスに逃れたり、蓋我爾

が仁慈にして矜恤、寛忍にして洪恩なる神、災を悔ゆる者なるを知れり。主よ、求

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1212]---------------------

む、今我が命を取れ、蓋我には死ぬるは生くるに愈れり。主曰へり、豈爾は此に縁りて斯く甚しく哀しめるか。イオナ邑を出でて、邑の東の方に坐し、彼に己の爲に茆を結びて、其蔭に坐せり、邑に何事かあらんと見ん爲なり。主神は匏を生ぜしめ、此を以てイオナの上を覆ひ、其首の爲に蔭を施せり、其憂を脱れしめん爲なり、イオナは此の匏を甚喜べり。然れども神は明日の暁に蟲に命じて、其匏の根を囓ましめたれば、匏枯れたり。日出でし時、神暑き東風を起し、日イオナの首を曝ししに、彼弱りて、己の爲に死を求めて曰へり、我には死するは生くるに愈れり。神イオナに謂へり、豈爾は匏の爲に斯く甚しく哀しめるか。彼曰へり、我甚哀しみて死せんとせり。其時主曰へり、爾勞を加へず、育てざる匏、一夜に生じ、一夜に亡びし者を惜しめり、况や我大なる邑ニネワィヤ、其中に十二萬餘の左右を辨ぜざる者、及び衆くの牲畜ある者を惜しむべからざらんや。

 

 

 

   イイススナワィンの記の讀。第五章。

イズライリの諸子はガルガルに營を張り、其月の十四日の暮にイエリホンの平野に於て逾越節を行へり、逾越節の翌日其地の穀物の酵なき餅及び炒麥を食へり。其地の穀物を食ひし翌日より「マンナ」の降ること止みて、イズライリの諸子は復「マンナ」

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1213]---------------------

を獲ざりき、其歳はハナアンの地の産物を食へり。イイススイエリホンの邊に在りし時、其目を擧げて觀しに、人彼の前に立ち、其手に抜きたる劍を持てり。イイスス就きて彼に謂へり、爾は我等の一人か、抑我等の敵の一人か。彼曰へり、我は主の軍の將にして、今此に來れり。イイスス面地に伏して、彼を拜して曰へり、君よ、爾の僕に何を命ずるか。主の軍將イイススに謂へり、爾のを爾の足より脱げ、蓋爾の立てる處は聖なり。イイスス是くの如く行へり。

 

 

 

   エギペトを出づる記の讀。第十三至十五章。

イズライリの諸子はソコホフより進みて、曠野に隣れるオフォムに幕を張れり。神は彼等を導きて、晝には雲の柱を以て彼等に途を示し、夜には火の柱を以て彼等を照せり。雲の柱は晝に、火の柱は夜に、衆民の前より離れざりき。主はモイセイに告げて曰へり、イズライリの諸子に謂へ、轉じて、ピガヒロトの前に當りて、マグドルと海との間に、ワェエルセポンの前に幕を張るべし、之に向ひて海の傍に幕を張れ。ファラオン其民にイズライリの諸子の事を言はん、彼等は此の地に迷ひ、曠野は彼等を閉せりと。我ファラオンの心を剛愎にせん、彼其後を追はん、我はファラオンと

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1214]---------------------

其全軍とに因りて光榮を顯さん、エギペト人皆我の主なるを知らんと。彼等斯く行へり。民の逃げたること、エギペト王に報ぜられたれば、ファラオン及び其諸僕は民に對して心を變じて曰へり、我等何爲れぞ此を爲し、イズライリの諸子を釋して、我等に役事せざるを致したる。ファラオン其車を備へ、其民を集めて偕に往かしめ、精選の兵車六百乘、凡のエギペトの騎兵、及び其總ての軍長等を將いたり。主はエギペト王ファラオン及び其諸僕の心を剛愎にしたれば、彼等はイズライリの諸子の後を追へり、イズライリの諸子は高き手に因りて出でたり。エギペト人及びファラオンの凡の馬、車、其騎兵、其軍旅は彼等の後を追ひて、彼等にピガヒロトの前、ワェエルセポンに向ひて、海の傍に幕を張れる處に及べり。ファラオン近づけり。イズライリの諸子は目を擧げて見るに、視よ、エギペト人彼等の後を追ひ來る、イズライリの諸子は大に懼れて主に呼び、且モイセイに謂へり、豈エギペトに墓なきに因りて、我等を引き出して野に死なしむるか、我等をエギペトより出して、此れ爾我等に何を爲ししか。我等エギペトに在りて、豈此の事を爾に語げざりしか、云く、我等を舎きて、エギペト人に事へしめよ、蓋我等エギペト人に事ふるは、此の曠野に死するより勝れり。然れどもモイセイ民に謂へり、懼るる毋れ、立ちて、主が今日爾等に行はんとする救を觀よ、蓋今日爾等が斯く見る所のエギペト人は、後永く復之を見ざらん、主は爾等の爲に戰はん、爾等静まれ。主はモイセイに謂へ

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1215]---------------------

り、爾何ぞ我にぶ、イズライリの諸子に告げて、彼等を行かしめよ、爾杖を擧げ、爾の手を海の上に伸べて、之を分て、イズライリの諸子は海の中に乾ける地に入るべし。視よ、我ファラオンと總てのエギペト人との心を剛愎にせん、彼等は其後に入らん、而して我はファラオン及び其全軍、其兵車、其騎兵に因りて光榮を顯さん、我がファラオン、其兵車、其騎兵に因りて光榮を顯さん時、エギペト人皆我の主なるを知らん。是に於てイズライリの諸子の陣營の前に行ける神の使は移りて、彼等の後に行き、雲の柱も彼等の前より移りて、彼等の後に立ち、エギペト人の陣營と、イズライリの諸子の陣營との間に入りて、彼が爲には雲と爲り、暗と爲り、此が爲には夜を照せり、是を以て彼と此と夜の中に相近づかざりき。モイセイ其手を海の上に伸べたれば、主は終夜強き東風を以て海を退かしめて、海を陸と爲し、水分れたり。イズライリの諸子は海の中に乾ける地に入りたるに、水は彼等の爲に右に壁と爲り、左に壁と爲れり。エギペト人等.ファラオンの馬、兵車、騎兵、皆彼等の後を追ひて、海の中に入りたり。暁更に主は火と雲との柱の中よりエギペト人の軍を鑒みて、エギペト人の軍を亂し、其車の輪を縛りて、行くに難からしめたり。エギ

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1216]---------------------

ペト人曰へり、我等はイズライリの前より逃げん、主は彼等の爲に、エギペト人と戰へばなり。主はモイセイに謂へり、爾の手を海の上に伸べよ、水は復合して、エギペト人、其兵車、其騎兵を覆ふべし。モイセイ手を海の上に伸べたれば、旦に及びて、水故の處に返れり、エギペト人水の下を奔れるに、主はエギペト人を海の中に搖り墜せり。水流れ回りて、兵車、騎兵、及びファラオンの全軍、後に從ひて海に入りし者を覆ひて、彼等の中に一も遺れる者なかりき。惟イズライリの諸子は海の中に乾ける地を行けり、水は彼等の爲に右に壁と爲り、左に壁と爲れり。斯く主は斯の日に於てイズライリをエギペト人の手より救へり、イズライリの諸子はエギペト人の死したるを海邊に見たり。イズライリは主がエギペト人に行ひし大なる事を見たれば、民は主を畏れ、神及び其僕モイセイを信じたり。其時モイセイ及びイズライリの諸子は此の歌を主に謳ひ曰へり、

 

 

 

 

誦經者日く、主に謳はん、

 

右列の詠隊第五調に依りて歌ふ、彼嚴に光榮を顯したればなり。

 

誦經者は詠隊の歌ふ毎に先だちて句を誦す、彼は馬と乘者とを海に投てり。主に謳

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1217]---------------------

はん、

左列の詠隊、彼嚴に光榮を顯したればなり。

 

誦經、佑け獲る者顯れて、我が救と爲れり。主に謳はん、

詠隊、彼嚴かに光榮を顯したればなり。詠隊更誦經者の句の後に此の詞を歌ふ

 

誦經、彼は吾が神なり、我彼を讃め揚げん彼は我が父の神なり、我彼を尊み頌はん。主に謳はん、

主は軍を破る者なり、其名は主なり。彼はファラオンの兵車と其軍とを海に投てり。主に謳はん、

簡ばれたる騎兵の軍長等を紅の海に溺らせり。主に謳はん.

淵を以て彼等を覆ひ彼等石の如く深處に沈めり。主に謳はん、

主よ爾が右の手は力を以て榮を顯せり。主に謳はん、

主よ爾が右の手は敵を破り、爾は光榮の大なるを以て爾に逆ふ者を滅せり。

主に謳はん、

爾怒を發したれば、彼等を藁の如く焚けり、爾の慍の氣息に依りて水分れたり。主に謳はん、

大水は壁の如く立ち、涛は海の中に凝れり。主に謳はん、

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1218]---------------------

敵曰へり、我追ひて及ばん、抄掠物を分たん、我が靈を飽かしめん、我が劔を以て殺さん、我が手彼等を制せん。主に謳はん、

爾氣を嘘きたれば、海は彼等を覆ひ、彼等鉛の如く大水に沈めり。主に謳はん、』

主よ、諸神の中孰か爾の如きあらん、孰か爾の如く聖にして威あり、光榮にして尊むべく、諸の奇蹟を行ふ者あらん。主に謳はん、

爾右の手を伸べたれば、地は彼等を呑めり。⑬爾の義を以て斯の爾が聶拯ひし民を導けり。主に謳はん、

爾の力を以て彼等を爾の聖なる住所に送れり。諸民は之を聞きて慄き、フィリスティヤの居民は懼を懐けり。主に謳はん。

其時エドムの諸侯は恐れ惶ひ、モァフの牧伯は戰ひ慄き、ハナアンの居民は皆望を失へり。主に謳はん、

願はくは畏懼と戰慄とは彼等に及ばん、願はくは爾が臂の巨なるに縁りて、彼等は石の如くならん。主に謳はん、

爾の民の過ぐるに至るまで、主よ、斯の爾が獲たる民の過ぐるに至るまで然らん。主に謳はん、

爾彼等を導きて、爾が嗣業の山に植え、主よ、爾が己の住居として備へし處、

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1219]---------------------

主よ、爾が手の作りし聖所に植え給へ。主に謳はん、

主は王と爲りて永遠に迄らん。ファラオンの馬は其車、其乘者と偕に海に入りしに、主は海水を以て彼等を覆へり。主に謳はん、

惟イズライリの諸子は海の中に乾ける地を行けり。主に謳はん、

光榮は父と子と聖神に歸す。主に謳はん、

今も何時も世世に、「アミン」。主に謳はん、

 

終に誦經亦歌ふ、彼嚴かに光榮を顯したればなり。

 

   ソフォニヤの預言書の讀。第三章。

主是くの如く言ふ、爾等我が起きて證を作さんとする日を俟て、蓋我已に定めたり、諸民を集へ、諸國を聚めて、彼等の上に我が憤、我が烈しき怒を悉く斟がんことを、蓋我が熱中の火を以て全地は呑まれん。當時我復諸民に浄き口を賦へん、皆主の名をびて、一心に彼に事へん爲なり。我を拜む者、我が散らされたる者の諸子は、エフィオピヤの河外の地より來りて我に禮物を獻げん。當日には爾我に對ひて犯しし諸の行爲を以て羞を得ることなからん、蓋其時我爾の中より爾の高名を以て傲ぶる者を除かん、爾復我が聖山に於てらざらん。乃我爾の中に温柔にして謙遜なる民を遺さん、彼等主の名を頼まん。イズライリの遺れる者は不義を行は

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1220]---------------------

ず、を言はざらん、其口に欺騙の舌なからん、彼等牧せられて息ひ、彼等を懼れしむる者なからん。シオンの女よ、歡びて呼べ、イズライリよ、祝へ、イエルサリムの女よ、心を全くして喜び樂しめ。主は、爾に對する審斷を息め、爾の敵を逐へり、主イズライリの王は爾の中に在り、爾復禍に遇はざらん。

 

   列王紀の讀。第三巻十七章。

主の言イリヤに臨みて曰へり、起ちて、シドンのサレプタに往きて、彼處に居れ、視よ、我彼處に一のに爾を養はんことを命ぜり。彼起ちて、サレプタに往き、邑の門に至れば、彼處に一のの薪を拾ふを見たり。乃之を呼びて曰へり、器に少許の水を持ち來りて、我に飮ましめよ。彼水を取らん爲に往けるに、イリヤ後より呼びて彼に謂へり、又爾の手に餅の片を取り來りて、我に食はしめよ。婦曰へり、主爾の神は活く、我に餅なし、惟桶に一握の麺、瓶に少許の油あるのみ、視よ、我この薪を拾ひ、往きて、我と我が子の爲に調へ、我等之を食ひて死なん。イリヤ彼に謂へり、懼るる毋れ、往きて、爾の言の如く行へ、然れども先づ此を以て我の爲に小き餅を作りて、我に持ち來れ、後爾と爾の子の爲に作るべし、蓋主イズライリの神は斯く云ふ、桶の麺は竭きず、瓶の油は減らずして、主が雨を地に降らす日に

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1221]---------------------

ばんと。婦往きて、イリヤの言の如く行ひて、彼に與へたり、彼及び婦と其子と食へり。其日より桶の麺は竭きず、瓶の油は減らざりき、主がイリヤに因りて言ひし言の如し。此等の事の後、其家の主なる婦の子病に罹りしが、其病甚劇しくして、氣息其中に絶ゆるに至れり。婦イリヤに謂へり、神の人よ、我と爾と何ぞ與らん、爾は我が罪を記憶せしめ、我が子を死なしめん爲に我に來れり。イリヤ婦に謂へり、爾の子を我に與へよ。乃之を其手より取り、之を己の居る所の樓に攜へ登りて、己の牀に置き、主に呼びて曰へり、主我が神よ、豈爾は我が居る所のを降して、其子を死なしめんや。而して三次子の上に伏して、主に呼びて曰へり、主我が神よ、願はくは此の子の靈は其中に返らん。主はイリヤの聲を聽き納れたれば、此の子の靈其中に返りて、彼生きたり。イリヤ子を取りて、樓より家に攜へ下り、之を其母に與へて曰へり、視よ爾の子は生く。婦イリヤに謂へり、今我爾が神の人にして、爾の口に在る主の言の眞實なるを知れり。

 

 

   イサイヤの預言書の讀。第六十一、六十二章。

我歡喜を以て主の爲に歡び、我が靈は我が神の爲に樂しまん、蓋彼は我に救の衣を衣せ、義の上衣を纏はせ、我に新娶者の如く冠を戴かせ、新婦の如く美飾

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1222]---------------------

を以て飾れり。蓋地が其芽を出し、園が播きたる者を生ずる如く、是くの如く主神は義と光榮とを萬民の前に顯さん。我シオンの故に縁りて黙さず、イエルサリムの故に縁りて息はずして、其義は光の如く出で、其救は燃ゆる燈の如くなるにばん。諸民爾の義を見、諸王皆爾の光榮を見て、爾に新なる名、主の口の稱へんとする者を名づけん。爾は主の手に在りて光榮の冠と爲り、爾の神の掌に在りて王の冕と爲らん。人復爾を棄てられし者と稱へず、復爾の地を荒れたる者と稱へざらん、乃爾を我の悦べる者、爾の地を配偶したる者と稱へん、蓋主は爾を悦び、爾の地は配偶を得ん。年少者が處女と配偶する如く、是くの如く爾の諸子は爾と配偶せん、新娶者が新婦の爲に悦ぶ如く、此くの如く爾の神は爾の爲に悦ばん。

 

 

   創世記の讀。第二十二章。

神はアウラアムを試みて彼に謂へり、アウラアムよ、アウラアムよ。彼曰へり、我此に在り。曰へり、爾の獨の子、爾が愛するイサアクを取りて、モリアの地に往き、彼處に我が爾に示さんとする一の山に於て、彼を獻じて燔祭と爲せ。アウラアム夙に興きて、其驢馬に鞍おき、二人の僕及び其子イサアクを取り、且燔祭の爲に薪を劈りて、起ちて行き、第三日に神が彼に示しし處に來れり。アウラアム目を擧げて、

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1223]---------------------

遥に其處を觀たり。是に於てアウラアム其僕に謂へり、爾等は驢馬と偕に此に止まれ、我及び子は彼處にまで往き、崇拜を爲して爾等に返らん。アウラアムは燔祭の薪を取りて其子イサアクに負はせ、手に火と刀とを執りて、二人共に往けり。イサアク其父アウラアムに謂へり、父よ。彼曰へり、子よ、何ぞ、曰へり、火と薪とは此に在り、燔祭の羊は何に在るか。アウラアム曰へり、子よ、神自ら燔祭の羊を見ん。二人共に進み行きて、神の彼に示しし處に到れり、アウラアム彼處に於て壇を築き、薪を列べ、其子イサアクを縛りて、壇に薪の上に置けり。アウラアム其手を伸べて刀を取り、其子を宰らんとせり。時に主の使天より彼を呼びて曰へり、アウラアムよ、アウラアムよ。彼曰へり、我此に在り。曰へり、爾の手を童子に擧ぐる勿れ、何をも彼に爲す勿れ、蓋今我は爾が神を畏れ、爾の獨の子を我の爲に惜まざりしを知れり。アウラアム目を擧げて、一の牡羊の其角林叢に繋りたるを視たり。アウラアム往きて牡羊を取り、之を其子イサァクに代へて、獻じて燔祭と爲せり。アウラアム其處を名づけて「イエゴワイレ」(主見たり)と云へり。是に縁りて今も尚人人言ふ、主の山に見れんと。主の使再天よりアウラアムを呼びて曰へり、主云く、我己を指して誓ふ、爾斯の事を爲し、爾が獨の子を我の爲に惜しまざりしに因りて、我祝して爾を祝し、増して爾の後裔を増し、之を天の星の如く、海濱の沙の如く爲らしめん、爾の裔は其敵の諸邑を嗣がん、又爾の裔に因りて地上の萬民は祝福

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1224]---------------------

を獲ん、爾我が言に遵ひたればなり。

 

 

 

   イサイヤの預言書の讀。第六十一章。

主の神我に在り、蓋主は我に膏して、貧しき者に福音せしめ、我を遣して、心の傷める者を醫し、者に釋を、瞽者に見ることを傳へ、主の禧年と、我等の神の應報の日とを告げしめ、凡そ哀しむ者を慰め、シオンに於て哀しむ者には、灰に代へて榮冠を、涙に代へて喜樂の膏を、憂の心に代へて光榮の衣を予へしめたり。彼等は義に強き者、主の栽うる所にして其光榮を顯す者と稱へられん。彼等は世世の荒地を建て、上古より癈れたる處を興し、敗れたる邑、古代より荒れたる者を新にせん。外人は來りて爾等の群を牧し、外族の諸子は爾等の田を耕し、爾等の葡萄を作る者と爲らん。爾等は主の司祭と稱へられ、人爾等を我が神の役者と呼ばん、爾等諸民の富を食ひ、其光榮を以て自ら誇らん。陵辱に代へて、爾等に倍して賜はらん、侮辱に代へて、彼等は其分を喜ばん、蓋彼等は其地に在りて二倍の業を受けん、永き樂は彼等に在らん。蓋我主は義を好み、不義の劫奪を惡み、眞實を以て彼等に報を予へ、彼等と永遠の約を立てん。彼等の裔は諸民の中に知られ、彼等

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1225]---------------------

の子孫は諸族の間に知られん、凡そ彼等を見る者は彼等が主に祝福せられたる裔なるを識らん。

 

 

 

     列王紀の讀。第四巻第四章。

一日エリセイソマンに來りしに、彼處に一の富める婦彼を留めて餅を食はしめたり、後彼此の處を過ぐる毎に、彼に入りて餅を食へり。婦其夫に謂へり、視よ、此の恒に我等を過ぐる人は、我之を觀るに、神の聖なる人なり、請ふ、彼の爲に小き樓を造りて、彼處に牀と案と椅子と燭臺とを備へん、彼我等に來る時此の處に入るべし。一日彼彼處に至り、其樓に入りて臥したりしが、其僕ギエジイに謂へり、此のソマンの婦を呼べ。之を呼びたれば、婦其前に立てるに、彼僕に謂へり、之に謂へ、視よ、爾斯く懇に我等を待ふ、爾の爲に何を爲すべきか、爾王或は軍長に言ふべき所なきか。婦曰へり、無し、我は我が民の中に居るなり。彼ギエジイに謂へり、彼の爲に何を爲すべきか。其僕ギエジイ曰へり、彼には子なし、其夫は老いたり。エリセイ曰へり、彼を呼べ。既に呼びたれば、彼戸の側に立てるに、エリセイ彼に謂へり、明る年の此の頃爾子を抱くあらん。彼曰へり、否、主よ、爾の婢を欺く毋れ。婦果して孕みて、明る年エリセイの彼に言ひし頃に於て子を生めり。子既に長じて、一日其父に、刈穫者の所に往きしが、彼に在りて其父に謂へり、我が首、

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1226]---------------------

我が首。父僕に謂へり、彼を負ひて其母に詣れ。乃彼を負ひて母に詣りしに、午まで母の膝に伏して、遂に死したり。母彼を攜へ登りて、神の人の牀の上に置き、彼を閉して出で、其夫を呼びて曰へり、請ふ、一の僕と一の驢馬とを我に遣せ、我神の人の許に馳せ往きて歸らん。夫曰へり、何の故に爾今日彼に往かんとするか、新月にも非ず、安息日にも非ず。婦曰へり、平安なれ。驢馬に鞍おきて、其僕に謂へり、牽きて往け、我が爾に命ずることなくば止むる毋れ。乃往きて、神の人に、カルミル山にまで詣れり。エリセイ遥に彼の來るを見て、其僕ギエジイに謂へり、視よ、此れは彼のソマンの婦なり、趨り往きて、彼を迎へて曰へ、爾平安なるか、爾の夫平安なるか、爾の子平安なるかと。婦曰へり、平安なり。遂に山に登り、エリセイに就きて、其足を抱けり。ギエジイ近づきて、之を退けんとせしに、エリセイ曰へり、是を舎け、其靈甚苦しむ、唯主は我に隠して、未告げざりき。彼曰へり、我豈我が主に子を求めしか、豈我を欺く毋れと云はざりしか。エリセイはギエジイに謂へり、爾の腰を束ね、我が杖を手に持ちて往け、若し何人にか遇はば、禮を爲す毋れ、若し爾に禮を爲す者あらば、之に答ふる毋れ、我が杖を子の面に置け。子の母曰へり、主は活く、爾の靈も活く、我爾を離れず。エリセイ起ちて、彼に從ひて行けり。

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1227]---------------------

ギエジイ先だち行きて、杖を子の面に置きたれども、聲もなく、應もなかりき。乃返りてエリセイを迎へて、告げて曰へり、子は醒めざりき。エリセイ家に入るに、視よ、死したる子の彼の牀の上に置かれたるあり。エリセイ入りて、己の後に戸を閉ぢて、主にれり、而して上りて子の上に伏し、己の口を其口に、己の目を其目に、己の手を其手に當てて、子の上に身を舒べたれば、子の體温まれり。下りて室の中を往來し、復上りて、子の上に身を舒べしこと七たびにして、子は其目を啓きたり。エリセイギエジイをよびて曰へり、此のソマンの婦を呼べ。之を呼びたれば、婦彼に入りしに、エリセイ曰へり、爾の子を取れ。婦就きて、彼の足下に伏し、地に俯伏して彼を拜し、其子を取りて出でたり。

 

 

   イサイヤの預言書の讀。第六十三、六十四章。

主是くの如く言う、其羊の牧者を海より引き出しし者は安に在るか、彼の心に其聖神を納れし者は安に在るか、其光榮の臂を以てモイセイの右の手を執りて之を導びき、彼等の前に水を分ちて、己に永遠の名を作り、彼等を引きて、馬が野を行く如く淵を過ぎしめて、躓くことなからしめし者は安に在るか。群が谷に下る如く、主の神は彼等を安息に導けり。爾は是くの如く爾の民を導きて、己に光榮の名を作れり。天より臨み、爾の聖にして光榮なる居所より觀よ、爾の熱心と大能とは安

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1228]---------------------

に在るか、爾が我等に於ける仁愛と慈憐とは止められたり。唯爾は我等の父なり、蓋アウラアムは我等を知らず、イズライリは我等を認めず、主よ、爾は我等の父なり、古世より爾の名は我等の贖主なり。主よ、爾は胡爲れぞ我等に爾の道を離るるを許し、我等の心に頑固になりて、爾を畏れざることを許したる。求む、爾の諸僕の爲、爾の業の支派の爲に轉ぜよ。爾の聖なる民は暫時其業を保てり、我等の敵は爾の聖所を蹂れり。我等は未曾て爾に治められざる者の如く、爾の名を以て稱へられざる者の如くなれり、嗚呼若し爾天を裂きて降りしならんには、諸山は爾の面より融かるること、火に由りて柴を焚かれ、水の沸かさるる如くにして、爾の名を爾の諸敵に知らしめしならん、爾の面に因りて諸民慄きしならん。爾が嘗て我等の待たざる畏るべき事を行ひて降りし時、諸山爾の面より融けたり。蓋古世より以來爾の外に他の神ありて、彼を恃む者の爲に斯る事を行ひしことは、未聞かず、未耳に入らず、未目に視しことあらず。爾は欣びて義を行ふ者、爾の道に於て爾を記念する者を慈憐を以て迎へたり。

 

   イエレミヤの預言書の讀。第三十一章。

主是くの如く言ふ、視よ、日至らんとす、我イズライリの家、及びイウダの家と新

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1229]---------------------

なる約を立てん、我が彼等の先祖に、其手を執りて、エギペトの地より引き出しし日に立てし約の如きに非ず、蓋彼等我が約に止まらざれば、我彼等を顧みざりき、主の言是くの如し。主又云く、厥日の後に、我がイズライリの家に立てんとする約は是なり、我は我が律法を彼等の念に置き、之を彼等の心に銘さん、我は彼等の神と爲り、彼等の民と爲らん。且各其鄰に、及び各其兄弟に敎へて、主を識れと云はざらん、蓋小より大に至るまで、悉く我を識らん。蓋我彼等の不義を矜み、彼等の罪を復記念せざらん。

 

 

   ダニイルの預言書の讀。第三章。

ナワゥホドノソル王は位の十八年に金の像を造れり、其高は六十尺、其廣は六尺なり、之をワワィロン州のデイルの平野に立てたり。而してナワゥホドノソル王は州牧、方伯、將軍、刑官、庫官、法官、士師、及び州郡の諸有司を召し集めて、其ナワゥホドノソル王の立てたる像の告成禮に臨ましめんとせり。是に於て其州牧、方伯、將軍、刑官、庫官、法官、士師、及び州郡の諸有司はナワゥホドノソル王の立てたる像の告成禮に臨みて、其ナワゥホドノソル王の立てたる像の前に立てり、時に傳令者大聲に呼びて曰へり、諸民、諸族、諸音よ、爾等に命ぜらる、爾等角、簫、琵琶、琴、瑟、篳篥等の諸の樂器の音を聞く時は、俯伏して、ナワゥホドノソル王の立てたる金の像を拜せよ。若し俯伏して拜せざる者あらば、時に火の燃ゆ

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1230]---------------------

る爐の中に投ぜられんと。故に衆民角、簫、琵琶、琴、瑟、篳篥等の諸の樂器の音を聞ける時、諸民、諸族、諸音、皆俯伏して、ナワゥホドノソル王の立てたる金の像を拜せり。當時或ハルデヤ人就きてイウデヤ人を訴へたり。彼等ナワゥホドノソル王に謂へり、王よ、世世に生きよ、王よ、爾命を下して曰へり、凡の人角、簫、琵琶、琴、瑟、篳篥等の諸の樂器の音を聞かば、俯伏して金の像を拜すべし、若し俯伏して拜せざる者あらば、火の燃ゆる爐の中に投ぜらるべし。此に爾が立ててワワィロン州の事を司らしむるイウデヤ人、セドラフ、ミサフ、アウデナゴあり、王よ、此の人人は爾の命に從はず、爾の諸神に事へず、爾の立てたる金の像を拜せず。是に於てナワゥホドノソル怒り憤りて、セドラフ、ミサフ、アウデナゴを攜へ來らんことを命じたれば、乃斯の人人を王の前に攜へ來れり。ナワゥホドノソル彼等に謂へり、セドラフ、ミサフ、アウデナゴよ、爾等我が諸神に事へず、我が立てたる金の像を拜せざるは、故意に之を爲すか。今より爾等若し自ら備へば、角、簫、琵琶、琴、瑟、篳篥等の諸の樂器の音を聞く時は、俯伏して、我が造りし像を拜せよ、若し拜せずば、時に火の燃ゆる爐の中に投ぜられん、其時何れの神か爾等を我が手より救ふを得ん。セドラフ、ミサフ、アウデナゴはナワゥホドノソル王に對へて曰へり、斯

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1231]---------------------

の事我等爾に答ふるを要せず。王よ、我等が事ふる所の神は我等を火の燃ゆる爐より救ふを能す、爾の手よりも救はん。若し然らずとも、王よ、知るべし、我等は爾の諸神に事へず、爾が立てたる金の像を拜せざらん。其時ナワゥホドノソル怒に充てられ、セドラフ、ミサフ、アウデナゴに向ひて其面の容は變れり、彼爐を恒にくするよりも七倍くせんことを命じ、又其軍の中の最強き者にセドラフ、ミサフ、アウデナゴを縛りて、火の燃ゆる爐の中に投ぜんことを命じたり。是に於て此の三人は其裏衣、其外服、其冠、及び其他の衣裳のままに縛られて、火の燃ゆる爐の中に投ぜられたり。王の命嚴しく、爐の熱くせられたること甚しきに縁りて、火のはセドラフ、ミサフ、アウデナゴを投ぜし人人を殺せり。此の三人、セドラフ、ミサフ、アウデナゴは縛られたるまま火の燃ゆる爐の中に堕ちたり。彼等の中を歩みて、神を歌頌し、主を讃揚せり。アザリヤ起ちてり、火の中に其口を啓きて曰へり、

 

 

 

     

 

主我が先祖の神よ、爾は讃揚せられ、爾の名は世世に讃美讃榮せらる。蓋爾は凡そ我等に行ひし事に於て義なり、爾の事は皆眞實なり、爾の道は正直なり、

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1232]---------------------

爾の審判は悉く公義なり。爾は凡そ我等及び我等の先祖の聖なる城イエルサリムに降しし事に於て公義なる審判を行へり、蓋眞實と義判とに縁りて悉く之を我等の諸罪の爲に降せり。蓋我等爾より離れて、罪を犯し、不法を行ひ、一切の事に於て罪人と爲れり、爾の誡命を聽かず、守らず、爾が我等に福を獲しむる命を行はざりき。爾が我等に降しし事、爾が我等に爲しし事は、皆公義の審判に縁りて之を行へり。爾我等を不法なる敵、憎むべき叛逆者の手に、不義なる王、全地の極惡者に付せり。今我等の我が口を啓く能はず、我等は爾の諸僕、爾を敬ふ者の爲に羞及び辱と爲れり。求む、爾の名に縁りて、終に至るまで我等を棄つる毋れ、爾の約を破る毋れ。爾が愛する所のアウラアム、爾の僕イサアク、爾の聖なるイズライリに縁りて、爾の慈憐を我等より離す毋れ、爾曾て彼等に其裔を天上の星の如く、海邊の沙の如く殖さんと言へり。主よ、我等は我が罪惡の故に因りて、諸民よりも小くなり、今全地に卑しくなれり。今の時我等には君も、預言者も、率領もなく、燔祭も、獻祭も、禮物も、乳香もなく、爾に祭を獻げて、爾の恩を獲べき處もなし。惟痛悔の心、謙卑の靈あり、願はくは之を納れ給へ。願はくは我等が今爾に獻ぐる祭は、牛と羊との燔祭の時の如く、肥えたる羔千千を獻ぐる時の如く爾に悦ばれんことを、蓋爾を頼む者には羞なし。今我等一心に爾に從ひ、爾を畏れ、爾

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1233]---------------------

の面を尋ぬ。求む、我等を辱しむる毋れ、乃爾の寛容に依りて、爾が慈憐の多きに依りて我等に行ひ給へ。主よ、爾が奇蹟の力を以て我等を救ひ、爾の名を榮せよ。願はくは凡そ爾の諸僕に害を爲す者は羞を蒙らん、願はくは彼等は其悉くの權勢と共に辱しめられ、彼等の力は敗られ、彼等は爾が獨主神にして、全地に光榮ある者たるを知らん。

 

時に彼等を火に投ぜし王の諸僕は石油、松脂、麻、枯枝を以て爐を焼きて止まず、火爐の上に起ること四十九尺、溢れ出でて、爐の旁に在りしハルデヤ人の中、其及ぶ所の者を焼き盡せり。然れども主の使はアザリヤ及び彼と同じく在りし者と偕に爐の中に降り、爐よりを撥ね出して、爐の中に露を含める風の鳴るが如きを爲せり、火は聊も彼等に觸れず、彼等を惱まさず、彼等を懼れしめざりき。其時此の三人口を一にして、爐の中に歌頌し、神を讃美讃榮して曰へり、

 

主我が先祖の神よ、爾は崇め讃められ、世世に尊まれ、讃め揚げらる、爾の光榮にして聖なる名も崇め讃められ、世世に尊まれ、讃の揚げらる。爾は聖なる爾の光榮の殿に崇の讃められ、世世に尊まれ、讃め揚げらる。ヘルワィムに坐し、淵

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1234]---------------------

を鑒みる者よ、爾は崇め讃められ、世世に尊まれ、讃め揚げらる。爾は光榮なる爾の國の寶座に崇め讃められ、世世に尊まれ、讃め揚げらる。爾は天の穹蒼に崇め讃められ、世世に尊まれ、讃め揚げらる。

 

 

是に於て起ちて歌ふ、主を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經句を誦す、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ、

詠隊歌ふ、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、主の諸天使は主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、諸天は主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、諸天の上に在る水は主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、主の萬軍は主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、日と月と主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1235]---------------------

誦經、天の星は主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、雨と露と主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、諸の風は主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、火と熱と主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、寒と暑と主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、露と霜と主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、夜と晝と主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、光と暗と主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1236]---------------------

誦經、氷と嚴寒と主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ、

誦經、霰と雪と主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、電と雲と主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、地は主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、山と邱と主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、地上の植物は主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、諸の泉は主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃の揚げよ。

誦經、海と河と主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

 

 

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1237]---------------------

誦經、鯨と凡そ水に泳ぐ者と主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、天の諸の鳥は主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、野獸と一切の家畜と主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、人の諸子は主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、イズライリ民は主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、主の司祭等は主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、主の諸僕は主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、諸神と諸聖人の靈と主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

---------------------[聖大「スボタ」 晩課 1238]---------------------

誦經、諸義人と心の謙卑なる者と主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、アナニヤ、アザリヤ、ミサイルは主を崇め讃めよ、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、主の諸使徒、預言者、致命者は主を崇め讃めよ

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

誦經、我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん、

詠隊、彼を歌ひて、世世に讃め揚ぐ。

誦經、今も何時も世世に、「アミン」。

詠隊、主を歌ひて、世世に彼を讃め揚げよ。

誦經、我等主を尊み、崇め讃め、彼に伏拜し、

詠隊、歌ひて、無窮の世に讃め揚ぐ。

 

 

次に小聯。聖三詞に代へて歌ふ「ハリストスに於て洗を受けし者は」。提綱、第五調、至上者よ、願はくは全地は爾に叩拜し、爾を歌ひ、爾の名に歌はん。句、全地よ、神に歡びて呼び、其名の光榮を歌へよ。使徒の誦讀はロマ書九十一端、「兄弟よ、我等ハリストスイイススに於て洗を受けし者は」、終、「神の爲に生くる者と意

---------------------[聖大「スボタ」聖體禮儀 1239]---------------------

へ」。「アリルイヤ」を歌はず、司祭が爾に平安と言ひて後に誦經アリルイヤに代へて誦す、神よ、起きて地を裁判せよ、爾萬民を繼がんとすればなり。

右列詠隊、第七調に依りて歌ふ、神よ、起きて地を裁判せよ、爾萬民を繼がんとすればなり。

誦經、句、神は諸神の會に立ち、諸神の中に裁判を行へり。

 

左列詠隊、神よ、起きて地を裁判せよ、爾萬民を繼がんとすればなり。

   以下毎句の後に更此の詞を歌ふ。

句、爾等義を以て裁判せず、惡者の意を邀ふること何の時に至るか。

句、貧しき者と孤の爲に裁判を行へ、窘しめらるる者と乏しき者に義を施せ。

句、乏しき者と貧しき者を扶け、之を惡者の手より抜け。

句、彼等は知らず、悟らずして、闇冥を行く。

句、地の基皆震ふ。我曰へり、爾等神なり、爾等皆至上者の子なり、然れども爾等人の如く死し、諸侯の一の如く仆れん。

誦經、神よ、起きて地を裁判せよ、

詠隊、爾萬民を繼がんとすればなり。

 

右歌ふ時、司祭及び輔祭は黒色の祭服を脱ぎて、白色の祭服を着す。已に着して、

---------------------[聖大「スボタ」聖體禮儀 1240]---------------------

輔祭福音經を捧持して升壇に出で、高聲にして曰く

君よ、聖使徒及び福音者マトフェイの福音を宣ぶる者に祝福せよ。

司祭彼に聖號を畫して曰く、

願はくは神は、光榮にして讃美たる聖使徒及び福音者マトフェイの祈に依りて、爾福音を宣ぶる者に多くの力ある言を賜はん、其至愛の子我が主イイススハリストスの福音の行はれん爲なり。

福音經の誦讀、マトフェイ百十五端、「安息日過ぎて、七日の首の日の黎明に」、終、我恒に爾等と偕に世の終末まで在るなり、「アミン」、

   以下大ワシリイの聖體禮儀を行ふこと例の如し。

   但しヘルワィムの歌に代へて左の讃詞を歌ふ。第八調。

人の肉體は悉く黙し、畏れ戰きて立つべし、一も地の事を己の中に思ふ可からず、蓋王の王、主の主は屠られて、信者の食に予へられん爲に來る。天軍は凡の主制及び權柄と共に、多目のヘルワィムと六翼のセラフィムとは面を覆ひ、彼に先だちて、歌ひて曰ふ、「アリルイヤ」、「アリルイヤ」、「アリルイヤ」。

   「常に福にして」に代へて歌ふ。

母よ、我爾が種なくして孕みし子の柩に在るを見て泣く毋れ、蓋我起きて

---------------------[聖大「スボタ」聖體禮儀 1241]---------------------

光榮を獲、神なるに因りて、常に信と愛とを以て爾を讃揚する者を光榮の中に高くせん。

領聖詞、第四調、主は寢ぬる者の覺むるが如く興き、我等を救ふ者は復活せり。「アリルイヤ」、三次。

 

   發放詞の後に司祭代聖錫を頒つ。

日已に暮れて、信者が聖堂に参集する時、堂中に就寢聖像の前に經案を設け、其上に聖使徒行實の書を置き、誦經者其前に立ちて誦す、聖使徒行實の讀。司祭曰く、聖使徒の祈に因りて、主イイススハリストス我等の神よ、我等を憐み給へ。誦經者、「アミン」而して行實を讀み始む。皆起ち、或は坐して、敬みて聽く。

(信者の中にも善く誦讀する者は誦經者に代りて、相續ぎて誦讀するを得。)

 

十時を過ぎ、若くは十一時の頃に至り、誦讀已に畢りて、貼燈者は堂中の燭臺及び懸燈に火を點じ、打鐘者は鐘を撞く。是に於て司祭祝讃して夜半課を始む。誦經者、聖三祝文、其他。「來れ、我等の王」、三次。第五十聖詠。次に大「スボタ」の規程、「イルモス」二次、讃詞十二句に。共頌に「イルモス」、兩詠隊共に歌ふ。第三歌頌の後に大「スボタ」の坐誦讃詞、「救世主よ、現れて女等に復活を傳ふる天使」。第六歌頌の後に大「スボタ」の小讃詞及び同讃詞。第九歌頌の後に聖三祝文及び復活の

---------------------[聖大「スボタ」聖體禮儀 1242]---------------------

讃詞、第二調、「死せざる生命よ、爾死に降りし時」。及び發放詞。

 

(夜半課を歌ひて終らんとする時、聖務者は祭服を着して、就寢聖像の前に爐儀を行ひ、詠隊が右の復活の讃詞を歌ふ時、之を奉戴し、堂中より王門を過りて至聖所に入り、寶座の上に安置す。復其前に爐儀を行ひて、早課の始まるまで王門を閉づ。就寢聖像は「パスハ」祭の復日に至るまで寶座の上に安置して、主の復活の後四十日間地上に在ししを形る。)

 

 

 

 

 

 

 

 

三歌齋經 終

---------------------[聖大「スボタ」聖體禮儀 1243]---------------------