ラザリのスボタ 聖枝主日


聖にして義なる、ラザリの「スボタ」 

夜半課に第一の聖三祝文に、「天に在す」の後に讃詞、「ハリストス神よ、爾は己の苦の前に」。終の聖三祝文に、「天に在す」の後に小讃詞、「ハリストス、衆人の歡喜」。主憐めよ、十二次。并に發放詞。祝文、「主よ、復活と永生の望を懐きて眠りし」を誦せず。

早課に、「主は神なり」に讃詞。第一調。

ハリストス神よ、爾は己の苦の前に一般の復活を信ぜしめて、ラザリを死より起し給へり。故に我等も童子の如く勝利の徽號を執りて、爾死の勝利者に呼ぶ、至高きに「オサンナ」。主の名に因りて來る者は崇め讃めらる。三次。

次に聖詠誦讀、「主我が主に謂へり」。(第百九聖詠)。

   第一の聖詠誦文の後に坐誦讃詞、第一調。

ハリストス神、世界に生命を賜ふ主よ、爾はマルファ及びマリヤの涙を憐みて、石を墓より去らんことを命じ、死者を呼びて復活せしめ、彼に由りて復活を信ぜしめ給へり。救世主よ、光榮は爾の力に歸す、光榮は爾の權に歸す、光榮は言を以て一切を造りし主に歸す。

---------------------[聖枝週間「スボタ」 夜半課及び早課 943]---------------------

   光榮、今も、同上。

 

次に「ネポロチニ」を誦文す。

并に復活讃詞を歌ふ、「主よ、爾は崇め讃めらる」、「救世主よ、天使の軍は」其他主日の常例の如し。

 

   次に坐誦讃詞、第五調。

仁慈なる主よ、爾は睿知と前知との泉にして、ワィファニヤに來りて、マルファと偕にある者に問ひて云へり、友ラザリを何處に置きしか。至仁洪恩なる主よ、爾は彼の爲に涙を流して、爾の聲を以て四日目の死者を復活せしめ給へり、生命を賜ふ主なればなり。

   光榮、今も、同上。

 

次に「ハリストスの復活を見て」を歌ふ、及び第五十聖詠。福音經を讀まず。但聖ラザリの堂に於ては之を讀む、當日のイオアンの福音經の講義の誦讀を爲す。

規程二を誦して第六歌頌に至る。以下四歌頌を始む。

 

第一の規程、フェオファン師の作。「イルモス」と共に八句に。第八調。

   第一歌頌

---------------------[聖枝週間「スボタ」 早課 944]---------------------

イルモス、我等其民をして紅の海を過らせし主に歌はん、彼獨嚴に光榮を顯したればなり。

人を愛する主よ、爾は造成者及び生命の主宰として、神聖なる指麾を以て死せしラザリを復活せしめ給へり。

不死の主よ、爾は言を以て四日目の死者ラザリを喚び起して、權能を以て地獄の暗黒なる國を破り給へり。

主宰よ、爾は四日目のラザリを死より起して、衆に爾の神性の徴を示し給へり。

今日ワィファニヤはラザリの起くるを祝ひて、生を賜ふハリストスの復活を前兆す。

 

第二の規程、修士イオアンの作。イルモスと共に六句に。第八調。

イルモス、「イズライリは乾ける地の如く」。

先に無より萬物を有と爲しし主、心の深處を知る者よ、爾は主宰として、門徒にラザリの寢を預言し給ふ。

童貞女より人の性を取り給ひしハリストスよ、爾は人としてラザリの葬の處を問ひ、神として其何處に置かれたるを知らざることなかりき。

---------------------[聖枝週間「スボタ」  早課 945]---------------------

光榮、言よ、爾は己の復活を信ぜしめて、實に寢よりするが如く、愛せし者、已に腐りたる四日目の死者を墓より復活せしめ給へり。

今も、生神女讃詞、聘女ならぬ母よ、諸天使及び人人の會は絶えず爾を讃め揚ぐ、爾は彼等の造成主を嬰兒として爾の手に抱きたればなり。

 

共頌、イズライリは乾ける地の如く水を過り、エギペトの禍を免れてべり、我が救主及び神に歌はん。

 

   第三歌頌

イルモス、主よ、爾は爾に趨り附く者の固、爾は昧まされし者の光なり、我が神は爾を歌ふ。

救世主よ、爾は二の行動を顯して、爾の性の二なるを示し給へり。蓋爾は神及び人なり。

智識の淵たる主、生命を賜ふ者よ、爾は死せし者を復活せしめんと欲して、其何處に置かれたるを問ひ給ふ。

爾は處を轉ずる人としては、限らるる者と顯れ、一切を盈つる神としては、限られぬ者なり。

ハリストスよ、爾は神聖なる言を以てラザリを起し給へり、祈る、多くの罪に

---------------------[聖枝週間「スボタ」  早課 946]---------------------

由りて死せし我をも起し給へ。

又、イルモス、「主、天の穹蒼の」。

奇跡者主、イイスス我が神よ、爾はワィファニヤに墓の前に立ち、性の法に由りてラザリの上に涙を流して、爾が受けし肉體の眞なるを信ぜしめ給へり。

救世主よ、爾は遽にマリヤ及びマルファの哀を止めて、己の權を示し給へり。蓋爾は復活なり、生命なり、爾の言ひしが如し、爾は又眞實なり、萬衆の主なり。』

光榮、主よ、爾は己の全能の言を以て死の閉鎖及び國を破りて、裹布に纒かれたる愛せしラザリを暗き地獄より出し給へり。

今も、獨人を愛する主よ、爾は童貞女に入りて、彼より肉體を取り、宜しきに合ひて人人に見ゆる者と現れて、彼を眞の生神女及び信者の扶助者として示し給へり。

共頌、主、天の穹蒼の至上なる造成者、敎會の建立者、冀望の極、信者の固、獨人を愛する者よ、我を爾の愛に堅め給へ。

   坐誦讃詞、第四調。

ラザリの姉妹は共にハリストスの前に立ち、痛く哀しみて、哭きて彼に謂へり、主よ、ラザリは死せり。彼は神として墓の處を知らざるなきに、人として問へり、

---------------------[聖枝週間「スボタ」  早課 947]---------------------

何處に彼を置きしか、乃墓に就きて、四日目のラザリを呼び給ひしに、彼は遽に起ちて、復活せしめし主に伏拜せり。

光榮、今も、第八調、造成主として萬事を預知する主よ、爾はワィファニヤに爾の門徒に預言して云へり、我等の友ラザリは今日寢ねたり、又知る者にして問ひて云へり、何處に彼を置きしか、且人として涙を出して、父にれり、遂に愛せし者を呼びて、四日目のラザリを地獄より起し給へり。故に我等爾に呼ぶ、ハリストス神よ、毅然として爾に讃美を奉る者を受けて、衆に爾の光榮を得しめ給へ。

 

   第四歌頌

イルモス、主よ、我爾が攝理の秘密を聆き、爾の作爲を悟り、爾の神性を讃榮せり。

全能者よ、爾は助くる者を要するにあらずして、言ひ難き定制を行ひて、りて四日目の死者を起し給へり。

先に父と同永在なる言及び神と見らるる者、衆人のを受くる主は今人の、如くり給ふ。

救世主よ、爾の聲は死の悉くの力を破れり、地獄の基は爾の神聖なる力に

 

---------------------[聖枝週間「スボタ」  早課 948]---------------------

縁りて動きたり。

生神女讃詞、我等は童貞女を歌はん、蓋彼は世界を迷より救ひしハリストス神を生めり、生みて後童貞女に止まり給へり、

   又、イルモス、「主よ、爾は我の固」。

 

ハリストス造成主よ、爾は牧者として、已に腐りたる四日目の人を實に殘忍にして飽くことを知らざる狼より出し、全能者及び主として、此を以て今爾の三日目の復活の全世界の光榮を顯し給へり。

ハリストスよ、マルファと偕に在る者は爾生命たる主を見て呼べり、衆人の光照及び生命たる主よ、爾若し此に在りしならば、ラザリは必死せざりしならんと。死者の生命たる仁愛の主よ、爾は彼等の哀を喜に變じ給ふ。

光榮、主よ、淵は爾泉たる者を畏れ、悉くの水は爾に勤む。全能なるハリストス救世主、人を愛する主よ、爾の權能に由りて地獄の柱は震ひ、閉鎖は破れ、爾の聲に由りてラザリは死より復活す。

生神女讃詞、聘女ならぬ聘女よ、爾は信者の譽、爾は「ハリスティアニン」等の轉達と避所、垣墻と渟泊なり。蓋爾は、純潔なる者よ、爾の子にを奉りて、信と愛とを以て爾を潔き生神女と承け認むる者を患難より救ひ給ふ。

---------------------[聖枝週間「スボタ」  早課 949]---------------------

共頌、主よ、爾は我の固、我の力なり、爾は我の神、我の喜なり、爾は父の懐を離れずして、我等の貧しきに臨み給へり。故に預言者アウワクムと共に爾に呼ぶ、人を慈む主よ、光榮は爾の力に歸す。

 

   第五歌頌

イルモス、「隠れざる光よ」。

人を愛する主よ、爾は衆人の不死なる生命として、ラザリの墓の前に立ちて、彼を呼びて生命を與へ、神として、此を以て明に將來の復活を預象し給へり。』

布にて足の纏かれたるラザリは歩みたり、此れ奇跡の中の奇跡なり、蓋妨ぐる者より更に大なる固むる者は現れたり、ハリストスなり、其言に萬有は服從して、彼を神及び主宰として勤む。

四日目の死者腐りたるラザリを起ししハリストスよ、我今諸罪に縁りて死し、坎と死の暗き蔭とに置かれたる者を起して、慈憐の主なるに因りて、我を援けて救ひ給へ。

   又、イルモス、同上、

 

恒忍なる主よ、爾は父に光榮を歸して、りて、環り立てる民に己が神に逆ふ者にあらざるを信ぜしめ、感謝を爾の父に捧げて、命を以てラザリを起し給ふ。

---------------------[聖枝週間「スボタ」  早課 950]---------------------

鳴呼爾が神たる聲、爾の權の神聖なる力や、救世主よ、爾は此を以て飽くことを知らざる死の地獄の門を壞ち給へり。求む、先に四日目の爾の友ラザリを死より出しし如く、我を吾が諸慾より出し給へ。

 

光榮、人を愛する主よ、ラザリと、マルファと、マリヤとの祈に由りて、我等に爾の十字架と苦、及び輝ける諸日の女王たる爾の復活の日を見る者と爲るを得しめ給へ。

今も、生神女讃詞、至浄なる者よ、祈る、爾の子の前に母の勇敢を有ちて、我等の爲に親族の慮を爲すを止むる勿れ、蓋我等「ハリスティアニン」は獨爾を主宰の前に嘉く納れらるる轉達者として進む。

共頌、隠れざる光よ、何ぞ我を爾の顔より退けし、外の闇は憐なる我を掩へり。祈る、我を返して、我が途を爾の誡の光に向はしめ給へ。

 

是より四歌頌を始む、コスマ師の作。イルモスに次、讃詞四句に。

   第六歌頌

イルモス、主よ、爾は獨イオナを鯨の内に入れたり、我敵の網に捕はれたる者を、彼を淪滅より救ひし如く救ひ給へ。

---------------------[聖枝週間「スボタ」  早課 951]---------------------

主よ、愛は爾をワィファニヤにラザリに導きたるに、爾は神として、彼已に臭くなりたる者を復活せしめて、地獄の桎梏より救ひ給へり。

マルファはラザリの四日目なるを見て、彼の爲に望を失ひたれども、ハリストスは神として、言を以て腐りたる者を復活せしめて、生命に移し給へり。

   又、修士イオアンの作。同調。

イルモス、「救世主よ、我を浄め給へ」。

主宰よ、爾は眞の神にして、ラザリの寢を知り、之を爾の門徒に知らせて、爾の神性の限なき行動を信ぜしめ給へり。

限られぬ主宰よ、爾は身に限られてワィファニヤに來り、人としてラザリの上に涙を流し、神として望みて四日目の者を復活せしめ給ふ。

共頌、救世主よ、我を浄め給へ、我が不法多ければなり、祈る、我を惡の淵より引き上げ給へ、我爾に呼びたればなり、吾が救の神よ、我に聽き給へ。

 

   小讃詞、第二調。

ハリストス、衆人の歡喜、眞實、光、生命、及び世界の復活なる主は己の仁慈に因りて地上の者に現れ、復活の模と爲りて、衆に神聖なる赦を賜ふ。

   同讃詞

---------------------[聖枝週間「スボタ」  早課 952]---------------------

萬有の造成主よ、爾は門徒に知らせて云へり、兄弟及び知己よ、我等の友は寢れりと、斯く告げて爾は萬有の造成主として、知らざる所なきを敎へ給へり。

又云へり、然らば往きて、奇異なる葬と、マリヤの哀と、ラザリの墓とを見ん、蓋我彼處に奇跡を行はんと欲す、此を以て十字架の端緒を爲して、衆に神聖なる赦を賜はん。

 

   第七歌頌

イルモス、エウレイの少者は爐に在りて勇ましくを踐み、火を露に變じてべり、主神よ、爾は世世に崇め讃めらる。

仁慈なる主よ、爾は人として涙を流し、神として墓の中に在る者を復活せしめ給へり。ラザリは地獄より釋かれて呼べり、主神よ、爾は世世に崇め讃めらる。

ラザリは主宰の言に由りて地獄の淵と黒暗とを脱れ、裹布に纒かれて出でて呼べり、主神よ、爾は世世に崇め讃めらる。

   又、イルモス、「昔ワワィロンに於て」。

 

仁慈なる主よ、爾は友の上に涙を流して、マルファの涙を止め、自由なる苦を以て爾の民の面より凡の涙を拭ひ給へり。我等の先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

---------------------[聖枝週間「スボタ」  早課 953]---------------------

生命の寶蔵たる救世主よ、爾は言を以て地獄の腹を刳きて、死者を寢よりするが如く起し、之を復活せしめて歌はしめ給へり、我等の先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

主宰よ、爾は臭き死者、裹布に縛られたる者を起し給へり。求む、諸罪の縲絏に縛られたる我をも起し給へ、蓋我歌ふ、我等の先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。』

 

共頌、昔ワワィロンに於てイウデヤより來りし少者は、聖三の信を以て、爐のを蹈みて歌へり、先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

 

   第八歌頌

イルモス、樂器は鳴らされ、無數の人はデイルの像に伏拜するに、三人の少者は順はずして、主を歌ひて、萬世に讃榮せり。

爾は牧者の如く羔を尋ね、無慙の殘害者たる狼より奪ひて、朽ちたる者を新にして、爾に歌はしめ給へり、主を歌ひて、萬世に讃め揚げよ。

爾は人として墓を尋ね、造成主として地獄を懼れしめし爾の主宰たる命を以て死者を復活せしめて、爾に呼ばしめ給へり、主を歌ひて、萬世に讃め揚げよ。

---------------------[聖枝週間「スボタ」  早課 954]---------------------

   又、イルモス、「天使の軍の歌ふ所」。

爾は人として問ひ、神として言を以て四日目の死者を復活せしめ給ふ。故に我等は爾を歌ひて、萬世に讃め揚ぐ。

主宰よ、マリヤは敬みて宜しきに合ひて爾に香膏を捧げて、爾を萬世に讃め歌ふ。

ハリストスよ、爾は人として父を呼び、神としてラザリを起し給ふ。故に我等爾を世世に讃め歌ふ。

 

  我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

共頌、天使の軍の歌ふ所の天の王を崇めて、萬世に讃め揚げよ。

   「ヘルワィムより尊く」を誦句せず。

 

   第九歌頌

イルモス、人人よ、至浄なる生神女を嚴に尊まん、我等歌を以て神性の火を焚かるるなく腹に受け給ひし者を崇め讃む。

人人は四日目の死者の歩むを見て、奇跡に驚きて、贖罪主に呼べり、我等歌を以て爾神を崇め讃む。

鳴呼我が救世主よ、爾は己の光榮なる復活を預信ぜしめて、四日目の死者

---------------------[聖枝週間「スボタ」  早課 955]---------------------

ラザリを地獄より解き給ふ、故に彼は歌を以て爾を崇め讃む。

   又、イルモス、「潔き童貞女よ、我等爾に依りて」。

 

ハリストスよ、爾は己の父を尊みて、神に逆ふことなきを示し、を奉りて、己の權を以て四日目の死者を起し給へり。

ハリストスよ、爾は四日目のラザリを墓より起して、衆に爾の三日目の復活の至りて確實なる證者を示し給ふ。

我が救世主よ、爾は己の人たる行動を示して、歩み、泣き、語り、神たる行動を顯して、ラザリを起し給ふ。

主宰我が救世主よ、爾は己の二性に適ひて、言ひ難く爾の權能の旨を以て我が救を爲し給へり。

共頌、潔き童貞女よ、我等爾に依りて救はれし者は爾を實に生神女と承け認めて、無形の軍と偕に爾を崇め讃む。

次に第一調に依りて、主我等の神は聖なり。三次。

   差遣詞、自調、二次。

神の言よ、爾の言に由りてラザリは今躍り出でて、復生命の途を行く、人人は枝を執りて、爾權能者を尊む、蓋爾は己の死を以て全く地獄を滅さん。

---------------------[聖枝週間「スボタ」  早課 956]---------------------

   又、光榮、今も、一次。

死よ、ハリストスはラザリを以て已に爾を破る、地獄よ、爾の勝は安にか在る、ワィファニヤの歎は今爾に轉ず、我等皆勝利の枝を以て主に捧げん。

 

「凡そ呼吸ある者」に八句を立てて、自調の讃頌を歌ふ。第一調。

句、「彼等の爲に記されし審判を行はん」。

人人の復活及び生命たるハリストス、恒忍なる主よ、爾はラザリの墓の前に立ちて、我等に己が二性なること、神にして又潔き童貞女より人として來りしを信ぜしめ給へり。蓋人として、何處に葬られたるを問ひ、神として、生命を施す指麾を以て四日目の死者を復活せしめ給へり。

ハリストスよ、爾は四日目の死者ラザリを地獄より復活せしめて、己の死の前に死の權を戰かせ、獨の愛する者を以て衆人の滅亡より救はるるを預象し給へり。故に我等爾の全能の權に伏拜して呼ぶ、救世主よ、爾は崇め讃めらる、我等を憐み給へ。

マルファ及びマリヤは救世主に言へり、主よ、爾若し此に在りしならば、ラザリは死せざりしならんと、然れども寢りし者の復活たるハリストスは、彼已に四日目になりしを死より復活せしめ給へり。衆信者よ、來りて、我等の靈を救はん爲に光榮の中

---------------------[聖枝週間「スボタ」  早課 957]---------------------

に臨む者に伏拜せん。

ハリストスよ、爾は己の神性の徴を爾の門徒に示したれども、民の中には己を卑くして、之を隠さんと欲せり。故に預知する神として使徒にラザリの死を預言したれども、ワィファニヤに人人の中に在りて、爾の友の墓を知らざることなきに、人として其何處に在るを問へり、然れども爾に因りて復活したる四日目の者は爾の神たる權を顯せり。全能の主よ、光榮は爾に歸す。

第四調、ハリストスよ、爾は四日目の死者たる爾の友を起し、マルファとマリヤとの哀を慰めて、衆に爾が己の權能の旨に由りて神たる力を以て一切を行ふことを示し給へり。ヘルワィム等は絶えず爾に呼ぶ、至高きに「オサンナ」、萬有の上に在る神は崇め讃めらる、光榮は爾に歸す。

マルファはマリヤに呼べり、師は至りて爾を呼ぶ、來れ。彼は亟にイイススの立てる處に來りて、彼を見て呼び、俯伏して、彼の至浄なる足に接吻して云へり、主よ、爾若し此に在りしならば、我が兄弟は死せざりしならん。

 

第八調、句、主我が神よ、起きて、爾の手を擧げよ、苦しめらるる者を永く忘るる毋れ。

主よ、爾はワィファニヤに於て死せしラザリ、四日目の死者たるを起し給へり。蓋

---------------------[聖枝週間「スボタ」  早課 958]---------------------

唯其墓に就きたるに、爾の聲は死者の爲に生命と爲り、地獄は歎息して畏を以て彼を放てり。大なる奇跡や、大仁慈なる主よ、光榮は爾に歸す。

句、主よ、我心を盡して爾を讃め揚げ、爾が悉くの奇跡を傳へん。

主よ、爾はマルファに我は復活なりと言ひし如く、行を以て言を成就して、ラザリを地獄より呼び起し給へり。人を愛する主よ、祈る、慾に由りて死者となりし我をも、仁慈なる主として、復活せしめ給へ。

光榮、第二調、今日至大至榮なる奇跡は行はれたり、蓋ハリストスは友と名づけたる四日目の死者を呼びて、墓より起し給へり。我等は彼を至榮なる主として讃榮す、願はくは彼は義なるラザリの祈に由りて我等の靈を救はん。』

今も、「生神童貞女よ、爾は至りて讃美たる者なり」。次に大詠頌、并に發放詞。

          ~~~~~~

 

聖體禮儀に眞福詞、第三及び第六歌頌、八句に。聖入の後に祭日の讃詞。光榮、今も。小讃詞。

聖三詞に代へて歌ふ、ハリストスに於て洗を受けし者はハリストスを衣たり、「アリルイヤ」。提綱、第三調、主は我が光、我が救なり、我誰をか恐れん。句、主は我が生命の防固なり、我誰をか懼れん。使徒はエウレイ書三百三十三端の半より、

---------------------[聖枝週間「スボタ」  聖體禮儀 959]---------------------

兄弟よ、我等は震ふべからざる國を受けて、終、イイススハリストスは昨日、今日、及び世世に變らざる者なり。「アリルイヤ」、第五調、主は王たり、彼は威厳を衣たり。句、故に世界は堅固にして動かざらん。福音經はイオアン三十九端、彼の時病める者あり、ラザリと云ふ、終、イイススの行ひし事を見たるイウデヤ人の中の多くの者彼を信ぜり。領聖詞、爾は嬰児と哺乳者との口より讃美を備へたり、「アリルイヤ」。三次。

 

【注意】

知るべし、若し義なるラザリの聖堂ならば、常例の「カフィズマ」の後に多燭詞。成聖者の讃揚詞、及び聖詠、「萬民之を聽け」。次に第三歌頌の後の坐誦讃詞。聖ラザリの傳を讀む、ニキフォルクサンフォプルの作。品第詞、第四調の第一倡和詞。提綱、「聖人の死は」。句、「我何を以て主の我に施しし」。「凡そ呼吸ある者」、福音經はイオアン三十六端、「我は門なり」。第五十聖詠。讃頌、第六調、「主よ、爾の聲は地獄の國を破り」。(第九百二十三頁を看よ)。規程は二、十四句に、及び第二規程の共頌。第三歌頌の後に祭日の坐誦讃詞。第六歌頌の後に小讃詞、「ハリストス、衆人の歡喜」、及び同讃詞。其他の式は右に記すが如し。

          ~~~~~~

---------------------[聖枝週間「スボタ」  聖體禮儀 960]---------------------

 

  聖枝週間の「スボタ」の小晩課

 

小晩課に四句を立てて左の讃頌を歌ふ。第六調。

三聖の歌を以て諸天使に歌はるるハリストスよ、爾は小驢に乘りて苦に赴く時、無垢なる嬰兒より凱歌を受け給へり。

シオンよ、視よ、爾の王、温柔にして救を施す主は小驢に乘りて、其能力を以て敵を滅さん爲に來る、喜び祝ひて、枝を以て慶賀せよ。

信者よ、我等も童子の如く同心に喜びて、今諸徳の枝をハリストスに奉り、神聖なる行の衣を彼の爲に布きて、奥密に彼を受けん。

兄弟よ、我等は諸徳の梢をハリストス神、人として我等の爲に甘じて苦を受け、神の性の能力を以て衆に苦なきを賜はん爲に來る主に奉らん。

光榮、今も、神としてヘルワィムの肩に舁はるる主は小驢に乘りて、甘じて我等の爲に屠らるるに往き給ふ。來りて、枝を執りて熱心に彼を歌頌せん。

   挿句に讃頌、第二調。

新なるシオンよ、枝を以て己を飾りて、童子と共に歌頌せよ。視よ、爾の王、救を施す主は苦の爲に往き給ふ。

---------------------[聖枝週間「スボタ」  小晩課 961]---------------------

句、爾は嬰兒と哺乳者との口より讃美を備へたり。

アダム及びエワよ、諸預言者と偕に樂しめ。視よ、主は苦を以て爾等を呼ばん爲に來り給ふ。

句、主我が神よ、爾の名は何ぞ全地に大なる。

上に父及び聖神と偕に天使の歌を受くる主は、下に驚くべく卑くなりて、童子の歌を受け給ふ。

光榮、今も、崇め讃めらるる主よ、我畏を以て爾の畏るべき定制を歌ひて、爾に「オサンナ」を呼ぶ、蓋爾は我を救はん爲に往き給ふ。

   「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。其他常例の如し。

讃詞、第一調、ハリストス神よ、爾は己の苦の前に一般の復活を信ぜしめて、ラザリを死より起し給へり。故に我等も童子の如く勝利の徽號を取りて、爾死の勝利者に呼ぶ、至高きに「オサンナ」。主の名に因りて來る者は崇め讃めらる。』

又、第四調、ハリストス我が神よ、我等は洗を以て爾と偕に葬られて、爾の復活に由りて不死の生命を得て、歌頌して呼ぶ、至高きに「オサンナ」、主の名に由りて來る者は崇め讃めらる。

   發放詞

 

---------------------[聖枝週間「スボタ」  小晩課 962]---------------------

 

   聖枝週間の「スボタ」の大晩課

 

大晩課に首誦聖詠の後に常例の聖詠誦讀。「惡人の謀に行かず」、カフィズマ全篇。「主よ、爾にぶ」に十句を立てて左の自調の讃頌五章を歌ふ、各二次。第六調。

今日聖神の恩寵は我等を聚めたり、我等皆爾の十字架を執りて言ふ、主の名に因りて來る者は崇め讃めらる、至高きに「オサンナ」。

神父の言及び同永在の子、天を寶座と爲し、地を足のと爲す主は己を卑くして、今日言なき小驢に乘りて、ワィファニヤに來れり。故にエウレイの諸子は手に枝を執り、聲を以て讃美せり、至高きに「オサンナ」、來るイズライリの王は崇め讃めらる。

我等も異邦人よりする敎會、新なるイズライリたる者は皆來りて、預言者ザハリヤと共に呼ばん、シオンの女よ、大に歡べ、イエルサリムの女よ、傅へよ、蓋視よ、爾の王は爾に臨む、温柔にして救を施す主、重任を負ふ者の子なる、小驢に乘る者なり。諸子の如く祝ひ、手に枝を執りて讃美せよ、至高きに「オサンナ」、來るイズライリの王は崇め讃めらる。

仁慈なる主よ、爾は己の尊き復活を我等の爲に預象して、呼吸なき友ラザリ、

---------------------[聖枝週間「スボタ」  大晩課 963]---------------------

四日目の臭き死者を墓より起し給へり。救世主よ、爾は又小驢に乘り、車に於けるが如く乘せられて、異邦民を服從せしむるを像り給へり。故にハリストスよ、至愛なるイズライリは逾越節の前六日に、爾が聖なる城に入るを見る哺乳者と無垢なる嬰兒との口より爾に讃美を奉る。

逾越節の前六日、イイススワィファニヤに來れり、其門徒彼に就きて曰へり、主よ、我等が何處に爾の爲に逾越節筵を備へんことを欲するか。彼は之を遣して曰へり、城に往け、水を盛れる瓶を攜ふる人に遇はん、之に随ひて家の主に語げよ、師言ふ、我門徒と偕に爾の家に逾越前筵を行はん。

    光榮、第一の讃頌、「今日聖神の恩寵は我等を聚めたり」。今も、復同上。聖入。「穏なる光」。提綱、「主は王たり、彼は威嚴を衣たり]。

 

   創世記の讀。第四十九章。

イアコフ其諸子を召して彼等に謂へり、來り集まれ、我爾等が後の日に遇はんとする事を爾等に告げん、イアコフの諸子よ、集まりて我に聽け、爾等の父イズライリに聽けよ。イウダよ、爾の兄弟は爾を讃めん。爾の手は爾の敵の背に在らん、爾の父の諸子は爾に伏拜せん。イウダは若き獅なり、吾が子よ、爾は獲に飽きて歸り上る、其膝を折りて伏すこと、牡獅の如く、牝獅の若し、孰か敢て彼を起さん。

---------------------[聖枝週間「スボタ」  大晩課 964]---------------------

權を秉る者イウダより竭きず、帥いる者其裔より竭きずして、平安を賜ふ者の來る時にばん、彼來らば諸民彼に從はん。イウダは其驢馬を葡萄の樹に繋ぎ、其牝驢馬の子を葡萄の蔓に繋ぐ、酒にて其衣を澣ひ、葡萄の血にて其服を滌ふ、其目は酒に因りて澤あり、其歯は乳に因りて白し。

 

   ソフォニヤの預言書の讀。第三章。

主是くの如く言ふ、シオンの女よ、歡びて呼べ、イズライリよ、祝へ、イェルサリムの女よ、心を全くして喜び樂しめ。主は爾に對する審斷を息め、爾の敵を逐へり、主イズライリの王は爾の中に在り、爾復禍に遇はざらん。當日イェルサリムに謂ふあらん、懼るる毋れ、シオンに謂ふあらん、爾の手弱るべからず、主爾の神は爾の中に在り、彼爾を救ふに能あり、彼は爾の爲に喜びて樂しみ、其愛に因りて憐を施し、爾の爲に祝ひて呼ばん。我節筵の爲に憂ふる者を集めん、彼等は爾に屬す、耻辱は彼等に在ること重負の如し。視よ、其時我凡そ爾を苦しむる者を罰し、足蹇へたる者を救ひ、遂はれたる者を集め、彼等をして其耻辱を蒙りし全地に於て頌美を得、名を得しめん。

 

   ザハリヤの預言書の讀。第九章。

主是くの如く言ふ、シオンの女よ、歡びて呼べ、イェルサリムの女よ、祝ひて樂

---------------------[聖枝週間「スボタ」  大晩課 965]---------------------

しめ、視よ、爾の王は爾に臨む、義にして救を施し、温柔にして、牝驢及び重任を負ふ者の子たる小驢に乘る者なり。其時我エフレムより車を絶ち、イエリサリムより馬を絶たん、戰の弓も絶たれん、彼は諸民に和平を告げん、彼の治むる所は海より海に及び、河より地の極に及ばん。爾に至りては、我爾の約の血の爲に、爾の俘囚を釋きて、水なき坑より出さん。望を懐く俘囚よ、爾等保障に歸れ、我今告げて云ふ、我倍して爾に報いん。蓋我己の爲にイウダを弓の如くに張り、エフレムを以て弓に滿てん、シオンよ、我爾の諸子を起して、エルリンの諸子を攻め、爾を勇士の劍と爲さん。主は彼等の上に現れて、其箭は電の如くに發せん、主神は箛を吹き、南方の大風に乘りて往かん。主サワオフは彼等を防ぎ護らん。

 

    「リティヤ」に自調の讃頌、第一調。

使徒等に異方の言を言ふを敎へし至聖なる神は惡を知らざるエウレイの諸子に呼ばしむ、至高きに「オサンナ」、來るイズライリの王は崇め讃めらる。』

父と同無原同永在なる子及び言は今日言なき小驢に乘りて、イェルサリムの城に來れり。ヘルワィム等が畏れて見るを得ざる者を諸子は讃め揚げて、梢と枝とを執りて、奥密に讃美を歌ふ、至高きに「オサンナ」、我等の全類を迷より救はん爲に來り

---------------------[聖枝週間「スボタ」  大晩課 966]---------------------

しダワィドの子に「オサンナ」。

主よ、逾越節の前六日に爾の聲は地獄の深處に聞えて、四日目のラザリを起せり。故にエウレイの諸子は呼べり、「オサンナ」、我等の神よ、光榮は爾に歸す。』

第二調、主よ、爾は小驢に乘り、聖なる城に入りて、苦を受くるに來れり、律法と預言者とを成就せん爲なり。エウレイの諸子は復活の勝利を預象して、枝と、梢とを以て爾を迎へて云へり、救世主よ、爾は崇め讃めらる、我等を憐み給へ。』

ハリストスよ、光榮は爾至高きに寶座に坐し、今爾の尊き十字架と共に迎へらるる主に歸す。シオンの女は樂しみ、地上の諸民は喜び、諸子は枝を執り、門徒は衣を布き、全地は爾に呼ぶを習へり、救世主よ、爾は崇め讃めらる、我等を憐み給へ。

 

光榮、今も、第三調、逾越節の前六日イイススワィファニヤに來れり、四日目の死者ラザリを起して、復活を傳へん爲なり、女等マルファ及びマリヤ、ラザリの姉妹は彼を迎へて呼べり、主よ、爾若し此に在りしならば、我が兄弟は死せざりしならんと。其時主は彼等に謂へり、我先に爾等に、我を信ずる者は、死すと雖生きんと言ひしにあらずや、何處に彼を置きしか、我に示せ、乃萬有の造成主は彼に呼べり、ラザリよ、外に出でよ。

---------------------[聖枝週間「スボタ」  大晩課 967]---------------------

   常例の「リティヤ」の祝文を前院に誦す。

 

   挿句に自調の讃頌、第八調。

シオンの城よ、喜びて樂しめ、神の敎會よ、歡びて祝へ、蓋視よ、義なる爾の王は小驢に乘りて、來りて諸子より歌頌せらる、至高きに「オサンナ」、大仁慈なる主よ、爾は崇め讃めらる、我等を憐み給へ。

句、爾は嬰兒と。哺乳者との口より讃美を備へたり。

今日救世主は録されしことを成就せん爲にイエルサリムの城に來れり。皆手に枝を執り、衣を彼の爲に布けり、其我等の神にして、ヘルワィム等に絶えず至高きに「オサンナ」と呼ばるる者なるを知ればなり。大仁慈なる主よ、爾は崇め讃めらる、我等を憐み給へ。

句、主我が神よ、爾の名は何ぞ全地に大なる。

ヘルワィムに乘せられ、セラフィムに歌はるる至善なる主よ、爾小驢に乘りしに、ダワィドの預言に應じて、諸子は神に適ふが如く爾を歌ひ、イウデヤ人は不法に誚れり。爾が小驢に乘るは逆ふ異邦民の不信より信に變ぜらるるを預象せり、ハリストス、惟一の仁慈仁愛なる主よ、光榮は爾に歸す。

 

    光榮、第六調、「今日聖神の恩寵は我等を聚めたり」。

---------------------[聖枝週間「スボタ」  大晩課 968]---------------------

    今も、復同上。「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文、其他常例の如し。發放の讃詞、第一調、「ハリストス神よ、爾は己の苦の前に」、二次。又讃詞、第四調、「ハリストス我が神よ、我等は洗を以て」。一次。次に「願はくは主の名は崇め讃められて」三次。并に聖詠、「我何の時にも主を讃め揚げん」。

并に祭日の講説を誦讀す。

          ~~~~~~

 

 

  聖枝主日の早課

 

「主は神なり」に三讃詞、「ハリストス神よ、爾は己の苦の前に」、二次。光榮、今も、「ハリストス我が神よ、我等は洗を以て」、(第九百六十二頁を看よ)。

   第一の聖詠誦文の後に坐誦讃詞、第四調。

我等は靈潔められて、信を以て熱切に枝を執りて、諸子の如くハリストスを崇め讃め、高聲を以て主宰に呼ばん、アダムを古の詛より救はん爲に世に來りし救世主よ、爾は崇め讃めらる。人を愛する主よ、爾は望みし如く、奥密に新なる

---------------------[聖枝主日 早課 969]---------------------

アダムと爲り給へり。一切を我等を益せん爲に造りし言よ、光榮は爾に歸す。

   光榮、今も、又坐誦讃詞。第四調。

四日目のラザリを墓より起しし主よ、爾は衆に梢と枝とを以て爾に呼ばんことを敎へたり、來り給ふ、主よ、爾は崇め讃めらる。

 

并に金口イオアンの福音經の講説を讀む。

    第二の誦文の後に坐誦讃詞、第四調、

ハリストスよ、爾は奥密に爾の友の上に涙を流し、人を愛する主として慈愛を示して、臥したる死者ラザリを死より起し給ふ。イイススよ、多くの嬰兒は今日爾の來るを知りて出でて、手に枝を執りて、爾に「オサンナ」を呼ぶ。世界を救はん爲に來りし主よ、爾は崇め讃めらる。

   光榮、今も、又坐誦讃詞、第一調。

諸族諸民よ、同心に讃美せよ、蓋諸天使の王は今小驢に乘りて、權力ある者として、十字架を以て諸敵を滅さんと欲して來る。故に諸子は枝を執りて歌を奉る、光榮は爾來りし勝利者に歸す、光榮は爾救世主ハリストスに歸す、光榮は爾崇め讃めらるる我が惟一の神に歸す。

---------------------[聖枝主日 早課 970]---------------------

   次ぎて多燭詞。

   多燭詞の後に坐誦讃詞、第八調。

ヘルワィムの寶座に又我等の爲に小驢に乘り給ふ主は自由なる苦の爲に來りて、今日諸子が「オサンナ」を歌ふを聽き、民の呼ぶを聽く、ダワィドの子、崇め讃めらるるイイススよ、爾が造りし者を速に救ひ給へ、蓋爾は我等が爾の光榮を知らん爲に來り給へり。

 

光榮、今も、復同上。祭日の講説を讀む、クリトのアンドレイ師の作。次に品第詞、第四調の第一倡和詞。

 

提綱、第四調、爾は嬰兒と哺乳者との口より讃美を備へたり。句、主我が神よ、爾の名は何ぞ全地に大なる。「凡そ呼吸ある者」。福音經はマトフェイ八十三端。「ハリストスの復活を見て」を歌はずして直に第五十聖詠を誦す。

 

次に司祭香爐を軌りて、枝の四周に十字形に爐儀を行ひて、之を祝福する祝文を誦す。

   輔祭、主に禱らん。

   詠隊、主憐めよ。

ヘルワィムに坐する主、我等の神よ、爾は己の子、我が主イイススハリストスの

---------------------[聖枝主日 早課 971]---------------------

能力を顯し給へり、彼が其十字架と、葬と、復活とを以て世界を救はん爲なり。

彼今イェルサリムに自由なる苦の爲に來りし者を、幽暗と死の蔭とに坐する民は、復活の徽號なる樹の枝と椶櫚の梢とを執りて、復活を示して迎へたり。主宰よ、爾親ら、我等も之に效ひて、此の祭の前日に手に樹の枝と梢とを執る者を顧みて護り給へ、彼の民と諸子とが爾に「オサンナ」を奉りし如く、我等も同じく詩賦と屬神の歌頌とを爾に奉りて、生を施す三日目の復活に至らん爲なり、ハリストスイイスス我等の主に因りてなり。爾は彼と、至聖至善にして生を施す爾の神と偕に崇め讃めらる、今も何時も世世に、「アミン」。

 

衆が福音經に接吻する時、司祭之に枝を分予す。

光榮、第二調、今日ハリストスは小驢に乘りて、ワィファニヤの邑に入りて、異邦民の古の最惡しき頑なる無知を解き給ふ。

今も、復同上。次ぎて「神よ、爾の大なる憐に因りて」讃頌、第六調、「今日聖神の恩寵は我等を聚めたり」。其後祝文、「神よ、爾の民を救ひ」。主憐めよ、十二次。

高聲の後に規程、イルモス二次、讃詞十二句に。共頌にイルモス、兩詠隊共に。コスマ師の作。其冠詞は、「オサンナ」ハリストス、崇め讃めらるる神。第四調。

 

   第一歌頌

---------------------[聖枝主日 早課 972]---------------------

イルモス、淵を成す泉は水なき者と現れ、大風にて浪たつ海の底は開かれたり、蓋爾は瞬にて之に命じて、選ばれたる民、爾主に凱歌を歌ふ者を救ひ給へり。

主よ、爾は無垢なる嬰兒と哺乳者との口を以て爾の諸僕の讃美を備へたり、敵を滅し、十字架の苦を以て古のアダムの堕落を贖ひ、木に縁りて彼を復活せしめて、爾に凱歌を歌はしめん爲なり。

ハリストスよ、克肖者の敎會は爾シオンに居る者に讃美を奉り、イズライリは爾己の造成主の爲に喜び、山たる異邦民、逆ふ者、心の石の如き者は爾の顔の前に樂しみて、爾主に凱歌を歌ふ。

共頌、「淵を成す泉は水なき者と現れ」。

 

   第三歌頌

イルモス、イズライリの民は稜の斫られたる堅き石、爾の命に因りて水を流しし者より飮めり。ハリストスよ、此の石及び生命は爾なり、爾の上に堅く立てられたる敎會はぶ、「オサンナ」、爾來る者は崇め讃めらる。

ハリストスよ、地獄は爾の命に由りて戰きて、四日目の死者ラザリを死より放てり。蓋爾は復活及び生命なり、敎會は爾の上に堅められて呼ぶ、「オサンナ」、爾來

---------------------[聖枝主日 早課 973]---------------------

る者は崇め讃めらる。

人人よ、神に合ひてシオンの中に歌へ、禱をイエルサリムの中にハリストスに獻げよ、彼は親ら權を以て光榮の中に來り給ふ。敎會は彼の上に堅められて呼ぶ、「オサンナ」、爾來る者は崇め讃めらる。

   應答歌、第六調。

恩を知らざるイウデヤ人は先には枝を執りてハリストス神を歌ひ、後には棒を持ちて彼を捕へたり。惟我等は常に變らざる信を以て彼を恩主と尊みて、絶えず彼に呼ぶ、アダムを喚び起さん爲に來る主よ、爾は崇め讃めらる。

并に祭日の誦讀、

 

   第四歌頌

イルモス、ハリストス嚴に臨む我が神は、久しからずして、樹蔭繫き山、夫なく産む童貞女より來り給はんと、古の預言者は言ふ。故に我等皆ばん、主よ、光榮は爾の力に歸す。

山と悉くの陵とは膏澤を以て盛なる樂を滴らすべし、林の諸木は舞ふべし。

諸民はハリストスを崇め讃めよ、衆人は喜びて彼に呼べ、主よ、光榮は爾の力に歸す。

---------------------[聖枝主日 早課 974]---------------------

世世に王たる主は權力を佩びて來らん、シオンに於て其華麗と光榮との嚴なること比なし。故に我等皆呼ぶ、主よ、光榮は爾の力に歸す。

指尺を以て天を度り、手を以て地を度る主は來り給へり。蓋彼はシオンを選びて、其中に居り且王たるを嘉し、信を以て、主よ、光榮は爾の力に歸すと呼ぶ人人を愛しみ給へり。

 

   第五歌頌

イルモス、シオンに福音する者よ、山に登れ、イェルサリムに傳ふる者よ、強き聲を揚げよ、神の城邑よ、光榮の事は爾に於て告げられたり、イズライリには平安、異邦人には救なり。

至高きにヘルワィムに坐して、卑きを瞰む神は、親ら權を以て光榮の中に來り給ふ、萬有は彼の神聖なる讃美に滿てられん、イズライリには平安、異邦人には救なり。

神のシオン、聖なる山及びイェルサリムよ、爾の目を擧げて四周に注ぎ、爾に集まりたる爾の諸子を見よ、蓋彼等は爾の王に伏拜せん爲に遠くより來れり、イズライリには平安、異邦人には救なり。

 

   第六歌頌

---------------------[聖枝主日 早課 975]---------------------

イルモス、義人等の靈は喜びてべり、今新なる約は世界に立てらる、人人は神聖なる血を注ぐに藉りて新にせらるべし。

イズライリよ、神の國を受けよ、幽暗の中に居る者は大なる光を見るべし、人人は神聖なる血を注ぐに藉りて新にせらるべし。

シオンよ、爾の俘囚を釋きて赦し、無知の水なき坎より出せ、人人は神聖なる血を注ぐに藉りて新にせらるべし。

   小讃詞、自調、第六調。

天には寶座に、地には小驢に乘せらるるハリストス神よ、爾は諸天使の讃美、諸子の歌頌を受け給へり。彼等爾に呼べり、アダムを喚び起さん爲に來る主よ、爾は崇め讃めらる。

   同讃詞

不死なるハリストスよ、爾が地獄を縛り、死を殺し、世界を復活せしめしに因りて、今日嬰兒は枝を執り、爾を勝利者と讃美して、爾に呼べり、ダワィドの子に「オサンナ」。蓋言へり、是より已に嬰兒等はマリヤの嬰兒の爲に殺されざらん、爾は獨悉くの嬰兒及び老翁の爲に十字架に釘せられん、已に劍は我等に及ばざらん、蓋爾の脅は戈を以て刺されん。故に我等喜びて云ふ、アダムを喚び起さん爲に來

---------------------[聖枝主日 早課 976]---------------------

る主よ、爾は崇め讃めらる。

 

   第七歌頌

イルモス、火の中に爾がアウラアムの少者を救ひ、義の審判を被れるハルデヤ人を滅しし讃美たる主、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

人人は伏拜して、門徒と偕に喜びて、枝を執りて、ダワィドの子に「オサンナ」を呼べり、讃美たる主、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

イズライリ民及び諸天使の王よ、惡に與らざる大數、尚嬰兒たる性は神に適ひて爾を歌へり、讃美たる主、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

ハリストスよ、人人の大數は梢と枝とを以て爾を祝讃して呼べり、臨みたる世世の王は崇め讃めらる、讃美たる主、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

 

   第八歌頌

イルモス、イェルサリムよ、樂しめ、シオンを愛する者よ、祝へ、蓋世世の王たる萬軍の主は來給へり、全地は其顔の前に敬みてぶべし、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

シオンよ、爾の王ハリストスは小驢に乘りて臨めり、蓋無知なる偶像の迷を破り、諸異邦民の遏め難き奔騰を制せん爲に來給へり、彼等が歌はん爲なり、主の悉

---------------------[聖枝主日 早課 977]---------------------

くの造物は主を崇め讃めよ。

シオンよ、大に喜べ、爾の神ハリストスは王と爲りて世世に迄らん。録されし如く、彼温柔にして救を施す義なる我が贖罪主は小驢に乘りて、諸敵の馬の如き奔騰を制せん爲に來給へり、蓋彼等は呼ばず、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

逆ふ者の法に悖る會は神聖なる牢より遂はる、蓋神の祈禱の家を盗賊の巣窟と爲して、贖罪主を心より遠ざけたり。我等彼に呼ぶ、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

   「ヘルワィムより尊く」を歌はず。

 

    第九歌頌

イルモス、主は神なり、我等に臨めり、祭を爲し、來り樂しみて、ハリストスを讃め揚げ、棕櫚の枝を執りて、歌ひてばん、主我が救世主の名に因りて來る者は崇め讃めらる。

諸民何爲れぞ騒ぎ、學士と司祭等とは何爲れぞ徒に謀りたる、爾等は諸子が梢と枝とを執りて、歌を以て、主我が救世主の名に因りて來る者は崇め讃めらると呼ぶ所の者は此れ誰ぞと云ふ。

---------------------[聖枝主日 早課 978]---------------------

此れ我等の神なり、彼と侔しき者なし、彼は凡の義なる途を啓きて、愛せし所のイズライリに與へ、其後現れて人人と偕に居り給へり。主我が救世主の名に因りて來る者は崇め讃めらる。

不順なる人人よ、何ぞ誘惑の途を爾等の側に置きたる、爾等の足は主宰の血を流すに疾し、然れども彼必復活して、呼ぶ者を救はん、主我が救世主の名に因りて來る者は崇め讃めらる。

 

光耀歌を歌はずして、直に主我等の神は聖なり、三次、第四調に依りて歌ふ。

「凡そ呼吸ある者」に六句を立てて、自調の讃頌四章を歌ふ、其二章は二次。第四調。

 

主よ、衆くの民は己の衣を途に布き、他の者は樹の枝を伐りて執り、前に行き後に從ふ民は呼びて曰へり、ダワィドの子に「オサンナ」、主の名に因りて來り又往く者よ、爾は崇め讃めらる。

主よ、爾が聖なる城に入らんと欲する時、人人は樹の枝を執りて、爾萬有の主宰を歌ひ、爾が小驢に坐せるを見て、ヘルワィムに於けるが如く見たり。故に斯く呼べり、至高きに「オサンナ」、主の名に因りて來り又往く者よ、爾は崇め讃めらる。

---------------------[聖枝主日 早課 979]---------------------

諸民よ、出で、人人よ、出でて、今日天の王が高き寶座に於けるが如く卑微なる小驢に乘りてイェルサリムに入るを見よ。不信姦惡なるイウデヤの族よ、來りて、イサイヤが我等の爲に肉體を以て來らんとするを見し者を見よ、如何にして彼が新なるシオンを貞潔の者として己の聘女と爲し、又定罪せられたる會聚を斥けしを見よ。無潔浄なる婚姻に於けるが如く、惡に與らざる潔浄なる諸子は集まりて讃美を奉る。我等も彼等と偕に天使の歌を歌ひて呼ばん、大なる憐を有つ主に至高きに「オサンナ」。

ハリストス神救世主よ、爾は己の自由なる苦の前に衆に一般の復活を預信ぜしめて、ワィファニヤに於て爾の權能を以て四日目の死者ラザリを復活せしめ給へり。光を施す主として、瞽者に視るを賜ひ、預言者の傳を成就して、ヘルワィムに乘せらるる如く小驢に乘りて、爾の門徒と偕に聖なる城に入り、エウレイの諸子は枝と梢とを以て爾を迎へたり。故に我等も橄欖の枝と梢とを執りて、感謝して爾に呼ぶ、至高きに「オサンナ」、主の名に因りて來る者は崇め讃めらる。

 

光榮、今も、第六調、逾越節の前六日イイススワィファニヤに來れり、其門徒彼に就きて曰へり、主よ、我等が何處に爾の爲に逾越節筵を備へんことを欲するか。

---------------------[聖枝主日 早課 980]---------------------

彼は之を遣して曰へり、城に往け、水を盛れる瓶を攜ふる人に遇はん、之に随ひて家の主に語げよ、師言ふ、我門徒と偕に爾の家に逾越節筵を行はん。

 

大詠頌。讃詞、「ハリストス神よ、爾は己の苦の前に」。次に聯禱。第一時課、及び常例の發放詞。

          ~~~~~~

 

聖體禮儀に第一倡和詞、第二調、百十四聖詠、我喜ぶ、主の我が聲、我が祈を聽きしに因る。附唱、救世主よ、生神女の祈に因りて我等を救ひ給へ。第二句、彼は其耳を我に傾けたり、故に我在世の日に彼を呼ばん。救世主よ云云、第三句、死の病は我を圍み、地獄の苦は我に臨み、救世主よ云云、第四句、我辛苦艱難に遭へり、其時我主の名を呼べり。救世主よ云云、光榮、今も、救世主よ云云、第二倡和詞、百十五聖詠、我信ず、故に言へり、我孔傷めり。附唱、若き驢馬に乘り給ひし神の子よ、我等爾に「アリルイヤ」を歌ふ者を救ひ給へ。第二句、我何を以て主の我に施しし悉くの恩に報いん。若き驢馬に乘り給ひし云云、第三句、我救の爵を受けて、主の名をばん。若き驢馬に乘り給ひし云云、第四句、我が誓を主に、其衆民の前に償はん。若き驢馬に乘り給ひし云云、光榮、今も、「神の獨生の子并に言よ」。第三倡和詞、第一調、百十七聖詠、主を讃榮せよ、蓋彼は仁慈にして、其憐は世世にあればな

---------------------[聖枝主日 聖體禮儀 981]---------------------

り。讃詞、「ハリストス神よ、爾は己の苦の前に」。第二句、イズライリの家今言ふべし、彼は仁慈なり、其憐は世世にあればなり。ハリストス神よ云云、第三句、アアロンの家今言ふべし、彼は仁慈なり、其憐は世世にあればなり。ハリストス神よ云云、第四句、主を畏るる者今言ふべし、彼は仁慈なり、其憐は世世にあればなり。ハリストス神よ云云、聖入の句、主の名に依りて來る者は崇め讃めらる、我等主の家より爾等を祝福す。主は神なり、我等を照せり。讃詞、「ハリストス神よ」。光榮、第四調、「ハリストス我が神よ、我等は洗を以て」。今も、小讃詞、第六調、「天には寶座に」。次ぎて聖三祝文。使徒の提綱、第四調、主の名に依りて來る者は崇め讃めらる、主は神なり、我等を照せり。句、主を讃榮せよ、蓋彼は仁慈にして、其憐は世世にあればなり。使徒はフィリッピ書二百四十七端。「アリルイヤ」、第一調、新なる歌を主に歌へ、蓋彼は奇跡を行へり。句、凡そ地の極は我が神の救を見たり。福音經はイオアン四十一端。聖金口の聖體禮儀を行ふ。領聖詞、主の名に依りて來る者は崇め讃めらる、主は神なり、我等を照せり、「アリルイヤ」、三次。

 

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---------------------[聖枝主日 聖體禮儀 982]---------------------

 

 

   聖枝主日の晩課

 

「主よ、爾にぶ」に六句を立てて自調三章を歌ふ、各二次。第八調。

シオンの城よ、喜びて樂しめ、神の敎會よ、歡びて祝へ、蓋視よ、義なる爾の王は小驢に乗りて、來りて諸子より歌頌せらる、至高きに「オサンナ」、大仁慈なる主よ、爾は崇め讃めらる、我等を憐み給へ。

今日救世主は録されしことを成就せん爲にイェルサリムの城に來れり、皆手に枝を執り、衣を彼の爲に布けり、其我等の神にして、ヘルワィム等に絶えず至高きに「オサンナ」と呼ばるる者なるを知ればなり。大仁慈なる主よ、爾は崇め讃めらる、我等を憐み給へ。

ヘルワィムに乘せられ、セラフィムに歌はるる至善なる主よ、爾小驢に乘りしに、ダワィドの預言に應じて、諸子は神に適ふが如く爾を歌ひ、イウデヤ人は不法に誚れり。爾が小驢に乘るは逆ふ異邦民の不信より信に變ぜらるるを預象せり。ハリストス、惟一の仁慈仁愛なる主よ、光榮は爾に歸す。

光榮、「シオンの城よ、喜びて樂しめ」。今も、「ヘルワィムに乘せられ」。聖入。常例の提綱、「主の諸僕、夜中主の家に」。

---------------------[聖枝主日 晩課 983]---------------------

  挿句に自調の讃頌。第二調。

我等信者は神聖なる祭より神聖なる祭に移るが如く、椶櫚の枝及び梢よりハリストスの苦の尊くして救を施す奥密に趨り附きて、其我等の爲に甘じて苦を忍ぶを見て、感謝して、傷感の情を以て之に適ふ歌を歌はん、慈憐の泉、救の湊なる主よ、光榮は爾に歸す。

句、新なる歌を主に歌へ。

第三調、活ける神の手に陷るは畏るべき哉、彼は心の意と念との審判者なり。

の信を殘ふ者は誰も入るべからず、乃我等は温良敬畏を以てハリストスに就くべし、嘉き時の助として慈憐を蒙り、恩寵を獲ん爲なり。

句、凡そ地の極は我が神の救を見たり。

第七調、兇惡姦淫の會、己の夫に信を守らざりし者よ、何ぞ約を有つ、爾其約せし事を嗣がざりき、何ぞ父を以て誇る、爾其子を棄てたり、子を傳へし預言者を接けざりき。己の諸子にだに愧ぢよ、蓋彼等は斯く呼ぶ、ダワィドの子に「オサンナ」、主の名に因りて來る者は崇め讃めらる。

光榮、第二調、「我等信者は神聖なる祭より」。今も、第三調、「活ける神の手に陷るは畏るべき哉」。「主宰よ、今爾の言に循ひて」。「天に在す」の後に讃詞、「生神童貞女よ、慶べよ」。

---------------------[聖枝主日 晩課 984]---------------------

其他常式の如し。并に常例の大小拜。

【注意】

知るべし。「生神童貞女よ」、及び其次の諸讃詞は聖四旬齋の凡ての主日、又本主日にも諧和の調を以て緩唱す。大週間の其他の日には緩唱せずして誦す。

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   聖枝主日の晩堂課

 

晩堂課に小課を行ひ、其中にクリトのアンドレイ師の三歌頌を歌ふ。イルモス二次。讃詞は左の數の如し。畢りて復イルモス、兩詠隊共に。大週間の其他の日の晩堂課にも行ふこと是くの如し。第八調。

 

   第一歌頌

イルモス、我等は、其手にて敵を敗り、イズライリに紅の海を過らせし者を、吾が救主神として歌はん、彼光榮を顯したればなり。

我等信者はイオシフの貞潔に效ひ、人の靈智の性を尊くせし者を識りて、純ら愼みて實行の徳を以て生を度らん。

---------------------[聖枝主日 晩堂小課 985]---------------------

諸善を行はざることは無花果樹に譬へられたり、我等之を避くべし、葉にて蔽はるる會を前兆する者の其時に枯れしが如く、枯れざらん爲なり。

常に記憶すべきイオシフは預め主宰を兆して、に投げられ、親族より賣られ、一切を忍びて、實にハリストスの像を表す。

兄弟よ、譬を曉りて、無花果樹の結果なきを避けん、此が人を愛する主の返る時飢えて之に就きし時に枯れし如く枯れざらん爲なり。

イイススは甘じて世界の爲に苦しまんと欲して、其門徒と偕にイエルサリムの城に、自由の苦に往き給ふ、之を受けん爲に臨みたればなり。

我等信者は一切を苦しまん爲に急ぐ主に着きて、唾せらるること、辱しめらるること、卑しめらるることに己を備へん、彼の至浄なる苦に因りて共に榮せられん爲なり。

我等の爲に苦を受けし者は苦を以て苦を醫す、蓋甘じて其生を施す苦を我が人性に與りて感ぜしむ、我等が救はれん爲なり。

 

光榮、我三の無原の者を崇め、三の聖なる者を歌ひ、三の同永在の者を一の性に於て傳ふ、蓋父、子、聖神に於て一の神は讃榮せらる。

今も、生神女讃詞、モイセイの杖及びアアロンの杖は奇異なる變象と智慧に超ゆる

---------------------[聖枝主日 晩堂小課 986]---------------------

攝理とを示せり、神を生みし者よ、爾の腹は新なる産を現せり。

   坐誦讃詞、第四調。

靈よ、願はくは無花果樹の定罪は爾に及ばざらん、乃務めて心の畝に、爾の造成主ハリストスの爲に、嘉き實を養ひて、痛悔の中に彼に獻ぜよ。

 

   第八歌頌

イルモス、聖なる山に光榮を顯し、棘の中に火を以てモイセイに永貞童女の奥密を示しし主を歌ひて、萬世に讃め揚げよ。

我等貞潔を以て生命を飾り、智慧を以て信を守りて、義の習を求めん、勇ましくハリストスに從ひて、彼と共に釘せられん爲なり。

大祖イオシフはエギペトの婦に於て他のエワを獲て、不法の行に勝たれず、乃鐵石の如くに立ちて、罪惡の慾に執はれざりき。

我が救世主よ、爾生命の途を行きて、衆の救を望みて、甘じて飢えたり、蓋爾は此に、爾より遠ざかりたる者の轉移せんことに飢えたり。

原祖は樹の果を食ひて、己が裸にして辱しめられしを覺ゆるに因り、無花果樹の葉を採りて裳と爲せり、是れハリストスに離れて裸となりし會を像れり。』

靈よ、出づる先に己を備へよ、彼の生命の爲に己を養へ、爾の爲に苦しまんと

---------------------[聖枝主日 晩堂小課 987]---------------------

熱中するハリストスと共に苦しみ、十字架に釘せられ、死なんことに熱中せよ、彼が爾を榮せん爲なり。

吾が救世主よ、如何ぞ死は懼れざらん、如何ぞ地獄は爾に遇ひて、爾慈憐に因りて苦に急ぎ、義者にして不義者の爲に苦を受けんとして來りし者を見て、慄かざらん。

イウデヤ人、司祭及び「レワィト」等はラザリの復活を見て、猜忌に因りて誓を立て、惡謀を設けて、ハリストスを死の爲にピラトに付せり。

爾の牝羊、婢及び童貞女は爾が苦に急ぎ、爾善き牧者が我等の爲に靈を捐つるを見て、母の心を以て爾の爲に哭けり。

   我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

我爾を性に於て惟一者として歌ひ、爾を位に於て三者として尊む、父、子、至聖神よ、爾の國の無原なる權能を世世に讃榮す。

 

今も、生神女讃詞、ハリストスよ、生神女は爾に祈り、門徒の會は爾に祈る、爾の平安を世界に與へ、爾の惠を世世に優に我等に與へ給へ。

   我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

 

イルモス、「聖なる山に光榮を顯し」。

---------------------[聖枝主日 晩堂小課 988]---------------------

 

   第九歌頌

イルモス、母には童貞は適はず、童貞女には生産は合はず、生神女よ、爾に於ては兩ながら行はれたり。故に我等地上の萬族は常に爾を崇め讃む。

 

不虔者には貞潔は適はず、義者には法を犯すことは合はず。大なるイオシフは罪を避けて、貞潔の則、及び眞にハリストスを像る者たりき。

不法者には法を守ることは適はず、不信者には神を識ることは合はず、イウデヤ人等は不法に因りて此等を棄てたり。故に無花果樹の如くに自ら詛を嗣ぎたり。

生命の餅たるハリストス我が神は人人の救に飢えたり。故に律法の葉に蔽はれたる結果なき會を像る無花果樹を見て詛ひたり。

律法の無結果、葉の如く文字の繁き知識の花を開けども、不法に因りて行の果を結ばざる者は、爾之を詛へり。救世主よ、我等恩寵の諸子たる衆人を祝せよ。

昔モイセイの杖は蛇に變じ、アアロンの杖は青木に變じて花を開けり。無結果にして枯れたる不法の會は結果なき無花果樹に變じたり。

イウデヤよ、爾の司祭等を備へ、手を殺神の爲に擧げよ、蓋視よ、温柔にして

---------------------[聖枝主日 晩堂小課 989]---------------------

黙す者、羔及び我等の牧者たるハリストス、イズライリの王は苦の爲に來れり。』

イウデヤよ、王を接けよ、蓋視よ、彼甘じて苦の爲に來る、常に彼に向ひて、十字架を以て衆を救はん爲に來る主は崇め讃めらると、呼ぶ者を其苦にて救はん爲なり。

イウデヤよ、主宰は、預言に應ひて、爾の嘉節を悲哀に變じたり。蓋爾は、ダワィドの歌ふが如く、昔磐を變じて池となし、石を變じて水の泉となしし者の殺神者と現れたり。

 

光榮、爾無原の性、父、子、聖神、造られざる全能、神聖なる權柄の指麾にて全世界を造りし者を讃榮するは不法者に適はず。

今も、生神女讃詞、我等祈の中に生神女を獻ぐ、主宰よ、彼及び爾の使徒等のに因りて、我等を爾の福に與らしめ、救世主よ、爾の復活の光に堪へさせ給へ。

 

復同イルモス、「母には童貞は適はず」。次に其他、常例の如し。并に發放詞。

 

知るべし。此の聖大週間には一次聖詠經の全文を讀む、早課に「カフィズマ」三篇、第三及び第六時課に二篇を讀みて、水曜日に至りて終る。大「スボタ」には「ネポロチニ」(第十七「カフィズマ」)を誦句す。晩課には常式の如く「我我が憂の中に主

---------------------[聖枝主日 晩堂小課 990]---------------------

に呼びしに」、(第十八「カフィズマ」)を誦す。

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