大斎第6週、聖枝週間


 聖枝週間の月曜日の早課 

本調の聖三の讃歌。

第一の聖詠誦文の後に八調經の傷感の坐誦讃詞。

   第二の誦文の後に坐誦讃詞、第一調。

至善なる主よ、頑冥なる石を吾が心より除き、慾に殺されたる吾が靈を起して、爾地獄の勝利者たる主宰に傷感の情を以て徳行の枝を捧ぐるを得しめ給へ、我が永遠の生命を獲て、惟一仁愛の主よ、爾の權能と爾の慈憐とを歌頌せん爲なり。二次。

生神女讃詞、奇跡の奇跡たる恩寵を蒙れる者よ、造物は爾を見て喜ぶ、蓋爾は種なく孕みて、天使の品位の見るを得ざる主を言ひ難く生み給へり。生神女よ、彼に我等の靈の爲に祈り給へ、

   第三の誦文の後に坐誦讃詞、第一調。

我等は齋の第六の週間に入りて、枝の祭の前期の歌をハリストスに獻らん。彼は往きて我等の爲に小驢に乗りて、王として無知なる異邦民を父に服せしめん、我等皆徳行の枝を彼の爲に備へん、喜びて彼の復活を見ん爲なり。

---------------------[聖枝週間月曜日 早課 855]---------------------

   光榮、同上。

今も、生神女讃詞、至聖なる童貞女よ、神性を以て身を取りし造成主を抱きたる爾の神聖なる手を擧げて、我等が誘感と、諸慾と、患難より救はれんことを祈り給へ。蓋我等は愛を以て爾を讃め揚げて、爾に呼ぶ、光榮は爾の内に入りし主に歸す、光榮は爾より出でし主に歸す、光榮は爾の産を以て我等に自由を賜ひし主に歸す。

 

   三歌頌。第一調。

   第一歌頌

イルモス、「我等皆凱歌を以て」。

我等は節制を以て諸慾を殺し、神聖なる行を以て神を活かさん、潔き智慧を以てハリストスの尊き苦を見ん爲なり。

仁慈仁愛なる主よ、爾に祈る、無慈悲なる富める者の風習に效ひたる我を貧しきラザリに合せて、及び滅えざる火より救ひ給へ。

主よ、我凡の善事を齋みて、飽くまで罪過を樂しめり。求む、今我飢うる者を救の尊き食にかせ給へ。

生神女讃詞、至浄なる女宰、至仁の神を生みし者よ、我審を以て定罪せられ、我が

---------------------[聖枝週間月曜日 早課 856]---------------------

行に因りて仆されし者を憐みて救ひ給へ。

 

   又、第一調。イルモス、「我等凱歌を以て、エギペトにモイセイを助けて」。

信者よ、今日より欣ばしく前期を始めて、聖枝の祭を迎へん、生命を施す苦を見るを得ん爲なり。

ハリストスは來りて、王の如く小驢に乗りてイエルサリムに往く、無知なる異邦民を父に軛の下に服せしめん爲なり。

三者讃詞、獨一の神性の中に三位なる惟一者、生れざる神父、獨生の子及び惟一の聖神、王たる惟一の權柄よ、我等衆人を救ひ給へ。

生神女讃詞、生神女マリヤ、聘女ならぬ聘女、婚姻に與からざる者よ、光榮の事は爾に於て遍く傳へられたり、蓋爾は身にて萬有の造成主を生み給へり。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

視よ、ハリストスはワィフスファギヤの邑に來る。ラザリの故郷たるワィファニヤよ、喜べ、蓋彼は爾に大なる奇跡を顯して、ラザリを死より起さん。

イルモス、我等凱歌を以て、エギペトにモイセイを助けて、彼を以てファラオンを全軍と偕に溺らしし神に謳はん、彼光榮を顯したればなり。

 

   第八歌頌           

---------------------[聖枝週間月曜日 早課 857]---------------------

イルモス、「諸天使と悉くの軍とが造物者」。

我不當の者は結果なき思に富む者と爲りて、不法の逸樂を以て靈を汚ししに、失望の黒暗は我を繞る。吾が神よ、痛悔の光照を我に耀かし給へ。

仁慈なる主よ、昔生ながら瞽なる者を照しし如く、爾の光を見ずして、甚しき遺忘と世俗の累との黒暗の中に葬られたる吾が靈を照し給へ。

イリヤは齋して天を啓き、雨を以て乾ける地に飮ませたり。我等は齋して靈の涙の流を汲まん、矜憐を得ん爲なり。

生神女讃詞、潔き童貞女よ、爾は活ける葡萄の樹として、我等の爲に實りたる房、我等に赦免の酒を流して、罪の醉を醒ます者を生じ給へり。

   又、イルモス、「少者が爐に於ける如く」。

 

ラザリの復生の前門は啓かれたり、蓋ハリストスは來る、死者を眠よりするが如く起して、生を以て死に勝たん爲なり。

鳴呼ワィファニヤよ、爾の譽は大なり、蓋爾は造物主を賓客として接くるを得て呼ぶ、主の造物は主を崇め讃めよ。

  我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

三者讃詞、我等は爾永在なる三位の惟一者、父と子と聖神、位に分れて、神性の

---------------------[聖枝週間月曜日 早課 858]---------------------

惟一なる神を讃榮す。

 

生神女讃詞、至りて讃美たる童貞女よ、我等は天使と偕に爾に慶べよと呼ぶ、蓋爾は世界の爲に歡喜なる世界の救主を擧げ給へり。衆人の爲に彼に祈り給へ。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

ハリストスよ、我等歌を爾に奉る、蓋爾最高きにヘルワィムの上に坐する主は小驢に乘り給ふ、衆人を爾の權柄に服せしめん爲なり。

  我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

 

イルモス、少者が爐に於ける如く、我等は無形の者の歌を爾に奉り、歌ひて言ふ、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

 

   第九歌頌

イルモス、「生命を容れし常に流るる泉」。

我多くの罪に殺されて、怠惰の柩に臥す、失望の石は我の上に在り。ハリストスよ、爾の慈憐を以て之を去りて、昔ラザリを起しし如く、今我を復活せしめ給へ。

我等は滅えざるに定められし富める者に效ふを避けて、ラザリの苦難の中の

---------------------[聖枝週間月曜日 早課 859]---------------------

忍耐を愛せん、アウラアムが此の世より逝りし我等を其懐に受けん爲なり。

我等は慾を殺す齋を愛し、務めて祈を行ひ悲しみ泣きて、熱切に歎息せん、イイススが我等を慰めて、其國に與る者と爲さん爲なり。

生神女讃詞、童貞の神聖なる寶、原祖の惟一の矯正、慈憐の淵を流す泉、イアコフの榮たる生神女を、我等之に因りて救はるる者は歌はん。

   又、イルモス、「預言者イェゼキイリの見たる門」。

 

今日イオルダンの彼の方を巡れるハリストスにラザリの病は明に見らる。

彼は洞察者として云ふ、此の病は死を致さず。

ワィファニヤよ、己を備へ、爾の神聖なる途を飾り、前門を廣めよ、蓋視よ、主宰は己の羊を活かさん爲に使徒と偕に來る。

 

三者讃詞、爾三位なる惟一者、分れざる神性、六翼の天軍の讃榮する神を我等人類も歌を以て崇め讃む。

生神女讃詞、我等は爾父より永遠に生れ、母より定期に於て言ひ難く衆の救の爲に生れし者を、造物主及び主宰として歌を以て崇め讃む。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

---------------------[聖枝週間月曜日 早課 860]---------------------

我等皆善行の枝を執り、潔浄の梢を持ち、己を備へて、イェルサリムに來るハリストスを我が神として迎へん。

イルモス、預言者イエゼキイリの見たる門、獨神の外に誰も過られぬ者たる生神童貞女よ、我等歌を以て爾を尊む。

「常に福にして」。

 

   光耀歌は本調の。

   挿句に本日の自調、二次、第五調。

ハリストスよ、富める者をラザリの爲に定罪せし如く、我を「ゲエンナ」のに定罪する勿れ。祈る、神よ、我泣きて求むる者にも仁愛の滴を賜ひて、我を憐み給へ。

致命者讃詞、天の王の軍は祝讃せらるる哉、受難者は地に生れし者なれども、天使の位に至らんことを勉め、肉體を顧みずして、苦に因りて無形の者の尊貴を獲たり。主よ、彼等の祈に由りて我等の靈を救ひ給へ。

光榮、今も、生神女讃詞、同調、恩寵を蒙れる者よ、祈る、爾の祈を以て轉達して、我等の靈の爲に多くの慈憐と多くの罪の潔浄とを求め給へ。

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---------------------[聖枝週間月曜日 早課 861]---------------------

   第六時課に預言の讃詞、第六調、

神よ、是れ畏るべき日なり、我等は此の晩に至るを圖らず。爾は仁愛を以て我等に之を見るを得しめ給へり。聖三者よ、光榮は爾に歸す。

 

   提綱、第百四聖詠、第六調。

主を尋ぬる者の心は樂しむべし。句、主を讃榮せよ其名を呼べ。

 

   イサイヤの預言書の讀。第四十八、四十九章。

主爾の贖罪者イズライリの聖なる者は是くの如く言ふ、我は主、爾の神、爾に益あることを敎へ、爾が行くべき途に爾を導く者なり。噫若し爾我が誡命を聽きしならんには、其時爾の平安は河の如く、爾の義は海の浪の如くなりしならん、爾の裔は沙の如く、爾の腰より出づる者は細沙の如くなりしならん、其名は我が前に絶たれず、滅びざりしならん。ワワィロンより出で、ハルデヤ人より逃れよ、歡の聲を以て之を宣べ、之を傳へよ、地の極に至るまで此の報信を弘めよ、主は其僕イアコフを贖へりと云へ。其彼等に曠野を行かしむる時、彼等渇かず、彼は石より彼等の爲に水を流し、磐を裂けば、水湧き出でたり。然れども不虔の者には平安なし、主之を言ふ。諸島よ、我に聽け、遠方の諸民よ、耳を傾けよ、主は胎内より我を召し、我が母の腹より我が名を稱へたり、彼我が口を利き劔の如くなし、其手の影を以て我を蔽ひ、

---------------------[聖枝週間月曜日 第六時課 862]---------------------

我を磨ぎたる矢と爲し、我を其箙に藏めたり、又我に謂へり、イズライリよ、爾は我の僕なり、我爾に由りて光榮を獲ん。唯我云へり、我徒然に勞し、益なくして、空しく我が力を竭せり。然れども我が鞠は主に在り、我が賞は我が神に在り。

 

    提綱、第百五聖詠、第六調。

主イズライリの神は崇め讃められて世より世に迄らん。句、主を讃榮せよ、蓋彼は仁慈にして、其憐は世世にあればなり。

         ~~~~~~~

 

 

  聖枝週間の月曜日の晩課

 

常例の聖詠誦讀の後に「主よ、爾にぶ」に六句を立てて三歌經の左の讃頌を歌ふ、イオシフ師の作。

   第六調

主宰よ、我不當の者は多くの罪と度生の逸樂とを病める靈を得て、常に怠隋---------------------[聖枝週間月曜日 晩課 863]---------------------

の榻に臥して爾に呼ぶ、仁慈なる救世主よ、來り顧みて、我に壮健と慈憐とを賜へ、我を棄つる勿れ、我が眠りて死に至らざらん爲、我を常に地獄の深處に墜さんと謀る敵が我が滅亡を喜ばざらん爲なり。

主よ、我は無知にして無慈悲なる富める者に效ひ、逸樂と諸慾とに耽りて、喜びて樂しみ、我が智慧がラザリの如く常に痛悔の門の前に臥して、飢に苦しみ、諸慾に傷つけらるるを見て、無感覺にして過ぐ。故に我は「ゲエンナ」のに當る、獨大仁慈なる主宰よ、我を是より脱れしめ給へ。

 

   又讃頌、フェオドル師の作、第五調。

主よ、爾は身にてイオルダンの彼の方を過りて、ラザリの病の死を致さずして、爾吾が神の光榮を致さんことを預言し給へり。光榮は爾の大なる行爲と爾の全能とに歸す、蓋爾は、人を愛する主よ、多くの慈憐に由りて死を滅し給へり。

   又月課經の三章。光榮、今も、生神女讃詞。

 

   提綱、第百六聖詠、第四調、

主を讃榮せよ、蓋彼は仁慈にして、其憐は世世にあればなり。句、主に救はれし者は此くの如く云ふべし。

---------------------[聖枝週間月曜日 晩課 864]---------------------

 

   創世記の讀。第二十七章。

イサアク老いて、目眊りて見る能はざるに及び、其長子イサフを召びて、彼に謂へり、我が子よ。彼曰へり、我此に在り。イサアク曰へり、視よ、我老いたり、我が終の日を知らず、故に今爾の器、爾の箙と弓とを執りて、野に出で、我が爲に獵して、獲を得て、我が嗜める如く食を作り、我に持ち來りて食はしめよ、我が死ぬる前に我が靈爾を祝せん爲なり。イサアクが其子イサフに語れる時、レワェツカ之を聞けり。イサフは父の爲に獵して獲を得んとして野に適けり。レワェツカ其季子イアコフに謂へり、視よ、我爾の父が爾の兄イサフに語るを聞けり、云く、我が爲に獲を持ち來り、食を作りて我に食はしめよ、我が未死せざる先に主の前に爾を祝せん爲なりと。今我が子よ、我に聽きて、我が爾に命ずる如くせよ、羊の群に往きて、彼處より山羊の二の柔輭なる善き羔を我に取り來れ、我之を以て爾の父の爲に其嗜める如く食を作らん、爾之を父に攜へ往きて食はしめん、彼が死ぬる前に爾を祝せん爲なり。イアコフは其母レワェツカに謂へり、吾が兄イサフは毛深き人にして、我は滑澤なる人なり、恐らくは父我に捫ることあらん、然らば我は彼の前に欺く者と爲りて、祝福を獲ずして、反りて呪詛を招かん、其母彼に謂へり、子よ、爾の呪詛は我に歸せん、唯我が言に從ひ往きて取り來れ、彼往きて取り母の所に

---------------------[聖枝週間月曜日 晩課 865]---------------------

持ち來りたれば母は其父の嗜める如く食を作れり。又レワェツカは家の中に己の所に在る其長子イサフの美服を取りて、之を其季子イアコフに衣せ、山羊の羔の皮を以て其手と其頸の滑澤なる處とを掩ひ、作りたる食と餅とを其子イアコフの手に付せり。彼父の所に入りて曰へり我が父よ。彼曰へり我此に在り、子よ爾は誰ぞ。イアコフ父に謂へり我は爾の長子イサフなり爾が我に命ぜし如く爲せり起きて坐し我が獲を食へ、爾の靈我を祝せん爲なり。イサアク其子に謂へり、吾が子よ、爾如何にして斯く速に獲たるか。彼曰へり、主爾の神が我に與へし故なり。イサアクはイアコフに謂へり、子よ、我に近づけ、我爾に捫りて、爾が吾が子イサフなりや否を知らん。イアコフ其父イサアクに近づきたれば、彼之に捫りて曰へり、聲はイアコフの聲、手はイサフの手なり。乃彼を辨へざりき、彼の手は其兄イサフの手の如く、毛深かりしに因りてなり。遂に彼を祝せり、曰へり、爾は吾が子イサフなるか。彼曰へり、然り。又曰へり、子よ、我に持ち來れ、我爾の獲を食はん、我が靈爾を祝せん爲なり。乃彼に持ち來りたれば、食へり、又酒を彼に進めたれば、飮めり。父イサアク彼に謂へり、子よ、我に近づきて、我に接吻せよ。彼近づきて之に接吻したれば、其衣の馨香を嗅ぎて、彼を祝して曰へり、視よ、吾が子の馨香は主の祝せし豊に稔りたる田の馨香の如し、願はくは神は爾に天の露、地の膄、及び饒多の麥

---------------------[聖枝週間月曜日 晩課 866]---------------------

と酒とを賜はん、願はくは諸民爾に事へ、諸侯爾に伏拜せん、爾の兄弟の主と爲し、爾の諸子は爾に伏拜すべし、爾を詛ふ者は詛はれ、爾を祝する者は祝せらる。イサアク其子イアコフを祝することを終へて、イアコフが其父イサアクの面前より出でし時に當りて、其兄イサフ獵より歸り來れり。彼も亦食を作り、之を其父の許に持ち來りて父に謂へり、我が父、起きて其子の獲を食ふべし、爾の靈我を祝せん爲なり、其父イサアク彼に謂へり、爾は誰ぞ。彼曰へり、我は爾の子、爾の長子イサフなり。イサアク甚大に戰ひ慄きて曰へり、然らば彼の獵して獲を我に持ち來りし者は誰ぞや、我爾が來る前に諸物を食ひて、彼を祝したり、而して彼祝福を得ん。イサフは其父イサアクの言を聞きて、大に嘆き、痛く泣きて曰へり、父よ、我をも祝せよ。彼曰へり爾の弟僞を以て來りて、爾の祝福を取れり。イサフ曰へり、彼の名イアコフと名づけられしは宜なり、蓋彼が我を躓かしめしこと已に二次、彼は我が長子の權を奪ひ、今亦我が祝福を奪ひたり。イサフ又其父に謂へり、父よ、豈爾は我が爲に祝福を殘さざりしか。イサアク對へてイサフに謂へり、我彼を爾の主と爲し、彼の兄弟を悉く其僕と爲せり、麥と酒とを彼に授けたり、然らば子よ、我何をか爾に爲さん。イサフ其父に謂へり、父よ、爾の祝福は豈唯一ならんや、父よ、我をも祝せよ。イサアク黙したれば、イサフ大に聲を擧げて哭けり。其父イサアク對へて彼に謂へり、視よ、爾の居所には地の膏膄あり、上

よりの天の露あらん、爾は劍を以て世を度り、爾の弟に事へん、然れども爾之

---------------------[聖枝週間月曜日 晩課 867]---------------------

に敵して、其軛を爾の頸より脱する時至らん。イサフは其父の祝せし所の祝福の爲にイアコフを惡めり。

 

    提綱、第百七聖詠、第七調。

神よ、願はくは爾は諸天の上に擧げられ、爾の光榮は全地を蔽はん。句、我が心備れり、神よ、我が心備れり。

 

   箴言の讀。第十九章。

誡命を守る者は己の靈を守る、其途を顧みざる者は亡びん。貧者に施す者は主に貸すなり、彼は其施の爲に報いん。望ある間に爾の子を罰せよ、其號を意とする毋れ。怒り易き者は罰を忍ぶべし、蓋爾之を恕せば、更に罰せざるを得ず。勤諭を聽き、誡命を承けよ、後に智者と爲らん爲なり。人の心には多くの謀あり、然れども唯主の旨のみ立たん。施濟は人の爲に果を結ぶ、義なる貧しき者は富める者に愈る。主を畏るる寅畏は生命に導く、之を有つ者は恒に満足す、禍彼に及ばざらん。惰者は其手を盂に入れ、而して之を其口に遞るを欲せず。爾若し侮慢者を罰せば、拙者も慎まん、哲者を責めば、彼敎訓を暁らん。

---------------------[聖枝週間月曜日 晩課 868]---------------------

 

    挿句に本日の自調、二次、第四調。

救世主よ、我等を靈を害する貪婪より釋きて、貧しきラザリと偕にアウラアムの懐に入れ給へ。蓋爾慈憐に富める主は甘んじて我等の爲に貧しくなりて、我等を朽壞より不朽に移し給へり、仁慈にして人を愛する神なればなり。』

 

致命者讃詞、聖なる致命者の忍耐を受けし仁愛の主よ、我等よりも歌詠を受けて、彼等の祈に因りて我等に大なる憐を與へ給へ。

 

光榮、今も、生神女讃詞、ハリストス神の母、萬有の造成主を生みし者よ、我が危難より我等を救ひ給へ、我等皆爾に呼ばん爲なり、吾が靈の惟一の轉達よ、慶べ。

 

           ~~~~~~~

 

 

 

 

 

---------------------[聖枝週間月曜日 晩課 869]---------------------

 

 

  聖枝週間の火曜日の早課

 

本調の聖三の讃歌。

第一の誦文の後に八調經の傷感の坐誦讃詞二、及び生神女讃詞。第二の誦文の後に左の坐誦讃詞、イオシフ師の作。第六調。

我罪の病に弱められて、失望の牀に臥す。病む者の大仁慈なる醫師よ、求む、爾の仁愛を以て我を顧みて、我が眠りて死に至るを許す毋れ、我が熱切に爾に呼ばん爲なり、慈憐を賜ふ主よ、光榮は爾に帰す。

   光榮、同上。

今も、生神女讃詞、ガウリイルが童貞女に語りしことは救の始と爲れり、蓋彼は慶べよと聞きて、問安を斥けず、幕に在るサッラの如く疑ふことなかりき、斯く言へり、我は主の婢なり、爾の言の如く我に成るべし。

   第三の誦文の後に坐誦讃詞、フェオドル師の作。第五調。

昨日も今日もラザリは病む、其親族は明に之をハリストスに告ぐ。ワィファニヤよ、喜びて生を施す主及び王を賓客として接けん爲に己を備へて、我等と偕に呼べ、主よ、光榮は爾に歸す。

---------------------[聖枝週間火曜日 早課 870]---------------------

   光榮、同上。

今も、生神女讃詞、同調。至聖なる神の母「ハリスティアニン」等の牆よ、熱切に爾に祈る爾の民を常の如く護りて、汚らはしく又驕れる思念を彼等より逐ひ給へ、我等が爾に呼ばん爲なり、永貞童女よ、慶べ。

規程は月課經の、又三歌頌、イオシフ師の作、并に歌頌を誦文す。第六調。

   第二歌頌

イルモス、見よ、見よ、我は神、昔我が一の右の手及び力にて我が民の爲に野に「マンナ」を降らし、石より水を出しし者なり。

ハリストスよ、爾は本性の富む者にして、甘じて貧しくなり、凡そ呼吸ある者を飽かしむる主にして、齋して飢ゑたり。求む、言よ、我爾の恩寵に飢うる者を飽かしめて、我を彼處の宴に與る者と爲し給へ。

洪恩なるハリストスよ、我を罪に貧しきラザリと爲して、我が惡しく集めし富を散らし、爾の全備なる惠を顯して、我を彼處の畏るべき苦より救ひ給へ。』

昔齋はワワィロンに於て少者を鋭くして、火よりも強き者と爲せり。鳴呼吾が靈よ、彼等に效ひて倦む勿れ、然らば逸樂の火を神の露にて滅さん。

生神女讃詞、恩寵を蒙れる生神童貞女よ我等は爾喜慶を生みし者に慶べよと

---------------------[聖枝週間火曜日 早課 871]---------------------

呼ぶ。爾が生みし神に常に爾を歌頌する者が患難と朽壞より救はれんことを祈り給へ。

 

   又、フェオドル師の作、第五調、

イルモス、「見よ、見よ、我は神」。

見よ、見よ、我は神、イオルダンの彼の方を周る時、ラザリの病めるを聞きて、彼は死せず、此れ我が光榮の爲なりと言ひし者なり。

ラザリの姉妹は痛く哭きて、爾知らざる所なき主に哀を顯す。然れども爾は暫時留まり給ふ、奇跡を立てて爾の門徒に畏るべきことを示さん爲なり。

三者讃詞、獨一權能なる三位の惟一者、萬世の宰たる父、子、聖神よ、天使の大數と全人類とは爾を讃榮す。

生神女讃詞、童貞女よ、堕落せしアダムを再興する造成主が爾の内に在るを見て、孰か驚かざらん。彼は言ひ難き合一を以て變易せずして、我等の救の爲に爾より身にて生れ給へり。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

鳴呼ワィファニヤよ、今喜を以て己を飾りて、萬有の王を接けよ、蓋彼は爾に來らん、ラザリが朽壞より生命に回るを顯さん爲なり。

---------------------[聖枝週間火曜日 早課 872]---------------------

イルモス、見よ、見よ、我は神、己の旨を以て肉體を衣たる者なり、蛇の誘に因りて罪に陷りしアダムを救はん爲なり。

 

   第八歌頌

イルモス、「ハリストスよ、爾は敬虔なる者の爲により露を注ぎ」。

我不當の者は罪の多きを思ひ、良心の刺に刺されて、の中に在るが如く苦しむ、神の言よ、爾の慈憐を以て我を宥め給へ。

我ラザリの善事を顧みずして、無慈悲なる富める者の風習に效へり仁慈なる神よ、我を還して宥め給へ、我が萬世に爾を讃榮せん爲なり。

我は靈痛く病み、失望に因りて死せんと欲す。イイススよ、我は爾を呼ぶ者を活かしし爾の眷顧を求む。

生神女讃詞、至聖なる童貞女よ、爾我を救ひ、我が不能に援助と爲り給へ、我等が萬世に讃め揚ぐる慈憐を施す主を生みたればなり。

   又、イルモス、「ハリストスよ、克肖なる爾の少者は」。

ワィファニヤ、ラザリの故郷よ、慶べ、ハリストスが爾の中に現れて、ラザリを活かす大事を行はんとすればなり。

神の子よ、ラザリは病む、爾が彼に由りて榮せられん爲なり。主の悉くの造物は

---------------------[聖枝週間火曜日 早課 873]---------------------

絶えず爾を歌ふ。

  我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

我等は父と子と聖神との中に至聖三者を歌頌して歌ふ、主の造物は主を崇め讃のよ。

 

生神女讃詞、潔き者よ、我等皆爾の言ひ難き産を歌ひて、彼を神として尊み、悉くの造物は彼を造成者及び主として崇め讃む。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

我等は今ハリストスを迎へん爲に諸徳の枝を備へて呼ぶ、主の造物は主を崇め讃めよ。

  我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

 

イルモス、ハリストスよ、克肖なる爾の少者は爐の中に歌ひて云へり、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

 

    第九歌頌

イルモス、「天使の品位すら見るを得ざる神は」。

昔始めて造られし人は樹の果を食ふに縁りて樂園より遂はれて、死の網に墜されたり、鳴呼吾が靈よ、齋して之に效ふを避けよ、憂を致す逸樂の樂を避けよ。

---------------------[聖枝週間火曜日 早課 874]---------------------

至りて義なる審判者よ、我爾の審判と滅えざるとを思の中に入れて、審判に先だちて己を定罪す、蓋地上の衆人に超えて無量に爾の前に罪を犯して恐れ慄く。故に爾に祈る、我を宥め給へ。

我等は光照を到す祈に因りて諸慾の暗昧を掃ひ、諸徳の枝を執りて、急ぎてハリストスを迎へん。彼は我等を救はん爲に己を苦を受くるに備へて、今小驢に乘りて來る。

 

生神女讃詞、恩寵を蒙れる童貞女よ、爾より諸慾の夜に蔽はるる者の爲に光と平安とを與ふるハリストスは輝き出でて、暗昧の罪犯を釋きて、我等に明に救贖を賜へり。

   又、イルモス、「イサイヤ祝へよ」。

 

睿智なるラザリよ、今葬の事を備へよ、蓋爾の生命は終る、明日死なん、爾が入らんとする墓を見よ。然れどもハリストスは爾四日目の死者と爲るを起して、復活かさん。

ワィファニヤ祝へよ、蓋ハリストスは爾に來りて、大なる畏るべき奇跡を行ひ、死を縛りて、神として死せしラザリを復活せしめて、造成主を讃揚するを致さん。

---------------------[聖枝週間火曜日 早課 875]---------------------

三者讃詞、惟一なる神性よ、我爾を歌頌す無原なる三者、生命の原因たる分れざる尊き惟一者、生れざる父、生れたる言又子、及び聖神よ、我等爾を歌ふ者を救ひ給へ。

 

生神女讃詞、神の母よ、爾の産は智慧に超ゆ、蓋爾の内の胎孕は夫に由らず、爾の産は童貞女の産なり、生れし者は神なればなり。我等彼を崇めて、爾童貞女を讃め揚ぐ。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

來りて、主を迎へん爲に己を備へて、諸徳の枝を彼に捧げん。蓋我等は斯く彼をイェルサリムの城に於けるが如く我が靈の内に接けて、伏拜して彼を歌はん。

イルモス、イサイヤ祝へよ、童貞女は孕みて、子エムマヌイル、神及び人なる者を生めり、其名は東、我等彼を崇めて、童貞女を讃め揚ぐ。

 

   光耀歌

   挿句に本日の自調、二次。第五調。

鳴呼過に躓き、罪の縲絏に縛られたる靈よ、何ぞ悶え、何ぞ怠る。ロトのソド

---------------------[聖枝週間火曜日 早課 876]---------------------

ム及びゴモラに於けるが如く、常に不潔の慾の火を避けよ、後を顧みる勿れ、鹽柱の如くならざらん爲なり、諸徳の山に救はれよ。常に無慈悲なる富める者の貪の慾を避けよ、ラザリの如くアウラアムの懐に進め、謙卑の心を抱きて呼べ、我が恃頼、我が避所なる主よ、光榮は爾に歸す。

致命者讃詞、主よ、爾の受難者は天使の品位に效ひて、肉體無き者の如く苦を忍びて、一心に約せられし福の樂を恃頼として有てり。ハリストス神よ、彼等の祈に由りて爾の世界に平安、我等の靈に大なる憐を與へ給へ。

光榮、今も、生神女讃詞、讃美たる者よ、我等爾を神の母として爾に求む、我が靈の救の爲に祈り給へ。

          ~~~~~~~

 

 

   第六時課に預言の讃詞、第五調。

救世主よ、爾は我等の邑に破られざる城として、爾を生みし童貞女を賜へり。祈る、彼に因りて、我等の靈を圍める諸惡より出し給へ。

 

   提綱、第百八聖詠、第四調

主我が神よ、我を助け、爾の憐に依りて我を救ひ給へ。句、我が讃美の神よ、黙す毋れ。

---------------------[聖枝週間火曜日 第六時課 877]---------------------

   イサイヤの預言書の讀。第四十九章。

主是くの如く言ふ、我爾を立てて異邦人の光と爲さん、我が救の地の極にまで至らん爲なり。主イズライリの贖罪者、其聖者は、人に藐られ、民に憎まれ、諸宰に役せらるる者に是くの如く言ふ、諸王は見て起ち、諸侯は拜せん、眞實の主、イズライリの聖者、爾を選びし者の故に縁りてなり。主是くの如く言ふ、納るべき時に我爾に聽き、救の日に爾を助けたり、又我爾を守りて民の約と爲さん、地を興し、荒れたる嗣業を以て繼ぐ者に還し、俘囚に出でよ、幽暗に在る者に顯れよと言はん爲なり。彼等は路の旁に牧し、悉くの陵に彼等の牧塲あらん、彼等は飢ゑず、渇かず、熱と日と彼等を撃たざらん、蓋矜恤する者は彼等を導かん。

 

    提綱、第百九聖詠、第四調。

爾メルヒセデクの班に循ひて司祭と爲りて世世に迄らん。句、主我が主に謂へり、爾我が右に坐せよ。

 

          ~~~~~~~

 

---------------------[聖枝週間火曜日 第六時課 878]---------------------

 

 

  聖枝週間の火曜日の晩課

 

常例の聖詠誦讀。「主よ、爾にぶ」に六句を立てて左の讃頌を歌ふ、イオシフ師の作。第二調。

兇惡者の凡の攻撃に弱められたる我が多慾の心は憂悶の柩に倒されて、石の如く無感覺にて掩はる。爾の十字架の生を施す木を以て凡そ地獄にある者を活かしし救世主よ、我を起して活かし給へ、我が畏を以て爾の神性を讃榮せん爲なり。

我無知なる者は兇惡者の行動に由りて害を爲す逸樂の富を常に愛して、徒に樂しみ、神聖なる糧に飢ゑて歎息する靈を夫のラザリに於けるが如く顧みざりき。言よ、爾の慈憐を以て我を將來のより脱れしめ給へ、我が爾仁愛の主を讃榮せん爲なり。

 

   又、フェオドル師の作。第三調、

今日ラザリは氣絶えたり、ワィファニヤは之を哀しむ、我が救世主よ、爾は彼を死の中より起して、爾の友に預爾の嚴なる復活と、地獄の殺され、アダムの活かさるることとを示し給ふ。故に我等爾を歌ふ。

---------------------[聖枝週間火曜日 晩課 879]---------------------

   又、月課經の三章。光榮、今も、生神女讃詞。

   提綱、第百十聖詠、第四調。

主を畏るる畏は智慧の始なり。句、主よ、我心を全うして爾を讃榮す。

 

   創世記の讀。第三十一章。

主はイアコフに謂へり、爾の父の地に爾の親族に歸れ、我爾と偕に居らん。イアコフ使して、ラヒリとリヤとを野に、群の所に招きて、彼等に謂へり、我爾等が父の面を見るに、其我に對すること、咋日一咋日の如くならず、然れども我が父の神は我と偕に在りき、爾等自ら知れる如く、我力を竭して爾等の父に事へしが、爾等の父は我を欺きて、十次も我が傭値を易へたり、唯神は彼に我を害することを容さざりき。彼若し斑駁なる者は爾の傭値と爲らんと云はば、羊は皆斑駁にして生る。若し白き者は爾の傭値と爲らんと云はば、羊は皆白くして生る。斯く神は爾等の父の家畜を悉く奪ひて、之を我に與へたり。羊の孕む時に當りて、我夢に目で擧げて見しに、羊と山羊との上に乘れる牡山羊と牡羊とは、紋理の者、斑駁なる者、白點なる者なり。時に神の使夢の中に我に謂へり、イアコフよ。我曰へり、何ぞ。彼曰へり、爾の目を擧げて見よ、羊と山羊との上に乘れる牡山羊と牡羊とは、紋理の者、斑駁なる者、白點なる者なり、蓋我は凡そラワンが爾に爲す所を見たり。我は

---------------------[聖枝週間火曜日 晩課 880]---------------------

ワェフィリに爾に現れし神なり、爾が膏を柱に沃ぎて我に獻ぜし處、及び誓を我に立てし處なり、今起ちて、斯の地を出でて、爾の生れし地に歸れ、我爾と偕に居らん。ラヒリとリヤと彼に對へて曰へり、我等の父の家には豈尚我等の分或は嗣業あらんや、我等は彼に他人の如くせらるるに非ずや、蓋彼は我等を賣り、又我等の銀を蝕へり、神が我等の父より奪ひし富と榮とは、皆我等及び我等の諸子の所有と爲らん。故に爾今神が凡そ爾に言ひし事を行へ。

 

    提綱、第百十一聖詠、第四調。

彼は慈あり惠ありて義なる者なり。句、神を畏るる人は福なり。

 

   箴言の讀。第二十一章。

我が子よ、義と公平とを守るは、祭祀に勝りて主の悦ぶ所なり。高ぶる目と驕る心とは、惡者の光にして罪なり。勤勞する者の圖る所は豊盛なるを致し、凡そ性の急しき者は損を招く、詐僞の舌を以て財を得るは、虚しきを追ひて死の網に陷るなり。惡者の暴虐は返りて彼等を滅さん、蓋彼等は義を守ることを拒めり。不法の人の途は曲り、潔き者の行爲は直し。争を好む婦と偕に廣き家に居らんよりは、屋葢の隅に居らん。惡者の靈は惡を樂ふ、其友も其目の前に哀憐を獲ざらん。侮慢者罰

---------------------[聖枝週間火曜日 晩課 881]---------------------

せらるる時は拙者智者と爲り、智慧ある者誨へらるる時は知識を得。義者は惡者の靈を監察し、彼等を其惡の爲に藐ず。己の耳を貧者の呼聲より塞ぐ者は、自も呼ばん、而して聽かれざらん。潜なる饋物は憤を宥め、賄賂を吝しむ者は烈しき怒を興す。公義を行ふことは義者の爲に喜悦にして、惡を爲す者の爲に畏懼なり。義の途に迷ひし者は死者の會に居らん。宴樂を好む者は貧しくなり、酒と膏とを好む者は富を獲ざらん。惡者は義者の贖と爲り、詐る者は直き者に代らん。争を好みて怒り易き婦と偕に居らんよりは荒野に居らん。智慧ある者の家には慕ふべき寶と膏とあり、愚なる人は之を呑み盡す。公義と矜恤とに從ふ者は生命と光榮とを獲ん。

 

    挿句に本日の自調、二次。第一調。

鳴呼神に織られたる自主の紫布と不朽の布とを衣たる吾が靈よ、爾は己の尊位を辱かしめて、富と樂とを罪と爲し、己の同族を輕蔑す、富める者がラザリを輕蔑せしが如し。然れども彼と偕に苦しめられざらん爲に神にて貧しくなりて、爾の爲に貧しくなりし主に呼べ、釘せられざる先に辱の紫布を衣せられて、我の爲に裸體にして釘せられしハリストスよ爾の國の衣を我に衣せて、永遠の恥を免れしめ給へ。

---------------------[聖枝週間火曜日 晩課 882]---------------------

致命者讃詞、鳴呼聖なる者よ、爾等の貿易は善なる哉、蓋血を與へて、天の者を嗣ぎ、暫時苦しみて永遠に樂しむ。實に爾等の貿易は善なり、朽壞の者を棄てて、不朽の者を受けたればなり。今諸天使と偕に祝ひて、絶えず一體の聖三者を歌ふ。

 

光榮、今も、十字架生神女讃詞、童貞女はハリストスが木に懸れるを見し時云へり、嗚呼子よ、昔シメオンが我に預言せし如く劍は吾が心を貫きて之を裂く。然れども祈る、不死なる主宰よ、起きて、爾の母及び婢を己と偕に榮し給へ。

 

         ~~~~~~~

 

 

  聖枝週間の水曜日の早課

 

聖三の讃歌。

第一の誦文の後に八調經の十字架の坐誦讃詞二、十字架生神女讃詞と共に誦す。第二の誦文の後に左の坐誦讃詞、イオシフ師の作。第二調

宏恩なる主よ、我石の如く多くの罪に壓せられて、簡慢の柩に臥す。慈憐なる

---------------------[聖枝週間水曜日 早課 883]---------------------

主よ、我を此より起し給へ。二次。

十字架生神女讃詞、潔き女宰生神女よ、我等皆爾の子の尊き十字架に護られて、戰ふ敵の凡の攻撃を輙く防ぐ。故に宜しきに合ひて爾を光の母及び吾が靈の惟一の恃頼として讃榮す。

 

第三の誦文の後に坐誦讃詞、フェオドル師の作。第三調。

今日死せしラザリは葬られて、其親族は悲歎の歌を歌ふ、爾前知者及び神の之を預言せしが如し、蓋爾は門徒にラザリは寢ねたり、然れども我今往きて、我が造りし者を復活せしめんと告げ給へり。故に我等皆爾に呼ぶ、光榮は爾の權能に歸す。二次。

十字架生神女讃詞、ハリストスよ、婚姻に與らざる潔き童貞女爾の母は爾が木に懸りて死したるを見て、母として哭きて云へり、吾が子よ、不法にして恩を知らざるエウレイの會、爾の多大なる恩賜を樂しみし者は何をか爾に報いたる、我爾の神聖なる寛容を歌ふ。

 

規程は月課經の、及び左の三歌頌、イオシフ師の作。第二調。

   第三歌頌

イルモス、「諸善を耕作し、諸徳を培養する神よ」。

---------------------[聖枝週間水曜日 早課 884]---------------------

主よ、兇惡なる攻撃に由りて弱りたる吾が智慧を爾の十字架の力を以て堅めて、爾の旨に向はしめ給へ。

主よ、逸樂の牀に放心の眠に寢ぬる我を起して、爾の、苦に伏拜する者と爲し給へ。

我等は靈照され、齋に由りて潔くなりて、往きて肉體を以てイェルサリムに來るハリストスを迎へん。

生神女讃詞、神性の火に焚かれざりし潔き者よ、我が不潔なる諸慾を焚き給へ、我が熱心に爾潔き者を讃榮せん爲なり。

   又、第三調。イルモス、「果を結ばざる子なき靈よ」。

 

今日死せしラザリはイイススの見ざる所なき目に隠れざりき。故に彼は門徒に之を言ひて呼ぶ、我等の友ラザリは寢ねたり、我往きて彼を復活せしめん。

主よ、爾は復イウデヤに往かんと言ひて、門徒を畏れしめたり、然れどもフォマは毅然として呼べり、彼は生命なり、我等も往かん、蓋死すとも復生きん。

三者讃詞、一性なる三者、全能の父、同無原の子、同座の聖神、惟一に伏拜せらるる造られざる神性よ、我等衆人は爾を歌ふ。

---------------------[聖枝週間水曜日 早課 885]---------------------

生神女讃詞、至浄なる童貞女母、イエッセイの根なる者よ、地に生るる者に生を施す花たるハリストスは爾より輝けり。潔き者よ、我等皆爾に由りて朽壞及び死より救はれて、爾を歌ふ。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

シオンよ、慶べ、今温柔なる爾の王は臨む、預言者の呼びしが如し。小驢は肉體にて之に乘る主、己の手に萬物を持ち、我等が其權能を歌ふ者を載す。

イルモス、果を結ばざる子なき靈よ、榮えたる果を獲て、樂しみて呼べ、神よ、我爾に縁りて堅められたり、主よ、爾の外に聖なるはなく、義なるはなし。

 

   第八歌頌

イルモス、「昔シナイ山に於て棘の中に」。

ハリストスよ、我が卑微なる靈の甚しき放心の重き石を去り、我を無感覺の柩より起して、爾を、言よ、讃榮せしめ給へ。

前知者及び神よ、爾は慈憐の多きに因りて、爾の友の死を己の友に預言し、且彼四日目の死者たる者を、爾の光榮の爲に、墓より起さんことを定め給へり。』

ハリストスよ、爾は木の果の食にて殺されたる者に不死を賜はんと欲して、爾生命の樹たる主を木にて殺さんことを謀るイウデヤに復赴き給ふ。

---------------------[聖枝週間水曜日 早課 886]---------------------

生神女讃詞、潔き童貞女よ、爾に於て悉く神の途は見られたり、彼は産の後に爾の貞潔を護りて、之を萬世に封ぜられたる者と爲し給へり。

   又、イルモス、「無原なる父より世世の前に生れし神」。

 

ハリストスの友たる死せしラザリは今日葬られ、マリヤ及びマルファと共に在る者は皆哭く。ハリストスは喜を以て彼に往き給ふ、人人に己が衆人の生命たるを示さん爲なり。

人人よ、橄欖山よりするが如く、慈惠の高きより諸徳の枝を伐り來りて、ハリストスの見えずして我等に來るを迎へ、彼を崇め歌ひて、萬世に讃め揚げん。

  我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

三者讃詞、三位の惟一者、父、子、及び生活の神、惟一の神性、惟一の國よ、天使の軍は爾暮れざる光を讃榮す、我等地上の者も爾を崇め歌ひて、萬世に讃め揚ぐ。』

生神女讃詞、至浄なる者よ、視よ、我等萬族は爾の大事を見て、爾を讃揚す、蓋爾は性に超えて萬有の造成主、神及び人なる者を生み給へり。故に我等爾を崇めて萬世に讃め揚ぐ。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

我等も童子と共にハリストス神を迎へ、枝に易へて慈惠を心の祈の中に捧げ、

---------------------[聖枝週間水曜日 早課 887]---------------------

梢を執りて呼ばん、「オサンナ」、主を崇めて、萬世に讃め揚げよ。

   我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

イルモス、無原なる父より世世の前に生れし神、末の日に生神女に藉りて肉體を衣たる主を、完き人及び眞の神として崇め歌ひ、萬世に讃め揚げよ。

 

   第九歌頌

イルモス、「童貞女が孕める者と現れて」。

ダニイルは齋に護られて、猛獸の口を閉せり。我が靈よ、之に效ひて、吼ゆる獅子の如く、凡の靈を食と爲さんと謀る蛇を十字架の助を以て遂ひ斥けよ。』

神の言よ、諸罪に殺され、犯罪の柩に閉されたる吾が靈を爾の生を施す言を以て復活せしめて、爾死の勝利者に諸徳の枝を捧ぐるを得しめ給へ。

神父の言、天を寶座と爲し、地を足のと爲す主は小驢に乘せられて、聖なる城に入り給ふ、萬有の王として嬰児の口より嘉く納れらるる讃美を受けん爲なり。

生神女讃詞、鳴呼至りて奇妙なる潔き者よ、爾は獨女の中に美しく妝はれて、衆人より美しき者と現れたる至りて美しき言を生み給へり。童貞女よ、吾が心の汚を潔めんことを彼に祈り給へ。

---------------------[聖枝週間水曜日 早課 888]---------------------

   又、イルモス、「モイセイはシナイ山に於て」。

 

ラザリの姉妹は今日親族が石に掩はれたるを見て、葬の涙を流す。然れども吾がハリストスは遠くありて之を使徒に語りて告げたり、我爾等の爲に喜ぶ、蓋肉體にて彼處に在らざりき。

兇殺者たるイウデヤよ、ハリストスは神として救を施す苦を受けんと欲して復爾に往く。爾が石を以て殺さんと謀りし者は、視よ、親ら爾より死を受けん爲に來る、我等を救はん爲なり。

 

三者讃詞、神は惟一にして三者なり、嗚呼至榮なる眞理や、性に於て惟一にして分離せざる者は、位に於て分れて、一なる者は三と爲り給へり、是れ父と子と生活の神、萬有を護り給ふ神なり。

生神女讃詞、子を生む童貞女、又夫に與らざる母の事を誰か聞きたる、マリヤよ爾は奇跡を行ひ給ふ然れども是れ如何に、我に言へ。我が神を生みし産の深きを窮むる勿れ、是の奥密は實に人の智慧に超ゆ。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

我等は椶櫚の枝を執り、内心と外形とを以て出でて、我等に來る主宰を迎へん蓋眞の子として主及び父の名に因りて來る者は祝福せらる。

---------------------[聖枝週間水曜日 早課 889]---------------------

イルモス、モイセイはシナイ山に於て棘の中に、爾を焚かれずして神性の火を胎内に孕みし者として觀、ダニイルは爾を截られざる山として觀、イサイヤは芽を萌しし杖、ダワィドの根より出でし者なりと呼べり。

 

   光耀歌は本調の。

   挿句に本日の自調の讃頌。二次。第一調。

イズライリは紫布と布とを衣て、聖衣と王服とに耀き、律法と預言者とに富みて、律法の奉事を樂しめり、然れども、恩主よ、爾貧しくなりし者を門の外に十字架に釘せり。釘せし後爾活きて神父の懐に永在する主を受けずして、恩寵の一滴に渇く、紫布と布とを衣たる無慈悲なる富める者が滅えざる火に入りて、貧しきラザリよりの一滴に渇くが如し。イズライリは苦しみて、先に眞理の屑に乏しかりし異邦人が今アウラアムの信の懐に温められ、爾の血の紫布と洗禮の細布とを衣、爾の恩賜に富み、之を樂しみて、ハリストス我等の神よ、光榮は爾に歸すと言ふを見る。

致命者讃詞、至りて讃美たる致命者よ、憂患も、困苦も、飢渇も、窘逐も、創痍も、猛獸の猛きも、刀劍も、烈しき火も爾等を神より離すこと能はざりき。爾等は更に彼を愛する愛を燃して、他人の身に在るが如く闘ひて、性を忘れ、死を顧みざりき。

---------------------[聖枝週間水曜日 早課 890]---------------------

故に宜しきに合ひて爾等の苦の報を受け、天國の嗣と爲れり。息めずして我が靈の爲に祈り給へ。

   光榮、今も、十字架生神女讃詞。

仁愛なるハリストスよ、潔く爾を生みし者は爾地を水の上に懸けし主が懸りたるを見て呼べり、哀しい哉、斯の驚くべき顯見は何ぞ甘愛なる子よ爾の無量なる美麗は奈何ぞ隠れたる。我爾の慈憐を讃揚す爾自由に衆人の爲に苦しめばなり。

          ~~~~~~~

 

   第六時課に預言の讃詞。第五調。

主よ、爾の慈憐を我等に垂れて、我が不法に我等を付す毋れ。聖なる主宰全能者よ、我等爾に祈る。

 

   提綱、第百十二聖詠。第四調。

主の諸僕よ、讃め揚げよ、主の名を讃め揚げよ。句、願はくは主の名は崇め讃められて今より世世に至らん。

 

   イサイヤの預言書の讀。第五十八章。

主是くの如く言ふ、大に呼べ、自ら禁むる毋れ、爾の聲を箛の如く擧げよ、我が

---------------------[聖枝週間水曜日 第六時課 891]---------------------

民に其不法を示し、イアコフの家に其諸罪を示せ。彼等日日我を尋ね、我が道を知らんと欲す、義を行ひて其神の法を棄てざる民の如し、彼等我に義の鞫を問ひ、神に近づかんことを望む、胡爲れぞ我等齋するに、爾之を視ざる、我が靈を卑くするに、爾之を知らざると云ふ。視よ、爾等齋の日に己の旨を行ひ、他人には重き苦勞を促す。視よ、爾等齋するは、相争ひ、相鬩ぐ爲、狂暴の手を以て他人を撃つが爲なり、爾等が今齋するは、爾等の聲の上に聞えん爲にするに非ず。我が選びし齋、人が其靈を卑くする日は此くの若きか、此れ其首を葦の如く俯せ、麻と灰とを己の下に敷くに在るか、爾之を齋、又主の悦ぶ日と名づけんか。我が選びし齋は左の如し、不義の縛を釋け、軛の索を解け、虐げらるる者を縦せ、凡ての軛を折れ、饑うる者に爾の糧を分て、徨へる貧者を爾の家に納れよ、裸なる者を見る時之に衣せよ、爾の骨肉の者より匿るる毋れ。其時爾の光は暁の如く顯れ、爾の醫は速に進み、爾の義は爾の前に行き、主の光榮は爾に伴はん。其時爾聲を發せば、主は聽かん、ばば、彼は我此に在りと云はん。爾己の中より軛を除き、指を擧げて侵し慢る事を言ふを息め、爾の靈を饑うる者に予へ、苦しむ者の靈を飽かしめば、其時爾の光は暗の中に出で、爾の暗は晝の如くならん、且主は恒に爾を導かん。

---------------------[聖枝週間水曜日 第六時課 892]---------------------

   提綱、第百十三聖詠、第六調。

爾等は天地を造りし主に降福せられたり。句、天は主の天なり、地は彼之を人の諸子に與へたり。

 

            ~~~~~~~

 

 

  聖枝週間の水曜日の晩課

 

常例の聖詠誦讀。「主よ、爾にぶ」、に十句を立てて左の本日の自調の讃頌を歌ふ。第五調。

我慾に富み、僞善の外飾の衣を衣、不節制に惡事を樂しみ、甚しき無慈悲を顯して、我が智慧を棄て、其痛悔の門の前に臥し、凡の善に飢え、我が放心を病めるを顧みず。然れども爾は、主よ、我を罪に貧しきラザリと爲し給へ、恐らくは我滅えざる火の中に我が苦しめる舌を濕す指を求めて得ざらん。仁愛なる主として我を太祖アウラアムの懐に納れ給へ。二次

 

致命者讃詞、聖なる致命者よ、爾等は靈の愛を傾けてハリストスを愛し、彼を

---------------------[聖枝週間水曜日 晩課 893]---------------------

諱まずして、種種の苦を忍び、殘虐者の強暴を倒し、屈せず撓まざる信を守りて、天に移り給へり。故に主の前に勇敢を有ちて、我等に大なる憐を賜はんことを祈り給へ。

   又讃頌、イオシフ師の作。第五調。

イイススよ、爾は身にてイオルダンの彼の方を周りて、爾と偕に在る者に呼べり、友ラザリは已に死して、今葬に付されたり。故に吾が友よ、我爾等の爲に喜ぶ、蓋爾等は我が見ゆる人と現るれども、變易なき神にして、知らざる所なきを識らん。然らば往きて彼を活かさん、死が己の勝たれて、全く破らるるを感覺せん爲なり。我明に之を爲して、世界に大なる憐を賜はん。

我等信者はマルファ及びマリヤに效ひて、主に祈の如く神聖なる行を遣さん、彼が來りて、我等の智慧、今死して、感覺なき者として怠惰の墓に臥し、神を畏るる畏を聊も感せず、生命の動力を有たざる者を復活せしめん爲なり。仁慈なる主よ、昔爾が畏るべき來臨を以て爾の友ラザリを起しし如く、斯く我等衆人を活かして、大なる憐を賜へ。

 

   又讃頌、フェオドル師の作。第六調。

ラザリは已に二日墓の中に在りて、古世より死せし者を見、彼處に驚くべく畏るべ

---------------------[聖枝週間水曜日 晩課 894]---------------------

き事に遇ひ、地獄の縲絏に縛らるる無量の大數を見る。彼の親族は其墓を己の前に見て、甚しく哭く。然れどもハリストスは往きて己の友を活かして、衆に聲を調へて歌はしめん、救世主よ、爾は崇め讃めらる、我等を憐み給へ。

   又月課經の四章。

 

   提綱、第百十四聖詠、第四調。

我生ける者の地に在りて主の顔の前に行かん。句、喜ぶ、主の我が聲、我が祈を聽きしに因る。

 

   創世記の讀。第四十三、四十五章。

イオシフの兄弟は其手に持てる禮物を家に攜へ入りて、彼に獻じ、地に伏して彼を拜せり。イオシフ彼等に問ひて曰へり、爾等恙なきか、又曰へり、爾等の父、爾等が言ひし所の老人は健なるか、尚存するか。彼等曰へり、爾の僕、我等の父は健にして、尚存す。彼曰へり、斯の人は神に祝せらるる者なり。彼等俯伏して拜せり。イオシフ目を擧げて、其同母の弟ワェニアミンを見て曰へり、是は爾等の季の弟、爾等が我に攜へ至らんと言ひし者なるか、又曰へり、子よ、願はくは神は爾に惠を施さん。是に於てイオシフ其弟の爲に心焚くが如くなるに因りて、急ぎて泣くべ

---------------------[聖枝週間水曜日 晩課 895]---------------------

き處を尋ね、室に入りて彼處に泣けり。而して面を洗ひて、出でて自ら抑へたり。遂にイオシフは其旁に立てる人人の前に自ら制する能はずして呼べり、衆を我より離れしめよ。一人もイオシフの旁に無かりし時、彼は己を其兄弟に識らしめたり。彼聲を放ちて泣けり、エギペト人皆之を聞き、ファラオンの家にも聞えたり。イオシフ其兄弟に謂へり、我はイオシフなり、我が父尚存するか。兄弟彼に答ふる能はざりき、驚き懼れたればなり。イオシフ其兄弟に謂へり、我に近づけ。彼等近づきたれば、曰へり、我は爾等の弟イオシフ、爾等がエギペトに賣りたる者なり、然れども今爾等我を此に賣りしを以て憂ふる勿れ、自ら恨むる勿れ、蓋神は爾等の生命を救はん爲に、我を爾等の先に遣せり、此の二年の間饑饉地に在りしが、尚五年ありて、其間は耕すことも穫ることもなからん、神は爾等の後を地に存さん爲、又大なる救を以て爾等の生命を救はん爲に、我を爾等の先に遣せり。然らば我を此に遣しし者は、爾等に非ず、乃神なり、彼は我を以てファラオンの父の如き者と爲し、其全家の主と爲し、エギペト全地の宰と爲せり。爾等速に上り、我が父に詣りて彼に謂へ、爾の子イオシフ斯く云ふ、神我を立ててエギペト全地の主と爲せり、下りて我に來れ、遅滞する勿れ、爾アラワィヤのゲセムの地に住はん、斯く爾及び爾の諸子、爾の諸子の諸子、爾の羊、爾の牛、並に爾の凡ての所有は我に近

---------------------[聖枝週間水曜日 晩課 896]---------------------

き處に在らん、尚五年の饑饉あるによりて、我彼處に爾を養はん、爾と、爾の諸子と爾の凡ての所有の滅びざらん爲なり。視よ、爾等の目及び我が弟ワェニアミンの目の覩る如く、爾等に之を言ふ者は我が口なり、爾等エギペトに在る我が榮と、凡そ爾等が見る所とを悉く我が父に告げ、且急ぎて我が父を此に導き來れと。而して彼は其弟ワェニアミンの頸を抱きて哭けり、ワェニアミンも亦彼の頸に傍りて哭けり。亦其悉くの兄弟に接吻し、彼等を抱きて哭けり。其後兄弟彼と語れり。イオシフの兄弟來れりと言ふ聲ファラオンの家に至りたれば、ファラオン及び其諸僕は之を悦べり。

 

 

   提綱、第百十五聖詠、第四調。

我が誓を主に、其衆民の前に償はん。句、我信ず、故に言へり我孔傷めり。

 

   箴言の讀。第二十一、二十二章。

己の口と舌とを守る者は其靈を患難より守る。高慢なる惡者を侮慢者とづく、彼は驕を逞しくして行ふなり。惰者の情慾は彼を殺す、其手勞することを辭すればなり。惡者は終日慾を圖る、惟義者は施して吝まず。惡者の祭は憎まる、况や惡しき事を謀りて獻ぐる時をや。妄證者は亡びん、知る所を言ふ人は恒に言はん。

---------------------[聖枝週間水曜日 晩課 897]---------------------

惡しき人は其面を剛愎にし、義者は其道を直くす。主に敵しては、智慧もなく、勇氣もなく、謀畧もなし。馬は戰の日の爲に備へらる、然れども勝利は主に由る。嘉名は大なる富に愈り、令聞は金銀に愈る。富める者と貧しき者と相遇ふ、主は共に彼等を造れり。達者は禍を見て自ら避け、拙者は前みて罰を受く。謙遜には神を畏るる寅畏從ひ、富と榮と生命と從ふなり。

    次に先備聖體禮儀を行ふ。

 

          ~~~~~~~

 

 

   聖枝週間の木曜日の早課

 

本調の聖三の讃歌。

第一の聖詠誦文の後に八調經の使徒の坐誦讃詞。

第二の誦文の後に左の坐誦讃詞、イオフシ師の作。第五調

我等は思と行とを合せ、熱切にハリストスに祈を遣して、其畏るべき來臨を以て我等の死せし智慧をラザリの如く活かすを求めん、我等が義の枝を彼に捧げて呼ば

---------------------[聖枝週間木曜日 早課 898]---------------------

ん爲なり、主の名に因りて來る者は崇め讃めらる。

     光榮、同上。

今も、生神女讃詞、至りて無なる生神女よ、吾が靈の最苦しき痛傷及び吾が體の諸病を速に醫し、吾が智慧の邪なるを直くし、我に平安なる思を以て潔きを萬衆の王に奉りて、諸罪の赦を求むるを得しめ給へ。

第三の誦文の後に坐誦讃詞、フェオドル師の作。第六調。

今日はラザリ死して二日なり、此に由りて其親族たるマリヤはマルファと偕に墓の石を前に見て、哀の涙を流す。造成主は己の門徒と共に至りて、死をにして生を賜ふ。故に我等彼に呼ぶ、主よ、光榮は爾に歸す。

   光榮、同上。

今も、生神女讃詞、至聖至潔なる女宰、吾が神の母、萬有の造成主を言ひ難く生みし者よ、聖使徒等と偕に常に彼の仁慈にりて、我等を諸慾より救ひて諸罪の赦を我等に賜はんことを求め給へ。

 

規程は月課經の、又左の三歌頌、イオシフ師の作。并に歌頌を誦文す。第五調。

   第四歌頌

イルモス、「ハリストスよ、アウワクムは先知の目にて」。

---------------------[聖枝週間木曜日 早課 899]---------------------

光明なる諸使徒よ、爾等の慰を與ふる光線を以て罪の蔭に蔽はるる我等、敬虔に爾等を讃め揚ぐる者を照し給へ。

信者よ、我等は愛と慈惠とを合せて、熱切に之をハリストスに遣して祈らん、彼が我等を吾が隠なる諸慾の墓より復活せしめん爲なり。

我等靈の殺されし者は肉體に於ける愛を愛まずして、愛を以て贖罪主に著かん、彼が我等を畏るべき地獄の定罪より救はん爲なり。

我が救世主よ、爾はラザリの寢を預言し、暫くして後彼を起して、枝を持つ哺乳兒より讃美を爾の苦の徴として受けたり。

生神女讃詞、至浄なる神の母よ、爾より不死と生命との神聖なる水は流れたり、之を味ふ者は死を致す渇より救はる。

 

    又、フェオドル師の作。第六調。イルモス、「我爾の風聲を聞きて」。

ラザリは葬らる、其墓にマルファと偕に在りて、爾生を施す主の至らんことを望む者は今哀しみて哭く。

ハリストスよ、死は爾が此に降るを感じて、初めて震ふ、蓋爾は生命として、此が虚しき者と爲るを四極に示せり。

三者讃詞、單一の性、造られざる無原なる神性、三位に於て歌はるる神よ、我等

---------------------[聖枝週間木曜日 早課 900]---------------------

信を以て爾の權能に伏拜する者を救ひ給へ。

生神女讃詞、神の毋よ、父より永遠に生るる子を爾は定期に於て夫に與からずして生み給へり。驚くべき奇跡や、爾は乳を以て之を養ひて童貞女に止まり給ふ。

    我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

野に及び洞に在る者よ、來り聚まりて、小驢に乘り給ふ光榮の主を迎へて、之を歌頌せん。

 

イルモス、我爾の風聲を聞きて懼れたり、爾の作爲を悟りて驚けり、主よ、光榮は爾の力に歸す。

 

   第八歌頌

イルモス、「少者は爐に在りて爾萬物を造りし主」。

隅石たるハリストスの石と現れし主の使徒、神の言を傳へし者よ、吾が心より重き石を去らんことを大仁慈なる主に祈り給へ。

爾は己の友に呼べり、往かん、吾が友ラザリは已に寢れり、我彼を起して、殘害なる死を世世に眠らしめん。

我等は恩寵に由りて靈にては温柔に、風習にては謙遜になりて、兇惡者の傲慢

---------------------[聖枝週間木曜日 早課 901]---------------------

を壞らん爲に來り給ふ萬衆の温柔なる主宰を受けん。

生神女讃詞、純潔なる者よ、預言者は爾を光の輝ける門として見る、蓋爾は我等に肖たる者と爲りし光を賜ふ主を言ひ難く生み給へり。我等萬世に彼を崇め讃む。

   又、イルモス、「爾の敬虔なる少者は」。

 

マリヤ及びマルファは今ラザリが墓に臥すを見て、哭き哀しみて呼ぶ、若しハリストスが此に在りしならば、我が親族は死せざりしならん。

地獄は亡ぼさるるを待つべし、蓋生命は來りて、ラザリを起して呼ばしむ、主を崇め歌ひて、萬世に讃め揚げよ。

  我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

 

三者讃詞、我は無原なる生産と出耀とに由りて、生みたる父に伏拜し、生れたる子を讃榮し、父及び子と共に耀ける聖神を歌頌す。

生神女讃詞、童貞女よ、爾が言ひ難く生みし者に其仁愛の主たるに因りて、爾に趨り附く者を患難より救はんことを絶えず祈り給へ。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

我等信者は諸徳を枝と梢との如く整へて、ハリストス王を迎へて呼ばん、主を崇め

---------------------[聖枝週間木曜日 早課 902]---------------------

歌ひて、萬世に讃め揚げよ。

  我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

イルモス、爾の敬虔なる少者は爐の中にヘルワィムに效ひて、三聖の歌を歌へり、崇めよ、歌へよ、萬世に讃め揚げよ。

 

   第九歌頌

イルモス、「イサイヤ祝へよ」。

主宰ハリストスよ、爾は己の睿智なる門徒を友と爲し、彼等と偕に往きて爾の忠信なる友ラザリを起して、之に感謝の心を抱きて爾を歌はしめたり。救世主よ、求む、我に兇惡者の友と爲るを免れしめ給へ。

慈憐なる主よ、我等が齋を守るに由りて、我等の心と智慧とを喜に盈て給へ、爾我等の靈の救主を熱心に愛する爾の諸使徒の祈に因りてなり

ハリストスよ、我怠惰の墓に居りて、惡の膿汁に由りて臭し。故に爾に呼ぶ、我を起して救ひ給へ、我も諸徳の枝を執り、爾を迎へて、神に「オサンナ」を呼ばん爲なり。

生神女讃詞、至浄なる少女よ、爾は我等の爲に二の性二の旨ある子を生み給へり。彼至りて神聖なる者は父の獨一子にして、人と爲り給へり、我等を至りて神聖なる性

---------------------[聖枝週間木曜日 早課 903]---------------------

に與る者と爲さん爲なり。

   又、イルモス、「種なき胎の産は言ひ難し」。

 

ラザリは今日已に二日墓に在り、マリヤ及びマルファ其姉妹として彼の上に涙を流す。然れどもハリストスは神聖なる使徒と偕に彼に來りて、大なる奇跡を示さん。

殘害なる死よ、滅亡を受けよ、爾の門衛は空しく閉鎖を守る、蓋ハリストスは言を以て爾の門を壞りて、ラザリを起さん。地獄よ、先之を呑めと、預言者は我等と偕に爾に呼ぶ。

 

三者讃詞、獨一子の父、獨一の光の煇煌、獨一の神の聖神よ、嗚呼聖なる三者惟一者よ、我爾を讃揚する者を救ひ給へ。

生神女讃詞、純潔なる者よ、爾の産の奇跡は我を驚かす。如何ぞ爾は種なくして限られぬ主を孕みたる、言へ、如何ぞ母として生みて、童貞女に止まる。性に超ゆることを信を以て受けて、生れし者に伏拜せよ、蓋彼は慾する所を能す。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

主は録されし如く來りて、小驢に乘らん、人人よ畏を以て枝を執りて、萬有の王を、ラザリを地獄より起しし死の勝利者として受けん爲に己を備へよ。』

---------------------[聖枝週間木曜日 早課 904]---------------------

イルモス、種なき胎の産は言ひ難し、夫を知らざる、母の果は朽ちず、神を生む産は天性を改むればなり。故に我等萬族爾を神の聘女なる母として、正しく崇め讃む。

 

   光耀歌は本調の。

   挿句に本日の自調の讃頌、二次。第五調。

兄弟よ、皆來りて、終の前に潔き心を以て慈憐なる神に就き、世俗の累を斥けて、靈の爲に慮を爲し、節制を以て逸樂の食を忌みて、慈惠を施さん、蓋此に縁りて録されし如く、或者は天使等を待へり。己の體にて我等を養ひし者を貧しき者に由りて養ひ、光を袍の如く衣る者を衣ん、至浄なる生神女及び童貞女母の祈に由りて諸罪の赦を得て、傷感の情を以て彼に呼ばん爲なり、主よ、我等に左の者の答を逃れしめて、爾の右に立つを得しめ給へ、爾は仁慈にして人を愛する主なればなり。

 

致命者讃詞、聖なる者は苦の中に在りて歡びて呼べり、是れ我等の爲に主宰に於ける貿易なり、蓋我等は肉體に受くる傷に易へては復活の時に光潔なる衣を受け、耻辱に易へては榮冠、獄の桎梏に易へては樂園、罪犯者と偕にする定罪に易へては天使等と偕に居ることを受けん。主よ、彼等の祈に因りて我等の靈を救ひ給へ。

---------------------[聖枝週間木曜日 早課 905]---------------------

   光榮、今も、生神女讃詞。

萬族より豫選ばれたる童貞女、神の母として一切を能する者よ、我等の聲を聞き、吾が靈の求むる所を應へて、諸使徒に因りて我等を諸難諸病より救ひ給へ。

     ~~~~~~

 

 

   第六時課に預言の讃詞、第一調。

主よ、爾の諸僕の聲を忘るる毋れ。祈る、我等が常に爾能せざる所なき者に恃を負はせしを記念して、我等に助け給へ。

 

   提綱、第百十七聖詠、第四調。

是れは主の門なり、義人等之に入らん。句、主を讃榮せよ、蓋彼は仁慈なり。

 

   イサイヤの預言書の讀。第六十五章。

主是くの如く言ふ、人葡萄の房に汁あるを見ば、云ふ、之を壞る毋れ、祝福其中に在ればなりと、我我が諸僕の爲にも是くの如く行はん、悉くは彼等を滅さざらん爲なり。我イアコフより裔を出し、イウダより我が諸山を繼ぐ者を出さん、我が選びたる者は之を繼ぎ、我が諸僕は彼處に住まん。サロンは羊の群の牧場と爲り、アホル

---------------------[聖枝週間木曜日 第六時課 906]---------------------

の谷は牛の群の伏す所と爲りて、我を尋ねし我が民の用と爲らん。然れども爾等主を棄て、我が聖山を忘れ、ガドの爲に席を設け、メニの爲に調和せし酒を盛る者は、我爾等を劍に付さんことを定め