大斎第1週



 第一週間の月曜日の早課

 

幇堂者は昧爽鐘を撞き、衆常の如く堂に集まる。夜半課を拜なくして歌ふ、但終に三大拜を爲す、「主吾が生命の主宰よ」の祝文と共に。此れ唯第一日のみ。聖大齋の他の日には全夜半課を十六拜と共に歌ふ、常例の如し。次に司祭起ちて首長に常例の拜を爲して、至聖所に入り、香爐を取りて聖寶座の前に立ち、十字形に爐儀を行ひて高唱す、「我等の神は恒に崇め讃めらる」。誦經者答ふ、「アミン」。司祭出でて爐儀を行ふ。誦經者は聖三祝文を拜なくして誦す。「天に在す」の後に司祭高唱す、「蓋國と權能」。「アミン」の後に、主憐めよ、十二次。「來れ我等の王」、三次、拜なし。第十九及び第二十聖詠を誦す。畢りて後聖三祝文、拜なし。「天に在す」の後に常例の讃詞。右の聖詠を誦する時、司祭至聖所及び全堂に爐儀を行ふ。

次に聯「神よ、爾の大なる憐に因リて」。「又吾が皇帝」。「又敎曾を司る至聖なる會院」。高聲、「蓋爾は仁慈にして」。誦經者、「アミン」。又誦す、神父よ、主の名を以て祝讃せよ。司祭直に「光榮は一性にしに生命を施す」。當番の兄弟定位に立ちて

---------------------[大齋第一週間月曜日 早課 185]---------------------

深き注意と神を畏るる畏とを以て、直に見えざる神と對話するが如く、静に六段の聖詠を誦す。

何人も囁き、或は唾し、或は謦咳すべからず、手を膺前に交へ、首を垂れ、目を下に俯せ、心の眼を東方に向け、死と永苦と永生とを記憶し、己の罪の爲にりて、聖詠者の言ふ所を聽くべし。

第百二聖詠を誦し始むる時、司祭早課祝文を黙誦す。諸聖詠畢りて、光榮、今も、「アリルイヤ」、三次。次に大聯及び高聲。次ぎて爾詠隊更大聲にして傷感の情を以って「アリルイヤ」を歌ふ。句左の如し。第一句、神よ、我が神は夜中より爾を慕ふ、蓋爾の誡は地に在りて光なり。第二句、地に居る者は義を學べ。第三句、爾の民を憎む者は辱を承けん。第四句、主我が神よ、我等に平安を與へ給へ。毎句の後「アリルイヤ」を歌ふこと三次。次に聖三の讃歌を歌ふ、第一調に据る。第二章の前に光榮、第三章の前に今も。

【注意】

次に聖詠經の一の「カフィズマ」を誦文す。段の後「アリルイヤ」に我等三小拜を爲す、皆齊しく院長或は聖務長に從ひて之を行ふ。第一の「カフィズマ」の後に八調經の傷感の坐誦讃詞。次に聖エフレムの誦讀。蓋此の日より聖エフレムを始めて花の週間の金曜日に至る。

---------------------[大齋第一週間月曜日 早課 186]---------------------

第二の誦文の後に三歌經の坐誦讃詞、イオシフ師の作。第二調。

我等齋の神聖なる初實として傷感を獲て、靈を全うして呼ばん、主宰ハリストスよ、祈る、我等の祈を馨しき香爐の香として受け、我等を惡臭の腐敗と畏るべき苦惱より脱れしめ給へ、爾は獨寛容の主なればなり。

   光榮、同上。今も、生神女讃詞。

慈憐の泉なる生神女よ、我等に憐を垂れ給へ、罪なる人人を顧みて、恒の如く爾の力を顯し給へ。蓋我等は爾を恃みて、昔無形軍の首ガウリイルの呼びし如く爾に呼ぶ、慶べよ。

 

又聖エフレムの誦讀。

   第三の誦文の後に坐誦讃詞、フェオドル師の作。第二調

我等欣ばしく最尊き節制を始めて、ハリストス我が神の聖なる誡の光線、愛の光明、祈の光照、潔浄の美麗、勇毅の能力を以て輝かん、光を衣たる者として世界に不朽を輝かす三日目の聖なる復活に至らん爲なり。

   光榮、同上。今も、生神女讃詞。

嗚呼神の母よ、我患難の中に爾の勝たれぬ祈を獲て、我を攻むる者より望に踰えて奇妙に釋かる。蓋爾は信を以て爾に求むる者に常に格りて多罪の暗を散じ給ふ。---------------------[大齋第一週間月曜日 早課 187]---------------------

故に我等感謝の心を抱きて爾に呼ぶ、女宰よ、僅なる感謝を受けて、之に易へて凡の事に於て我の助と爲り給へ。

 

次に「ラウサイク」の誦讀。第五十聖詠、及び常例の祝文、「神よ、爾の民を救ひ」。司祭高聲。其後「主に歌はん」を月課經の本日の聖人の規程の調に据りて始めて、「大水は壁の如く凝り」に至るまで、各詠隊歌頌の己の句を疾く誦す。是より諸句を十四段に分唱す。月課經の規程を「イルモス」と共に六段に歌ふ。次第左の如し。右列詠隊、「大水は壁の如く凝り」の句を誦して「イルモス」を歌ひ、左列詠隊第二の句「敵曰へり」を誦して、規程の讃詞を歌ふ。是より更序を逐ひて「其時、エドム」の句に至る。斯の句よりイオシフ師の三歌頌を始めて、四段に歌ふ。「主は王と爲りて」より又フェオドルストゥディト師の三歌頌を歌ふ。一の詠隊は讃詞を歌ひ、他の詠隊は第二の句及び讃詞を歌ふ。後兩詠隊合唱して、高調を以て光榮、三者讃詞、今も、生神女讃詞を歌ひ、次に最高調を以て、我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す、及びフェオドル師の他の讃詞を歌ふ、蓋讃詞は歌頌毎に五段あり。終に共頌に第二の規程の「イルモス」を歌ふ。

   斯くの如く第八及び第九の歌頌を歌ふ。

   第三歌頌は歌ふこと左の如し。

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右列詠隊「主は天に升りて」の句及び月課經の規程の讃詞を歌ふ。左列詠隊「彼は力を以て」及び月課經の規程の第二の讃詞を歌ふ。次に光榮、今も、規程の讃詞と共に。其後一の詠隊月課經の第三歌頌の「イルモス」を歌ひ、終に他の詠隊規程のイルモスを歌ふ。

   第六歌頌も亦是くの如し。

   第四第五及び第七歌頌を歌ふこと左の如し。

先ず月課經の規程のイルモスを歌ふべし。次に歌頌の末の二句を規程の讃詞に附唱す、并びに光榮、今も。歌頌の後に「イルモス」を歌はず、蓋之を歌頌の前に歌ふ。月課經の「イルモス」を規程の後に歌ふは唯第三及び第六歌頌のみ、蓋此の歌頌の始には「イルモス」を歌はず。月曜日を除く外、週間の他の日には第一の歌頌も歌ふこと第四及び第五歌頌の次第の如し。

三歌頌のある歌頌には規程の後共頌に三歌頌の「イルモス」を歌ふ、右に記ししが如し。

 

知るべし。全四旬齋には主日の外に八調經を用いずして唯月課經及び三歌經を歌ふ。三歌頌のなき歌頌には月課經のみを用いる。

第三歌頌の後に小聯を誦す。次に坐誦讃詞は聖人の一次、光榮、今も、生神女讃詞。

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及び「ラウサイク」の誦讀。第六歌頌の後に小聯。次に致命者の坐誦讃詞。

若し聖人の小讃詞あらば、之を此に誦して、致命者の坐誦讃詞を第一の「カフィズマ」の後の坐誦讃詞と共に誦す、神よ、爾は爾の聖所に於て嚴なりの附唱と共に。及び「シナクサリ」の誦讀。

規程及び三歌頌、イオシフ師の作。第二調。

 

   第一歌頌、「人人よ來りて」。

   此に預言者の第一歌頌を誦文す、

我今如何にして我が堕落を泣くべきか、我放蕩に日を送りし者は如何なる我が救の始を建つべきか。仁慈なる主よ、爾が知る所の法を以て我を救ひ給へ。

視よ、痛悔の時なり、視よ、救の日、齋の門なり。靈よ醒し、諸慾の門を閉ざして主を仰げ。

諸罪の狂瀾は起りて、我を失望の深處に引けども、我爾が憐の淵に趨り附く。主よ、我を救ひ給へ。

寛容なる言よ、我獨罪の奴隷となり我獨諸慾の爲に門を開けり。救世主よ、爾の仁愛を以て我を返し給へ。

---------------------[大齋第一週間月曜日 早課 190]---------------------

生神女讃詞、無慾の泉を生みし獨神の恩寵を蒙れる童貞女よ、諸慾に傷つけられたる我を醫して、永遠の火を免れしめ給へ。

 

又三歌頌、フェオドル師の作。同調、同イルモス。

人人よ、來りて、今日齋の賜を神より賜はりたる痛悔の時として受け、此の中に於て救世主の憐を得ん。

今勤勞の時臨み、齋の途開けたり。我等皆勇みて此に就き、諸徳を獻物として主に奉らん。

 

光榮、三者讃詞、單一にして三光なる惟一者、獨萬有の宰にして、能はざる所なく、萬物に生命を施す者、神及び主、全能なる父と子と聖神よ、爾を尊む者を救ひ給へ。

生神女讃詞、我等神の聖山たる無のマリヤを歌はん。彼より闇冥に居る者の爲に義の日ハリストス、萬有の生命は輝けり。

我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

火の車は齋を装ひたる奇異なるイリヤを取り、齋はモイセイを言ひ難き事を見る者と爲せり。我等も之を受けてハリストスを見ん。

我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

---------------------[大齋第一週間月曜日 早課 191]---------------------

アダムが食を食ひしに、不節制は彼を樂園より出せり。人を愛する主よ、我等齋を受けし者を悔改に合ふ者と爲し給へ。

イルモス、人人よ、來りて、海を分ちて、エギペトの奴隷より引き出しし民を過らせしハリストス神に歌を歌はん、彼光榮を顯したればなり。

 

   第六歌頌に本調の致命者讃詞。

   第六歌頌、「火の爐の中に」。

ハリストスよ、我快樂にて焚かれ、靈の目の昏まされし者を、爾を畏るる畏の火を以て新にして、救の光にて照し給へ、我が爾を萬世に讃榮せん爲なり。』

我が卑しき靈よ、諸慾にくことを惡み、諸善の甘美なる糧を以て己を養へ、快樂の苦きを避け、齋の甘きを樂しみて世世に存へよ

我靈の盲となり、諸慾の醉に昏まされて、爾惟一の神を仰ぎ見るを得ず。故に憐を垂れて我を照し、我が爲に痛悔の門を開き給へ。

生神女讃詞、地に屬する我等の朽ち易き性を天に屬する者と爲しし潔き者よ、爾の熱切なる祈を以て、我が祈我が願を爾と萬有との神及び王に向はしめ給へ。

 

   又、イルモス、「昔火の中にエウレイの少者」。

---------------------[大齋第一週間月曜日 早課 192]---------------------

信者よ、我等喜ばしく齋の入るを迎へて、憂はしき容を爲さず、無慾の水を以て我が面を洗ひ、ハリストスを崇め讃めて、世世に讃め揚げん。

我等慈惠の膏を靈の首に塗り、言を多くせずして、天に在す我等の父に祈を獻げ、彼を崇め讃めて、世世に讃め揚げん。

我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

信者よ、我等永在にして無原なる父、同無原の子、父より同無原に光りたる聖神、惟一の全能なる原因及び權柄たる三位の一性を歌はん。

 

生神女讃詞、神に召されたるマリヤよ、爾は實に信者の潔浄の泉なり、蓋爾に因りて罪の赦は豊に衆人に賜はる。爾を歌ふ者の爲に爾の子及び主に息めずして祈り給へ。

我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

兄弟よ、主は四十日の數を齋して、今の日を聖にして浄め給へり。我等此に至りて呼ばん、ハリストスを崇め讃めて、世世に讃め揚げよ、

我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

イルモス、昔火の中にエウレイの少者に露を注ぎ。奇異にしてハルデヤ人を其中にきし主を歌ひて云はん、彼を崇め讃めて、世世に讃め揚げよ。

---------------------[大齋第一週間月曜日 早課 193]---------------------

   「ヘルワィムより尊く」を誦文す。

 

   第九歌頌、「食に縁りて甚しく」。

靈よ、齋の日は爾の爲に罪を絶ちて、神に傾き、之に親しむ者と爲るべし、爾が惡の淵を遁れて、唯夫の安息に至らしむる途を愛せん爲なり。

我意念にて躓き、肉體にて罪を犯して、欷き、呻ひ、呼ぶ、主よ、我を救ひ給へ、獨寛忍なる者よ、我を救ひ給へ、我定罪に當る者を彼の地獄の火に定罪する毋れ。』

我等齋の明なる衣を衣て、醉の暗くして最重き服を脱ぎ、神聖なる徳にて明なるを得て、信を以て救世主の光れる苦を見ん。

生神女讃詞、至浄なる女宰よ、兇惡なる魔鬼の諸の攻に因りて弱りし我が苦しめる靈を醫し給へ。蓋爾は醫師なるハリストス、爾無なる童貞女を承け認むる我等の救贖を生み給へり。

   又、イルモス、「我等信者は父より永遠に」。

今聖なる齋の時來れり、我等善良なる行を以て是を始めん。蓋曰ふ、議するを以て、争ふを以て齋する毋れ。

イリヤはホリフ山に在りて齋に浄められて神を見たり。我等も齋を以て心を浄むべし、然らばハリストスを見ん。

---------------------[大齋第一週間月曜日 早課 194]---------------------

光榮、三者讃詞、我惟一の神性に叩拜し、三位を歌ひ、惟一の萬有の神、父、子、聖神、永在の原因を歌ふ。

生神女讃詞、潔き者にして子を生み、童貞女にして乳を飲ます、生みて童貞を守るに、如何にして斯の二の者あるか。是を爲しし者は神なり、其の如何なるを我に問ふ毋れ。

我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

地に生れし者の生命は一日なりと曰へり、愛を以て勞する者の爲には四十日の齋あり、我等喜びて之を送らん。

イルモス、我等信者は父より永遠に光れる言を身にて測り難く孕みし者を、息めざる歌を以て崇め讃む。

 

次に「常に福にして」、一拜。聯「我等復又」。光耀歌は本調の聖三の讃歌の「凡そ呼吸ある者」に諸句を歌はず、乃常例の三聖詠。「天より主を讃め揚げよ」等を誦す。若し月課經の順序に二聖人あらば、一人には晩課の讃頌を歌ひ、一人には「凡そ呼吸ある者」の讃頌を歌ふ、四句に。若しなくば、聖詠の後に誦經者誦す、

主我等の神よ、光榮は爾に歸す、我等光榮を爾父と子と聖神に獻ず、今も何時も世世に、「アミン」。

---------------------[大齋第一週間月曜日 早課 195---------------------

光榮は爾我等に光を顯しし主に歸す。

「至高きには光榮神に歸し」其他。三小拜を爲す。次に聯「我等主の前に吾が朝の」。并に高聲。

其後兩詠隊列を合せて共に歌ふ、

 

   挿句に自調の讃頌、第五調。

齋至れり、此は貞潔の母、諸罪を責むる者、痛悔を傳ふる者、天使等の度生、人人の救なり。我等信者は呼ばん、神よ、我等を憐み給へ。

句、「主よ、夙に爾の憐を以て我等に飽かしめよ。」

   復右の讃頌を歌ふ、

句、「願はくは主吾が神の惠は我等に在らん」。

   致命者讃詞、

天の王の軍は祝讃せらるる哉、受難者は地に生まれし者なれども、天使の位に至らんことを勉め、肉體を顧みずして、苦に因りて無形の者の尊貴を獲たり。

主よ、彼等の祈に因りて我等の靈を救ひ給へ。

光榮、今も、生神女讃詞、我等歌の聲を以て爾神の母、潔き童貞女ヘルワィムよりも聖なる者を崇め讃む。蓋爾を承け認めて靈形に生神女たる者と爲す、爾は

---------------------[大齋第一週間月曜日 早課 196]---------------------

實に人體を受けし神を生みたればなり。至浄なる者よ、我等の靈の爲に祈り給へ。

 

次に誦す、「至上者よ、主を讃榮し」。二次。聖三祝文、及び三小拜。「至聖三者」。「天に在す」。司祭高聲「蓋國と權能」の後に讃詞を誦す、「生神女、天の門よ」。主憐めよ、四十次。光榮、今も、「ヘルワィムより尊く」。神父よ、主の名を以て祝讃せよ。司祭、「永在の主ハリストス我等の神」。誦經、「天の王よ」。次ぎて司祭聖エフレムの祝文を誦す。「主吾が生命の主宰よ」、并に三大拜。又小拜十二次、毎次黙誦して曰く、神よ、我罪人を浄め給へ。後聖エフレムの祝文全章を復誦して一大拜を爲す。右畢りて後誦經者誦す、「來れ、我等の王神に叩拜せん」、三次、并に三小拜。是に於て第一時課を誦す。第三の聖詠を誦し畢りて、「アリルイヤ」、及び三小拜。

 

知るべし。聖四旬齋内の凡ての月曜日の第一時課には「カフィズマ」を誦文せず。其他の日には「カフズマ」を誦文して、段毎に三小拜を爲す。同じく金曜日にも第一及び第九時課に「カフィズマ」なし。

次ぎて司祭左の讃詞を誦す、第六調、吾が王吾が神よ、晨に我が聲を聽き給へ。

右列詠隊歌ふ、吾が王吾が神よ、晨に我が聲を聽き給へ。司祭第一句、主よ、我が言を聽き、我が思を悟れ。左列詠隊、「吾が王吾が神よ」。司祭第二句、主よ、我爾

---------------------[大齋第一週間月曜日 早課 197]---------------------

ればなり。右列詠隊、「吾が王吾が神よ」右の諸句を歌ふ時我等句毎に伏拜を爲す。』

司祭、光榮は父と子と聖神に歸す。誦經、今も何時も世世に、「アミン」。生神女讃詞、「鳴呼恩寵に満たさるる者よ」。并に三小拜。

   次ぎて兩詠隊歌ふ、

右列、我が足を爾の言に固め給へ、諸の不法の我を制するを許す毋れ。左列、同上。右列、我を人の迫害より救ひ給へ、然せば我爾の命を守らん。左列、同上。右列、爾が顔の光にて爾の僕を照し、爾の律を我に誨へ給へ。左列、同上。右列、大聲を以て緩唱す、主よ、願はくは我が口は讃美に満てられて、我爾の光榮を歌ひ、日日に爾の威嚴を歌はん。左列、同上。右列、復同上。誦經、聖三祝文、并に三小拜。「至聖三者」。「天に在す」。司祭高聾、「蓋國と權能」。「アミン」の後に讃詞。月曜日と火曜日と木曜日とには生神女讃詞を誦せよ、「我等黙さず、心と口にて」。水曜日と金曜日とには誦せよ、「ハリストス吾が神よ、疾く先じて」。主憐めよ、四十次。祝文、「何の日何の時にも」。主憐めよ、三次。光榮、今も、「ヘルワィムより尊く」、及び一拜。神父よ、主の名を以て福を降せ。司祭、神よ、我等に恩を被らせ、我等に福を降し、爾が顔を以て我等を照し、並に我等を憐み給へ。誦經、「アミン」。次に司祭聖エフレムの祝文を誦す、大拜及び小拜と共に、上に記ししが如し。畢りて後、聖三祝文及び三小拜。「天に在す」。主憐めよ、十二次。司祭祝文、「眞の光なる

---------------------[大齋第一週間月曜日 早課 198]---------------------

ハリストス」。詠隊、「生神女よ、我等爾の僕婢」。司祭、ハリストス神、我等の恃よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

詠隊、光榮、今も、主憐めよ、三次。福を降せ。司祭發放詞を誦す。詠隊萬壽詞を歌ふ。次に前院に出でて「リティヤ」を行ふ。克肖なるフェオドルストゥディトの敎訓の誦讀あり。第一時課を誦す、并に最後の發放詞。

 

全聖大齋の早課及び第一時課の式は都て上述の如し。

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 第一週間月曜日時課式

 

   第三時課

定刻に及びて鐘を撞く。衆此に随ひて聖堂に参集し、奉事の始まる前に聖門に向ひて三拜を爲し、聖像に接吻し、左右に立てる者に各一小拜を爲す。司祭始めて誦す、「我等の神は恒に崇め讃めらる」。誦經、「天の王」。聖三祝文及び三小拜「天に在す」の後に司祭、「蓋國と權能」。誦經、「アミン」。主憐めよ十二次。「來れ、我等の王、」

---------------------[大齋第一週間月曜日 第三時課 199]---------------------

三次、及び三小拜。是に於て第三時課を誦すること常例の如し。第三の聖詠の後、「アリルイヤ」に三小拜。次に順序ノ「カフィズマ」を誦す、其段毎に三小拜。其後司祭王門の前に立ちて讃詞を誦す、第六調、第三時に爾の至聖神を爾の使徒に遣はしし至善の主よ、之を我等より取り上ぐること毋れ、尚我等爾に祈る者の衷に之を新にせよ。右列詠隊、「第三時に」。司祭第一句、神よ、潔き心を我に造れ、正しき靈を我の衷に改め給へ。左列詠隊、「第三時に」。司祭第二句、我を爾の顔より逐ふこと毋れ、爾の聖神を我より取り上ぐること毋れ。右列詠隊、「第三時に」。右歌ふ時我等毎次一大拜を爲す。光榮、今も、生神女讃詞、及び三小拜、「生神女よ、爾は實の葡萄の枝」階梯者の誦讀。「主は日日に崇め讃めらる」。聖三祝文及び三小拜。「天に在す」。司祭高聲、「蓋國と權能」。「アミン」の後に讃詞、第八調、「崇め讃めらるる哉ハリストス我等の神よ」。光榮、「イイススよ、我等の靈の悶ゆる時」。今も、「至浄なる生神女よ、爾は「ハリスティアニン」等の憑恃」。主憐めよ、四十次、及び祝文、「何の日何の時にも」。主憐めよ、三次。光榮、今も、「ヘルワィムより尊く」。神父よ、主の名を以て福を降せ。司祭、「神よ、我等に恩を被らせ」。次に聖エフレムの祝文を誦して大小拜を爲す、上に記ししが如し。畢りて後誦經者祝文を誦す、「主宰神父全能者」。

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---------------------[大齋第一週間月曜日 第三時課 200]---------------------

   第六時課

点燈者祝福を受けて打鐘すること六次。誦經者右の祝文畢りて後第六時課を始む。「來れ、我等の王」、三次、及び三小拜。第三の聖詠畢りて後、光榮、今も、「アリルイヤ」、三次、及び三小拜。是に於て「カフィズマ」を誦す、其段毎にアリルイヤ」、三次、及び三小拜。次に讃詞、第二調、「アダムが地堂にて犯しし罪を第六日の第六時に」。第一句、神よ、我がを聆き、我が願より匿るる毋れ。第二句、我神にばん主乃我を救はん。三大拜を爲す、上述の如し。光榮、今も、「生神童貞女よ、我等夥しき罪ありて」。及び三小拜。

   次に預言の讃詞、第五調。

主よ、主よ、萬物は爾を畏れ、爾が能力の前に慄く。不死なる者よ、我等爾に俯伏し、聖なる者よ、爾に祈る、爾が諸聖人の祈に因りて我等の靈を救ひ給へ。

   光榮、今も、同上。

提綱、第四調、第一聖詠、主は義人の途を知る、惡人の途は滅びん。句、惡人の謀に行かず、罪人の途に立たざる人は福なり。

 

   イサイヤの預言書の讃。第一章。

アモスの子イサイヤの見し所の異象、乃イウデヤとイエルサリムとの事なり、其

---------------------[大齋第一週間月曜日 第六時課 201]---------------------

イウデヤの諸王オジヤ、イオアファム、アハズ、エゼキヤの日に於て見し所なり。天よ、聽け、地よ、耳を傾けよ、蓋主之を言う、我子を養い、之を高くせり、然れども彼等我に叛けり。牛は其の飼主を識り、驢は其の主の槽を識る、然れどもイズライリは我を知らず、我が民は悟らず。嗟乎罪惡の民、不法の盈つる人人、惡者の族、沈淪の諸子よ、爾等主を棄て、イズライリの聖者を侮り、轉じて之を離れたり。逆いて息まざる者よ、何の處か復爾等を撻つべき、首はく痍を負ひ、心は全く衰へたり。足の跖より首の頂に至るまで彼に全き所なし、唯傷損、腐潰、膿みたる瘡のみ、洗はず、束ねず、膏を以て柔げざる者なり。爾等の地は荒らされ、爾等の邑は火に焚かれ、爾等の田は爾等の目前に於て外人之を食ふ、皆荒れたること、外人に敗られし後の如し。シオンの女は遺れること、葡萄園の廬の如く、菜園の舎の如く、圍み攻めらるる城の如し。若し主サワオフ我等に少許の殘余を留めざりしならば、我等はソドムに似、ゴモラの如く爲りしならん。ソドムの諸侯よ、主の言を聽け、ゴモラの民よ、我が神の律法に耳を傾けよ。主云く、爾等の多くの犠牲は我に於て何をか爲さん、牡羊の燔祭と肥えたる家畜の膏とは、我之にきたり、牡牛と羔と牡山羊との血は、我之を欲せず。爾等我が面の前に來る時、誰か爾等に促して我が庭を踐ましむる。復虚しき獻物を攜ふる毋れ、焚ける香は、我之を憎む、新月

---------------------[大齋第一週間月曜日 第六時課 202]---------------------

と安息日と祭日の集會とは、我之を忍ばず、祭祀には何ぞ不法を兼ぬべけん。爾等の新月と爾等の祭日とは、我が靈之を憎む、是れ我が爲に重負なり、我之を堪え難しとす。爾等手を舒ぶる時、我我が目を爾等より掩う、爾等祈りを益す時、我聽かず、爾等の手には血盈ちたり。己を洗い、己を浄めよ、爾等の惡業を我が目の前より去れ、惡を行ふを罷めよ、善を行ふを學べ、義を求めよ、虐げらるる者を救へ、孤子を護れ、寡婦の訟えを理めよ。主云く、其時來たりて論議せん、爾等の罪若し紅の如くならば、我之を雪の如く白くせん、若し丹の如く赤くば、羊の毛の如く白くせん。爾等若し肯ひて順はば、地の善物を食はん、若し肯はずして逆はば、劍爾等を噛まん、蓋主の口之を言う。

 

提綱、第七調、第二聖詠、畏れて主に勤めよ、戰きて其前に喜べよ。句、諸民何爲れぞ騒ぎ、諸族何爲れぞ徒に謀る。

階梯者の誦讀。次に讃詞、「主よ、願はくは爾の慈憐は速に我等を迎へん」。聖三祝文及び三小拜。「天に在す」の後に司祭高聲「蓋國と權能」。次に讃詞、第二調、「ハリストス神よ、爾は地の中に救を施し」。光榮、「仁慈なるハリストス神よ、我等爾が至浄の聖像に伏拜し」。今も、「慈憐の泉なる生神女よ」。

 

水曜日及び金曜日には十字架生神女讃詞を誦す、「讃榮せらるる生神童貞女よ、我等

---------------------[大齋第一週間月曜日 第六時課 203]---------------------

爾を歌ふ」。主憐めよ、四十次。「何の日何の時にも」。主憐めよ、三次。光榮、今も、「ヘルワィムより尊く」。神父よ、主の名を以て福を降せ。司祭、「神よ、我等に恩を被らせ、我等に福を降し」。次に聖エフレムの祝文及び大小拜、常例の如し。其後誦經者終の聖三祝文及び三小拜。「天に在す」。主憐めよ、十二次。次に司祭誦す、ハリストス神我等の恃よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。乃發放詞を誦す。

全聖大齋の第三及び第六時課の式都て是くの如し。

【注意】

散會することなくして奉事する時は「神天軍の主」の祝文の後直に誦す、「來れ、我等の王」、三次、及び第九時課。

          ~~~~~~

 

   第九時課

第六時課の後に散會することあらば、定刻に及びて點燈者打鐘すること九次。衆堂に参集して、司祭祝讃の後に誦經者聖三祝文及び三小拜。「天に在す」の後に司祭高聲、「蓋國と權能」。「アミン」の後に主憐めよ、十二次。「來れ、我等の王」、三次及び三小拜。是に於て三聖詠の第九時課を誦す。第三の聖詠の後、「アリルイヤ」に三小拜。次に「カフィズマ」の誦文を始む。段毎に三小拜。誦文の後に讃詞、第八調、「第九時に我等の爲に身にて死を嘗めし」。第一句、「主よ願はくは我がぶ聲は

---------------------[大齋第一週間月曜日 第九時課 204]---------------------

爾が顔の前に邇づかん」。第二句、「願はくは我がは爾が顔の前に至らん」。并に毎次大拜を爲す。光榮、今も、「我等の爲に童貞女より生れ」、三小拜。階梯者の誦讀。「爾の名に因りて我等を終まで棄つる勿れ」。聖三祝文、及び三小拜。「至聖三者」。「天に在す」。司祭高聲す、「蓋國と權能」。「アミン」の後に諸讃詞を誦す、第八調、「盗賊は生命の首が十字架に懸れるを見て」。光榮、「爾の十字架は二人の盗賊の間に在りて」。今も、「爾を生みし者は爾羔にして牧者たる世界の救主」。主憐めよ、四十次。「何の日何の時にも」。主憐めよ、三次。光榮、今も、「へルワィムより尊く」。神父よ、主の名を以て福を降せ。司祭、「神よ、我等に恩を被らせ」。次に克肖者エフレムの祝文を誦して三大拜を爲す。他の十二拜を爲さずして、祝文を誦す、「主宰イイススハリストス吾が神よ」。畢りて後、兩詠隊更眞福詞を歌ふ、第八調に依る。右列、主よ、爾の國に於て我等を憶ひ給へ。神の貧しき者は福なり、天國は彼等の有なればなり。主よ、爾の國に來らん時我等を憶ひ給へ。左列、「泣く者は福なり」。其他の句。光榮は父と子と聖神に歸す。「主よ、爾の國に來らん時」。今も何時も世世に、「アミン」。「主よ、爾の國に來らん時」。是の後兩詠隊共に傷感の情を以て大聲に歌ふ、主よ、爾の國に來らん時我等を憶ひ給へ。一大拜。主宰よ爾の國に來らん時我等を憶ひ給へ。一大拜。聖なる者よ、爾の國に來らん時我等を憶ひ給へ。一大拜。

---------------------[大齋第一週間月曜日 第九時課 205]---------------------

次に誦す、「天軍爾を歌ひて曰ふ」。句、「目を挙げて彼を仰ぐ者は」。復、「天軍爾を歌ひて曰ふ」。光榮、「諸天使及び天使首の群は」。今も、「我信ず一の神父全能者」。「神よ、我が自由と自由ならざると」。「天に在す我等の父よ」。

   本日の小讃詞、第二調。

神の天軍首、神聖なる光榮の役者、諸天使の首、人人の敎導者よ、我等の爲に益あることと大なる憐とを求め給へ、爾等は無形の軍の首なればなり。

 

次に本堂の小讃詞を誦す。若しハリストスの堂ならば、先づ本堂の、次に本日の小讃詞、及び若し之あらば、当日の聖人の小讃詞を誦す。光榮、「ハリストスよ、爾が僕婢の靈を諸聖人と偕に」。今も、生神女の堂の小讃詞、或は「「ハリスティアニン」等の辱を得ざる轉達」。主憐めよ、四十次。光榮、今も、「へルワィムより尊く」。神父よ、主の名を以て福を降せ。司祭、「神よ、我等に恩を被らせ」。次に聖エフレムの祝文を誦して、上述の如く十六大小拜を爲す。幇堂者は聖務長より祝福を受け、往きて鐘を鳴らして晩課の始まるを報ず。誦經者誦す、「來れ、我等の王」、三次及び三小拜。次に緩和の聲を以て首誦聖詠「我が靈よ、主を讃め揚げよ」を誦す。司祭聖門の前に立ちて常例の晩の祝文を誦す。聖詠の後に光榮、今も、「アリルイヤ」、三次及び三小拜。次に大聯。畢りて第十八「カフィズマ」を誦文す。「我我が憂の中

---------------------[大齋第一週間月曜日 第九時課 206]---------------------

に主に呼びしに」、段毎に光榮、今も、「アリルイヤ」、三次及び三小拜。

           ~~~~~~

 

 

 第一週間の月曜日の晩課

 

「主よ、爾にぶ」に讃頌、六句を立つ。

   イオシフ師の作。第二調。

我凡の罪を犯し、放蕩を以て衆人に超えたり、悔いんと欲すれども涙の流なし、今猶怠りて日を度らば苦に服せん。獨仁慈なる神よ、我に悔改を賜ひて、我を憐み給へ。

ハリストスよ、齋の美しき日に於て我に涙の雨を與へ給へ、我が泣きて快樂に由る汚を滌はん爲、且、審判者主よ、爾が獨義なる審判者として、人人を審判する爲に天より臨まん時、潔まりたる者として爾の前に顯れん爲なり。

 

   又、フェオドルストゥディト師の作。第五調。

信者よ、熱心にして來り、齋の堅固なる武器を盾の如くに執りて、敵の誘の諸

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩課 207]---------------------

の欺詐を防がん。諸慾の快樂に焚かるるなく、試の火を畏るるなからん、蓋人を愛するハリストスは此の試に依りて我等に寛忍の榮冠を冠らしむ。故に我等勇みて祈り、伏して呼び、平安及び我等の靈の爲に大なる憐を求めん。

   又、月課經の三章。光榮、今も、生神女讃詞。「穏なる光」。

次に提綱、第三聖詠、第六調、救は主に依る、爾の降福は爾の民に在り。句、主よ、我が敵は何ぞ多き、多くの者は我を攻む。

 

   創世記の讀。第一章。

元始に神天地を造れり。地は形なく虚しくして、暗は淵の面に在り、神の神水の面に覆育せり。神曰へり、光あるべし。光成れり。神光を觀て善とせり、神光を暗より判てり。神光を晝と名づけ、暗を夜と名づけたり。夕あり、朝あり、是れ一日なり。神曰へり、水の中に、穹蒼ありて、水を水より判つべし。斯く成れり。神穹蒼を造りて、穹蒼の下の水を穹蒼の上の水より判てり。神穹蒼を天と名づけたり。神之を觀て善とせり。夕あり、朝あり、是れ第二日なり。神曰へり、天下の水は一區に匯りて、陸顯るべし。斯く成れり。天下の水其區に匯りて、陸顯れたり。神陸を地と名づけ、水の匯を海と名づけたり。神之を觀て善とせり。神曰へり、地は青草と種を、其類其肖に從ひて蒔く草と、地上に其類に從ひて、己の内に核を懐く實を結ぶ所の果の木とを生ずべし。斯く成れり。地は青草と、種を其類其肖

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩課 208]---------------------

に從ひて蒔く草と、地上に其類に從ひて、己の内に核を懐く實を結ぶ所の果の木とを生ぜり。神之を觀て善とせり。夕あり、朝あり、之れ第三日なり。

 

提綱、第四聖詠、第五調、べば、主は之を聽く。句、吾が義の神よ、我がぶ時、我に聽き給へ。

 

   箴言の讀。第一章。

ダワィドの子、イズライリの王、ソロモンの箴言。是れ人に智慧と敎訓とを識らしめ、明哲の言を曉らしめ、智略と公義と公判と正直との規を承けしめ、愚蒙の者に明察を與へ、少者に知識と思慮とを與へん爲なり。智者は之を聞 きて知識を益し、明者は明謀を獲ん、喩言と解し難き言、智者の説と其隠語を明にせん爲なり。智慧の始は主を畏るる畏なり、凡そ之に導かるる者は明智なり、神に於ける敬虔は識の始なり、唯愚なる者は智慧と敎訓とを藐ず。我が子よ爾の父の訓を聽け、爾の母の誡を棄つる毋れ、蓋此れ爾の首の爲に美しき冠、爾の項の爲に飾なり。我が子よ、若し罪人爾を誘はば、從ふ毋れ、若し爾に勸めて、請ふ我等と偕に行け、我等兇殺の爲に埋伏所を設け、伏して故なきに無辜の者を狙ひ、彼等を生け

--------------------[大齋第一週間月曜日 晩課 209]---------------------

るまま地獄の若くに呑み、健全なるまま墓に下る者の如くに呑まん、諸の價貴き産業を奪ひ、掠物を以て我等の家を充たさん、爾我等と偕に爾の籤を取らん、我等に一の嚢あらんと云はば、我が子よ、彼等と偕に路を行く毋れ、爾の足を彼等の径より避けよ、蓋彼等の足は惡に走り、血を流す爲に急ぐ。凡そ鳥の目の前に羅を張るは徒然なり。彼等は己の血の爲に埋伏し、己の生命を伏して狙ふ。凡そ利を貪る者の途は此くの如し、是れ其物主をして生命を喪はしむ。慧は街に呼び、其聲を衢に揚ぐ。

 

「主よ我等を守リ、罪なくして此の晩」。及び三小拜。聯「我等主の前に吾が晩の」。

高聲の後兩詠隊共に歌ふ、

   挿句に本日の自調の讃頌、第三調。

我等主に悦ばれ善く受けらるる齋を守らん。眞の齋は乃惡事を離れ、舌を慎み、怒を釋き、諸慾を斷ち、毀謗と、詐譌にと、誓に背くこととを除く。此等を去るは眞の齋にして善く受けらるべき者なり。

句、「天に居る者よ、我目を擧げて爾を望む」。

   右復唱す。

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩課 210]---------------------

句、「主よ、我等を憐み、我等を憐み給へ」。

致命者讃詞、ハリストスよ、爾の致命者の力は大なり、蓋彼等は墓に臥して惡鬼を逐ふ、聖三者に於ける信を以て正敎の爲に戰ひて、敵の權を虚しくしたればなり。

光榮、今も、生神女讃詞、生神女、爾に祈る衆人の轉達者よ、我等爾に因りて勇を得、爾を以て誇と爲す、我が悉くの倚頼は爾に在り。爾より、生れし者に爾の不当なる諸僕の爲に祈り給へ。

 

次に、「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文、及び三小拜。其他。司祭、「蓋国と權能」。「アミン」の後諧和の聲を以て歌ふ、第四調、「生神童貞女よ、慶べよ」。一大拜。光榮、「ハリストスの、授洗者よ」、一大拜。今も、「聖使徒と諸聖人よ」、一大拜。次に、「生神女よ、我等爾が慈憐の下に趨り附く」。拜なし。主憐めよ、四十次。光榮、今も、「へルワィムより尊く」。神父よ、主の名を以て祝讃せよ。司祭、「永在の主ハリストス我等の神は恒に崇め讃めらる」。誦經、「天の王よ」。次に聖エフレムの祝文、「主吾が生命の主宰よ」、及び常例の十六大小拜。聖三祝文。主憐めよ、十二次、并に祝文、「至聖なる三者、一性の權柄」。次に、願はくは主の名は崇め讃められて今より世世に至らん。三次、及び三小拜。光榮、今も、第三十三聖詠、「我何の時にも主を讃め揚げん」。司祭、睿智。詠隊、「常に福にして」、及び一小拜。司祭、

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩課 211]---------------------

至聖なる生神女よ、我等を救ひ給へ。詠隊、「へルワィムより尊く」。司祭、「ハリストス神我等の恃よ」。詠隊、光榮、今も、主憐めよ、三次。

福を降せ。司祭發放詞を誦す、常例の如し。

 

全聖大齋の晩課式は先備聖體禮儀のなき時都て上述の如し、蓋水曜日に至るまで先備聖體禮儀を行はざるを規とす。

           ~~~~~~

 

 

 第一週間の月曜日の晩堂大課、

 

定刻に及びて點燈者は聖務長より降福を受け、往きて打鐘すること十二次。

衆堂に参集して、司祭始めて誦す、我等の神は恒に崇め讃めらる、今も何時も世世に。誦經、「アミン」。我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。「天の王」。聖三祝文、及び三小拜。同じく「來れ、我等の王」、にも三小拜。其後直に第六十九聖詠を誦す、「神よ、速に我を救へ」。

次に大規程を始む。之を「イルモス」と共に四分して、月火水木の四曜日に配當す。

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩堂大課 212]---------------------

我が聖神父イエルサリムのアンドレイクリトの大主敎の作。

 

   第一歌頌、第六調、イルモス二次。

   讃詞毎に小拜を爲す。

イルモス、佑け護る者顯れて、我が救と爲れり、彼は吾が神なり、我彼を讃め揚げん、彼は我が父の神なり、我彼を尊み頌はん、彼嚴に光榮を顯したればなり。』

 

附唱、神よ我を憐み、我を憐み給へ。(右左の詠隊讃詞毎に更此の附唱を歌ふ)

 

我が不當なる度生の行を泣くは何より始むべきか、ハリストスよ、我が今の歎は何を以て起すべきか、惟求む、爾慈憐なるに因りて、我に諸罪の赦を與へ給へ。

禍なる靈よ、體と偕に來りて、萬有の造成主の前に罪を認め、今より後先の無知を斥けて、痛悔の涙を神に獻げよ。

我誡を犯すを以て首めて造られしアダムに效ひて、我が諸罪の爲に、己が神と永遠の國と福樂より遠ざけられしを覺えたり。

哀しい哉我が禍なる靈よ、爾何爲れぞ首めて造られしエワに肖たる者と爲りし、爾は邪に視、太しく傷つけられ、樹に觸れて、敢て無知の食を食へり。』

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩堂大課 213]---------------------

見るべきエワに代へて見るべからざるエワは我の内に起れり、是れ肉慾の情なり、我に甘きを進むれども、我味ふ時常に苦きを覺ゆ。

救世主よ、アダムは爾が一の誡を守らずして、義に依りてエデムより逐はれたり。我は常に爾が生命を施す誡を犯して、何の罰を受くべきか。

 

光榮、三者讃詞、永久の三者、一性に於て伏拜せらるる者よ、罪の重き負を我より卸して、慈憐なるに因りて、我に感涙を與へ給へ。

 

生神女讃詞、生神女、爾を歌ふ者の憑恃及び轉達よ、罪の重き負を我より卸して、潔き女宰たるに因りて、我悔ゆる者を納れ給へ。

 

 

   第二歌頌

イルモス、天よ聽け、我傳へて、童貞女より身を取りて來りしハリストスを歌はん。

天よ、聽け、我傳へん、地よ、我が神の前に痛悔して、彼を歌ふ聲を納れよ。神吾が救世主よ、爾が慈憐なる目を以て我を視、我が熱心なる告解を納れ給へ。

救世主よ、我衆人に超へて罪を犯し、我獨爾の前に罪を犯せり、然れども爾神なるに因りて、爾の造物を憐み給へ、

 

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩堂大課 214]---------------------

我諸慾の醜きを我が中に寫し、快樂を恣にして智慧の美しきを殘へり。慈憐なる主よ、諸惡の烈風は我を繞れり、然れども爾ペトルに於けるが如く、我にも手を舒べ給へ。

救世主よ、我我が肉體の衣を汚し、爾の像と肖とに因りて造られし者を緇ませり。我諸慾の樂にて靈の美しきを黯くし、我が智慧を全く塵と爲せり。

我は我が始の衣、造物主が初に我が爲に織りし者を裂けり、故に裸體にして臥す。我は襤褸の衣、蛇が詐を以て我が爲に織りし者を着て、自ら耻づ。仁慈なる者よ、我も淫婦の如く涙を流す、救世主よ、爾の慈憐に因りて我を憐み給へ。

我樹の美しきを見て、心惑へり、故に裸體にして臥して、自ら耻づ。

諸慾の魁は悉く我が背に耕して、我が身に其不法を植えたり。

 

光榮、三者讃詞、我爾三位にして惟一なる萬有の神、父と子と聖神とを歌ふ。

 

生神女讃詞、至浄なる生神童貞女、獨衆人に讚頌せらるる者よ、我等が救を得んことをを切に祈り給へ。

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩堂大課 215]---------------------

 

   第三歌頌

イルモス、ハリストスよ、爾が誡の動かざる石に我が意思を固め給へ。

主は昔主よリ火を降らして、ソドムの地を焚けり。

靈よ、彼のロトの如く山に遁れ、急ぎてシゴルに匿れよ。

靈よ、を避けよ、焚かるるソドムを避けよ神の火に滅さるるを避けよ。ハリストス救世主よ、我獨爾の前に罪を犯し、衆人に超えて罪を犯せり、我を棄つる勿れ。

爾は善き牧者なり、我羔なる者を尋ねよ、我迷ひし者を棄つる勿れ。

爾は慕ふべきイイスス、爾は我の造物主なり、救世主よ、我爾に依りて義とせらるるを得ん。

救世主よ、我爾の前に罪を認む、我罪を犯せり、爾の前に罪を犯せり、然れども爾慈憐なるに因りて、我を宥め、我を赦し給へ。

光榮、三者讃詞、鳴呼三者、惟一者、神よ、我等を誘惑と試誘と危難より救ひ給へ。』

生神女讃詞、神を容れし腹よ、慶べ、主の寶座よ、慶べ、我が生命の母よ、慶べ。

 

   第四歌頌

イルモス、主よ、預言者は爾の降臨の事を聞き、爾が童貞女より生れ、人人に顯

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩堂大課 216]---------------------

れんと欲するを懼れて曰へり、我爾の風聲を聞きて懼れたり、主よ、光榮は爾の力に歸す。

義なる審判者よ、爾の造工を斥くる毋れ、爾の造物を遺つる毋れ、蓋我獨人として衆人に超えて罪を犯したれども、爾は、人を愛する者よ、萬有の主として、罪を赦す權を有ち給ふ。

靈よ、終は近づく、近づけども爾は慎まず、己を備へず、時は蹙まる、興きよ、審判者は己に近し、門に及べり、生命の日の過ぐるは夢の如く、花の如し、我等何爲れぞ徒に心を煩はす。

鳴呼我が靈よ、醒めよ、爾が行ひし所爲を想ひ、之を爾が目の前に立てて、爾が涙の滴を注げ、勇みて爾の行と思とをハリストスに告げて、義とせられよ。』

救世主よ、凡そ世にある罪、或は行爲、或は惡は、我思と言と希望にて與らざるなし、志を以て、意念を以て、行を以て犯ししこと衆人に超えたり。

故に我罪せらる、我禍なる者は己の良心にて定罪せらる、世界に此より嚴しきはなし。吾が審判者、贖罪者、及び明察者よ、我爾の僕を宥め、釋き、救ひ給へ。』

我が靈よ、昔太祖の大なる者が見たる梯は、行を以て登り、知識を以て上る表なり。故に行と知識と明悟とを以て住はんと欲せば、自ら改まれ。

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩堂大課 217]---------------------

太祖は必要に依りて晝の暑を堪へ、夜の寒を凌ぎて、日日に利を求め、群を牧し、勞を取り、勤を盡せり、二人の妻を獲ん爲なり。

二人の妻が行と明悟の知識とを示すを知れ、リヤは多くの子ある者として行を示し、ラヒリは多くの苦勞を以て獲られし者として知識を示す。蓋靈よ苦勞に非ずしては、行も明悟も成らず。

光榮、三者讃詞、我爾、同王にして同座たる、三位にして惟一なる神性、性に於て分れず、位に於て混合せざる者を承け認め、爾に大なる歌、最高き居所に三次唱へらるる者を呼び歌ふ。

生神女讃詞、爾は生むにも、童貞を守るにも、二ながら天性の童貞女なり。爾より生れし者は天性の法を改め、生まざる腹は生む、神の欲する所には天性の順序渝へらる、彼欲することを行へばなり。

 

   第五歌頌

イルモス、人を愛する主よ、祈る、夜より寤むる者を照し、我をも爾の誡に導き、救世主よ、我に爾の旨を行ふを訓へ給へ。

我常に我が生命を夜の中に送れり、蓋罪の夜は我が爲に闇冥と深き霧たりき。然れども救世主よ、我を顯して晝の子と爲し給へ。

 

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩堂大課 218]---------------------

我不當の者はルワィムの如く、至上なる神の前に不法にして道に悖ることを行ひ、我が榻を汚ししこと彼が父の榻を汚ししが如し。

ハリストス王よ、我爾の前に痛告す、我罪を犯し、昔潔浄と貞潔との結果たるイオシフを賣りし兄弟の如くに罪を犯せり。

義なる靈は親族に縛られ、愛すべき者は主を象りて奴隷に賣られたり。惟爾靈よ、自ら己を全く罪惡に賣れり。

禍なる不當の靈よ、義なるイオシフ及び其貞潔の智慧に傚ひて、己を汚す毋れ、無知なる思を以て常に不法を行ふ毋れ。

主宰よ、昔イオシフは穽に在りたれども、爾の葬と復活とを象れり。我は何の時に何をか斯くの如きを爾に獻げん。

光榮、三者讃詞、三者よ、我等爾惟一の神を讃榮す。聖、聖、聖なる哉、爾父と子と聖神、單一の性、永遠に伏拜せらるる惟一者や。

生神女讃詞、にして夫を知らざる母童貞女よ、世世を造りし神は爾の内に於て我が靈體を衣て、人性を己に合せ給へり。

   第六歌頌

イルモス、我心を盡して、仁慈なる神にベり、彼は我が最深き地獄より呼ぶを聆き、

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩堂大課 219]---------------------

我が生命を淪滅より援け給へり。

救世主よ、我切に我が目の涙と中心の歎とを爾に獻げて呼ぶ、神よ、我爾の前に罪を犯せり、我に憐を垂れ給へ。

靈よ、爾はダファン及びアワィロンの如く爾の主に離れたり、然れども最深き地獄より宥め給へと呼べ、地の淵が爾を覆はざらん爲なり。

靈よ、爾は牝牛の如くに暴れて、エフレムに似たる者と爲れり、鹿の如く爾の生命を網より救ひ、行と明悟とを以て智慧の翼とせよ。

靈よ、モイセイの手は、神が如何にして能く癩病の生命を白くし潔くするを我等に信ぜしむべし。爾癩病を患ふと雖、自ら望を失ふ毋れ。

光榮、三者讃詞、我は單一にして分れざる三者、位に於て分れたる者なり、又我は惟一者、性に於て合一なる者なり、父、子、聖神之を言ふ。

生神女讃詞、生神女よ、爾の腹は我等の爲に我が形を受けし神を生めり。其萬有の造成主なるを以て、彼に祈り給へ、我等が爾の祈に依りて義とせらるるを得ん爲なり。

 

小讃詞、我が靈よ我が靈よ、起きよ、何ぞ眠る、終わりは邇づく、爾擾れん、故に寤めよ、在らざる所なく充たざる所なきハリストス神が爾を宥めん爲なり。

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩堂大課 220]---------------------

 

   第七歌頌

イルモス、列祖の神よ、我等罪を犯し、不法を行ひ、不義を爾の前に爲し、爾が我等に誡めしことを守らざりき、行はざりき、然れども終に至るまで我等を棄つる毋れ。

我罪を犯し、不法を行ひ、爾の誡に背けり、蓋我罪の中に生まれ、且我が瘡に復痍を加へたり。然れども爾列祖の神よ、慈憐なるに因りて、親ら我を憐み給へ。』

我我が心の秘密を爾我が審判者の前に顯せり。我が、謙を視、我が憂を視よ、我が今己を罪するを顧みて、爾列祖の神よ、慈憐なるに因りて、親ら我を憐み給へ。

昔サウルは其父の驢を亡ひて、是に關する音信と共に俄に國を獲たり。靈よ、慎め、己を忘れて、畜類の慾を重ずること、ハリストスの國に超ゆる毋れ。

昔神の先祖ダワィドは姦淫の矢に傷つけられ、且殘忍なる殺害の槍を用いて、二倍の罪を犯せり。然れども爾は、我が靈よ、自ら恣なる慾を疾むこと此の行よりも甚し。

昔ダワィドは不法に不法を加へたり、蓋殺害に姦淫を合せたり、然れども彼は速に二倍の痛悔を爲せり。靈よ、爾は猶大なる罪を行ひて、未だ神の前に痛悔

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩堂大課 221]---------------------

せざりき。

昔ダワィドは畫を描くが如くに歌を記し、其中に己が犯しし行を顯して呼ベり、我を憐み給へ、蓋我爾獨萬有の神の前に罪を犯せり、親ら我を浄め給へ。』

光榮、三者讃詞、單一にして分れざる一體の三者と惟一の性、三光と一光、三聖と一聖なる神三者は歌を以て歌はる。靈よ、爾も三一の生命なる萬有の神を歌ひて讃め揚げよ。

生神女讃詞、神の母よ、我等爾を歌ひ、爾を崇め讃め、爾に伏拜す。蓋爾は分れざる三者の一なるハリストス神を生みて、親ら我等地に居る者の爲に天の住所を開き給へり。

 

   第八歌頌

イルモス、凡そ呼吸ある者と造物は、天軍の讃榮し、へルワィムとセラフィムの戰く者を歌ひ、崇め讃めて、萬世に讃め揚げよ。

救世主よ、我罪人を憐み給へ、我が智慧を起して正しきに反らせ、悔ゆる者を容れ、呼ぶ者に慈憐を垂れ給へ。我爾の前に罪を犯せり、我を救ひ給へ、我不法にして世を送れり、我を憐み給へ。

車に乗るイリヤは昔諸徳の車に上りて、天に擧げらるるが如く、地の一切の

 

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩堂大課 222]---------------------

物より上に升れり。我が靈よ、彼の升りしことを思へ。

昔エリセイはイリヤの衣を受けて、主よリ二倍の恩寵を獲たり。然れども爾我が靈よ、節制なきに因りて、此の恩寵に與らず。

昔エリセイはイリヤの衣を以てイオルダンの流を左右に分てり。然れども爾我が靈よ、節制なきに因りて、此の恩寵に與らず。

昔ソマンの婦は誡の心を以て義人を饗せり。爾靈よ、他邦の者をも旅行する者をも爾の家に入れざりき。故に哀哭して婚筵の宮より逐はれん。

不當なる靈よ、爾は常にギエジイの不潔の風に傚へり。已に老ゆるに及びても彼の貪を去れ、爾の惡業を離れて、地獄の火を脱れよ。

光榮、三者讃詞、無原の父、同無原の子、仁慈の撫恤者、義なる神、神言の父、無原の父の言、生活にして造成する神、三者惟一者よ、我を憐み給へ。

生神女讃詞、至浄なる者よ、紅の組織を以て錦の衣を織るが如く、エムマヌイルの肉體は爾が腹の中に織られたり。故に我等實に爾を生神女として尊み崇む。

 

   第九歌頌

イルモス、種なき胎の産は言ひ難し、夫を知らざる母の果は朽ちず、神を生む

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩堂大課 223]---------------------

産は天性を改むればなり、故に我等萬族爾を神の聘女なる母として、正しく崇め讚む。

智慧は傷つけられ、肉體は衰へ、靈魂は疚み、言は弱り、生命は殺され、終は門に在り。我が禍なる靈よ、審判者來たりて爾の行を糾さん時、爾何をか爲さん。

靈よ、我爾にモイセイが創世の傳を示し、之に次ぎて義者と不義者との事を述ぶる聖約の書を悉く示せり。吁靈よ、爾は此の中前の者に傚はず、後の者に傚ひて、神の前に罪を犯せり。

靈よ、爾の爲に律法は力なく福音經は效なく、悉くの聖書は益なく、預言者と凡そ義人の事を述ぶる言とは徒然なり、爾の瘡は愈加はりて、此を療す醫師なし。

靈よ、我新約の書より爾の傷感を起こす例を引く。故に義人に傚ひ、罪人を避け、祈、禁食、潔浄、無を以てハリストスの憐みを迎へよ。

ハリストスは人と爲りて、盗賊と淫婦とを痛悔に招けり。靈よ、痛悔せよ、國の門は已に啓けて、痛悔するファリセイと税吏と姦淫者とは爾に先ちて此に入る。

ハリストスは我が肉體を取りて人と爲り、罪の外は凡そ人性に適ふことを自由に試

 

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩堂大課 224]---------------------

みて、靈よ、爾に己の寛容の例と表式とを示せり。

ハリストスは博士を救ひ、牧者を召し、衆くの嬰児を致命者と爲し、翁と老いたるとを榮せり。靈よ、爾は彼等の行と生命とに傚はざりき、嗟審判に逢はん時爾禍なる哉。

主は四十日野に齋し、遂に飢えて己の中に人の性を顯せり、靈よ、敵爾を攻めば、悶ゆる毋れ、乃祈と齋とを以て之を爾の足下より退かしめよ。

光榮、三者讃詞、我等父を讃め揚げ、子を崇め歌ひ、信を以て聖神を尊み拜み、分れざる三者、性に於て惟一なる者、一光と三光、三一の生命、四極に生命を施して之を照す者を崇め讃めん。

生神女讃詞、至りて潔き神の母よ、爾の城邑を衛り給へ、蓋彼は信を以て爾の力にて建ち、爾に依りて堅固にせられ、爾を以て凡の誘に勝ち、諸敵を敗りて之を從わしむ。

聖アンドレイに、尊きアンドレイ至りて福たる神父、クリトの牧者よ、爾を讃め歌ふ者の爲に常に祈りて、我等凡そ爾の記憶を中心より尊む者を忿怒と、憂愁と傷害と、數へ難き罪過より脱れしめ給へ。

 

次ぎて兩詠隊「イルモス」を歌ふ、「種なき胎の産は言ひ難し」

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩堂大課 225]---------------------

規程畢りて後第四聖詠を誦す、「吾が義の神よ、我がぶ時、我に聽き給へ」。其他晩堂課の聖詠。「アリルイヤ」に三小拜。直に第二の誦文を始む、「主よ、爾に我が靈を擧ぐ」。其他の二聖詠、終に「アリルイヤ」、及び三小拜。次ぎて諧和の聲を以て朗に左の諸句を歌ふ、

右列詠隊、神は我等と偕にす、異邦人よ、此を知りて從へよ、神我等と偕にすればなり。

左列詠隊同句、神は我等と偕にす、異邦人よ、此を知りて從へよ、神我等と偕にすればなり。

 

以下兩詠隊次序を以て各其句を歌ふ。「無形の性のへルワィム」を歌ひ畢りて、低聲を以て「我信ず一の神父、全能者」。其後詠隊、至聖なる生神女よ、我等罪人の爲に祈り給へ、及び以下の祈の諸句を歌ふ。一の詠隊己の句を歌ふ時、他の詠隊大拜を爲す。次に聖三祝文、拜なし。左の諸讃詞を第二調に依りて歌ふ、「ハリストス神よ、我が目を明にして」。光榮、「神よ、我が靈を扞ぎ衛る者となり給へ」。今も、「生神童貞女よ、我等夥しき罪ありて」。火曜日と木曜日とには左の讃詞を歌ふ、第八調、「主よ、爾は我が見えざる敵の眠らざるを知り給へり」。句、主我が神よ、顧みて我に聽き給へ。「主よ、爾の審判は何ぞ畏るべき」。光榮、「神よ、昔罪ある女に涙を賜

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩堂大課226]---------------------

ひし如く」。今も、「生神女よ、我爾を辱を得ざる憑恃」。主憐めよ、四十次。光榮、今も、「へルワィムより尊く」。神父よ、主の名を以て福を降せ。司祭、主イイススハリストス我等の神よ、吾が諸聖神父の祈に依りて我等を憐み給へ。誦經、「アミン」。聖大ワシリイの祝文、「主よ、主よ、我等を晝の諸の流矢より脱れしめし者よ」。次に、「來れ、我等の王」、三次及び三小拜。第五十聖詠、及び第百一聖詠、「主よ、我がを聽き給へ」を誦す。イウデヤ王マナッシヤの祝文、「主全能者、吾が先租アウラアム」。聖三祝文、及び三小拜。司祭、「蓋國と權能」。「アミン」の後左の諸讃詞を歌ふ、第六調、「主よ、我等を憐め」。光榮、「主よ、我等を憐めよ」。今も、「讃美たる生神女よ、我等の爲に憐の門を開け」。主憐めよ、四十次。光榮、今も、「へルワィムより尊く」。神父よ、主の名を以て福を降せ。司祭、「主イイススハリストス我等の神よ」。祝文、「主宰神父全能者」。「來れ、我等の王」、三次及び三小拜。第六十九聖詠、「神よ、速に我を救へ」。第百四十二聖詠、「主よ、我がを聆き」。次に、「至高きには光榮神に帰し」。「主よ、爾は世世に我等の避所たり」。「主よ、我等を守り、罪なくして此の夜」、聖三祝文。「至聖三者よ、我等を憐め」。「天に在す」、司祭、「蓋國と權能」。次に朗聲を以て右列詠隊、第六調に依りて、左の讃詞を歌ふ、「萬軍の主よ、我等と偕にせよ」。左列詠隊、同讃詞。右列詠隊第一句、神を其聖所に讃め揚げよ、彼を其有力の穹蒼に讃め揚げよ、及び同讃詞。以下毎句の後に同讃詞を歌ふ。

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩堂大課 227]---------------------

五句を歌ひ畢りて、兩詠隊共に第一句及び讃詞を歌ふ。次に歌ふ、光榮、「主よ、若し我等の爲に祈る爾の聖者」、今も、「生神女よ、我が罪は甚多し」。「至聖なる生神女よ」。「神の母よ、我が恃を以て」。主憐めよ、四十次。祝文、「何の日何の時にも」。主憐めよ、三次。光榮、今も、「へルワィムより尊く」。神父よ、主の名を以て福を降せ。司祭、「神よ、我等に恩を被らせ」。次に聖エフレムの祝文、及び十六大小拜、常例の如し、畢りて後聖三祝文、及び三小拜。「天に在す」主憐めよ、十二次。祝文を誦す、「穢なく、誘はるるなく」。「主宰よ、我等眠らんとする者に」。「至榮なる永貞童女」。「我が憑恃は父」。光榮、今も、主憐めよ、三次。福を降せ。是の時衆人地に俯伏し、司祭之に向ひて左の祝文を高誦す、「主宰大仁慈なる主イイススハリストス我等の神よ」。祝文畢り、衆人起立して後、修道院に於ては、司祭衆兄弟に向ひて伏拜して曰ふ、尊貴なる諸父よ、我罪人が言と行と思と諸感覚とを以て犯しし諸罪を赦し給へ。衆答へて曰ふ、尊貴なる神父よ、神は爾に赦し給はん。其後兄弟相續きて一一司祭の前に至り、伏拜して同じく赦を乞ひて曰ふ、尊貴なる神父よ、我罪人に降福して、我を赦し給へ。畢りて後、司祭聯を誦す、吾が今上皇帝の爲にらん。其他。終に司祭誦す、主イイススハリストス我等の神よ、吾が諸聖神父の祈に因りて我等を憐み給へ。詠隊、「アミン」。

---------------------[大齋第一週間月曜日 晩堂大課 228]---------------------

 

全聖大齋の晩堂課の式は都て上述の如し。

 

 

          ~~~~~~

 

 

 第一週間の火曜日の早課

 

   第二の誦文の後に坐誦讃詞、第二調。

最尊き齋の恩寵は至りて祝福せられたり。蓋モイセイは之に因りて光榮を獲て、石版に録されたる法を受け、年少の童子は火よりも強き者と顯れたり。故に我等此を以て肉體の燃ゆる慾を滅して、ハリストス救世主に呼ばん、我等衆人に悔改を賜ひて、「ゲエンナ」を免れしめ給へ。

   光榮、同調

痛悔の時至れり、鳴呼我が靈よ、節制の果を顯せ、前に痛悔せし者に目を注ぎて、ハリストスに呼ベ、我罪を犯せり、仁慈なる主宰、獨憐多き者よ、中心より歎息せし税吏を救ひしが如く、我を救ひ給へ。

---------------------[大齋第一週間火曜日 早課 229]---------------------

   今も、生神女讃詞。

「ハリスティアニン」等の熱心なる轉達、生神童貞女母よ、常に爾の子に祈りて、我等が爾の祈を以て、其仁慈の恩澤に依りて、仇敵の悉くの惡業と惡謀より救はれて、犯しし諸罪の赦を賜はらんことを得しめ給へ。

   第三の誦文の後に坐誦讃詞、第五調。

主よ、我等救を施す節制の二日に於て爾に呼ぶ、我等爾の諸僕の心を感動せしめ、畏を以て獻ぐる我等の祈を納れて、我等に善く齋の途を經、潔浄と大なる憐とを蒙るを得しめ給へ。

   光榮、同上。

   今も、生神女讃詞。

神聖なる花を生ぜし根、約匱と燈臺、純金の壷と生命の糧を載する聖なる筵よ。聖前驅と偕に主に、其爾の子及び神たるに因りて祈りて、爾を生神女と承け認むる者を宥めて救はんことを求め給へ。

 

規程は月課經及び三歌經の。第二歌頌、第二調。

   此に預言者の第二歌頌を誦文す。

イルモス、見よ、見よ、我はイズライリの民を海に救ひ、野に飽かしめ、人人の爲

---------------------[大齋第一週間火曜日 早課 230]---------------------

に水を石より出しし者なり、昔滅亡に陷りし者を抱きて、言ひ難き慈憐に因りて我に就かしめん爲なり。

靈よ、眠覺め醒し、歎息し、流涕し、齋を以て罪の重負を悉く卸し、熱心の痛悔を以て火を避け、哭泣を以て諸慾の憂ふべき衣を裂きて、神聖なる衣裳を受けよ。

我等皆齋を以て善行の山に近づき、逸樂の下の圍を脱して、貴き異象の昏黒に入り、神妙なる上升を以て奥密に神成せられて、ハリストスの愛すべき惟一の美麗を觀ん。

鳴呼我如何にならんか、罪を行ひて主宰を畏れず、良心を失ひし者は何を爲さんか、故に我審判の前に定罪せられたり。仁慈にして義なる審判者よ、我衆人に超えて爾を憂ひしめし者を正しきに反らしめて救ひ給へ。

生神女讃詞、耕されざる地、手を開きて其神妙なる力にて惠を以て悉くの生ける者に飽かせ給ふ萬有の養成者を生ぜし者よ、我が罪惡に飽きて弱りたる心を生命の糧を以て固め給へ。

 

   又。第五調。イルモス、「見よ、見よ」。

來りて、靈の密室に入り、主に祈を獻じて呼ばん、天に在す我等の父よ、我が

---------------------[大齋第一週間火曜日 早課231]---------------------

債を釋きて之を赦し給へ、爾獨慈憐なればなり。

齋の時我が靈の清爽なるを顯して、適意の日の變じたるを憂ふるなからん、蓋我等の爲に敬虔を修むる時は輝けり。

光榮、三者讃詞、無原にして造られざる三位の惟一者、主宰、萬世の王よ、天使の群と悉くの人の性とは爾父と子と聖神を讃榮す。

生神女讃詞、童貞女よ、我等爾我が族の萬徳の光榮なる者を歌ふ、蓋我等は爾に依りて神成せられたり、爾我等の爲に救世主及び神ハリストス、我等を詛より釋きし者を生みたればなり。

   我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

誰か火を滅し、誰か猛獸の口を塞ぎたる、齋少者を爐より助け、預言者ダニイルを獅の口より助けたる者なり、我等兄弟も善く之を遇せん。

イルモス、見よ、見よ、我は神、己の旨を以て肉體を衣たる者なり、蛇の誘に依りて罪に陷りしアダムを救はん爲なり。

 

   第八歌頌

イルモス、「昔シナイ山に於て棘の中に」。

靈よ、甚しき怠惰の眠を斥け、熱心にして神聖なる誡の爲に醒せよ。新郎

---------------------[大齋第一週間火曜日 早課 232]---------------------

は近づく、燈を攜ふる者として、急ぎて之を迎へよ。

宏恩なる言よ、我逸樂の劔にて甚しく傷つけられたる者を爾が慈憐なる審斷の薬剤にて醫し給へ、我が感謝の心を抱きて世世に爾を讃榮せん爲なり。』

靈よ、有害なる諸慾より、猜忌、憎惡。凡の惡心より己を節制して、無形に天上の糧を備ふる食を食へ。

 

生神女讃詞、潔き神の母よ、我が靈の傷、心の慾、智慧の迷を醫し給へ、爾は獨罪ある者の扶助者、攻めらるる者の牆なればなり。

 

   又。イルモス、「萬物の造成主」。

我等皆節制を以て靈に翼を備へて、天に於て嘉く納れらるる祈を主に奉らん。

我等傷感の神を得て、靈の贖罪の爲に泣きて、ハリストスを世世に讃め歌はん。

   我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

 

三者讃詞、一性なる三者、造られざる惟一者、萬有の神よ、我等爾を萬世に尊み崇めん。

生神女讃詞、至淨なる者よ、爾を讃め歌ふ者の爲に祈を爲して彼等をも諸の

---------------------[大齋第一週間火曜日 早課 233]---------------------

誘惑及び災難より救ひ給へ。

   我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

富める者の食を厭ひて、來りてラザリと偕に齋せん、アウラアムの懐が我等をも温めん爲なり。

   我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

イルモス、萬物の造成主、諸天使の畏るる者を、人人よ、歌ひて萬世に讃め揚げよ。

 

   第九歌頌

イルモス、「童貞女が孕める者と現れて」。

地上の者の中誰か何時か斯く躓きて、神を怒らせたる、誰か我不當の者の若く惡の進に從ひて罪の住所と爲りたる。然れども慈憐の希望者たる神よ、爾我を憐み給へ。

神を見る諸天使の軍よ、寛容なる神に祈りて、生命の逸樂の淵と諸慾の激浪とに漾はされ、仇敵の諸神の攻撃に惱まさるる靈を救はんことを求め給へ。』

靈よ、來れ、齋の徳の翼に輕くせられて、下に引く所の惡より起ち、信を以て神を見る者と爲りて、至りて光明なる異象、諸徳の糧を備ふる者を樂しめ。

---------------------[大齋第一週間火曜日 早課 234]---------------------

生神女讃詞、潔き者よ、誰か宜しきに適ひて爾を讃美するを得ん、蓋爾は讃美たる主宰、天軍の諸長が讃頌する主を測り難く生み給へり。婚姻を知らざる童貞女よ、罪を犯しし人人の爲に彼にり給へ。

 

   又。イルモス、「イサイヤ祝へよ」。

兄弟よ、今は嘉く納るべき時、今は救の日なり、此の日に我等諸徳の獻物を神に奉り、昏昧の行を除きて光明の甲を衣るべし、パワェルの呼ぶが如し。

來りて、主が齋を以て敵を殺しし如く、我等も此を以て其矢を折り、其惡謀を破らん。彼が我等を誘はんと欲する時、各人云ふべし、サタナ我より退け。

 

光榮、三者讃詞、無原なる尊き三者、生命の源たる分れざる惟一者、生れざる父、生れたる言、又子、及び聖神よ、我等爾の一性を讃頌す、爾を歌ふ者を救ひ給へ。』

生神女讃詞、神の母よ、爾の産は測り難し、蓋爾の受胎は夫に由らず、爾は童貞女として生み給へり、生れたる者は神なればなり。我等彼を尊み崇めて、爾童貞女を讃め揚ぐ。

   我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

齋を以て祈の山に就きて、我等も潔き心にて神を見、モイセイの如く、誡の碑を衷に受けて、神の愛の顔に由りて、光榮を以て輝かされん。

---------------------[大齋第一週間火曜日 早課 235]---------------------

イルモス、イサイヤ祝へよ、童貞女は孕みて、子エムマヌイル、神及び人なる者を生めり、其名は東、我等彼を崇めて、童貞女を讃め揚ぐ。

   光耀歌。

   挿句に本日の自調の讚頌、第三調。

人人よ、靈の救たる無の齋を始めん、畏を以て主に勤めん、矜恤の膏を以て首に傳らん、潔浄の水を以て面を洗はん、祈の中に贅語を言はずして、敎へられし如く斯く呼ばん、天に在す我等の父よ、我等の罪過を我等に免し給へ、爾は人を愛する主なればなり。

句、「主よ、夙に爾の憐を以て我等に飽かしめよ。」

   復同上の自調。

句、「願はくは主吾が神の惠は我等に在らん」。

致命者讃詞、ハリストスの軍士は諸王と苛虐者とを畏るる畏を退けて、勇敢を以て勇ましくハリストスを萬有の主神、及び我等の王として承け認めたり、今は我等の靈の爲に祈り給ふ。

光榮、今も、生神女讃詞、生神女、爾に祈る衆人の轉達者よ、我等爾に因りて勇を得、爾を以て誇と爲す、我が悉くの倚頼は爾に在り。爾より生れし者に爾

---------------------[大齋第一週間火曜日 早課 236]---------------------

の不當なる諸僕の爲に祈り給へ。

          ~~~~~~

 

   第六時課に

   預言の讃詞、第一調。

我等は地に在りて我が列祖の如く覉客なるに因りて、我が救世主よ、我等の生命の短きを罪なく護り、人を愛する主なるに因りて、我等を憐み給へ。

 

提綱、第五聖詠、第四調、我が王我が神よ、我が呼ぶ聲を聽き納れ給へ。句、主よ、我が言を聽き、我が思を悟り給へ。

 

   イサイヤの預言書の讀。第一、二章。

主是くの如く言ふ、爾等若し肯ひて順はば、地の善物を食はん、若し肯はずして逆はば、劍爾等を齧まん、蓋主の口之を言ふ。忠信の城邑、義判の充ちたる者は、如何にして淫婦とは爲りたる、義其中に居りしが、今は殺人者居るなり。爾の銀は渣滓と爲り、爾の酒は水を雑ふ、爾の諸は法を壞る者と爲り、盗賊の黨と爲り、彼等皆賄賂を喜び苞苴を追ひ求め、孤子を防ぎ護らず、婦の訟は彼等に至らず。故に主、萬軍の主、イズライリの有能者云く、噫我敵に向ひて念を散し、仇に向ひて報

---------------------[大齋第一週間火曜日 第六時課 237]---------------------

を爲さん、我手を擧げて爾に加へ、灰汁を以てするが如く爾を浄めて、混物を去り、爾の鉛を盡く除き、而して又爾の審士を舊の如く、爾の議官を初の如く立てん、其時爾は義の邑、忠信の城市と稱へられん。シオンは義判を以て救はれ、其轉じたる諸子は義を以て救はれん。然れども反逆の者と罪人とは皆壞られ、主を棄てたる者は滅されん。彼等は斯く爾等の慕へる橡の森に縁りて羞を得、爾等の擇びたる園に縁りて辱しめられん、蓋爾等は葉の落ちたる橡の樹の如く、水なき園の如くならん。強き者は麻縷の如く、其工作は火花の如くなり、共に燃えて、之を滅す者なからん。アモスの子イサイヤに異象の中に示されし言、イウデヤとイエルサリムトの事なり。末の日に、主の山及び神の家は諸山の峰に顯れて、諸の陵より高く擧げられ、萬民流るる如く之に歸せん。多くの民は往きて言はん、來りて、主の山に登り、イヤコフの神の家に入らん、彼我等に其途を敎へん、我等其後に從はん。

 

提綱、第六聖詠、第四調、主よ、爾の憤を以て我を責むる毋れ。句、主よ、我を憐み給へ、我弱ければなり。

          ~~~~~~

 

---------------------[大齋第一週間火曜日 第六時課 238]---------------------

 

 

 第一週間の火曜日の晩課

 

   「主よ、爾にぶ」に讃頌、第二調。

我等昔苦き食に因りて樂園より出されし者は、諸慾の節制を以て此に入らんことを務めて、我が神に呼ばん、爾の手を十字架に伸ベ、醋を飲み、膽を嘗め、釘に由る苦痛を忍びし主よ、我等の靈より至りて苦き逸樂を悉く釘うち出して、慈憐の多きに因りて、爾の諸僕を救ひ給へ。

至りて慈憐なる主よ、我等昔木の食に因りて樂園より出されし者は、爾の十字架に因りて此に入るを得たり。故に我等祈の中に十字架を擧げて、皆中心より爾に祈る、今節制の時に於て我等に涙の流、我等の諸慾と罪過との汚を悉く浄むる者を遣し給へ、我等皆熱心に爾に呼ばん爲なり、主よ、光榮は爾に歸す。

 

   又讃頌第二調。

言よ、昔アダムに樂園を賜ひし如く我にも節制の歡樂を與へ給へ、我が神よ我が凡そ爾の誡より食ひ、爾が禁ぜし果たる罪より己を制して、喜を以て爾が生命を施す十字架の苦を迎へん爲なり。

---------------------[大齋第一週間火曜日 晩課 239]---------------------

   又月課經の三章。光榮、今も、十字架生神女讃詞。

提綱、第七聖詠、第六調、主我が神よ我爾を頼む、我を救ひ給へ。句、悉くの窘逐者より我を援け給へ。

 

   創世記の讀。第一章。

神曰へり、天の穹蒼に光明ありて、晝と夜とを分ち、又天象の爲、時節の爲、日の爲、年の爲に成るべし、又天の穹蒼に在りて地を照す光と爲るべし。斯く成れり。神二つの巨なる光を造り、大なる光に晝を司らしめ、小き光に夜を司らしめ、又星を造れり。神之を天の穹蒼に置きて、地を照さしめ、晝と夜とを司らしめ、光と暗とを分たしめたり、神、之を觀て善とせり。夕あり、朝あり、是れ第四日なり。神曰へり、水は、生命ある諸動物を産すべし。又鳥は地の上に、天の穹蒼に飛ぶべし。斯く成れり。神は巨なる魚、及び水が其類に從ひて産する所の生命ある諸動物、又諸の飛鳥を其類に從ひて造れり。神之を觀て善とせり。神之を祝して曰へり、生めよ、殖えよ、海の水に充てよ、又鳥は地に殖ゆべし。夕あり、朝あり、是れ第五日なり

 

提綱、第八聖詠、第五調、主我が神よ、爾の名は何ぞ全地に大なる。句、爾の光榮は諸天に超ゆ。

---------------------[大齋第一週間火曜日 晩課 240]---------------------

   箴言の讀。第一章。

智慧は街に呼び、其の聲を衢に揚げ。大會の處に傳へ、邑の門の口に宣べて云ふ、爾等拙き者、拙きを愛し、侮る者侮を樂しみ、愚なる者知識を惡むは何れの時に至るか。轉じて我の譴責を聽け、視よ、我我が神を爾等に注ぎ、我が言を爾等に示さん。我呼びたれども、爾等聽かざりき、我が手を伸べたれども、顧みる者なかりき、爾等我が悉くの勸諭を斥け、我が譴責を受けざりき。此に縁りて我も爾等の滅亡を笑ひ、恐懼が爾等に來らん時喜ばん、此れ恐懼が颶風の如く爾等に來り、禍患が旋風の如く爾等に至り、憂患と困苦とが爾等に及ばん時なり。其の時彼等我を呼ぶとも、我聽かざらん、旦より我を尋ぬとも、我に遇わざらん。蓋彼等は知識を惡み、主を畏るる寅畏を擇ばず、我が勸諭を受けず、我が悉くの譴責を藐じたり。故に彼等は己の途の果を食い、己の策略に飽かん。蓋拙き者の頑固は彼等を殺し、愚なる者の簡慢は彼等を滅さん。惟我に聽く者は危きことなく、安然として、禍を懼れずして居るを得ん。

次に、「主よ我等を守リ、罪なくして此の晩」。

   挿句に本日の自調の讃頌、第八調。

我等齋を以て唯食を制するのみならず、乃凡そ物體の慾を離るる者と爲すべし、

---------------------[大齋第一週間火曜日 晩課 241]---------------------

我等を迫害する肉體を服せしめて、神の子たる羔、世界の爲に甘じて屠られし者を領食するに任ふる者と爲らん爲、又諸徳の高きに登りて、美善なる行の光明歡樂に於て、屬神に救世主の死よりの復活を祭りて、人を愛する主を樂しましめん爲なり。

句、「天に居る者よ、我目を擧げて爾を望む」。

   復同讃頌

句、「主よ、我等を憐み、我等を憐み給へ」。

致命者讃詞、主よ、爾の致命者は現世を忘れて苦を思はざりき、來世の生命を獲ん爲なり、故に之を嗣ぐ者と爲りて、諸天使と共に喜ぶ。彼等の祈に由りて爾の民に大なる憐を賜へ。

光榮、今も、十字架生神女讃詞、鳴呼至榮なる奇跡、鳴呼新なる秘密、鳴呼畏るべき建畫やと、童貞女は爾病なくして奇異に生みし者が十字架に二人の盗賊の間に懸りたるを見て云ひ、且泣きて呼ベリ、哀しい哉我が至愛なる子よ、如何ぞ殘忍にして恩を知らざる民は爾を十字架に釘したる。

   其他の式は上に記ししが如し。

          ~~~~~~

---------------------[大齋第一週間火曜日 晩課 242]---------------------

 

 第一週間の火曜日の晩堂課

 

聖詠、「神よ、速に我を救へ」を讀み畢りて後に、

   大規程を歌ふ。第六調。

 

   第一歌頌、

イルモス、二次、「佑け護る者顯れて」。

我カインの殺害に逾へたり、蓋我自由に罪惡の肉體を生かし、我が惡業を以て靈を撃ちて、之を殺す者となれり。

イイススよ、我アワェリの義徳に傚はざりき、爾に何時も、容れらるべき獻物をも、神を悦ばす行をも、潔き祭をも、無の生命をも獻ぜざりき。

禍なる靈よ、我等もカインの如く萬有の造成主に罪惡の祭、不潔の行と不當の生命とを獻げたり、故に我等定罪せられたり。

爾は陶工の如く土を形づくりて、我に肉と骨、呼吸と生命を賜へり。鳴呼我が造成主、我が贖罪主及び審判者よ、我痛悔する者を容れ給へ。

救世主よ、我は我が行ひし諸罪、及び殺害を爲す心中の思が盗賊の如く我に負はせし我が靈と體との傷を爾の前に顯す。

---------------------[大齋第一週間火曜日 晩堂課 243]---------------------

救世主よ、我罪を犯せりと雖、爾が人を愛する主なるを知る。爾は慈憐を以て罰し、熱愛を以て憐み、泣く者を顧み、父の如く走りて放蕩の者を召す。

 

光榮、三者讃詞、永久の三者、一性に於て伏拜せらるる者よ、罪の重き負を我より卸して、慈憐なるに因りて、我に感涙を與へ給へ。

生神女讃詞、生神女、爾を歌ふ者の憑恃及び轉達よ、罪の重き負を我より卸して、潔き女宰たるに因りて、我悔ゆる者を納れ給へ。

 

   第二歌頌

イルモス、天よ聽け、我傳へて、童貞女より身を取りて來りしハリストスを歌はん。

罪は我より神が先に織りし衣を剥ぎて、我が爲にも裘を縫ひたり。

我は無花果の葉の如くに羞の衣を衣て、我が縦なる諸慾の標と爲せり。

我邪侈にして快樂なる度生の不潔を以て汚され、且血に塗れたる辱づべき衣を衣たり。

我諸慾の苦と物體の壞とに從へり、故に今敵は我を攻む。

救世主よ、我世物を好み、財を貪ることを無慾より重じて、今重き任に壓せらる。

---------------------[大齋第一週間火曜日 晩堂課 244]---------------------

我汚れたる思の彩れる衣を以て肉體の偶像を飾れり、故に定罪せらる。

我唯外面の飾に心を盡して、神の像に依りて造られたる内幕を輕ぜり。

救世主よ、我始の像の美しきを諸慾の中に埋めたり、爾彼の「ドラフマ」の如く尋ねて之を得よ。

我淫婦の如く爾に呼ぶ、我罪を犯せり、我獨爾の前に罪を犯せり、救世主よ、我よりも香膏の如く涙を納れ給へ。

我税吏の如く爾に呼ぶ、救世主よ、我を憐み、我を憐み給へ、蓋アダムの子孫の中何人も我の如く爾の前に罪を犯しし者なし。

 

光榮、三者讃詞、我爾三位にして惟一なる萬有の神、父と子と聖神を歌ふ。

生神女讃詞、至浄なる生神童貞女、獨衆人に讃頌せらるる者よ、我等が救を得んことを切に祈り給へ。

 

   第三歌頌

イルモス、主よ、爾の誡の石に我が動ける心を固め給へ、爾獨聖にして主なればなり。

我爾死を滅す者の中に生命の泉を得て、終に先ちて、我が中心より爾に呼ぶ、我罪を犯せり、我を憐みて救ひ給へ。

---------------------[大齋第一週間火曜日 晩堂課 245]---------------------

主よ、我罪を犯せり、爾の前に罪を犯せり、我を憐み給へ、蓋人の中には我が罪過を以て逾へざりし罪人なし。

救世主よ、我ノイの時の放蕩の者に傚ひて、彼等が洪水に溺るる定罪を繼ぎたり。

靈よ、爾彼の殺父者ハムに傚ひて、面を避けて隣の羞を蓋ふことをせざりき。』

我が靈よ、罪のをロトの如く避けよ、ソドムとゴモラを避けよ、凡の無智の望の火を避けよ。

主よ、我爾に呼ぶ、我を憐み、爾の天使等と偕に來りて、衆人に其行に循ひて報いん時我を憐み給へ。

 

光榮、三者讃詞、單一にして造られざる三者、無原にして三位に歌はるる性よ、我等信を以て爾の權柄に伏拜する者を救ひ給へ。

生神女讃詞、神の母よ、爾は時の外に父より生れし子を時の内に夫なくして生めり、異なる哉奇跡や、乳を以て養ひて、童貞女に止まれり。

 

   第四歌頌

イルモス、「主よ、預言者は爾の降臨の事を聞き」。

我が靈よ、醒せよ、古の太祖の大なる者の如く勇め、然らば爾行と智慧と

---------------------[大齋第一週間火曜日 晩課 241]---------------------

を得、神を見る知識と爲り、明悟を以て近づき難き闇冥を貫き、大なる寶を受けん。

我が靈よ、太祖の大なる者は十二の太祖を生みて、爾の爲に行を以て登るべき梯を奥密に顯して、子を以て階級を兆し、己が此の階級に行く歩を以て上に登るを兆せり。

禍なる靈よ、爾憎むべきイサフに傚ひて、家子の業、始の美を以て爾の誘惑者に與へて、父の祝福を失ひ、行と智慧とを以て再蹶けり、故に今痛悔せよ。』

イサフは戀愛に耽るに因りて、「エドム」と名づけられたり。彼は常に快樂に焚かれ、邪慾に汚されて、「エドム」と稱へられたり、之を解けば、罪を好む靈の燃ゆるなり。

我が靈よ、爾は塵芥の中に坐して義とせられしイオフの事を聞きて、彼の勇に傚はざりき。凡そ爾が知る所、見る所、試みる所に於いて堅固なる旨を守らずして、忍耐なきを顯せり。

先に寶座に在りし者は今塵芥の中に坐し、裸體にして全身に瘡痍を被れり、多くの子を有ち、名の著れし者は俄に子なく家なき者と爲れり。彼は塵芥を其宮と爲し、瘡痍を寶石と爲せり。

---------------------[大齋第一週間火曜日 晩堂課 247]---------------------

光榮、三者讃詞、我爾、同王にして同座たる、三位にして惟一なる神性、性に於て分れず、位に於て混合せざる者を承け認め、爾に大なる歌、最高き居所に三次唱へらるる者を呼び歌ふ。

生神女讃詞、爾は生むにも、童貞を守るにも、二ながら天性の童貞女なり。爾より生れし者は天性の法を改め、生まざる腹は生む、神の欲する所には天性の順序渝へらる、彼欲することを行へばなり。

 

   第五歌頌

イルモス、「人を愛する主よ、祈る、夜より寤むる者を照し」。

靈よ、爾は昔モイセイの置かれたる筐が宮に在る如く河の波に漾はされて、ファラオンの謀の哀しむべき迹を遁れしを聞けり。

不當なる靈よ、爾昔貞潔の例たる新生の男子を殺しし産婆の事を聞きしならば、今大なるモイセイの如く智慧を哺ふ赤子と爲れ。

不當なる靈よ、爾はエギペト人を殴ち斃しし大なるモイセイの如くに「エギペト」の智慧を殺さざりき、然らば謂ふべし、爾如何ぞ痛悔を以て慾を脱れて野に居るを得ん。

大なるモイセイは野に居りき、靈よ、爾も往きて彼の度生に傚へ、爾も棘の中

---------------------[大齋第一週間火曜日 晩堂課 248]---------------------

に神の顯るるを見ん爲なり。

靈よ、爾海を撃ちて淵を固むるモイセイの杖を思へ、是れ神聖なる十字架の兆たりき。此を以て爾も大なる事を行ふを得べし。

アアロンは浄くして雑なき火を神に獻げたり、然れどもオフニ及びフィネエスは、靈よ、爾の如く神に疎き不潔なる度生を獻げたり。

光榮、三者讃詞、三者よ、我等爾惟一の神を讃榮す。聖、聖、聖なる哉、爾父と子と聖神、單一の性、永遠に伏拜せらるる惟一者や。

生神女讃詞、にして夫を知らざる母、童貞女よ、世世を造りし神は爾の中に於て我が靈體を衣て、人性を己に合せ給へり。

 

   第六歌頌

イルモス、「我心を盡して仁慈なる神にべり」。

救世主よ、我が諸罪の波は紅の海の波の如く轉じて俄に我を覆へり、昔エギペト人と其騎兵とを覆ひしが如し。

靈よ、爾の望は古のイズライリの如くに無智なり、蓋爾は愚にして、諸慾の快樂に飽くことを神聖なる「マンナ」より重ぜり。

靈よ、爾はハナネイの思の井を泉ある石より重ぜり、此の泉より出づる智慧

---------------------[大齋第一週間火曜日 晩堂課 249]---------------------

の河は器の如く神學の流を注ぐ。

我が靈よ、爾は豕の肉と釜とエギペトの糧とを天の糧より重ぜり、古の無智なる民の野に在るが如し。

救世主よ、爾の僕モイセイは杖を以て石を撃ちて、奥密に爾が生命を施す脅を象れり、我等皆是より生命の飲料を汲む。

靈よ、イイススナワィンの如く約地を探り、其如何なるを視て、法に適ふ行を以て此の中に住所を定めよ。

 

光榮、三者讃詞、我は單一にして分れざる三者、位に於て分れたる者なり、又我は惟一者、性に於て合一なる者なり、父、子、聖神之を言ふ。

生神女讃詞、生神女よ、爾の腹は我等の爲に我が形を受けし神を生めり。其萬有の造成主なるを以て、彼に祈り給へ、我等が爾の祈に依りて義とせらるを得ん爲なり。

 

小讃詞、我が靈よ、我が靈よ、起きよ、何ぞ眠る、終は邇づく、爾擾れん。故に寤めよ。在らざる所なく、充たざる所なきハリストス神が爾を宥めん爲なり。

 

   第七歌頌

イルモス、「列祖の神よ、我等罪を犯し、不法を行ひ」。

---------------------[大齋第一週間火曜日 晩堂課 250]---------------------

約匱が車に牽かれて、牛路を失ひし時、彼のオザは惟之に觸るるに因りて神の怒を蒙れり。靈よ、爾彼の慎なきを避けて、正しく神聖なる事を恭へ。

靈よ、爾はアワェサロムが如何にして天性に背きしを聞けり、爾は其醜き行、彼が父、ダワィドの榻を汚ししを知る、、然れども爾自ら彼の邪慾と快樂との情に傚へり。

靈よ、爾は己の奴隷ならざる位を爾の肉體に從はしめたり、蓋爾は他のアヒトへルを敵の中に獲て、其謀を聽けり、然れどもハリストス親ら之を敗りて、爾に救を得易からしむ。

奇異なるソロモンは智慧の恩寵に満たさるれども、曾て神の前に惡を行ひて、彼より離れたり。靈よ、爾自ら詛はるべき生命を以て之に似たる者と爲れり。

噫智慧を愛する者は快樂の慾に惹かれて淫婦に溺れ、神に離れて汚れたり。

靈よ、爾自ら心中に恥づべき邪慾を懐きて、彼に傚へり。

靈よ、爾は父の諭を聽かざりしロワォアム、又昔の反逆者たる極惡の僕イエロワォアムに齊しき者となれり。然れども彼等に傚ふを避けて、神に呼ベ、我罪を犯せり、我に憐を垂れ給へ。

---------------------[大齋第一週間火曜日 晩堂課 251]---------------------

光榮、三者讃詞、單一にして分れざる一體の三者と惟一の性、三光と一光、三聖と一聖なる神三者は歌を以て歌はる。靈よ、爾も三一の生命なる萬有の神を歌ひて讃め揚げよ。

生神女讃詞、神の母よ、我等爾を歌ひ、爾を崇め讃め、爾に伏拜す。蓋爾は分れざる三者の一なるハリストス神を生みて、親ら我等地に居る者の爲に天の住所を開き給へり。

 

   第八歌頌

イルモス、「凡そ呼吸ある者と造物は」。

靈よ、爾オジヤに傚ひて、彼に倍する癩病を受けたり、不當の事を思ひ、不法の事を行へばなり、爾に有る所を棄てて、痛悔に趨り附け。

靈よ、爾は麻を衣、灰を蒙りて、神の前に痛悔せしニネワィヤ人の事を聞けり。然れども爾は彼等に傚はずして、頑なること、凡そ律法の前及び律法の後の罪人に超えたり。

靈よ、爾は如何にイエレミヤが不潔のに在りて、シオン城の爲に悲しみ歎きて、涙を求めしを聞けり、彼が悲歎の生命に傚へ、然らば救を獲ん。

イオナはニネワィヤ人の悔改を預知して、ファルシスに遁れたり、蓋彼は預言者

---------------------[大齋第一週間火曜日 晩堂課 252]---------------------

として、神の憐を知りて、預言が僞にならざらん爲に熱中せり。

靈よ、爾は如何にダニイルがに在りて猛獸の口を塞ぎしを聞けり、如何にアザリヤと偕にありし少者が信を以て爐の燃ゆるを滅ししを知れり。』

靈よ、我舊約より爾の爲に悉くの例を引けり、義人が神を喜ばしむる行に傚ひ、惡人の罪を是より避けよ。

 

光榮、三者讃詞、無原の父、同無原の子、仁慈の撫恤者、義なる神、神言の父、無原の父の言、生活にして造成する神、三者惟一者よ、我を憐み給へ。

生神女讃詞、至浄なる者よ、紅の組織を以て錦の衣を織るが如くエムマヌイルの肉體は爾が腹の中に織られたり。故に我等實に爾を生神女として尊み崇む。

 

   第九歌頌

イルモス「種なき胎の産は言ひ難し」。

ハリストスは試みられ、惡魔は試み、石を示して餅と爲さんことを勸め、山に上せて、一瞬の間に世界の萬國を示せり。嗚呼、靈よ、誘惑を畏れて、醒して常に神に祈れ。

野に居るを喜ぶ鴿、呼ぶ者の聲、ハリストスの燈は痛悔を傳へて呼べり、此の

---------------------[大齋第一週間火曜日 晩堂課 253]---------------------

時イロドはイロディアダと共に不法を行へり。我が靈よ、謹みて不法者の網に陷る毋れ、乃痛悔を愛せよ。

恩寵の前驅は野に居り、イウデヤ及びサマリヤの人皆趨り附きて彼に聽き、己の罪を告げて、熱心にして洗を受けたり、惟爾靈よ、、彼等に傚はざりき。

婚姻は貴く、牀はなし、蓋ハリストスはカナの婚姻に於て身にて食を食ひ、水を酒に變ずるを以て之を祝福せり。靈よ、彼が此の首の奇迹を顯ししは、爾が變易せん爲なり。

ハリストスは瘋者を固めて、之に其榻を取らしめ、の子たる少者を死より起し、百夫長の僕を醫し、サマリヤの婦に己を顯して、靈よ、爾の爲に神を以て神に務むべきを象れり。

主は血漏の婦を其衣に觸るるに因りて醫し、癩病者を潔くし、瞽者に見るを賜ひ、跛者と聾者と唖者とを治し、、僂みたる婦を言にて醫せり、禍なる靈よ、是れ爾が救を得ん爲なり。

 

光榮、三者讃詞、我等父を讃め揚げ、子を崇め歌ひ、信を以て聖神を尊み拜み、分れざる三者、性に於て惟一なる者、一光と三光、三一の生命、四極に生命を施して之を照す者を崇め讃めん。

---------------------[大齋第一週間火曜日 晩堂課 254]---------------------

生神女讃詞、至りて潔き神の母よ、爾の城邑を衛り給へ。蓋彼は信を以て爾の力にて建ち、爾に依りて堅固にせられ、爾を以て凡の誘に勝ち、諸敵を敗りて之を從はしむ。

 

アンドレイに、尊きアンドレイ、至りて福たる神父、クリトの牧者よ、爾を讃め歌ふ者の爲に常に祈りて、我等凡そ爾の記憶を中心より尊む者を忿怒と、憂愁と、傷害と、數へ難き罪過より脱れしめ給へ。

 

次に兩詠隊「イルモス」を歌ふ、「種なき胎の産は言ひ難し」。

 

   其他晩堂課の式

 

          ~~~~~~

 

 

 

 

---------------------[大齋第一週間火曜日 晩堂課 255]---------------------

 

  第一週間の水曜日の早課

 

   第一の誦文の後に坐誦讃詞は八調經の。

   第二の誦文の後に坐誦讃詞、第二調。

爾の苦を以て衆に苦なきを與へし仁愛の主よ、爾の十字架を以て我が肉體の諸慾を殺して、我齋して爾の光榮に役する者を神聖なる苦を見るに堪ふる者と爲し給へ、我が豊に大なる憐を獲ん爲なり。

   光榮、同上。

   今も、十字架生神女讃詞、同調。

ハリストスよ、童貞女爾の母は爾木に懸けられて死せし者を觀て、痛く泣きて曰へり、吾が子よ、此の恐るべき秘密は何ぞや、衆に永遠の生命を賜ふ者は如何ぞ甘じて十字架に恥づべき死を以て死する。

   第三の誦文の後に坐誦讃詞、第二調。

獨人を愛する主よ、爾が今聖にして我等に賜ひし節制の光明なる時を、我等衆に十字架の力に由りて、傷感と、潔浄と、平安とを以て送るを得しめ給へ。

   光榮、同上

---------------------[大齋第一週間水曜日 早課 256]---------------------

   今も、十字架生神女讃詞、同調。

潔き女宰生神女よ、我等皆爾の子の尊き十字架に護られて、輙く敵の凡の攻撃に勝つ。故に宜しきに合ひて爾を光の母、我が靈の獨の冀望として尊み崇む。

 

   次に「ラウサイク」の誦讀。第五十聖詠。

規程は月課經の。又三歌頌、第二調。

 

   第三歌頌

イルモス、「主よ荒地の如く見を結ばざる」。

我等節制を以て、録されしが如く、肢體を十字架に釘し、祈の中に醒し、苦を受けて苦を殺しし者の後に從ひて生を度らん。

我等苦き罪を吐き出して、甘じて膽を嘗めしハリストス、十字架を以て惡の魁を斃しし者の喜を獲ることを務めん。

罪は習慣と爲りて我を永久の滅亡に引く、然れども爾洪恩多憐なる主よ、爾の十字架を以て我に是を免れしめ給へ。

生神女讃詞、主宰を生みし者たるに因りて凡の造物の主たる女宰よ、我を詭譎なる一の戰闘者の奴隷より脱れしめ給へ。

---------------------[大齋第一週間水曜日 早課 257]---------------------

   又、同調。イルモス「木を以て罪を殺しし主よ」。

十字架の木は世界の爲に節制の花を開けり、我等熱心に之を慕ひて、ハリストスの神聖なる誡の結果を樂しまん。

我等皆今諸慾の節制を爲して、主の爲に肉體を十字架に釘し、其念が神聖なる生命の爲に死したるを顯さん。

光榮、三者讃詞、我惟一の像の三位、父、子、聖神、神性の惟一の權柄、萬有の國及び光明を讃榮す。

生神女讃詞、潔き者よ、爾の産は畏るべかりき、蓋人性を取りし者は神、無原に父より生れ、末の日に於て爾より夫なくして生れたる者なり。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

ハリストスよ、我爾が十字架に釘せらるること、及び爾の神聖なる脅の刺さるることを歌ふ、我是より常に不死の飲料を斟みて聖にせらる。

イルモス、木を以て罪を殺しし主よ、我等を爾の中に堅めて、爾を畏るる畏を我等爾を歌ふ者の心に植え給へ。

 

   第八歌頌

イルモス、「昔ワワィロンの火の爐は」。

---------------------[大齋第一週間水曜日 早課 258]---------------------

諸慾の爐は我の靈を燃す、然れども爾大なる寛容に因りて十字架に釘せらられて、爾の不朽なる脅より無慾の流を出しし恩者よ、爾が慈憐の露を以て之を滅し給へ。

ハリストスよ、爾は己が十字架に擧げらるるを以て、我等惡に陷りたる者を擧げたり。故に我罪の淵に躓きし者を登せて、救の石に堅め給へ、我が爾の權柄を讃榮せん爲なり。

バリストスよ、爾の戈にて我が心より諸慾の膿を浄め、蛇が其毒の歯にて齧みたる我が全體を醫して、我に躓なく爾の神聖なる道を行かしめ給へ。

生神女讃詞、の者よ我等爾を光りたる燈及び燭台として尊む、蓋神性の火は爾の中に居りて、夜の壞滅に圍まれたる者を照らせり。讃美たる者よ、我等皆爾の産を讃め揚ぐ。

 

   又、イルモス、「昔シナイ山に於て棘の中に」。

盗賊の間に木に懸けられ、戈を以て生命を流す脅を刺されたる者を尊み歌ひ、崇め讃めて、萬世に讃め揚げよ。

爾全地を審判する者は審判座の前に立ち、我を古の罪の壞滅より萬世に脱れしむる者は頬を批たれ、辱を受け、十字架に釘せられたり。

---------------------[大齋第一週間水曜日 早課 259]---------------------

  我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

三者讃詞、惟一の神たる三者、性の分れず、位の分れたる者、動かざる權柄、父、子、聖神よ、我等爾を萬世に崇め歌ふ。

生神女讃詞、潔き神の母、天の門、救の戸よ、衆「ハリスティアニン」、爾を萬世に讃美する者の祈を納れ給へ。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

ハリストスの十字架、盗賊を信に導きし者よ我をも疲るるなく齋の途を行きて、至りて爾に伏拜し、生命を得るに堪ふる者と爲し給へ。

  我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

イルモス、昔シナイ山に於て棘の中にモイセイに童貞女の奇跡を預め示しし者を尊み歌ひ、崇め讃めて、萬世に讃め揚げよ。

 

   第九歌頌

イルモス、「無原の父の子、神と主は」。

輝き出でたる齋、光明なる恩寵は、日よりも明に衆人に十字架の光線、尊き苦の曉、及び復活の救の日を福音す。

我等潔浄を愛し、淫を避け、貞潔を以て腰を束ねん、獨衆人より潔浄を求むる

---------------------[大齋第一週間水曜日 早課 260]---------------------

我が靈の潔き救世主の前に潔き者と顯れん爲なり。

アダムの罪を十字架に釘せしハリストス主宰よ、我が肉體を爾を畏るる畏に釘うち給へ、我が諸惡の絆を解き、爾の戈を以て兇惡者の矢を折りて、我に其害を免れしめ給へ。

生神女讃詞、至りて義なる審判者、獨寛容なる主ハリストスを生みし童貞少女よ、我に審判及び火と苦、我の爲に罪の逸樂が備へし者を免れしめ給へ。

   又、イルモス、「我等信者は皆潔浄無なる母」。

鳴呼、爾の慈憐や、主よ我壞滅に定罪せられし者の爲に、爾は十字架と釘と戈とを忍び給へり、故にハリストスよ、我爾を歌ふ。

ハリストスよ、我等人人皆十字架と葦と釘と戈、及び爾が生命を施す苦に伏拜して、歌を以て爾を讃め歌ふ。

 

光榮、三者讃詞、三位なる惟一者、主宰たる惟一の三者、同榮なる神性、父、子、及び聖神よ、我等衆人を救ひ給へ。

生神女讃詞、生神女、世界の潔浄よ、慶べ、我等罪なる者は皆之に趨り附きて、常に神と和睦するを得るなり。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

---------------------[大齋第一週間水曜日 早課 261]---------------------

仁慈なる主よ、爾の十字架にて我をも固めて、我に、齋の一周期を勇ましく終へしめ給へ。

イルモス、我等信者は皆潔浄無なる母童貞女を、生神女として歌を以て敬虔に崇め讃む。

 

   光耀歌。

   挿句に自調の讃頌二次。第八調。

來りて、齋を以て思念の諸慾を服せしめて、己を屬神の翼にて覆はん、敵の起す暴風を安らかに度りて、世界の爲に自由に屠られたる神の子の十字架に伏拜するに堪ふる者と爲らん爲、屬神に救世主の死よりの復活を慶賀せん爲、山に登りて父より一切の權を受けたる子、人人を愛する主を門徒等と偕に讃榮せん爲なり。

致命者讃詞、勝たれぬハリストスの致命者よ、爾等は苦しむる者の恐嚇を畏れずして、苦を以て樂と爲し、十字架の力を以て迷に勝ちて、永遠の生命の恩寵を受けたり。今爾等の血は我等の靈の爲に醫治と爲れり。我等の靈の救はれんことを祈り給へ。

 

光榮、今も、十字架生神女讃詞、同調、鳴呼主宰よ、我が目に見る所の顯現は是れ

---------------------[大齋第一週間水曜日 早課 262]---------------------

何ぞや、萬物を保つ者は木に擧げられ、衆に生命を賜ふ者は殺されたりと、至りて潔き生神女は言ひ難く彼より光り出でたる神人を十字架に見て、泣きて言へり。

第一時課、誦文と共に、又常例の拜と共に、并に發放詞。

          ~~~~~~

 

   第六時課に

   預言の讃詞、第四調。

人を愛する主よ、爾は我等が何より造られしを知り、我が弱きを知る。我等罪を犯したれども、神よ、爾を離れざりき、我が手を他の神に伸べざりき。仁慈の主よ、爾の慈憐を以て我等を宥め給へ。

   光榮、今も、同上。

次に提綱、第九聖詠、第四調、主よ、我心を盡して爾を讃め揚げん。句、我爾の爲に慶び祝はん。

 

   イサイヤの預言書の讀。第二章。

主是くの如く言ふ、律法はシオンより出で、主の言はイエルサリムより出でん。

主は諸民を審判し、多くの民族を責めん、彼等は其劍を鍛ちかへて黎と爲し、其矛

---------------------[大齋第一週間水曜日 第六時課 263]---------------------

を鍛ちかへて鎌と爲さん、民は民に向ひて劍を擧げず、復戰の事を學ばざらん。嗚呼イアコフの家よ、來れ、我等主の光の中を行かん。然れども爾は爾の民たるイアコフの家を棄てたり、蓋彼等は多くの事を東より習へり、卜筮者の彼等の中にあること、フィリスティヤ人に於けるが如し、彼等は異邦の諸子に與す。其地には金銀充ちて、其財寶無數なり、其地には馬充ちて、其車無數なり、其地には偶像充ちて、彼等は其手の工、其指の作りし者を拜む。人は卑くなり、尊き者は賤しくなれり、爾彼等を赦さざらん。主を畏れ、其威厳の光榮を避けて、巖に入り、土に匿れよ。彼の日、人の驕れる目は降され、人の高きは卑くせられ、獨主のみ高く擧らん。

 

提綱、第十聖詠、第六調、主は義にして義を愛し、其顔は義人を視る。句、我主を恃む、爾等何ぞ我が靈に謂ふ、鳥の如く飛びて爾の山に至れ。

 

時課の其他の式は上述の如し、并に發放詞。

          ~~~~~~

 

---------------------[大齋第一週間水曜日 第六時課 264]---------------------

 

 

 第一週間の水曜日の晩課

 

若し先備聖體礼儀を行はば、「カフィズマ」の段毎に小聯あり。「主よ爾にぶ」に十句を立てて、「我が靈を獄より引き出して」より始む。本日の自調の讃頌の調に据る。此の讃頌を復す。次に致命者讃詞、同調。其後又三歌經の讃頌三章、及び月課經の三章、其一を復す。

   本日の自調の讃頌、第八調。

兄弟よ、肉體にて齋し、靈にても齋せん。凡の不義の結を解き、強迫の羂を斷ち、凡の不正なる書券を裂き、飢うる者に糧を與へ、無宿の者を家に入れん、ハリストス神よリ大なる憐を得ん爲なり。

   致命者讃詞

如何なる徳、如何なる譽も、之を聖者に歸すべし。蓋彼等は爾天を傾けて降りし者の爲に己の首を劍の下に傾け、爾己をして僕の形を受けし者の爲に其血を流し爾の謙卑に效ひて、死に至るまで降れり。神よ、彼等の祈に因りて、爾が惠の多きを以て我等を憐み給へ。

   次にイオシフ師の作、第二調。

---------------------[大齋第一週間水曜日 晩課 265]---------------------

神の實見者たる使徒等よ、實に無形の日たるイイススは爾等を光れる、電の若く、全世界に遣して、爾等の神聖なる傳敎の光明にて誘惑の暗を退け、無知の幽暗に深く圍まれたる者を照せり。我等にも光照と大なる憐とを降さんことを彼に祈り給へ。

   又、同作者の、

イリヤは齋に照され、諸徳に因りて神聖なる車に登りて、天の高きに擧れり。吾が謙卑の靈よ、彼に效ひて、凡の惡心と、猜忌と、争闘と、儚き逸樂とを制するを以て齋と爲せ、「ゲエンナ」の永遠なる甚しき苦惱をを免れて、ハリストスに呼ばん爲なり、主よ、光榮は爾に歸す。

   又、フェオドル師の作、第五調。

神聖なる使徒等、世界の爲に至りて熱心なる祈者、正敎の者の守護者よ、我等爾最尊き者に求む、ハリストス我等の神の前に勇敢なる力を有ちて、我等の爲に祈り給へ、我等が齋の好き期を安らかに送りて、一性なる三者の恩寵を受けん爲なり。尊榮なる大傳道師よ、我等の靈の爲に祈り給へ。

 

又月課經の四章。光榮、今も、生神女讃詞。小入あり、香爐を捧持す、福音經なし。

(福音經を讀むべき時には、福音經をも捧持す)「穏なる光」。

---------------------[大齋第一週間水曜日 晩課 266]---------------------

提綱、第十一聖詠、第五調、主よ爾は我等を保ち、我等を護りて、斯の世より永遠に至らん。句、主よ我を救ひ給へ、蓋義人は絶えたり。

 

   創世記の讀。第一、二章。

神曰へり、地は生物を其類に從ひて、家畜と、昆蟲と、地の獸とを其類に從ひて産すべし。斯く成れり。神は地の獸を其類に從ひて、家畜を其類に、從ひて、地の諸の昆蟲を其類に從ひて造れり。神之を觀て善とせり。神曰へリ、人を我等の像と、我等の肖とに從ひて造るべし、彼は海の魚と、天空の鳥と、獸と、家畜と、全地と、地に匍ふ所の諸の昆蟲とを宰るべし。神乃己の像に從ひて人を造り、神の像に從ひて之を造れり、之を男女に造れり。神彼等を祝して曰へり、生めよ、殖えよ、地に充てよ、之を治めよ、又海の魚と獸と、天空の鳥と、家畜と、全地と、地に葡ふ所の諸の昆蟲とを宰れ。神又曰へり、視よ、我爾等に、全地の面に在る種を蒔く悉くの草、及び蒔くべき核を懐く實を結ぶ所の悉くの樹を與へたり、此れ爾等の糧と爲らん、又地の凡ての獸、天空の凡ての鳥、及び地に葡ふ所の凡ての昆蟲、凡そ生命ある者には、我食として凡ての青き草を與へたり。斯く成れり。神は其造りし悉くの物を觀て甚善しとせり。夕あり、朝あり、是れ第六日なり。斯く天地及び其悉くの装飾は成れり。神は第六日に其造りたる工を竣へ、

---------------------[大齋第一週間水曜日 晩課 267]---------------------

第七日に其造りたる悉くの工より息めり。神は第七日を祝して、之を聖にせり、蓋斯の耳に於て神は造りたる其悉くの工より息めり。

 

提綱、第十二聖詠、第六調、主我が神よ、顧みて我に聽き給へ。句、主よ、我を全く忘るること何の時に至るか、爾の面を我に隠すこと何の時に至るか。其後輔祭高聲にして曰く、命ぜよ。司祭兩手に香爐及び火を點じたる燭を執り、聖寶座の前に立ち、東に嚮ひて、聖号を書して曰く、睿智、粛みて立て。次ぎて西に轉じて衆に向ひて曰く、ハリストスの光は衆人を照す。

 

   誦經、箴言の讀。輔祭、謹みて聽くべし。第二章。

我が子よ、爾若し我が言を納れ、我が誡命を己の衷に藏め、斯くして爾の耳を智慧に傾け、爾の心を聰明に向け、若し知識を呼び、聰明に向ひて聲を揚げ、若し銀の如く之を求め、寶の如く之を尋ねば、則爾主を畏るる寅畏を暁り、神を知る知識を獲ん、蓋主は智慧を與へ、知識と聰明とは其口より出づ、彼は義人の爲に救を備ふ、彼は直く行く者の爲に盾なり、彼は公義の途を保ち、其聖者の諸途を守る。是くの如くして爾は公義と公判と正直と一切の善き道とを曉らん。智慧爾の心に入り、知識爾の靈に娯からん時は、則思慮は爾を守り、聰明は爾を保たん、是れ爾を惡しき途より、虚僞を言ふ人より救ひ、直き途を離れて幽暗の路を行く者より、惡

---------------------[大齋第一週間水曜日 晩課268]---------------------

を行ふを楽しみ、惡者の邪移を喜ぶ者より、其途の曲り、其徑に迷ふ者より救はんが爲、爾を淫婦より、言を以て諂ふ婦より、其少き時の敎導者を棄てて、神の約を忘れたる者より救はんが爲なり、蓋彼の家は死に引き、其徑は死亡者に趣く、彼に入る者は皆歸らず、亦生命の途に上らず。故に爾善人の途を行き、義人の諸途に循へ、蓋義人は地に居るを得、無の者は此に留らん、然れども惡人は地より滅され、悖れる者は之より根絶されん。

 

喩言畢りて後司祭曰く、爾に平安。輔祭、睿智。誦經(或は詠歌者)歌ふ、「願はくは我がは香爐の香の如く」。之を歌ふ時爾詠隊并に堂に在る衆人跪きてる。司祭聖寶座の前に立ち、香爐を執りて爐儀を行ふ。誦經歌ひ畢りて跪く。右列詠隊立ちて同じく歌ふ、「願はくは我がは香櫨の香の如く」。歌ひ畢りて跪き、誦經立ちて第一句を歌ふ、「主よ、爾にぶ、速に我に格り給へ」。畢りて後跪き、左列詠隊立ちて歌ふ、「願はくは我がは香爐の香の如く」。歌ひ畢りて跪く。右の次序の如く、誦經第二句を歌ふ、「主よ、我が口に衛を置き」。右列詠隊復歌ふ、「願はくは我がは」。誦經第三句を歌ふ、「我が心に邪なる言に傾きて」。左列詠隊歌ふ、「願はくは我がは」。畢りて後誦經跪きて復歌ふ、願はくは我がは香爐の香の如く爾が顔の

---------------------[大齋第一週間水曜日 先備聖體禮儀 269]---------------------

前に登り、歌ひ始むる時司祭香爐を置き、己も亦跪きて祈す。誦經右の半節を歌ひ終ふるに及びて、詠隊立ちて後の半節を歌ふ、我が手を擧ぐるは暮の祭の如く納れられん。之を歌ふに及びて、司祭并に衆人皆起立す。歌ひ畢りて後三大拜を爲す。

【注意】

若し前駆イオアンの聖首の發見の祭(三月九日)、或は四十人の聖大致命者の祭(三月二十二日)に遇はば、其時「願はくは我がは」を歌ひ畢りて後、聖門の開きたるまま直に提綱を歌ふ、使徒、アリルイヤ、及び福音經の誦讀常例の如し。

若し祭にあらずば、「願はくは我がは」の後に輔祭聯を誦し、司祭熱の祝文を黙誦す。以下先備聖體禮儀の次第は奉事經に載する所の如し。

【注意】

知るべし。「今天軍は見えずして我等と偕に奉事す」を歌ふ時に聖錫が寶座に遷されて後三大拜を爲す。

【注意】

知るべし。神聖なる機密の遷さるる時衆人及び詠隊俯伏して、機密の中に在すハリストスに、神に於けるが如き拜を爲す、先に全く聖にせられし機密なるに因る。

 

領聖詞、味へよ、主の如何に仁慈なるを見ん。「アリルイヤ」三次。聖門の開かれて後輔祭曰く、神を畏るる心と信とを以て近づき來れ。我等一拜を爲して歌ふ、

---------------------[大齋第一週間水曜日 先備聖體禮儀 270]---------------------

「我何の時にも主を讃め揚げん、彼を讃むるは我が口に在り」、「アリルイヤ」、三次。司祭高聲して「今も何時も」の後に、詠隊、「主よ、願はくは我が口は讃美に満てられて」、「アリルイヤ」、三次。升壇外の祝文の後に「願はくは主の名は崇め讃められて」、及び三小拜。光榮、今も、第三十三聖詠、「我何の時にも主を讃め揚げん」。衆人に代聖錫を頒つ。并に最後の發放詞。

 

全四旬齋の間に先備聖體禮儀の行はるる時、其式上述の如し。先備聖體禮儀の行はれざる處には、晩課に六句を立てて三歌經及び月課經の讃頌を歌ふ。

光榮、今も、生神女讃詞、月課經の調に依る。挿句には三歌經の當日の自調の讃頌二次、及び致命者讃詞、「主よ爾にぶ」に載する所。光榮、今も、同調の生神女讃詞、及び常例の収結。

 

           ~~~~~~

 

 

 

---------------------[大齋第一週間水曜日 先備聖體禮儀 271]---------------------

 

 

 第一週間の水曜日の晩堂課

 

始は前日の如し。次に我が聖神父クリトの大主敎アンドレイの左の大規程を歌ふ。讃詞毎に拜を爲して句を附唱す、神よ我を憐み、我を憐み給へ。

 

   第一歌頌。第六調。イルモス二次。「佑け護る者顯れて」。

ハリストスよ、我幼少より爾の誡に背き、生涯諸慾に耽り、怠りて世を度れり。故に救世主よ、爾に呼ぶ、終の時にだにも我を救ひ給へ。

救世主よ、我爾が門の前に俯伏する者を老ゆる時にだにも不當の者として地獄に堕す毋れ、乃人を愛する主なるに因りて、終の前に我に諸罪の赦を與へ給へ。

救世主よ、我は我が富を放蕩に費して、敬虔の泉を有たず、乃飢を覺えて呼ぶ、憐深き父よ、急ぎて我に憐を垂れ給へ。

我は我が思を以て盗賊に遇ひし者なり、今全身彼等に打たれて、傷に蔽はれたり。ハリストス救世主よ、爾親ら臨みて我を醫し給へ。

司祭は我を見てぎ、レワィトも我が禍の中に裸體なるを見て遺てたり。マリヤより光りしイイススよ、爾臨みて我に憐を垂れ給へ。

---------------------[大齋第一週間水曜日 晩堂課 272]---------------------

  克肖なる母マリヤよ、我等の爲に神に祈り給へ。

マリヤよ、神の照管に由りて上より爾に降されし輝ける恩寵を我に與へ給へ、我が諸慾の闇冥を逃れて、熱心に爾が生命の美しき行實を歌はん爲なり。

 

光榮、三者讃詞、永久の三者、一性に於て伏拜せらるる者よ、罪の重き負を我より卸して、慈憐なるに因りて、我に感涙を與へ給へ。

生神女讃詞、生神女、爾を歌ふ者の憑恃及び轉達よ、罪の重き負を我より卸して、潔き女宰たるに因りて、我悔ゆる者を納れ給へ、

 

   第二歌頌

イルモス、天よ聽け、我傳へて、童貞女より身を取りて來りしハリストスを歌はん。

我節制なきに因りて、ダワィドの如く罪に陷りて汚れたり。救世主よ、我をも涙にて滌ひ給へ。

我には涙も悔も傷感もなし。救世主よ、爾親ら神として我に此を與へ給へ。』

我は始めて造られたる我が美しきと華やかなるとを失ひ、今裸體にして臥して羞づ。

主よ、主よ、其時爾の門を我が爲に閉す毋れ、乃我爾の前に悔ゆる者の爲に之を

---------------------[大齋第一週間水曜日 晩堂課 273]---------------------

開き給へ。

救世主よ、我が靈の歎息を聆き、我が目の涙を納れて、我を救ひ給へ。

衆人の救を望む仁愛の主よ、爾我を召して、慈憐なるに因りて、我悔ゆる者を納れ給へ。

生神女讃詞、至浄なる生神童貞女、獨衆人に讃頌せらるる者よ、我等が救を得んことを切に祈り給へ。

 

イルモス、見よ、見よ、我は神、昔我が一の右の手及び力にて我が民の爲に野に「マンナ」を降らし、石より水を出しし者なり。

見よ、見よ、我は神なりと。我が靈よ、斯く呼ぶ主に聽き、先の罪に離れて、主を催れよ、其義にして且審判者及び神なるニ因りてなり。

多罪の靈よ、爾は始のカイン及び彼のラメフと等しくなりしに非ずや、蓋惡事を以て甚しく肉體を傷め、無智の情を以て智慧を殺せり。

鳴呼靈よ、爾は凡そ律法の前に在りし者を目前に置きて、シフにもエノスにも傚はざりき、移住を以てエノフにもノイにも遵はざりき、乃義人の生命に遠ざかれり。

我が靈よ、爾は獨爾が神の怒の淵を開き、地の如くに全身と、業事と、生命と

---------------------[大齋第一週間水曜日 晩堂課 274]---------------------

を溺らして、救の方舟の外に止まれり。

克肖女の、爾は先の罪の道を離れて、心を盡し、愛を盡して、ハリストスに趨り附き、過られぬ野に住ひ、潔浄にして其神聖なる戒を行へり。

光榮、三者讃詞、無原にして造られざる三者、分れざる惟一者よ、我悔ゆる者を納れ、罪を犯しし者を救ひ給へ、我は爾の造物なり。祈る、我を棄つる毋れ、乃我を宥めて、永火の定罪を免れしめ給へ。

生神女讃詞、至浄なる女宰、神の母、爾に趨り附く者の憑恃、暴風に遭ふ者の湊よ、爾の祈を以て、慈憐なる造物主爾の子に其慈憐を我にも垂れしめ給へ。

 

   第三歌頌

イルモス、「主よ、爾の誡の石に」。

禍なる靈よ、爾はシムの幸福を嗣がざりき、赦罪の地に於てイアフェトの如く廣き領所を得ざりき。

我が靈よ、ハルランの地たる罪より離れて、アウラアムが嗣ぎし永生の不朽を流す地に往け。

我が靈よ、爾昔アウラアムが如何に父祖の地を離れて、旅人となりたるを聞けり、其決心に傚へ。

---------------------[大齋第一週間水曜日 晩堂課 275]---------------------

太祖はマムブリイの橡の木の下に天使等を饗應して、老年に於て契約を獲物の如くに得たり。

憫なる我が靈よ、爾はイサアクが新なる燔祭として奥密に主に獻ぜられしを知りて、其決心に傚へ。

我が靈よ、爾はイスマイルが婢より生れし者として遠ざけられしを聞けり。愼め、恐らくは爾も逸樂の爲に此くの如きことに逢はん。

  克肖なる母マリヤよ、我等の爲に神に祈り給へ。

母よ、我は諸罪の大風と激浪とに圍まれたり、爾今親ら我を救ひて、神聖なる痛悔の湊に送り給へ。

 

マリヤの、克肖なる者よ、今も熱心の祈を慈憐なる生神女に獻りて、爾の祈を以て我が爲に神に入る門を啓き給へ。

光榮、三者讃詞、單一にして造られざる三者、無原にして三位に歌はるる性よ、我等信を以て爾の權柄に伏拜する者を救ひ給へ。

生神女讃詞、神の母よ、爾は時の外に父より生れし子を時の内に夫なくして生めり、異なる哉奇迹や、乳を以て養ひて、童貞女に止まれり。

 

   第四歌頌

---------------------[大齋第一週間水曜日 晩堂課 276]---------------------

イルモス、「主よ、預言者は爾が降臨の事を聞き」。

我身を汚し、靈を穢し、全體に瘡を被らざるなし。ハリストスよ爾醫師として我が痛悔に依りて兩の者を愈し、之を洗ひ、之を浄め給へ、我が救世主よ、之を雪よりも潔き者と顯し給へ。

言よ、爾釘せられて、爾の體爾の血を祭として衆人の爲に獻じたり、體を獻ぜしは我を改めん爲、血を獻ぜしは我を滌はん爲なり、靈をも付せり、我を爾の父に導かん爲なり。

仁慈なる者よ、爾は救を地の中に作せり、我等の救はれん爲なり。爾は甘じて木に釘せられたり、閉されしエデムは開かれたり。上なる者と下なる者、造物と凡の救はれし諸民は爾に伏拜す。

言よ、願はくは爾の脅より出でたる血は我を洗ふ者と爲り、共に流れたる水は赦罪の飲料と爲らん、我内外浄められて、爾が生活を施す言を傳料及び飲料として、之を傳けられ之を飲まん爲なり。

我が救世主よ、爾が生活を施す脅は敎會の爲に爵と爲れり、此より我等の爲に二様の流は出でたり、是れ赦罪及び明智なり、舊新兩約を象れる者なり。』

我婚宴の宮の外に在りて婚宴と晩餐とに與るを得ず、燈は油なくして熄え、

---------------------[大齋第一週間水曜日 晩堂課 277]---------------------

我が寢れる時に宮は閉され、晩餐は畢れり、我手足を縛られて外に投げられたり。

 

光榮、三者讃詞、我爾、同王にして同座たる、三位にして惟一なる神性、性に於て分れず、位に於て混合せざる者を承け認め、爾に大なる歌、最高き居所に三次唱へらるる者を呼び歌ふ。

生神女讃詞、爾は生むにも、童貞を守るにも、二ながら天性の童貞女なり。爾より生れし者は天性の法を改め、生まざる腹は生む、神の欲する所には天性の順序渝へらる、彼欲することを行へばなり。

 

   第五歌頌

イルモス、「人を愛する主よ、祈る、夜より寤むる」。

主宰よ、我頑なるに於ては頑なるファラオンの如くなれり、靈と體とに於ては我イアンニイ及びイアムブリイなり、智慧に於ては失はれたる者なり。祈る、我を援け給へ。

我不當の者は我が智慧を汚せり。主宰よ、爾に祈る、我が涙の浴盤に我を滌ひて、我が肉體の衣を雪の如く白くならしめ給へ。

救世主よ、我我が行を省みる時、我罪を以て、衆人に超えたるを見る、蓋我知識

---------------------[大齋第一週間水曜日 晩堂課 278]---------------------

ありて罪を犯せり、無知に由るに非ず。

主よ、爾の造物を宥め宥めよ、我罪を犯せり、我を赦し給へ、蓋爾は獨性の浄き者にして、爾の外に不潔ならざる者なし。

救世主よ、爾は神にして我が爲に我が形を受け、奇迹を行ひて、癩者を醫し、瘋者を固め、血漏の婦の爾の衣に捫るを以て、其血を止め給へり。

克肖女の、克肖なる者よ、爾はイオルダンの流を渡りて、疾なき安息を得たり、肉體の逸樂を逃れたればなり。爾の祈を以て我等にも是を逃れしめ給へ。

光榮、三者讃詞、三者よ、我等爾惟一の神を讃榮す。聖、聖、聖なる哉爾父と子と聖神、單一の性、永遠に伏拜せらるる惟一者や。

生神女讃詞、にして夫を知らざる母童貞女よ、世世を造りし神は爾の中に於て我が靈體を衣て、人性を己に合せ給へり。

 

   第六歌頌

イルモス、「我心を盡して仁慈なる神にべり」。

起ちて、イイススがアマリクを破りしが如く、肉體の慾を破り、常にガワオンの者たる誘の思にも勝てよ。

靈よ、昔約櫃がイオルダンを渡りし如く、性に依りて流るる時を渡りて、約地を領

---------------------[大齋第一週間水曜日 晩堂課 279]---------------------

する者と爲れ、神之を命ず。

救世主よ、爾曾て呼びたるペトルを救ひし如く、我をも速に救ひ給へ、爾の手を舒ベて、我を猛獸より脱れしめ、罪の深處より引き出し給へ。

主宰、主宰ハリストスよ、我爾を見て穏なる湊と爲す。祈る、速に我を罪と失望との渡り難き深處より脱れしめ給へ。

光榮、三者讃詞、我は單一にして分れざる三者、位に於て分れたる者なり、又我は惟一者、性に於て合一なる者なり、父、子、聖神之を言ふ。

生神女讃詞、生神女よ、爾の腹は我等の爲に我が形を受けし神を生めり。其萬有の造成主なるを以て彼に祈り給へ、我等が爾の祈に依りて義とせらるるを得ん爲なり。

小讃詞、我が靈よ、我が靈よ、起きよ、何ぞ眠る、終は邇づく、爾擾れん。故に寤めよ。在らざる所なく、充たざる所なきハリストス神が爾を宥めん爲なり。

 

   第七歌頌

イルモス、「列祖の神よ、我等罪を犯し、不法を行ひ」。

靈よ、爾は慾を以て偶像と爲し、益憎むべきことを行ひて、甘じてマナッシヤの罪惡を己に屬せしめたり、然らば亦切に彼の痛悔に傚ひて、傷感の情を獲よ。』

---------------------[大齋第一週間水曜日 晩堂課 280]---------------------

我が靈よ、爾は憎むべきことを以てアハフに傚へり、噫爾は肉體の不浄の住所及び諸慾の愧づべき器と爲れり、然らば爾の深衷より歎息して、爾の罪を神に告げよ。靈よ、天は爾の爲に閉され、饑饉は神よリ爾に遣されたり、昔アハフに其フェスワのイリヤの言を聽かざるが爲に行はれしが如し、然らば爾サレプタダのに傚ひて、預言者の靈を養へ。

昔イリヤは再イエザワェリの僕役五十人を焚き、又アハフを戒めん爲に、其不潔の預言者を滅せり、然らば靈よ、慎みて斯の二人に傚ふ毋れ、乃節制せよ。』

 

光榮、三者讃詞、單一にして分れざる一體の三者と惟一の性、三光と一光、三聖と一聖なる神三者は歌を以て歌はる。靈よ、爾も三一の生命なる萬有の神を歌ひて讃め揚げよ。

生神女讃詞、神の母よ、我等爾を歌ひ、爾を崇め讃め、爾に伏拜す。蓋爾は分れざる三者の一なるハリストス神を生みて、親ら我等地に居る者の爲に天の住所を開き給へり。

 

   第八歌頌

イルモス、「凡そ呼吸ある者と造物は、天軍の讃榮し」。

---------------------[大齋第一週間水曜日 晩堂課 281]---------------------

 

義なる審判者、救世主よ、我を憐みて、審判の時に義に遵ひて定められんとする火及び罰を免れしめ、終の前に我を赦して,我に徳行と痛悔とを與へ給へ。』

我盗賊の如く爾にぶ、我を憶ひ給へ。ペトルの如く痛く哭く、税吏の如く呼ぶ、救世主よ、我を赦し給へ。罪婦の如く涕を流す、我が痛哭を納れ給へ、昔ハナアンの婦より納れしが如し。

救世主、惟一の醫師よ、我が卑微なる靈の朽つるを醫し、我に膏藥と油と酒、痛悔の行と傷感と涕涙とを施し給へ。

我ハナアンの婦に傚ひてダワィドの子に呼ぶ、我を憐み給へ。我其衣に捫ること血漏の婦の如く、我泣くことマルファとマリヤとのラザリの爲にせしが如し。

 

光榮、三者讃詞、無原の父、同無原の子、仁慈の撫恤者、義なる神、神言の父、無原の父の言、生活にして造成する神、三者惟一者よ、我を憐み給へ。

 

生神女讃詞、至浄なる者よ、紅の組織を以て錦の衣を織るが如く、エムマヌイルの肉體は爾が腹の中に織られたり。故に我等實に爾を生神女として尊み崇む。

 

   第九歌頌、

---------------------[大齋第一週間水曜日 晩堂課 282]---------------------

イルモス、「種なき胎の産は言ひ難し」。

 

ハリストス言は諸病を醫して、貧しき者に福音を傳へ、不具の者を愈し、税吏と食ひ、罪人と語り、手の捫るを以て既に離れたるイアイルの女の靈を返し給へり。

税吏は救を獲、淫婦は貞潔の者と爲り、傲慢なるファリセイは罪に定められたり。蓋其一は呼べり、我を憐み給へ、其二は、我を浄め給へ、其三は誇りて呼ベリ、神よ、爾に感謝すと、其他無智の言を發せり。

ザクへイは税吏たれども、救を得たり、シモンファリセイは迷ひたれども、淫婦は罪を赦す權を有てる者より確なる赦を得たり、靈よ、爾も務めて彼に傚へ。』

嗚呼我が不當なる靈よ、爾は、淫婦が香料を盛れる器を執り、泣きて、之を其前罪の書券を破りし救世主の足に塗り、首の髪にて之を拭ひしに傚はざりき。』

我が靈よ、爾は如何にハリストスが福音を傳へし城邑の詛はれしを知る、此の例に畏れよ、爾も彼等の如くならざらん爲なり。蓋主宰は彼等をソドムの民に比へて、地獄に定め給へり。

鳴呼我が靈よ、爾失望を以てハナアンの婦に下る者と顯るる毋れ、爾は其信の爲に、神の言に依りて其女の愈されしを聞けり。爾の如く深き心よりハリストス

---------------------[大齋第一週間水曜日 晩堂課 283]---------------------

に呼ベ、ダワィドの子よ、我を救ひ給へ。

 

光榮、三者讃詞、我等父を讃め揚げ、子を崇め歌ひ、信を以て聖神を尊み拜み、分れざる三者、性に於て惟一なる者、一光と三光、三一の生命、四極に生命を施して之を照す者を崇め讃めん。

生神女讃詞、至りて潔き神の母よ、爾の城邑を衛り給へ。蓋彼は信を以て爾の力にて建ち、爾に依りて堅固にせられ、爾を以て凡の誘に勝ち、諸敵を敗りて之を從はしむ。

  克肖なる神父アンドレイよ、我等の爲に神に祈り給へ。

尊きアンドレイ、至りて福たる神父、クリトの牧者よ、爾を讃め歌ふ者の爲に常に祈りて、我等凡そ爾の記憶を中心より尊む者を忿怒と、憂愁と、傷害と、數へ難き罪過より脱れしめ給へ。

 

次に兩詠隊歌ふ「種なき胎の産は言ひ難し」。

   其他の晩堂課の式は常例の如し。

          ~~~~~~

 

---------------------[大齋第一週間水曜日 晩堂課 284]---------------------

 

 第一週間の木曜日の早課

 

第一の誦文の後に八調經の使徒の坐誦讃詞二、及び生神女讃詞。次に誦讀。

   第二の誦文の後に坐誦讃詞、第二調。

神の言よ、爾の門徒を其傳敎を以て四極に光體と現しし獨至仁なる救世主よ、我等の心を諸徳の光にて照し、齋にて浄めて、爾の諸僕に改新の痛悔を與へ給へ、我等が爾を讃榮せん爲なり。

   光榮、同上。

今も、生神女讃詞、同調、生神女よ、我爾の守護を求むる者を棄つる勿れ、我が靈爾を恃めばなり、我を憐み給へ。

   第三の誦文の後に坐誦讃詞、第五調。

十二の使徒よ、爾等に祈る、我等が諸徳の中に最光明なる節制、天に適ふ者を平安に行ひて、救の果を獲んことを祈り給へ、爾等は實に地上の者の保固及び我が靈の避所なればなり。

   光榮、同上。

今も、生神女讃詞、同調、へルワィムより聖にして天より高き讃美たる生神女よ、

---------------------[大齋第一週間木曜日 早課 285]---------------------

我等罪人は實に爾を承け認めて、誘惑の中に轉達を得て救はる。故に我が靈の保固及び避所よ、我等の爲に絶えず祈り給へ。

規程は月課經の。又三歌頌、イオシフ師の作。并に預言者の歌頌を誦文す。第二調。

 

   第四歌頌

イルモス、「童貞女に藉りて來りし者は」。

靈よ、節制の光線を受けて己を明にし、罪の幽暗を離れよ神聖なる神に因りて、赦免の光の爾を照さん爲なり。

誘ふ者は逸樂の釣を以て我を引きて、奪ひてと爲せり。然れども言を以て世界を罟せし使徒等よ、我を其毒惡より脱れしめ給へ。

尊榮なる使徒等よ、爾等は光榮の日の輝と現れて、迷の幽暗を退けたり。諸の惡に昧まされたる我をも照し給へ。

生神女讃詞、童貞女、我の垣牆及び扶助なる者よ.我侵害せられて、夜も晝も爾に呼びて救はれ、爾の力に護られて逸樂を脱れん。

 

   又、フェオドル師の作。第五調。

イルモス、「主よ爾が攝理の作爲は」。

---------------------[大齋第一週間木曜日 早課 286]---------------------

使徒等よ、爾等は義の日の至りて輝ける、光として、全世界を照して、迷の幽暗を退く。

使徒等よ、爾等は神に鳴らさるる救世主の琴瑟として地に知られ、我等の爲に妙音の歌を歌ひて、世界を神に向はしむ。

光榮、三者讃詞、我等惟一の性に於て三者を讃榮して、惟一の主神たる、生れざる父、生れたる子、及び生活する聖神を歌はん。

生神女讃詞、主よ、童貞女は孕みて、爾エムマヌイルを生めり。蓋爾は人を愛する主よ、爾の民の救の爲、爾の膏つけられし者を救はん爲に臨めり。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

十二の使徒、神聖にして最尊き者よ求む、我等の爲にハリストスに祈りて、我等に疲るるなく四十日の程を度らしめ給へ。

イルモス、主よ、爾が攝理の作爲は預言者アウワクムを驚かせり、蓋爾は爾の民の救の爲に出で、爾の膏つけられし者を救はん爲に臨めり。

 

   第八歌頌

イルモス、「敬虔なる三人の少者は」。

我等凡の逸樂より齋して、齋を以て心を肥し、務めて傷感の飲料を飲みて歌

---------------------[大齋第一週間木曜日 早課 287]---------------------

はん、主の造物は主を崇め讃めよ。

使徒等よ、ハリストスと偕に人人を審判せん爲に坐する時、我多くの罪に因りて定罪せらるべき者が右に立つに與る者と爲らんことを祈り給へ。

我等齋に潔められて、神聖なる諸徳の車に登リ、天の高きに思を馳せて歌はん、主の造物は主を崇め讃めよ。

 

生神女讃詞、童貞女よ、爾は神性の火を生みて、焚かれざる者として止まれり。

獨喜悦の原因たる者よ、天使の聲を以て忠信に爾を歌ふ者の靈の諸慾を焚き給へ。

又、イルモス、「ハリストスよ、克肖なる爾の少者は」。

我等聖神の角たるハリストスの門徒を讃頌して呼ばん、主の造物は主を崇め讃めよ。

我等ハリストスの門徒を世界の爲に祈する者及び誘惑を退くる者として歌ひて呼ばん、主の造物は主を崇め讃めよ。

  我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

三者讃詞、我等父、子、聖神に於て至聖なる三者を讃頌して歌はん主の造物は主を崇め讃めよ。

---------------------[大齋第一週間木曜日 早課 288]---------------------

生神女讃詞、潔き者よ、我等人人皆爾の言ひ難き産を歌ひて敬虔に呼ばん、主の造物は主を崇め讃めよ。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

使徒等よ、我等が潔浄の日を平安に終へんことを祈り給へ、蓋我等呼ぶ、主の造物は主を崇め讃めよ。

  我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

イルモス、ハリストスよ、克肖なる爾の少者は爐の中に歌ひて云へり主の悉くの造物は、主を崇め讃めよ。

 

   第九歌頌

イルモス、「容れ難き神を腹に容れて」。

舵を操る主よ、我逸樂の深き海に溺れて、爾が慈憐の淵を呼ぶ、我を救ひ給へ。』

慈憐の泉よ、我に今傷感と歎息とを與へ給へ、我が惡の測られぬ海の故に哭かん爲なり。

イイススよ、爾の門徒の尊きに因りて、我に爾の尊き復活及び爾の神聖なる苦に伏拜するを得しめ給へ。

 

生神女讃詞、神が爾の内に住ひしに因りて我等の地の合性を天の物と爲しし純潔な

---------------------[大齋第一週間木曜日 早課 289]---------------------

る者よ、衆人を患難より救ひ給へ。

 

又、イルモス、「ハリストスよ、我等爾の至りて無なる」。

使徒等は預言の如く救世主の泉より不死の水を汲みて、渇く者に常に生命の敎を飲ましむ。

使徒等は天の王の軍將と現れて、全世界を從はしめて、獨彼を神として敬ひ、拜み、讃榮せしむ。

光榮、三者讃詞、分れざる三者、全能全力の惟一者、父、子、聖神よ、爾は我の神、主、及び光なり、我爾を歌ひて伏し拜む。

生神女讃詞、母及び浄き童貞女よ、我等世世は爾を讃揚す、蓋爾は救世主及び造物主を言ひ難く生みて、世界の潔浄と爲れり。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

使徒の會よ、爾を讃頌する者を救へ、彼等を傷感の情を以て光を施す齋の諸日を送るに任ふる者と爲し給へ。

イルモス、ハリストスよ、我等爾の至りて無なる潔き母を崇め讃む、蓋彼は天性に超えて、身にて爾、我等を凡の誘惑及び朽滅より救ふ者を生み給へり。

   光耀歌、本調の。

---------------------[大齋第一週間木曜日 早課 290]---------------------

   挿句に本日の自調の讃頌。二次、第三調。

主よ、爾の量り難き慈憐に因りて、我不當の者を救はんと欲して、爾は我罪人の爲に痛悔を立て給へり。伏し拜みて爾に祈る、齋を以て我が靈を抑制せよ、

我爾獨至りて慈憐なる者に趨り附きたればなり。

致命者讃詞、聖なる致命者よ、爾等は善き戰を戰ひしに由りて、死の後にも世界の中に光體の如く輝く。勇敢を有ちてハリストスに我等の靈を憐まんことを祈り給へ。

光榮、今も、生神女讃詞、同調、生神女、爾に祈る衆人の轉達者よ、我等爾に因りて勇を得、爾を以て誇と爲す、我が悉くの倚頼は爾に在り。爾より生れし者に爾の不當なる諸僕の爲に祈り給へ。

          ~~~~~~

 

   第六時課に

   預言の讃詞、第一調。

主よ、我等を見ゆると見えざるとの敵より救ひ給へ、異邦人が彼等の神は安に在ると云はざらん爲なり。主宰よ、彼等に爾が悔ゆる人人の罪を問はざるを悟らしめ給へ。

---------------------[大齋第一週間木曜日 第六時課 291]---------------------

提綱、第十三聖詠、第一調、主は其民の虜を返さん。句、無知なる者は其心に神なしと謂へり。

 

   イサイヤの預言書の讀。第二章。

彼の日獨主のみ高く擧らん。蓋主サワオフの日は、凡そ高ぶる者、驕る者、凡そ高く擧げられたる者に臨みて、此等卑くせられん、又リワンの高く聳えたる凡ての柏香木、ワサンの凡ての橡の樹、凡ての高き山、凡ての起りたる陵、凡ての高き戍樓、凡ての堅固なる垣、ファルシスの凡ての舟、及び其凡ての慕ふべき飾に臨まん。彼の日人の威嚴は墜され、人の高きは卑くせられ、獨主のみ高く擧らん、且偶像は悉く滅びん。主の起ちて地を壞らん時、人人彼を畏れ、其威嚴の光榮を避けて、巖の洞と地の穴とに入らん。彼の日人、自ら拜まん爲に造りし其銀の偶像、及び其金の偶像を、鼴鼠と蝙蝠とに投げん、主の起ちて地を壞らん時、彼を畏れ、其威嚴の光榮を避けて、巖の間と山の洞とに入らん爲なり。』

 

提綱、第十四聖詠、第四調、主よ、孰か爾の住居に居るを得る。句、なきを行ひ、義を爲す者なり。

          ~~~~~~

---------------------[大齋第一週間木曜日 第六時課 292]---------------------

 

 第一週間の木曜日の晩課

 

常例の誦文。「主よ爾にぶ」に三歌經の讃頌。イオシフの作。第二調。

我がハリストス、昔十字架に懸りて日を昧まし、赦免の眞の光にて明に信者を照しし主よ、我惡敵の誘惑に昧まされし者を照し給へ、我が爾の誡の光の中を行きて、潔く爾の復活の救の暁に至らん爲なり。

ハリストス救世主よ、爾は葡萄の如く木に懸りて、不朽の酒を地の四極に飲ましめたり。故に我呼ぶ、救世主よ、我常に罪の醉にて甚しく昧まされし者に眞の傷感の甘味を飲ましめて、今逸樂を禁ずる齋に固め給へ、爾は善にして人を愛する主なればなり。

   又、フェオドル師の作。同調。

鳴呼爾の十字架の力や、彼は敎會の爲に節制の花を開き、エデムに於けるアダムの不節制を根より抜きたり。此は昔人人に死を攜へたり、彼は常に世界の爲に不死を流す、蓋彼よりして樂園の他の泉よりするが如く、生命を施す爾の血及び水、衆が因りて活かされたる者は注がれたり。イズライリの神、大なる憐を有つ主よ、彼を以て我等の爲に齋の食を甘くし給へ。

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩課 293]---------------------

   又、月課經の三章。光榮、今も、十字架生神女讃詞

提綱、第十五聖詠、第四調、我は我が悟を啓きし主を讃め揚げん。句、神よ我を護り給へ、我爾を恃めばなり。

 

   創世記の讀。第二章。

是れ天地創造の記なり、主神が天地を造リ、及び凡ての野の草木、未地に在らざりし者、凡ての野の草蔬、未生ぜざりし者を造りし日の事なり、維の時主神は未雨を地に降さず、亦地を耕す人なかりき、霧は地より上りて、遍く地の面を潤せり。主神は地の塵を以て人を造リ、生命の氣を其面に嘘き入れたり、人生ける靈と爲れり。主神は東の方エデムに園を樹えて、造りたる人を彼處に置きたり。主神は觀るに美しく、食ふに善き諸の樹を地より生ぜしめ、又園の中に生命の樹、及び善惡を辨ち知る樹を生ぜしめたり。河はエデムより出でて園を潤し、彼處より分れて四と爲れり。其第一は名をフィソンと云ふ、此れはエワィラトの全地を洄る者なり、彼處に金あり、此の地の金は善し、彼處に又紅玉及び碧玉あり。第二の河の名はゲヲンと云ふ、此れはエフィオピヤの全地を洄る者なり。第三の河はティグルと云ふ、此れはアッシリヤの東に流るる者なり。第四の河はエフラトなり。主神は造リたる人を挈りて、彼を樂園に置きたり、之を理め、之を守らん爲なり。主神はアダム

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩課 294]---------------------

に戒めて曰へり、園に在る凡ての樹の果は、爾意に任せて之を食へ、然れども善惡を知る樹は、爾其果を食ふ毋れ、蓋爾之を食ふ日には必死なん。主神又曰へり、人獨居るは善からず、我等彼の爲に彼に適ふ助者を造らん。神又土より野の凡ての獸と、天空の凡ての鳥とを造りて、之をアダムの前に率い至れり、其如何に之を名づくるを見ん爲なり、アダムが凡ての生物に名づけし所は、皆其名と爲れり。

 

提綱、第十六聖詠、第四調、主よ我を眸子の如く護り給へ。句、主よ、我の直を聽き給へ。

 

   箴言の讀。第三章。

我が子よ、我が律法を忘るる毋れ、爾の心は我が誡命を守るべし、蓋此れ爾の日を永くし、生命の年を延ベ、平安を爾に加へん。矜恤と眞實とは爾を離るべからず、之を爾の項に結び、之を爾の心の碑に録せ、然らば爾は神及び人の目の前に恩惠と愛憐とを得ん。全心を以て主を頼め、己の聰明に倚る毋れ。爾の凡ての途に於て主を識れ、然らば彼爾の諸途を直くせん。自ら觀て智者と爲す毋れ、主を畏れて惡より離れよ、是れ爾の身の爲に醫と爲り、爾の骨の爲に養と爲らん。爾の所有と、凡そ爾が産する所の初實とを以て主を崇めよ、然らば爾の倉は盈ちて餘あり、

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩課 295]---------------------

爾のは新しき酒にて溢れん。我が子よ、主の懲治を輕ずる勿れ、彼より責められて弱る勿れ、蓋主は愛する者を責め、凡そ納るる所の子を鞭つ。智慧を求めたる人、聰明を得たる人は福なり、蓋智慧を市ふは金銀の寶を市ふに愈る、此れ寶石よりも貴し、何の惡も之に敵する能はず、此れ凡そ之に近づく者に著明なり、都ての貴き物は之に比ぶるに足らず。其右の手には長壽あり、其左の手には富と榮とあり、義は其口より出で、律法と慈憐とは其舌に在り、其途は樂しき途なり、其諸途は皆和平なり。此れ凡そ之を執る者には生命の樹なり、之に倚る者は福なり。

 

   挿句に本日の自調の讃頌、二次、第四調。

我等エギペトよりせずしてシオンより來る神聖なる「パスハ」に與らんと欲して、痛悔を以て罪の酵を斷ち、逸樂の情を殺すを以て我が腰を束ね、凡の惡道を妨ぐる履を以て足を飾り、信の杖を以て己を固め、主宰の十字架の敵に效ひて腹を神とすることなく、乃齋を以て惡魔に勝つことを我等に示しし我が靈の救主に從はん。

 

致命者讃詞、爾の諸聖人の記憶の中に榮せらるるハリストス神よ、彼等の祈を納れて、我等に大なる憐を垂れ給へ。

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩課 296]---------------------

   光榮、今も、十字架生神女讃詞。同調。

主よ、牝羊たる爾の母は爾が十字架に釘せられしを見て、驚きて曰へり、此れ何の顯見ぞ、至愛の子よ、不信不法の民、爾が多くの奇跡を樂しみし者は此くの如きを以て爾に報ゆるか。主宰よ、光榮は爾の言ひ難き寛容に歸す。

   其他の式は常例の如し。

 

           ~~~~~~

 

 第一週間の木曜日の晩堂課

 

我が聖神父クリトの大主敎アンドレイの左の大規程を歌ふ。讃詞毎に拜を爲して句を附唱す、神よ我を憐み、我を憐み給へ。

 

   第一歌頌。第六調。イルモス二次。「佑け護る者顯れて」

衆人の罪を任ひし神の羔よ、罪の重き負を我より卸して、爾が慈憐なるに因りて、我に感涙を與へ給へ。

イイススよ、爾に伏し拜む、我爾の前に罪を得たり、我を憐み給へ。罪の重き負

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩堂課 297]---------------------

を我より卸して、爾が慈憐なるに因りて、我に感涙を與へ給へ。

全能者よ、我と訟を爲して、我が行を量り、言を糾し、思を責むる毋れ、乃爾の仁慈に因りて、我が惡事を顧みずして我を救ひ給へ。

痛悔の時至れり、我爾我が造物主に來る、罪の重き負を我より卸して、爾が慈憐なるに因りて、我に感涙を與へ給へ。

我靈の富を罪中に費して、聖なる諸徳に乏し、乃飢を覺えて呼ぶ、憐の泉たる主よ、我を救ひ給へ。

 

マリヤの、爾はハリストスの神聖なる法に服して、專之に遵へり、逸樂を貧る情を斷ちて、敬虔を盡して萬徳を一の如くに行へり。

光榮、三者讃詞、永久の三者、一性に於て伏拜せらるる者よ、罪の重き負を我より卸して、慈憐なるに因りて、我に感涙を與へ給へ。

生神女讃詞、生神女、爾を歌ふ者の憑恃及び轉達よ、罪の重き負を我より卸して、潔き女宰たるに因りて、我悔ゆる者を納れ給へ。

 

   第二歌頌

イルモス、見よ、見よ、我は神、昔我が一の右の手及び力にて我が民の爲に野に「マンナ」を降らし、石より水を出しし者なり。

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩堂課 298]---------------------

ラメフは嘆きて呼べり、我我が痍の爲に人を殺し、我が傷の爲に童子を殺せりと、然れども爾は、我が靈よ、肉體を汚し、智慧を昧まして戰かず。

鳴呼靈よ、爾は己の慾を以て塔を建て、城を築くことを企てたり、然れども造物主は爾の謀を止め、爾の造る所を地に仆せり。

噫我何ぞ古の殺人者ラメフに傚ひたる、蓋我靈を人の如くに殺し、智慧を童子の如くに殺せり、又殺人者カインに傚ひて、快樂の情を以て我が體を兄弟の如くに殺せり。

昔主は主よリ火を雨らして、怒を起すソドム人の不法を焚けり、然れども爾は、靈よ、「ゲエンナ」の火を燃せり、其中に爾焚かれん。

我痍つけられたり、傷はれたり、視よ、是れ我が靈と體とを射たる敵の矢なり、視よ、是の痍と膿汁と毀傷とは我が恣なる諸慾の我を撃ちたることを證して呼ぶ。

 

マリヤの、マリヤよ、爾惡の淵に溺るる時爾の手を仁慈なる神に伸べたり。彼は甚爾の反正を望みて、ペトルに於けるが如く、慈憐を以て爾に其神聖なる手を授け給へり。

光榮、三者讃詞、無原にして造られざる三者、別れざる惟一者よ、我悔ゆる者を納

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩堂課 299]---------------------

れ、罪を犯しし者を救ひ給へ、我は爾の造物なり。祈る、我を棄つる毋れ、乃我を宥めて、永火の定罪を免れしめ給へ。

生神女讃詞、至浄なる女宰、神の母、爾に趨り附く者の憑恃、暴風に遭ふ者の湊よ、爾の祈を以て、慈憐なる造物主爾の子に其慈憐を我にも垂れしめ給へ。

 

   第三歌頌

イルモス、「主よ、爾の誡めの石に」。

靈よ、爾は古のエギペトの婦アガリに傚ひ、己の心に婢となりて、新なるイスマイルたる強暴を生めり。

我が靈よ、爾はイアコフに示されたる梯、地より天に至る者を知れり、何爲れぞ無難の上升たる敬虔を擇ばざりし。

世上に於て人人の間にハリストスの度生を象れる、神の司祭たる獨の王(メルヒセデク)に傚へ。

不當なる靈よ、生命の宴未だ終らず、主が宮の門を未だ閉さざる先に、爾悔改して歎息せよ。

靈よ、爾復歸りて、鹽柱と爲る毋れ、ソドム人の例は爾を畏れしむべし、上なるシゴルに逃れよ。

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩堂課 300]---------------------

主宰よ、爾を崇め歌ふ者の祈を斥くる毋れ。人を愛する主よ、憐を垂れ、信じて求むる者に赦を與へ給へ。

 

光榮、三者讃詞、單一にして造られざる三者、無原にして三位に歌はるる性よ、我等信を以て爾の權柄に伏拜する者を救ひ給へ。

生神女讃詞、神の母よ、爾は時の外に父より生まれし子を時の内に夫なくして生めり、異なる哉奇迹や、乳を以て養ひて童貞女に止まれり。

 

   第四歌頌、

イルモス、「主よ、預言者は爾の降臨の事を聞き」。

我が生命の時は短くして、苦勞と惡事とに盈つ、然れども我が痛悔を納れ、我を眞理に召して、我に敵の獲物及び食と爲るを免れしめよ。救世主よ、爾親ら我を憐み給へ。

王の位を有ち、榮冠と紫衣とを着し、多くの産を有し、且義にして、財寶及び畜群に富みたる人は遽に富と榮と國とを失ひて、貧しき者と爲れり。

若し彼、衆人に超えて、義にして無なる人が誘惑者の惡謀と網とを避けざりしならば、爾罪を愛する不當の靈よ、虞らざること爾に及ばば、何をか爲さん。

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩堂課 301]---------------------

我今徒に虚しくして言は驕慢、心は強暴なり、獨慈憐にして義なる審判者よ、我をファリセイと共に罪する毋れ、乃我に税吏の謙遜を賜ひて、我を彼の列に加へ給へ。

慈憐なる者よ、我罪を犯して、我が肉體の器を汚ししを知る、然れども我が痛悔を納れ、我を眞理に召して、我に敵の獲物及び食と爲るを免れしめよ。救世主よ、爾親ら我を憐み給へ。

慈憐なる者よ、我己を偶像と爲して、諸慾を以て我が靈を害へり、然れども我が痛悔を納れ、我を眞理に召して我に敵の獲物及び食と爲るを免れしめよ。

救世主よ、爾親ら我を憐み給へ。

我爾の聲を聞かざりき、爾立法者の書を犯せり、然れども我が痛悔を納れ、我を眞理に召して、我に敵の獲物及び食と爲るを免れしめよ。救世主よ、爾親ら我を憐み給へ。

 

マリヤの、克肖なる者よ、爾は肉體に在りて肉體なき者の度生を爲して、實に神より大なる恩寵を得たり。爾は切に爾を尊む者の爲に轉達す、故に我等爾に祈る、爾の祈を以て、我等を諸の誘惑より救ひ給へ。

マリヤの、マリヤよ、爾は大罪の淵に陷りたれども、其中に溺れざりき。乃善心

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩堂課 302]---------------------

を以て、行に依りて誠に全備なる徳に升りて、大に天使等の性を驚かせり。』

 

光榮、三者讃詞、我爾、同王.にして同座たる、三位にして惟一なる神性、性に於て分れず、位に於て混合せざる者を承け認め、爾に大なる歌、最高き居所に三次唱へらるる者を呼び歌ふ。

生神女讃詞、爾は生むにも、童貞を守るにも、二ながら天性の童貞女なり。爾より生れし者は天性の法を改め、生まざる腹は生む、神の欲する所には天性の順序渝へらる、彼欲することを行へばなり。

 

   第五歌頌

イルモス、「人を愛する主よ、祈る、夜より寤むる」。

靈よ、僂みたる婦に傚ひ、來りてイイススの足下に俯伏せよ、彼が爾を直くして、爾正しく主の道を行くを得ん爲なり。

主宰よ、爾深き井ならば、我が爲に爾の至浄なる脅より流水を出せ、我がサマリヤの婦の如く、之を飲みて復渇かざらん爲なり、蓋爾は生命の流を出し給ふ。

主宰主よ、願はくは我が涙は我が爲にシロアムと爲らん、我が心の目を滌ひて、中心に爾永遠の光を覩ん爲なり。

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩堂課303]---------------------

マリヤの、至りて福なる者よ、爾は比なき愛を以て生命の樹に伏拜せんことを願ひて、其望の適ふを得たり。祈る、我をも上の榮を受くるに堪ふる者と爲し給へ。

光榮、三者讃詞、三者よ、我等爾惟一の神を讃榮す。聖、聖、聖なる哉爾父と子と聖神、單一の性、永遠に伏拜せらるる惟一者や。

生神女讃詞、にして夫を知らざる母童貞女よ、世世を造りし神は爾の中に於て我が靈體を衣て、人性を己に合せ給へり。

 

   第六歌頌、

イルモス、「我心を盡して」。

救世主よ、我は爾が昔失ひし王の像ある「ドラフマ」なり。言よ、燈たる爾の前驅を燃して、爾の像を尋ねて之を獲よ。

起ちて、イイススがアマリクを破りしが如く、肉體の慾を破り、常にガワオンの者たる誘惑の思にも勝てよ。

 

マリヤの、マリヤよ、爾は慾のを熄さん爲に、靈にて燃えて、常に涙の流を注げり。祈る、此の恩寵を我爾の僕にも與へ給へ。

マリヤの、母よ、爾は地上に於て高尚なる度生を以て天の無慾を得たり。故に

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩堂課 304]---------------------

轉達して、爾を讃め揚ぐる者に、爾の祈に依りて、諸慾を免るるを得しめ給へ。

光榮、三者讃詞、我は單一にして分れざる三者、位に於て分れたる者なり、又我は惟一者、性に於て合一なる者なり、父、子、聖神之を言ふ。

生神女讃詞、生神女よ、爾の腹は我等の爲に我が形を受けし神を生めり。其萬有の造成主なるを以て、彼に祈り給へ、我等が爾の祈に依りて義とせらるるを得ん爲なり。

 

小讃詞、第六調、我が靈よ、起きよ、何ぞ眠る、終は邇づく、爾擾れん。故に寤めよ、在らざる所なく、充たざる所なきハリストス神が爾を宥めん爲なり。

 

   第七歌頌

イルモス、「列祖の神よ、我等罪を犯し」。

我が日は過ぎしこと覺むる者の夢の如し、故に我エゼキヤの如く我が榻に泣きて、我が生命の年の延べられんことを願ふ、然れども靈よ、萬有の神に非ずば、何のイサイヤか爾の前に立たん。

我爾に俯伏して、涙と共に我が言を爾に獻ず。我罪を犯ししこと淫婦の罪に勝り、不法を行ひしこと地上の衆人に勝れり、然れども主宰よ、爾の造物を憐みて、

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩堂課 305]---------------------

我を起し給へ。

我爾の像を埋み、爾の誡を破れり、我が美麗は昏くなり、燈は慾に因りて熄えたり、然れども救世主よ、憐を垂れて、ダワィドの歌ふ如く、救の喜を我に還し給へ。

悔改し、痛告し、秘なる事を顯し、知らざる所なき神に告げよ、惟一なる救世主よ、爾は我が秘密を知る、然れどもダワィドの歌ふ如く、爾の憐に因りて、親ら我を憐み給へ。

マリヤの、爾は至浄なる神の母に呼びて、前に甚しく暴れたる諸慾の猛烈を制し、誘を爲す敵を辱しめたり。祈る、今我爾の僕に憂に於て助を與へ給へ。』

マリヤの、克肖者よ、爾はハリストスを愛し、彼を慕ひ、彼の爲に身を捨てたり、今彼に爾の諸僕の爲に祈り給へ、彼が我等衆人に憐を垂れて、彼を尊む者に平安を賜はん爲なり。

光榮、三者讃詞、單一にして分れざる一體の三者と惟一の性、三光と一光、三聖と一聖なる神、三者は歌を以て歌はる。靈よ、爾も三一の生命なる萬有の神を歌ひて讃め揚げよ。

生神女讃詞、神の母よ、我等爾を歌ひ、爾を崇め讃め、爾に伏拜す。蓋爾は分れ

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩堂課 306]---------------------

ざる三者の一なるハリストス神を生みて、親ら我等地に居る者の爲に天の住所を開き給へり。

 

   第八歌頌

イルモス、「凡そ呼吸ある者と造物は」。

救世主よ、我香料の如く涙の器を爾の首に傾けて、憐を求むる淫婦の如く爾に呼ぶ。我を奉りて、赦を賜はんことを願ふ。

仁慈なる救世主よ、爾の前に罪を犯ししこと我より多き者なし、然れども我をも納れ給へ。蓋我畏れて悔い、愛を以て呼ぶ、我爾獨爾の前に罪を犯せり、憐深き者よ、我を憐み給へ。

救世主よ、爾の造物を宥め、牧者として亡びし者を尋ね、迷ひし者を導き、狼より奪ひて、我を爾が羊の草場の羔と爲し給へ。

仁慈なる救世主よ、爾が審判者として坐して、爾の畏るべき光榮を顯さん時、鳴呼其時如何なる畏あらんか、爐は燃え、悉くの者は爾の審判座の威嚴の前に戰かん。

 

マリヤの、マリヤよ、入らざる光の母は爾を照して、諸慾の闇冥より出せり。故に爾聖神の恩寵を受けて、中心に爾を讃め揚ぐる者を照し給へ。

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩堂課 307]---------------------

マリヤの、母よ、神聖なるゾシマは爾に於て實に新なる奇迹を見て、之を奇とせり、蓋肉體に於て天使を見、其心大に驚きて、ハリストスを世世に讃め歌ふ。』

光榮、三者讃詞、無原の父、同無原の子、仁慈の撫恤者、義なる神、神言の父、無原の父の言、生活にして造成する神、三者惟一者よ、我を憐み給へ。

生神女讃詞、至浄なる者よ、紅の組織を以て錦の衣を織るが如く、エムマヌイルの肉體は爾が腹の中に織られたり。故に我等實に爾を生神女として尊み崇む。

 

   第九歌頌

イルモス、「種なき胎の産は言ひ難し」。

言を以て惡魔に憑らるる者を醫ししダワィドの子よ、憐を垂れて我を救ひ、我を宥め、盗賊に於けるが如く、我に慈憐なる言を告げて云へ、誠に爾に語ぐ、我我が光榮を以て來らん時、爾我と偕に樂園に在らん。

二の盗賊が共に十字架に懸れる時、一は爾を謗り、一は爾を神と承け認めたり。至りて慈憐なる者よ、信ぜし盗賊、爾が神たるを暁りし者に於けるが如く、我にも爾が光榮の國の門を啓き給へ。

イイススよ、爾が十字架に懸れるを見て、造物は戰き、山と石とは畏れて裂け、

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩堂課 308]---------------------

地は震ひ、地獄は空しくせられ、光は爾が身にて釘うたれたるを見て、日中に昏まされたり。

惟一の救世主よ、我に悔改に應ふ果を促す毋れ、蓋我が力は我の中に盡きたり。我に常に痛悔の心と謙遜の靈とを與へ給へ、我が之を嘉き祭として爾に獻げん爲なり。

我を知る我が審判者よ、爾が全世界を審判せん爲に天使等と偕に還來らん時、爾の憐の目を以て我を視、イイススよ、我悉くの人より多く罪を犯しし者を宥めて憐み給へ。

 

マリヤの、マリヤよ、爾が奇妙なる行實に依りて、天使の群も人の會も驚かざるなし、蓋爾は天性に勝ち、物體なき者に傚ひて度生せり。故に爾は肉體なき者の如く、爾の足にてイオルダンを渡れり。

マリヤの、克肖なる母よ、造物主の憐を爾を讃め揚ぐる者に垂れしめて、我等を四方より攻むる禍及び憂より脱れしめ給へ、我等が誘惑を脱れて、常に爾の光榮を著しし主を崇め讃めん爲なり。

 

アンドレイに、尊きアンドレイよ、至りて福たる神父、クリトの牧者よ、爾を讃め歌ふ者の爲に常に祈りて、我等凡そ爾の記憶を中心より尊む者を忿怒と、憂愁と、

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩堂課 309]---------------------

傷害と、數へ難き罪過より脱れしめ給へ。

光榮、三者讃詞、我等父を讃め揚げ、子を崇め歌ひ、信を以て聖神を尊み拜み、分れざる三者、性に於て惟一なる者、一光と三光、三一の生命、四極に生命を施して之を照す者を崇め讃めん。

生神女讃詞、至りて潔き神の母よ、爾の城邑を衛り給へ。蓋彼は信を以て爾の力にて建ち、爾に依りて堅固にせられ、爾を以て凡の誘に勝ち、諸敵を敗りて之を從はしむ。

 

次に兩詠隊歌ふ、「種なき胎の産は言ひ難し」。

 

   其他晩堂課の式。

 

          ~~~~~~

 

 

 

---------------------[大齋第一週間木曜日 晩堂課 310]---------------------

 

 

 第一週間の金曜日の早課

 

聖三の讃歌。第一の誦文の後に八調經の十字架の坐誦讃詞、及び生神女讃詞、

   第二の誦文の後に坐誦讃詞、イオシフ師の作。第二調。

爾の苦を以て衆に苦なきを與へし仁愛の主よ、爾の神聖なる十字架を以て我が肉體の諸慾を殺して、我を爾の聖なる復活をも見るに勝ふる者と爲し給へ。

 

   光榮、同上。

今も、十字架生神女讃詞、潔き女宰生神女よ、我等皆爾の子の尊き十字架に護られて、輙く敵の凡の攻撃に勝つ。故に宜しきに合ひて爾を神の母、我が靈の獨の冀望として常に尊み崇む。

 

   第三の誦文の後に坐誦讃詞、フェオドル師の作。第二調、

潔浄の泉たる慈憐の主よ、齋を以て我等を護り、爾の前に俯伏する我等を顧み給へ。無形の者の惟一の主、地上の衆人の爲に木に釘せられて爾の手を伸べし者よ、我等の手を擧ぐるを受け給へ。

---------------------[大齋第一週間金曜日 早課 311]---------------------

   光榮、同上。

今も、十字架生神女讃詞、ハリストスよ、童貞女爾の母は爾木に懸けられて死せし者を覩て、痛く泣きて曰へり、吾が子よ、此の畏るべき秘密は何ぞや、衆に永遠の生命を賜ふ者は如何ぞ甘じて十字架に恥づべき死を以て死する。

規程は月課經の、六句に。又三歌頌、其次第に循ふ。預言者の第五歌頌をも誦文す、常例の如し。第二調。

 

   第五歌頌

イルモス、「幽闇に居る者の光照」。

狡猾の者は我の中に罪を見て、務めて罪を行ふを助け、實に我が滅亡の爲に喜ぶ。惟祈る、救世主よ、爾我に之を殺さん爲に力を與へ給へ。

爾の十字架に於て幽暗の首領に勝ちし主よ、我罪の深處、惡業の坑に陷れども、爾の慈憐に因りて救はれんことを恃む者を其毒惡より脱れしめ給へ。』

十字架に釘せられて殺されしハリストスよ、罪に殺されたる我が靈を活かし、我をして熱心に爾の誡を行ひて、平安に爾の尊き復活に至るに勝へしめ給へ。

生神女讃詞、我が柔弱の光照、我が昧まされたる靈の救贖なる潔き少女よ、

---------------------[大齋第一週間金曜日 早課 312]---------------------

我を救ひ、滅ぶる者を救ひ、我甚しき罪に因りて朽ちたる者に不朽の衣を衣せ給へ。

 

   又、同調。イルモス、「夜過ぎて日近づき」。

獨不死なる主よ、爾は髑髏の處に身にて自由に釘せられて、人の族に不死を賜ひ、其神の像を改め給へり。

主よ、爾の苦の甚しきを見て、一切の造物は變じて、イウデヤ人の行ひし殺害を哀哭せり、然れども爾は悉くの者を救はん爲に忍び給へり。

光榮、三者讃詞、鳴呼至聖なる三者よ、爾は我等の奉事する所の者、爾は亦避所及び保固なり、惟一の性に於て爾を讃め歌ふ者に罪過の浄を遣し給へ。

生神女讃詞、約匱及び「マンナ」の器、食案及び光れる燈臺、火の燃ゆる棘及び影に蔭はれたる神の山たる大名なる童貞生神女よ、慶ベ。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

世及び世に在る者に慶べよと陳ベたる我等は、今ハリストスと偕に釘せらるるが如く、侮、辱、及び其他を忍ばん、彼と偕に榮せられん爲なり。

 

イルモス、夜過ぎて日近づき、光は世界を照せり。故に主よ、天軍は爾を歌ひ、萬物は爾を崇め讃む。

---------------------[大齋第一週間金曜日 早課 313]---------------------

 

   第八歌頌

イルモス、「火の爐の中にエウレイの少者に」。

獨仁慈なる者よ、爾は己を卑くし、慈憐に因りて十字架に登りて、昔木の食に因りて陷りし者を登せ給へり。故に我等爾讃榮せられし者を世世に崇め歌ふ。

我不注意の坐睡に因りて罪の深き眠に入れり。然れども爾我がハリストス、我の爲に十字架に眠りし者よ、我陷りし者を起し給へ、死の夜が我を受けざらん爲なり。

我逸樂に瞽にせられて、昧まされたる靈を齎す、狡猾なる敵は我を見て笑ふ。

故にハリストスよ、我を照して、其毒惡より世世に脱れしめ給へ。

生神女讃詞、我怠りて生命を費し、罪の眠にて靈を重くして、爾の寢ねざる祈に趨り附く。至浄なる童貞女よ、我に死に眠ることを許す勿れ。

 

   又、イルモス、「昔シナイ山に於て棘の中に」。

ハリストスよ、爾は棘を冠り、紫袍を衣て、美麗を以て悉くの人の子より美しき者と現れ、光榮を以て輝けり。

ハリストスよ、爾は膽及び醋を飲みて、爾の神聖なる脇より生命と不朽との二の

---------------------[大齋第一週間金曜日 早課 314]---------------------

流を、忠信に爾を歌ひ、萬世に崇め讃むる者の爲に注ぎ給ふ。

  我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

三者讃詞、惟一の神三者、性の分れず、位の分れたる者、亡びざる權柄、父、子、聖神よみて、、我等爾を萬世に崇め歌ふ。

生神女讃詞、清き神の母、天の戸、救の門よ、衆「ハリスティアニン」、萬世に爾を讃美する者の祈を納れ給へ。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

ハリストスの帝笏、敎會の角、諸王の勝利、「ハリスティアニン」等の守護たる十字架よ、爾は我の光照、爾は亦萬世に我の矜誇なり。

  我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

 

イルモス、昔シナイ山に於て棘の中にモイセイに童貞女の奇跡を預め示しし者を尊み歌ひ、崇め讃めて、萬世に讃め揚げよ。

 

   第九歌頌

イルモス、「日より前に光り輝きし神」。

我の爲に恥づべき釘殺を忍びしハリストスよ、神の言よ、忌はしき思に因りて癩者と爲りし我が靈を爾の血の灑ぐを以て浄めて、我を爾の光榮に與る者と爲し給

---------------------[大齋第一週間金曜日 早課 315]---------------------

へ。

ハリストスよ、我忌はしき行の重量にて全く屈められて、憂ひて爾に呼ぶ、人を愛する主よ、爾の尊き血にて我が靈の醫し難き瘡を醫し給へ、我が爾の神性を歌はん爲なり。

我は惡事を食と爲し、怠惰を飲料と爲して、一切改められずして、徒に食物を制することを喜ぶ、主は此くの如き齋を命ぜしに非ず。

生神女讃詞、古の違反の消滅、原母の復興、人類の神に歸する所以、造物主に度る橋なる生神女よ、我等爾を崇め讃む。

 

   又、イルモス、「我等信者は皆潔浄無なる母」。

爾木に釘せられし時造物は戰けり、蓋神として、慈憐の多きに因りて、肉體にて苦を受けたり、我等を救はん爲なり。

主よ、爾が十字架の能力は大なり、蓋我等之を己に象りて、直に魔鬼の力を退く。

光榮、三者讃詞、三位なる惟一者、主宰たる惟一の三者、同榮なる神性、父、子、及び聖神よ、我等衆人を救ひ給へ。

生神女讃詞、生神女、世界の潔浄たる者よ、慶ベ、我等罪なる者皆之に趨り附き

---------------------[大齋第一週間金曜日 早課 316]---------------------

て、常に神と和睦するを得るなり。.

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

主よ、爾の十字架の神妙なる能力を以て我を固めて、齋の無なる浄き期を爾に獻げしめ給へ。

イルモス、我等信者は皆潔浄無なる毋童貞女を、生神女として歌を以て敬虔に崇め讃む。

 

   光耀歌は本調の。

   挿句に本日の自調の讃頌、二次、第八調。

我等喜ばしく齋の命を受くべし、蓋原祖が之を守りしならば、我等エデムの違背に與らざりしならん。我を殺しし果は見るに美しく、食ふに善かりき。貴まるる食、受けて後に卑しまるる者にて我等目を奪はれ、喉を悦ばすべからず、不節制を避けて、飽くと共に慾に服すべからず。自由に我等の爲に死に引かれし者の血を以て己に記すべし、然らば滅す者我等に觸れざらん。我等はハリストスの至聖なる「パスハ」を食ひて、我が靈の救を得ん。

致命者讃詞、聖なる者よ、我等何を以てか爾等を稱せん、へルワィムとせんか、ハリストス爾等の上に息ひたればなり、セラフィムとせんか、爾等絶えず彼を讃榮したれ

---------------------[大齋第一週間金曜日 早課 317]---------------------

ばなり、天使とせんか、爾等肉體を捨てたればなり、能力とせんか、爾等奇跡を行へばなり、爾等の名は多く、恩賜は更に多し。我等の靈の救はれんことを祈り給へ。

   光榮、今も、十字架生神女讃詞、同調。

救世主よ、萬物は爾が髑髏の處に釘せらるるを見る時皆變じ、忍びずして戰ひ慄けり。清き童貞女、爾の母は泣きて爾に呼べり、鳴呼吾が子、最甘き我の救世主よ、此の新なる、至榮にして驚くべき顯見は何ぞや。

 

「至上者よ、主を讃榮し」。其他の式。第一時課、「カフィズマ」の誦文なし。聖大齋内の他の金曜日にも此くの如し。

          ~~~~~~

 

 

   第六時課に、

   讃詞、第五調。

主よ、我等の罪多き度生と悔いざる習慣とを爾の慈憐を以て迎へ給へ。蓋我等は爾の外に生と死とを宰る他の者を知らず、人を愛する主なるに因りて救ひ給へ。

提綱、第十七聖詠、第七調、主我の力よ、我爾を愛せん。主は我の防固なり。句、

---------------------[大齋第一週間金曜日 第六時課 318]---------------------

の神、我の磐なり、我彼を恃む。

 

   イサイヤの預言書の讀。第三章。

視よ、主萬軍の主はイエルサリム及びイウダより、其倚る所、頼む所、凡そ其倚る所の糧、凡そ其頼む所の水、勇士、武士、審判者、預言者、卜筮者、長老、五十夫の長、貴顯の者、議官、工藝者、及び雄辯者を除かん。我童子を以て彼等の牧伯と爲さん、幼児は彼等を治めん。民互に相虐げ、人各其隣を虐げん、少き者は老いたる者に對ひて高ぶり、賎しき者は貴き者に對ひて高ぶらん。其時人父の家に於て、其兄弟に攀りて言はん、爾に衣あり、我等の有司と爲れ、此の敗壞は爾の手の下に在るべしと。然れども彼誓ひて云はん、我醫す者と爲る能はず、我が家に糧もなく、衣もなし、我を立てて民の有司と爲す毋れと。斯くイエルサリムは敗れ、イウダは倒れたり、蓋彼等の舌と彼等の行とは主に逆ひ、其光榮の目を干す。彼等の面の著現は彼等を攻むる證を作し、且彼等はソドムの人人の如く、顯に其罪を言ひて隠さず。彼等の靈は禍なる哉、蓋彼等自ら惡の報を招く。義者に謂へ、彼は福なり、蓋彼は其行の實を食はん。惟惡者は禍なる哉、蓋其手の作す所の爲に彼に報あらん。幼兒は我が民を虐ぐる者なり、婦人は彼を治む。噫我が民よ、爾を導く者は爾を迷はし、爾の往くべき途を絶てリ。主は審判の爲に起き、立ちて諸民を審判せん。主

---------------------[大齋第一週間金曜日 第六時課 319]---------------------

は其民の諸長老と諸牧伯とを審判せん。

 

提綱、第十八聖詠、第六調、主は我が防固、我を救ふ者なり。句、諸天は神の光榮を傳へ、穹蒼は其手の作爲を誥ぐ。

 

知るべし。「スボタ」及び主日に遇ふ所の聖人の月課經の式は晩堂課に或は聖務長の欲する時に之を行ふ。

 

          ~~~~~~

 

 

 第一週間の金曜日の晩課

 

常例の誦文の後に、「主よ爾にぶ」に十句を立てて、讃頌を歌ふ。本日の自調、二次。第五調。

信者よ、來りて光の中に神の事を爲し、晝に在るが如く行を美しくし、凡そ隣に對する不義の書券を己より去りて、彼に誘を爲す躓を置かざらん。肉體の逸樂を棄て、靈の賜を増加し、求むる者に糧を與へ、痛悔の心を抱きてハリストスに就

---------------------[大齋第一週間金曜日 晩課 320]---------------------

きて呼ばん、我が神よ、我等を憐み給へ。

 

次に八調經の當調の致命者讃詞四章を歌ふ、

    次に聖フェオドルの自調四章。第二調。

致命者を愛する者よ、皆來りて、神を以て樂しみて慶賀せん、蓋今日致命者フェオドルは奥密の筵を進む、是れ我等慶賀する者を樂しませて、彼に呼ばしむ、勝たれぬ受難者、地上に迫害者の恐嚇を空しくせし者よ、慶ベ、ハリストス神の爲に爾の塵に屬する體を苦に付しし者よ、慶ベ、諸の艱難に於て天の軍の熟錬なる軍士と現れし者よ、慶ベ。故に我等爾に、諸致命者の飾よ、求む、我等の靈の爲に祈り給へ。

致命者フェオドルよ、爾は神よリ賜はりたる爾の奇跡の恩寵を凡そ信を以て爾に趨り附く者に施す。此に因りて我等爾を讃め揚げて言ふ、爾は俘囚を釋ち、病者を醫し、貧しき者を富まし、航海する者を救ひ、諸僕の徒に逃ぐるを止め、盗難に遇ひし者を助け、軍士に掠めざることを敎へ、慈愛を以て少者の求むる所を與へ、爾の聖なる記憶を行ふ者の爲に熱心なる轉達者と顯る。至聖なる受難者よ、彼等と偕に我等爾の致命を讃め歌ふ者の爲にも、ハリストスに大なる憐を求め給へ。

---------------------[大齋第一週間金曜日 晩課 321]---------------------

致命者フェオドルよ、爾は神の最高き賜と顯れたり、蓋終の後にも生ける者の如く趨り附く者に求むる所を賜ふ。斯く或婦の兒が異敎の軍士に奪はれて虜にせられしに、爾の堂に詣りて涙を以て之を沾したれば、爾は慈憐の者として俄に白馬に乗りて現れて、其兒を還したり。其後にも爾は奇跡を行ひて息めざりき。求む、ハリストス神に我等の靈の救はれんことを祈り給へ。』

三重に福たるフェオドルよ、我等爾神の賜と同名なる者を尊む。蓋爾は神聖なる光の入らざる光體と顯れて、爾の受難を以て一切の造物を照し、火より最強き者と顯れて、炎を滅し、狡滑なる蛇の頭を砕けり。故にハリストスは爾の受難に於て傾きて、榮冠を以て爾の神聖なる首を飾れり。大致命者受難者よ、神の前に勇を有つ者として、熱切に我等の靈の爲に祈り給へ。

光榮、第六調、敵は背敎者たる窘逐者を利用して、甚しき謀を以て、齋にて浄めらるる敬虔の人人を忌はしき祭の血に汚されたる食を以て汚さんと試みたり。然れども爾は、致命者フェオドルよ、更に智なる謀を以て其惡計を破れり。爾夢に當時の司祭首の前に立ち、智慧の深處を啓きて、妄なる計畫を露せり。

故に我等爾に感謝を奉りて救ふ者と名づけ、行はれし奇跡を年毎に記憶し、是の後にも神に於ける爾の祈に因りて、兇惡者の謀に害せられずして救はれんこ

---------------------[大齋第一週間金曜日 晩課 322]---------------------

とを求む。

今も、本調の生神女讃詞。小入、福音經を捧持せず「穏なる光」。

 

提綱、第十九聖詠、第五調、主は憂の日に於て爾に聽かん。句、イアコフの神の名は爾を扞ぎ衛らん。

 

   創世記の讀。第二、三章。

アダムは凡ての家畜と、天空の凡ての鳥と、野の凡ての獸とに名を與へたり、然れどもアダムには之に適ふ助者見えざりき。主神はアダムを熟く睡らしめ、睡りし時其肋骨の一を取り、肉を以て其處に寔たせり。主神はアダムより取りたる肋骨を以て女を造り、之をアダムに攜へ來れり。アダム曰へり。是れ乃我が骨の骨、我が肉の肉なり、此れは女と名づけられん、男より取られしを以てなり。是の故に人は其父母を離れ、其妻に着きて、二の者一體と爲らん。アダムと其妻とは二人共に裸にして、愧ぢざりき。主神の造りたる野の生物の中に蛇最猾かりき。蛇婦に謂へり、神は眞に爾等園の凡ての樹の果を食ふ毋れと言ひしか。婦蛇に謂へり、我等園の凡ての樹の果を食ふを得、唯園の中に在る樹の果は、神、爾等之を食ふ毋れ、亦之に捫る毋れ、死なざらん爲なりと言へり。蛇婦に謂へり、爾等必死なざらん、神、爾等が之を食ふ日には、爾等の目開け爾等神の如くなりて、善惡を識らんことを知りたればな

---------------------[大齋第一週間金曜日 晩課 323]---------------------

り。婦樹を視て、食ふに善く、目に美しく、智慧を與ふるに因りて慕ふべしと爲し、遂に果を取りて食ひ、亦之を己と偕にする夫に與へたれば、彼も食へり。二人の目開けて、彼等其裸なるを知り、乃無花果樹の葉を綴りて、己の爲に裳を作れり。日の昃ける時、園の中に遊ベる主神の聲を聞きたれば、アダム及び其妻は主神の顔を避けて、園の樹の間に匿れたり。主神はアダムを呼びて彼に謂へり、アダムよ、爾何處に在るか。彼曰へり、我園の中に遊べる爾の聲を聞き、裸なるに因りて、懼れて匿れたり。神彼に謂へリ、誰か爾に裸なることを告げたる、我が爾に、此れのみは食ふ毋れと禁めし樹の果を、爾食ひしに非ずや。アダム曰へり、爾が我に與へし婦、彼樹の果を我に與へたれば、我食へり。主神は婦に謂へり、爾何ぞ之を爲したる。婦曰へり、蛇我を惑はして、我食へり。主神蛇に謂へり、爾此を爲ししに因りて、凡ての家畜及び凡ての野の獸の中に詛はれたり、爾は腹行して、一生の間塵を食はん、又我、爾と婦との間、及び爾の苗裔と婦の苗裔との間に仇を置かん、彼は爾の首を碎き、爾は彼の踵を刺さん。婦に謂へリ、我大に爾の悲哀と爾の歎息とを増さん、爾苦しみて子を産まん、又爾は夫を戀ひ、彼は爾を治めん。アダムに謂へり、爾其妻の言を聽きて、我が爾に禁めて、此のみは食ふ毋れと言ひし樹の果を食ひしに因りて、土は爾の爲に詛はる、爾は一生の間苦しみて之より

---------------------[大齋第一週間金曜日 晩課 324]---------------------

食を得ん、土は荊と薊とを爾の爲に生ぜん、又爾は野の草蔬を食はん、爾は面に汗して爾の食を食ひ、爾が取られし所の土に歸るにばん、蓋爾は塵にして塵に歸らん。アダム其妻の名を生命と名づけたり、彼は悉くの生ける者の母なればなり。

 

提綱、第二十聖詠、第六調、主よ、爾の力を以て自ら擧れ、我等は爾の權能を歌頌讃榮せん。句、主よ、王は爾の力を樂しまん。

 

 

   箴言の讀。第三章。

主は智慧を以て地を奠め、明哲を以て天を建てたり、其知識に因りて淵は啓かれ、雲は露を滴らす。我が子よ、此等を爾の目より離す勿れ、聰明と謹慎とを守れ、然らば此は爾の靈の生命と爲り、爾の項の飾と爲らん。斯くして爾安らかに爾の途を行き、爾の足は蹶かざらん。爾臥す時懼るる所あらず、眠る時爾の寢は酣からん。爾猝然なる懼を畏れず、惡人の滅亡の來る時も之を怖れざらん、蓋主は爾の倚頼者と爲りて、爾の足を守りて累るるを免れしめん。若し爾の手助くることを得ば、需むる者に善を爲すを辭する毋れ。若し爾に有する所あらば、爾の友に、去りて復來れ、我明日爾に予へんと謂ふ毋れ、蓋來日は何を生むを爾知らざるなり。

---------------------[大齋第一週間金曜日 晩課 325]---------------------

爾の友安らかに爾の傍に居る時は、彼に向ひて惡を謀る毋れ。人爾に惡を爲さざる時は、故なく彼と争ふ毋れ。強暴の人を羨む勿れ、其途の一をも擇ぶ勿れ、蓋邪曲なる者は主の惡む所にして、義者は其親しき者なり。主の詛は惡人の家に在り、義人の住居は祝福せらる。主は誇る者に敵し、謙る者に恩寵を賜ふ。

 

次に「願はくは我がは香爐の香の如く」。

 

   其他先備聖體禮儀の式。

          ~~~~~~

   升壇外の祝文の後に、

聖フェオドルに祈する規程を歌ふ。檯上に糖飯を具へて、第百四十二聖詠、「主よ、我がを聆き」を誦す。次に「主は神なり、我等を照せり」。

   其後讃詞、第二調。

信の感化力は大なる哉、聖致命者フェオドルはの泉の中に在りて、安息の水に於けるが如く喜べり、蓋火に焼かれて、甘き餅の如く聖三者に獻げられたり。ハリストス神よ、彼の祈に因りて我等の靈を救ひ給へ。

   光榮、同上

---------------------[大齋第一週間金曜日 先備聖體禮儀及びフェオドルの規程 326]---------------------

今も、生神女讃詞、生神女よ、爾の奥義は皆智慧に超ゆ、皆至榮なり。貞潔の封ぜられ、童貞の守らるるに、爾は實の母と知られて、眞の神を生み給へり。彼に我等の靈の救はれんことを祈り給へ。

第五十聖詠。次に左の規程、第八調。ダマスクのイオアンの作。其冠詞は、神の賜の同名者よ爾を歌ふ。

 

   第一歌頌

イルモス、「イズライリは乾ける地の如く水を過り。」

フェオドルよ、我爾を熱心に神を愛する者と知りて、爾を愛する愛に燃されて、靈と體と言とを以て讃美を爾に奉る。

活ける神にあらずして偶像に祭を捧ぐべき忌はしき命は出されたり、然れども爾は、受難者よ、之を捧げずして捕はれて、神に攜へられたり。

光榮、致命者フェオドルよ、爾は神聖なる熱愛に繋がれて、至上の神の獨生子の軍士と爲れり、故に尊敬を得たり。

生神女讃詞、聘女ならぬ母よ、天使及び人人の品位は絶えず爾を崇め讃む、蓋爾は彼等の造成者を赤子として己の手に抱き給へり。

   第三歌頌

---------------------[大齋第一週間金曜日 先備聖體禮儀及びフェオドルの規程 327]---------------------

イルモス、「主よ、爾は爾に趨り附く者の固」。

吾が口より歌、傷める靈よりを奉る、受難者フェオドルよ、之を納れ給へ。

光榮なる致命者よ、爾は肉體を自主なる智慧に服せしめて、斯の兩者を以て造成主に奉事す。

光榮、フェオドルよ、爾は迫害者の審判座の前に立ち。ハリスト王を讃榮して、穢らはしき者に祭を捧ぐるを拒みたり。

生神女讃詞、聘女ならぬ聘女よ、我等衆信者は常に爾を避所及び垣牆として獲て、黙すなく爾を讃榮す。

   第四歌頌

イルモス、「主よ、我爾の風聲を聞きて懼れたり」、

致命者フェオドルよ、爾は智慧を以て神聖なる奥密を味ひて、神の誕生の無なる敎を傳へたり。

慾に勤むる者は神性に慾ありと思へり、受難者フェオドルよ、爾は聖神に照されて彼等を闢除せり。

光榮、福たるフェオドルよ、祈る、爾の祈を以て、爾を歌頌する者を諸の誘惑と惡慾より脱れしむる者と爲り給へ。

---------------------[大齋第一週間金曜日 先備聖體禮儀及びフェオドルの規程 328]---------------------

生神女讃詞、耕作せられざる田、世界に生命を與ふる穂を生育せし者たる生神女よ、爾を歌ふ者を救ひ給ヘ。

 

   第五歌頌

イルモス、「ハリストス神よ、我等爾人を愛する主に」。

受難者フェオドルよ、爾は己と偕に苦を受くる致命者に呼べり、爾等を愛する主を愛せよ。

受難者よ、爾は熱切に燃ゆる心を有ちて、虚名の女神を宮と偕に燬けり。

光榮、受難者フェオドルよ、勝たれぬ力を以て諸敵の強暴と我が諸慾とを滅し給ヘ。

生神女讃詞、生神女よ、我等爾を生みし後にも童貞女として歌ふ、爾は身にて神言を世界の爲に生みたればなり。

 

   第六歌頌

イルモス、「救世主よ、我を浄め給へ」。

虚しき諸神の驕は何ぞ弱く、何ぞ無力なる、己の守護の爲に人を頼と爲し、眞實を傳ふる眞の致命者に輙く勝たる。二次。

光榮、致命者の光榮、福たるフェオドルよ、爾は神の力に堅められ、將來の永遠

---------------------[大齋第一週間金曜日 先備聖體禮儀及びフェオドルの規程 329]---------------------

の事に目を注ぎて、邪敎の者より受くる苦を赤子の射る矢と見たり。

生神女讃詞、純潔無なる神の母よ、願はくは我等爾の祈に由りて甚しき罪過より脱れて、言ひ難く爾より身を取りし神の子の神聖なる光照を被らん。

 

小讃詞、第八調、大受難者フェオドルよ、爾はハリストスの信を盾として中藏に爾の心に受けて、敵の力を破れり。故に勝たれぬ者として、天の冠を永遠に冠りたり

 

   第七歌頌

イルモス、「昔ワワィロンに於てイウデヤより」。

受難者フェオドルよ、爾は我等の爲身に傷つけられし言の爲に體に傷つけられて、感謝の心を抱き、樂しみて彼に呼べり、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

受難者フェオドルよ、衆人の贖罪主が墓の内に置かれて、甘じて封印せられし如く、爾は封印せられたる獄に樂しみて呼べり、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

受難者よ、爾は肉體の慾より釋かれ、心中に殺されたる者と爲りて、糧にあら

---------------------[大齋第一週間金曜日 先備聖體禮儀及びフェオドルの規程 330]---------------------

ずして神聖なる愛に養はれて歌へり、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。』

 

光榮、受難者よ、昔爐の中に少者に於けるが如く、獄の中に永久の三者の一は爾を堅むる者と見られたり、蓋爾は呼べり、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

生神女讃詞、救世主よ、爾は我等の救を立てんと欲せし時、童貞女の胎内に入り、彼を世界の爲に轉達者と爲し給へり。我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

 

   第八歌頌

イルモス、「ハルデヤの窘迫者は怒に堪へずして」。

不法者の首長は智慧昧まされて、爾敬虔の者を不虔に罵りて云へり、無智の者よ、何ぞ殺されて死せし人に空しく望を置きたる。然れども爾呼べり、少者よ、崇め讃めよ、司祭よ、讃め歌へ、民よ、萬世に尊み崇めよ。

フェオドルよ、爾は恩寵の睿智なる奉事者として、神より爾に賜はりし恩寵に因りて、不虔に命ずる者に呼べり、斯の辱は我及び歌ふ者に在るべし、少者よ、崇め讃めよ、司祭よ、讃め歌へ、民よ萬世に尊み崇めよ。

 

光榮、爾は雄雄しく戰ひ、勇ましく攻めて、窘迫者に呼ベり、何ぞ無知の事を爲し、造物主を棄てて、徒に造物に事ふることを命ずる。然れども我歌ふ、少者よ

---------------------[大齋第一週間金曜日 先備聖體禮儀及びフェオドルの規程 331]---------------------

崇め讃めよ、司祭よ、讃め歌へ、民よ、萬世に尊み崇めよ。

生神女讃詞、童貞女よ、神言者は有形の象、諸の比喩、啓示の言を以て性に超ゆる神妙なる爾の生産を預言せり。故に我等樂しみて敬虔に爾を讃め揚げて、ハリストスを萬世に尊み崇む。

 

   第九歌頌

イルモス、「爾至上の神の母」。

神の役者、受難者フェオドルよ、神を愛する愛は爾の致命の原質と爲れり。故に爾の肉體は物質の火の燃料と爲り、爾は之に因りて喜びて神聖なる火に向ひて上れり。

最尊き致命者、神の役者、受難者フェオドルよ、爾は焚きて焚かれざりき、蓋誘惑を焚きて、生ける者として神の前に立ち、致命者に適ふ如く彼を以て樂しむ。

 

光榮、我等は爾惟一のハリストス、三者の一位にして、二の全き性を有つ者を知る。爾の尊き血を以て獲たる爾の民を受難者フェオドルの祈に由りて救ひ給へ。

生神女讃詞、我等は爾天に於て萬軍に歌はるる見えざる神を手に抱きし者、又我等に患難の中に爾に由りて常に賜はる救を崇め讃む。

---------------------[大齋第一週間金曜日 先備聖體禮儀及びフェオドルの規程 332]---------------------

イルモス、爾至上の神の母、婚姻に與らざる童貞女、爾智慧に超えて言に因りて眞の神を生みし者、至浄なる軍より高き者を、我等黙さざる讃美を以て崇め讃む。

 

次に聖三祝文。聖人の讃詞、「信の感化力は大なる哉」。光榮、小讃詞、「大受難者フェオドルよ、爾はハリストスの信を盾として」。

 

今も、生神女讃詞、同調、純潔なる童貞女母マリヤ、「ハリスティアニン」等の救よ、我等衆罪を犯しし者は、轉達及び有力なる保護として、爾の熱切なる助を得たり。故に息めずして我等の爲に救世主に祈りて、赦の賜はらんことを求め給へ。

 

次に糖飯の祝福あり。輔祭、主に祈らん。詠隊、主憐めよ。

   司祭糖飯の上に祝文を誦す。

爾の言を以て萬事を行ひし主、地に命じて我等の慰及び食の爲に多種の果實を生ぜしめし主宰、菜蔬を以てワワィロンに在りし三少者及びダニイルを甘美なる食にて養はるる者より最美しき者と爲しし至仁なる王よ、爾親ら此の種子をも諸の果實と共に祝福して、之を食する者を聖にし給へ。蓋此は爾の諸僕より爾の光榮の爲、聖大致命者フェオドルティロンの尊敬の爲、及び敬虔なる信を抱きて終り

---------------------[大齋第一週間金曜日 先備聖體禮儀及びフェオドルの規程 333]---------------------

し者の記憶の爲に捧げられたり。仁慈なる主よ、之を備へし者、及び記憶を行ふ者に其救に勤むる凡の冀願の成就、及び爾の永遠の福の樂を與へ給へ、至浄なる我が女宰生神女、永貞童女マリヤと、我等が記憶を行ふ聖大致命者フェオドルティロンと、爾の諸聖人との祈に由りてなり。

蓋爾は、我等の神よ、凡の事を祝福成聖する主なり。我等光榮を爾無原なる父、爾の獨生の子、及び至聖至善にして生命を施す爾の神とに獻ず、今も何時も世世に。

 

詠隊、「アミン」。次に「願はくは主の名は崇め讃められて」。并に「我何の時にも主を讃め揚げん」。司祭代聖錫を分與す。及び發放詞。

 

先備聖體禮儀を行はざる處には、時課を終ふること左の如し。「神よ、我が自由と自由ならざると」、及び最後の大小拜の後に、聖三祝文、「天に在す」の後に、主憐めよ、十二次。次に祝文「至聖なる三者、一性の權柄」。并に晩課を始む、「來れ、我等の王」、三次。第百三聖詠。「カフィズマ」。「主よ、爾にぶ」に讚頌を歌ふ、六句に、八調經の順序の調の致命者讃詞三、及び聖フェオドルの三。光榮、フェオドルの、「敵は背敎者たる窘逐者を利用して」。今も、生神女讃詞、當調の「穏なる光」。小入なし。誦讀。挿句に三歌經の本日の自調の讚頌、二次、及び致命者讃詞、「天の

---------------------[大齋第一週間金曜日 先備聖體禮儀及びフェオドルの規程 334]---------------------

王の軍は祝讃せらるる哉」。光榮、フェオドルの、第二調、「三重に福たるフェオドルよ」、讃頌の中に載す。今も、生神女讃詞、「神の母よ、我が盡くの恃を爾に負はしむ」。「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文「天に在す」の後に讃詞、「信の感化力は大なる哉」。光榮、今も、生神女讃詞「生神女よ、爾の奥義は皆智慧に超ゆ」。次に聯「神よ、爾の大なる憐に因りて」。及び三拜。是に於て司祭赤色の祭袍を衣て始む、「我等の神は恒に崇め讃めらる」。誦經、第百四十二聖詠、「主よ、我がを聆き」を誦す。其他前述の如し。規程四句に。規程畢りて後、「常に福にして」に代へて第九歌頌の「イルモス」、「爾至上の神の母」を歌ふ。次に聖三祝文。「天に在す」の後に讃詞、「信の感化力は大なる哉」。光榮、小讃詞、「大受難者フェオドルよ、爾はハリストスの信を盾として」、今も、生神女讃詞、「純潔なる童貞女母マリヤ、「ハリスティアニン」等の救よ」。次に糖飯を祝福する祝文。其後「願はくは主の名は崇め讃められて」。并に「我何の時にも主を讃め揚げん」、及び發放詞。

 

知るべし。聖大四旬齋の都ての金曜日には、晩課及び晩堂課に大拜を爲さず。

但先備聖體禮儀中に規定したる大拜を爲す、「願はくは我がは」の後に三拜、聖錫を宝座に遷す後に三拜、及び「願はくは主の名は崇め讃められて」の時に三拜。

---------------------[大齋第一週間金曜日 先備聖體禮儀及びフェオドルの規程 335]---------------------

晩堂課は大課を歌ひ、其中に死者の當調の規程を歌ふ。月課經の順序の「スボタ」及び主日の諸規程は、聖務長の欲する所に随ひて、其一を金曜日の晩堂課に、其他を主日の晩堂課に歌ふ。

 

聖大四旬齋の都ての金曜日の晩に此くの如く行ふ。

          ~~~~~~

 

 第一週間の「スボタ」の早課

 

六聖詠の後に、「主は神なり」、第二調に依りて歌ひ、聖フェオドルの讃詞「信の感化力は大なる哉」を歌ふ、二次。光榮、今も、生神女讃詞、「生神女よ、爾の奥義は皆智慧に超ゆ」、一次。常例の「カフィズマ」の誦文。第一の誦文の後に八調經の當調の致命者の坐誦讃詞、生神女讃詞と共に歌ふ。

   第二の誦文の後に聖フェオドルの左の坐誦讃詞、第三調。

至榮なる致命者よ、爾は正敎の信にて涌き、僞敎の迷を滅して、偶像の無神を虚しくせり、且神聖なる燔祭と爲りて、奇跡を以て四極を濕す。ハリストス神に我等

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 336]---------------------

に大なる憐を賜はんことを祈り給へ。

   又、聖人の坐誦讃詞。

苦の中に爾を固め給ひし主、我等の靈の病を醫し、體の諸慾を退くる者は爾を救に勤むる神聖なる賜として全世界に與へたり。致命者フェオドルよ、ハリストス神に我等に大なる憐を賜はんことを祈り給へ。

生神女讃詞、至浄なる童貞女、爾の胎内に、容れ難き神、世世の先に父より輝きし一性の子、實在の言を宿しし者よ、彼に諸預言者と、致命者と、克肖者と、節制者と、諸義人と偕に、我等に諸罪の赦を賜はんことを祈り給へ。

 

聖人の受難の傳を讀む。次に第五十聖詠。規程は本堂の聖人の、「イルモス」と共に六句に。及び聖フェオドルの、八句に。「主に歌はん」をも誦文す。

規程、エウハイトの府主敎イオアンの作。其冠詞は、至榮なるティロン、第一の「スボタ」の光榮。第四調。

 

   第一歌頌

イルモス、「我が口を開きて」。

萬有より上なる主は爾言ひ難く生みし者を其悉くの選ばれたる者より上に置けり。故に至りて讃美たる者よ、我等今日、此の榮冠者を歌ひて、爾より始む。

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 337]---------------------

致命者の中に大なる者、至りて光明なる受難者、奇迹に於て、最有名に、最令聞あるフェオドル、地の極より極まで名の高き者を歌を以て歌頌せん。

樂しき日は悲の中に光りて、其憂を除き、神聖なる致命者の恩寵にて祭日の前途は遠くより輝けり。

聖なる屠殺は其血にて敎會に潔浄を灑ぐ、蓋神の光榮の爲に苦を受けし者は嘉く納れらるる祭として屠られたり。

生神女讃詞、祝祭を設けたるは時に適はざれども美事なり、蓋一切を妝ひたる女宰は今の記憶をも血に縁りて主の苦に與る者と爲せり。

 

又規程、同エウハイトのイオアンの作。第六調。

   第一歌頌

イルモス、「イズライリは陸の如く淵を蹈み渡り」。

聖者の中に實に奇異なる神ハリストスよ、我の中に爾の慈憐を奇異なる者と爲して、我に言を與へ給へ、我が爾の致命者の奇異なるを讃め揚げん爲なり。

ハリストスの受難者フェオドルよ、爾は苦痛に於ては堅固、勤勞に於ては忍耐を顯

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 338]---------------------

せり、又我等に施す爾の助に於ては速なるを顯し給ふ。

 

光榮、迫害者は其靈より先祖の敬虔の信を妄に斥けて、神に逆ひて、常に其不敬虔の旨を行はんと欲せり。

生神女讃詞、母童貞女よ、神に感ぜられし人人の古の預言は明に爾の上に行はれたり、蓋爾は性に超えて、奇異に眞の神及び眞の人を生み給へり。

 

共頌、我が口を開きて、聖神に満てられ、言を女王母に奉り、樂しみ祝ひ、喜びて其奇迹を歌はん。

 

   第三歌頌

イルモス、「生神女、生活にして盡きざる泉よ」。

女宰よ、「ハリスティアニン」等は爾の子の日を見んと欲して、其徴として今預め祭を爲す、爾及び爾の高名なる受難者の導に因りてなり。

更に善き者は必勝つ、蓋受難者の中に大なる者は時に適ふ哀を樂に變じて、聖なる齋の嚴しきを寛めたり。

受難者よ、爾に屬する者より爾に適う禮物を捧ぐ、蓋爾自ら此の日に於て我が中に起しし喜を以て爾に讃美を奉る。

秀抜の者よ、爾は日の秀抜の徳を以て至りて善なる基を置きたり、蓋殘忍の

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 339]---------------------

猛獸、火と殺氣とを噴く者を爾の性に超ゆる勇を以て効力なき者として殪せり。

新なる背敎者は狂亂して、古の誘惑者に效ひて、穢らはしき祭の血を毒の如く食物に混へたり、然れども詭譎の者は致命者の智慧に勝たれたり。

生神女讃詞、童貞女よ、爾に藉りて世界に現れたる主を知る智識にて全地は満てられたり、然れども神聖なる諸致命者には己を以て眞實を堅むる大なる恩寵賜はりたり。

 

   又、イルモス、「爾が信者の角を高うし」。

先にエワの耳に虚僞を囁きて、彼に由りてアダムを迷はしし者は、今亦兇惡の毒を吐きて迷はさんと欲す。

至りて不法なる誘惑者は正しきを守る者に對して憎惡を懐き、宜しき時を窺ひて、忌はしきことを行はんと謀れり。

光榮、聖なる齋の諸日の初穫は至れり、斯の中に「ハリスティアニン」は各一切を慎みて、多くの節制を以て己を浄む。

生神女讃詞、至聖至仁なる童貞女、世界の堅固なる憑恃、帲幪及び轉達よ、愛を以て常に爾を讃美する諸僕のを斥くる毋れ。

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 340]---------------------

共頌、生神女、生活にして盡きざる泉よ、祝ひて爾を讃め歌ふ者の靈を固め、彼等に爾が神妙なる光榮の中に榮冠を冠らしめ給へ。

 

   坐誦讃詞、第八調。

爾は神聖なる全備の武具を執り、偶像の迷を破りて、爾の勲功を讃めん爲に天使等を起せり。蓋神聖なる望を以て心を焦し、勇みて火の中の死を藐じ視たり。故に求むる者に爾の名に適ひて神の賜、醫治の恩賜を頒ち給ふ。受難者フェオドルよ、愛を以て爾の聖なる記憶を祭る者に諸罪の赦を賜はんことをハリストス神に祈り給へ。

   光榮、

爾はマクシミアンの甘言に傾かずして、ハリストスの言に由りて勇みて、偶像の宮を燬き、受難を以て善く敵に勝ち、預言者に效ひて火に入ること水に於けるが如くせり。故に當然に功勞の報として、信を以て求むる者に醫治を流し給ふ。受難者フェオドルよ、愛を以て爾の聖なる記憶を祭る者に諸罪の赦を賜はんことをハリストス神に祈り給へ。

 

   今も、生神女讃詞。

造物主の純潔なる聘女、贖罪主の夫を知らざる母、至上者の住所として至りて

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 341]---------------------

讃美たる者よ、我不法の穢らはしき器、智識の中に惡鬼の玩弄と爲りし者を此等の惡業より疾く逃れしめて、諸徳の明なる居處と爲し給へ。無なる光の住所よ、我が諸慾の雲を散じて、爾の祈を以て我を上なる光照及び暮れざる光を被るに勝ふる者と爲し給へ。

 

   第四歌頌

イルモス、「光榮の中に神性の寶座に坐する」。

鳴呼新にして至榮なる合一及び交錯や、生れたる神人は童貞に生産を合せ、己の受難者を尊みて、哀の日に樂を交へ給へり。

見よ、ハリストスの爲に戰ふ者は如何にかハリストスを愛したる、蓋熱心と火とを以て其敵を滅し、又熱愛を以て遂に己を甘美なる嘉く納れらるる祭として彼に獻げたり。

勝を得たる勇敢者は勇ましく言ひ、苦を輕ずるを以て見る者を驚かし、一切の造物の爲に新にして至榮なる觀玩と爲りて、苦難より釋かれたり。

我が神及び主宰は、鳴呼恒忍や、死して後にも苦を受けたれども、其骨は折れざりき。彼の軍士は火之を受けたれども、其死體を繞りて、恥ぢて之に觸れざりき。

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 342]---------------------

生神女讃詞、主宰と偕に死して、彼と偕に起きたる生命の役者は今常に彼の許に生き、子を母と偕に讃榮して、父、子、聖神を崇め讃む。

 

   又、イルモス、「尊き敎會は浄き心より」。

 

視よ、至りて不虔なる者は實に畏るべき謀を設く、蓋不當者は忌はしき食を以てハリストスの民を汚さんことを謀れり。

不法の謀を實行せり、蓋浄き食物を賣らんことを禁じて、血を以て汚しし者を進むるを命じたり。

光榮、不法の命は衆「ハリスティアニン」に示されて顯になれり、故に之を知りて後皆共に主の聖堂に趨せ集まれり

生神女讃詞、我等信者は爾父より生まれし永久の主を生みたる者を今祈者として進む。ハリストスよ、彼のに傾きて爾の諸僕に慈憐を垂れ給へ。

共頌、光榮の中に神性の寶座に坐するイイスス神は、輕き雲に乗るが如く、朽ちざる手に抱かれ來りて、ハリストスよ、光榮は爾の力に歸すと呼ぶ者を救ひ給へり。

 

   第五歌頌

イルモス、「萬物は爾が神妙の光榮に」。

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 343]---------------------

今日恩寵の前門は啓かれ、安息は今復活を前兆す。斯く欣ばしく光明なる女宰及び光榮なる致命者は尊まる。

神は己の顯見を愛する者に愛すべき賜としてフェオドル、至榮なる事を行ふ者、神聖なる力を顯す者を賜ふ。

人の救の敵よ、致命者の爲には爾の弓矢は虚し、蓋彼は死したれども生き、且警醒して爾の惡業に敵して、凡の正敎の者を救ふ。

生神女讃詞、神女の奇跡は前に驚くべかりしに、受難者の證に因りて疑なき信を得て、常に信ぜられ奇とせられて、忠信に伏拜せらるる者と止まる。

   又、イルモス、「至仁なる神の言よ、切に祈る」。

當時の司祭首は不虔者の謀を知りて大に驚き、徹夜の歌頌を神に奉りて、其嗣業なる民を終に至るまで棄てざらんことを祈れり。

眞實と熱中とを以て呼ぶ者の實に速なる扶助者は敢て彼等のを棄てざりき、彼等の爲に最早く企畫の破るるを致せり。

光榮、受難者フェオドルは最速なる扶助者として天上より地に遣され、牧師長に現れて、不法の謀を破らんことを敎ふ。

生神女讃詞、女宰よ、熱心に爾の保護に趨り附く者は何人も常に恥を得ず、

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 344]---------------------

恩寵を求めて、遄に益ある求に適ふ賜を受く。

 

共頌、萬物は爾が神妙の光榮に驚かざるなし、爾婚配を識らざる童貞女は至上の神を孕み、永遠の子を生みて、凡そ爾を歌ふ者に平安を賜へばなり。

 

   第六歌頌

イルモス、「神の信者よ來りて」。

救世主よ、爾が婚筵の友及び客は齋するを得ず、蓋爾新娶者、爾の母及び友と偕に此に在る者を饗應して奉事す。

惡名の者は救を施す神に離れ、又智慧に離れて、驕傲を以て信に敵せり、然れども己に敵する大名の者に遇へり。

勇敢者は苦しみて更に智なる者、更に熱切なる者と爲れり、蓋迫害者と戰ひて、能く勝利を得るを習ひて、死して後にも勝つことを息めざりき。

生神女讃詞、女宰よ、我等は今日爾の受難者の奇跡を以て爾の神聖なる定制に因りて、靈を害する患難より脱れて、感謝を爾及び致命者に奉る。

   又、イルモス、「誘惑の猛風にて」。

司祭首は爾の奇異なる顯見に驚きて、問ひて曰へり、我に言ふ主よ、爾は誰ぞ、如何に我等が速なる助を得んことをを知らせて敎へよ。

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 345]---------------------

フェオドル云へり、我は受難者なり、聞け、麥を煮て人人に頒てよ、斯くして誘惑者の穢らはしき食より救はれん。

光榮、フェオドルよ、爾の奇跡は如何にか大なる、爾の保護は如何にか至榮なる、故に我等皆勇みて忠信に爾に趨り附きてる、爾の諸僕を救ひ給へ。

生神女讃詞、父の惠に由り、又聖神の爾に臨むに由りて、爾は光の居所、言の潔き器と爲れり、故に我を照し給へ。

共頌、神の信者よ、來りて、神の母の此の神妙なる至りて尊き祭を祝ひ、手を拍ちて、彼より生れし神を讃榮せん。

 

小讃詞、第八調、大受難者フェオドルよ、爾はハリストスの信を盾として中藏に其心に受けて、敵の力を破れり。故に勝たれぬ者として、天の冠を永遠に冠りたり。

同讃詞、我等信を以て感謝の心を懐きて、爾光の寶座に舁はるる主を讃め歌ふ。蓋爾は、苦に於て勇敢なる、生命に於て三福なる、神妙の賜たるフェオドルを眞實の爲に戰ふ者として賜へり。彼は敬虔の思慮を以てハリストスを獲て、勝たれぬ者として、誘惑者に對して勇毅なる戰勝者たりき。

 

   第七歌頌

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 346]---------------------

イルモス、「敬虔の者は造物主に易へて」。

義なる主宰よ、爾は、律法は義人の爲に設けたるに非ずと云へり。故に爾の母及び至りて奇異なる此の爾の僕は其記憶の光照にて今日齋の律法を癈す。』

今の慶賀は如何に樂しく、大にして、悦ばしき。致命者の中に至りて勇敢に、至りて大なる者は、浄きハリストスの民を穢より護る一の奇跡を以て我等の爲に之を設けたり。

前には烈しき蛇に敵し、今は靈を害ひ、生ける體を汚す者に勝ちたる受難者に我等勝利の歌を奉り、讃美の榮冠を冠らせん。

生神女讃詞、女宰よ、原祖は靈を害する糧を知りて逃れざりき。爾の忠信なる民は爾の致命者よリ敎へられて、害を爲す糧を逃れたり。故に救の爲に彼と偕に爾に感謝を奉る。

 

   又、イルモス、「天使は敬虔なる少者の爲に」。

至榮なる者よ、爾は悲の熱きを涼しくする露、燃ゆる火を滅す雲と現れて、衆信者を迫害者の爐より救ひ給へり、蓋彼等呼ぶ、吾が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

至りて不法なる王よ、恥を得よ、我等に對して不法なる謀を設くる、爾の口は

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 347]---------------------

塞がるべし、蓋諸王の王萬衆の主は爾の力を破れり。

光榮、無知なるイウリアンよ、爾の心は兇惡に満てられて、我等に誘惑を灑げり、然れども呼ぶ者に明に恩寵を賜ふ睿智なる我等の神は之を無効と爲し給ふ。

生神女讃詞、至りて無なる者よ、爾の懐孕は言に超え、爾の産は智慧に超ゆ、蓋爾祝福せられたる者は萬衆を朽壞より救ひし神を身にて生み給へり。故に生神女よ、我等今爾を讃榮す。

 

共頌、敬虔の者は造物主に易へて造物に事ふることをせざりき、火の嚇を勇ましく踐みて、喜び歌へり、讃美たる主、先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

 

   第八歌頌

イルモス、「衆人の贖罪主全能者よ。」

産を以て天の者地の者を歡喜に満たしし童貞女は悲の時に於て榮冠者に其時に適ふ恩寵を賜ひて、欣ばしき慶賀を捧げしむ。

我等人人昨日の勞より息ひて、今日安息す、此の日を休息を以て祝し、且今致命者の祭を以て祝せし者に因りてなり。

實に此は「スボタ」の中に第一の者にして、諸「スボタ」の「スボタ」と名づくとも

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 348]---------------------

可なり、致命者の恩寵と神聖なる力とに満されたる者、大なる救の記憶なり。』

潔き者は王たる神の浄き糧を以て不法なる王の汚衊を虚しくし、且至榮なる奇跡を以て尊き第七日を聖にせり。

生神女讃詞、少女よ、致命者の熱心なる死は爾の奥密を堅む、蓋勇敢者は生れし者が甘じて苦を受けたれども、之を神なりと信じ、己を祭として捧げたり。

   又、イルモス、「ハリストスよ、爾は敬虔なる者の爲に」。

致命者フェオドルよ、爾は神の力に由りてより救はれし如く、斯く今も自ら爾の神聖なる轉達を以て我等を惡謀者の不法なる謀より救ひ給へり。

恒忍なる致命者よ、晩には我が敵の兇惡なる謀に因りて爾の諸僕に哀哭ありたれども、朝には爾の熱切なる助に因りて喜は輝けり。

光榮、受難者フェオドル、ハリストスの致命者よ、我等患難に陷る時爾より援助を得、敵の惡謀を免るるを得て、萬世に爾を讃榮す。

生神女讃詞、潔き者よ、人の知識は爾の産の奥義を説く能はず、故に我等信を以て爾を生神女と尊みて萬世に讃榮す。

 

共頌、生神女の産は敬虔の少者を爐の中に守れり。其時に預め徴され、今已に應ひし此の産は全世界に勸めて爾に歌はしむ、造物は主を歌ひて、萬世に彼を讃め揚

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 349]---------------------

げよ。

 

   第九歌頌

イルモス、「生神女よ、爾の産は不朽なり」。

大數は諸方より證詞の幕に馳せ集まりて、諸致命者の光榮の中に特に輝く者の生ける恩寵を、萬衆の女宰と偕に崇め讃む。

ハリストスの敎會よ、勇め、徒然に戰ふ者を制せよ、蓋ハリストスの友は邇きに在る者も離れたる者も爾の爲に慮る、爾が感謝を奉る勇敢者の如し。

昔死したりと思はれたる者は實に終の後にも生きて、復舊の熱心を以て信の爲に堅立す。我等は此の熱心に富まされて、恩者を崇め讃む。

生神女讃詞、童貞女よ、我爾を神聖なる印にて封ぜられたる神の巻物として歌を以て讃頌し、且爾の致命者を崇め讃む。

   又、イルモス、「天使の品位すら見るを得ざる神は」。

至榮なる者よ、爾は善く我等の爲に扶助者及び有能なる保護者と顯れたり。

故に我等今爾の尊き永遠の記憶、爾の受難の勲、及び我等に顯しし神聖なる保護を崇め讃む。

至福なるフェオドルよ、爾に行はれし奇跡は雲の如き衆くの者を以て全世界に歌は

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 350]---------------------

る。故に我等も年毎に集まりて、爾を榮せしハリストスに光榮を獻ず。』

 

光榮、ハリストスの至榮なる致命者よ、爾を讃め揚ぐる者の愛を見て更に大なる恩寵を酬い、其信の如何なるを知りて、常に我等の神の前に熱切に祈轉達する者と爲り給へ。

生神女讃詞、童貞女よ、我等已めずして爾を扶助、帲幪、速なる守護、及び愧を得ざる我等の轉達者として歌ふ。爾の諸僕を凡の患難より護り、常に兇惡者の諸の惡謀を免れしめ給へ。

共頌、凡そ地に生るる者は聖神に照されて樂しみ、形なき智慧の性も祝ひ、神の母の聖なる祭を尊みて呼ぶべし、至りて福なる潔き生神女、永貞童女よ、慶べよ

 

   差遣詞

聖なる戴冠者、天使等と偕に今ハリストスの寶座の前に立ちて、彼より光に満てらるる受難者よ、常に祈りて、世界に平安を得しめ、我等敬虔に爾、至福なるフェオドル、榮せられたる致命者の光明なる記憶を行ふ者に救を得しめ給へ。

生神女讃詞、生神女よ、亡ぶる世界を朽壞より喚び起さんと欲する主は其自ら知

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 351]---------------------

れる如く爾の腹に住まひ給へり。故に我等皆救を得て、爾讃詠せらるる者に天使の如く呼ぶ、悉くの女の中に祝福せられたる者よ慶ベ、爾は全世界の爲に歡喜を生みたればなり。

 

「凡そ呼吸ある者」に四句を立つ、第一調。

信者よ、同心に集まりて、天上より募りたる兵士を、我等の敬虔の勇毅なる軍士として奥妙なる歌を以て讃め揚げて云はん、イイススの神聖なる致命者よ、爾を尊む者の爲に祈り給へ。

三重に福なるフェオドルよ、爾は己の名に適ひて、實に神の賜の如く、悉くの憂ふる者に慰藉として予へられたり。蓋凡そ忠信に爾の堂に躋る者は樂を以て爾の奇跡の報を受けて、ハリストスを尊む。

爾は悉くの爾の力を嘉く納れらるる獻物として神に奉りて、慎を以て勤勞して、神より爾に賜はりたる召を盡し、受難の勲功を以て己に敬虔の富と光榮とを獲たり。

我等祭を愛する者は皆神聖なる受難者の欣ばしき慶賀に飽かせられ、信を以て樂しみて、其致命の光明なる祭を尊みて、歌を以て彼の記憶を榮せしイイススを歌頌せん。

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 352]---------------------

光榮、第六調、フェオドルよ爾は世界の爲に成聖の賜、神聖なる生命の富として現れたり、蓋ハリストスは智慧を以て爾の記憶を榮せり。我等信者は斯の中に於て同心に喜びて、爾の苦難の勲功を歌ふ。

今も、生神女讃詞、同調、生神女よ、爾は實の葡萄の枝、我等の爲に生命の果を結びし者なり。女宰よ、爾に祈る、受難者及び諸聖人と共に我が靈の憐を蒙らんことを祈り給へ。

 

   挿句に聖人の讃頌、第四調。

受難者フェオドルよ、今爾の堂に於て諸致命者の會は喜びて祝ひ、天使の軍は爾が苦の忍耐に拍手し、榮冠を賜ふハリストス親も前に立ちて、其の右の手を以て爾を歌ふ者に豊なる賜を予ふ。爾は嘗て彼を愛して尋ね、彼を獲て慕ひし者と語れり。彼に我等の靈を救ひて照さんことを祈り給へ。

句、「義人は繁ること椶櫚の如く」。

潔浄無なる齋は今我等に至りて、致命者の奇跡の完美を共に入れたり。故に我等も齋を以て靈の汚れを浄めて、致命者の顯現と受難とに由りて勇ましく諸慾と戰ふ爲に己を備へん。斯く聖にせられし節制の恩寵と致命者フェオドルの奇跡とに照され、信に堅められて、ハリストスに我等の靈に救を賜ふことを祈らん。

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 353]---------------------

句、「彼等は主の宮に植えられて」。

致命者フェオドルよ、爾は神に由る己の勇にて背敎者のハリストスの信に於ける惡謀を空しくし、敬虔なる民の保護者と爲りて、奇異なる顯現を以て彼等に偶像の祭の不潔なる食にて汚されんことを免れしめたり。故に我等は爾を偶像の破壞者、ハリストスの軍の救者及び守護者、我等の寛容なる轉達者として尊みて、歌を以て我が靈に爾に依りて洗浄と光照との賜はらんことを祈る。

 

光榮、第八調、ハリストスの受難者よ、爾は敬虔にして受難の勇毅と神靈の奉事とを奥密の武器と爲し、努力して戰ひて、拜偶者の不虔と迫害者の恐嚇との弱きを顯し、諸の苦と暫時の火とを顧みざりき。鳴呼實に於ても名に於ても神の賜たる者よ、爾の祈を以て、爾の記憶を行ふ者を諸の患難より救ひ給へ。

 

今も、生神女讃詞、女宰よ、爾の諸僕の祈を納れて、我等を諸の害と憂愁より救ひ給へ。

 

   其他早課の式。第一時課を合せ誦す。

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 早課 354]---------------------

聖體禮儀には代式、又聖人の規程の第三及び第六歌頌。提綱、第七調、義人は主の爲に樂しみて、彼を恃まん。句、神よ、我がの時我が聲を聽き給へ。使徒誦讀は本日の、エウレイ書三百三端。聖人の使徒誦讀はティモフェイ書二百九十二端。

アリルイヤ第四調、義人は繁ること椶櫚の如く、高くなることリワンの柏香木の如し。句、彼等は主の宮に植えられて、我が神の庭に榮ゆ。福音經の誦讀はマルコ十端。又聖人の、イオアン五十二端。領聖詞は「義人は永く記憶せられ」。食堂にはニッサの聖グリゴリイの聖フェオオドルを讃美する講説を讀む。

 

知るべし。此の大齋内には唯二次生神女福音祭及び聖枝祭にのみ魚類を食する傳を受けたり。

 

 

          ~~~~~~

 

 

 

 

 

---------------------[大齋第一主日「スボタ」 聖體禮儀 355]---------------------

 

   聖大齋の第一主日

 

 

  斯の日正敎の勝利を記憶す。

   常例の徹夜

「スボタ」の晩に、小晩課に四句を立てて、左の讃頌を歌ふ。ニコライの作。第一調。

 

今正敎の光明は衆人の爲に現れて、雲の如く不正敎の迷を掃ひ、敬虔の者の心を照す。正敎者皆來りて、虔誠の心を抱きて、ハリストスの尊き聖像に伏拜せん。今ハリストスの敎會は妝はれたる新婦の如く聖にせられし肖像に装飾せられて、衆人を屬神に祝はん爲に喚び集む。我等一意一信を以て來りて、欣ばしく主を崇め讃めん。全世界よ、樂しめ、蓋視よ、主は言ひ難き攝理を以て不虔の權柄を上より墜し給へり。我等謙卑なる者は今敬虔なる女王に嚮導せられて、醇正の敎に上げられたり。

聖像の尊敬は其原像に歸すとワシリイは言へり、故に我等は愛を以て救世主ハリストス及び衆聖人の聖像を尊み、之を護りて、永く不正敎の迷を避けん。

---------------------[大齋第一主日 「スボタ」の小晩課 356]---------------------

   光榮、今も、生神女讃詞。

童貞女よ、無原にして神聖なる性の見えざる神は至極の慈憐に因りて爾の潔き血より身を取りて、見ゆる人と爲り給へり。我等衆信者は彼の肉體の肖像を描きて、慎みて伏拜し、敬虔に崇め讃む。

 

   挿句に、第二調。

我等信者は不正敎者の害を爲す攻撃を免れて、正敎の光を以て心を照して、神を讃榮せん。

句、光榮と尊貴とを主に獻ぜよ。

アリイとマケドニイ、ペトルとセワィル及びピルルの不潔なる迷は空しくなりて、三位一體の光は日の如く輝く。

句、主に其美しき聖所に伏拜せよ。

既に不虔者の昧き敎は誇らず、蓋神はフェオドラの願に由りて、正敎者に能力の杖を賜へり。

   光榮、今も、生神女讃詞。

神言を生みし生神女よ、爾は謙卑の者の角を擧げ給へり、故に我等皆熱信に爾を

---------------------[大齋第一主日 「スボタ」の小晩課 357]---------------------

尊みて崇め讃む。

讃詞、「仁慈なるハリストス神よ、我等爾の至浄なる聖像に伏拜して」。發放詞。

 

          ~~~~~~

 

 

 「スボタ」の大晩課

 

常例の聖詠誦讀の後に、「主よ、爾にぶ」に、八調經の調に依りて、十句を立てて讃頌を歌ふ、復活の三、アナトリイの三、及び三歌經の四、第六調。

 

主よ、爾悟り難き者、黎明の前に無原に形なき父の腹より輝きし者を、爾の神に感ぜられたる諸預言者は、婚姻に與からざる者よリ身を取りて嬰児と爲り、人人に合せられ、地上に見らるる者と預言せり。彼等に因りて、洪恩なる主として、爾の言ひ難き至尊なる復活を歌頌する者に爾の光照を獲しめ給へ。』

主宰よ、言を以て爾を傳へ、行を以て尊みし神言を宣ベたる諸預言者は終なき生命を得たり。蓋爾造物主に勤むるよりは多く造物に勤むるを致さず、欣ばしく世上の萬事を避けて、其預言せし爾の苦に效へり。獨大仁慈なる主よ、彼等の祈

---------------------[大齋第一主日 「スボタ」の大晩課 358]---------------------

に因りて、我等に潔く齋の途を過ぐるを得しめ給へ。

主宰よ、爾は神の性にて限られぬ者にして、末の時に於て人體に現るるを以て甘じて己を限り給へり、蓋肉體を取ると偕に其悉くの質をも取り給へり。

故に我等は使徒の神聖なる傳に從ひて、爾の形體の肖像を描きて、慎みて之に接吻し、爾の愛に擧げられて、此より醫治の恩寵を汲む。

ハリストスの敎會は救世主ハリストス、神の母、及び衆聖人の尊貴なる聖像の嚴に立てるを受けて、至りて尊き装飾を獲たり、此を以て飾られ、恩寵にて輝き、異端者の群を己より退け、人類の爲に自由なる苦を受けし仁愛なる神を喜びて讃榮す。

   光榮、第二調。

眞實の恩寵は輝き、昔影を以て預象せられし者は今現に成就せり。蓋視よ、證詞の幕の形を以て預象せられたる醇正の敎を有つ敎會はハリストスの人體の肖像にて美しき飾の如く妝はる、我等が尊む所の主の、其肖像をも有ちて迷はざらん爲なり。斯く信ぜざる者は恥を蒙るべし、蓋人體を取りし主の容、敬虔に伏拜せらるれども神とせられざる者は我等の爲に光榮なり。我等信者は之に接吻して呼ばん、神よ、爾の民を救ひ、爾の業に福を降し給へ。

---------------------[大齋第一主日 「スボタ」の大晩課 359]---------------------

   今も、本調の第一の生神女讃詞。

   「リティヤ」には常例の如く本堂の讃頌。

光榮、第二調、尊き諸預言者、能く主の法を立て、信を以て壞られず動かされざる柱と現れし者よ、慶ベ、蓋爾等は又ハリストスの新約の中保者と現れたり。天に移りて、彼に世界に平安を賜ひ、我等の靈を救はんことを祈り給へ。

   今も、生神女讃詞、同調。

神の母よ、我が盡くの恃を爾に負はしむ、我を爾の覆の下に守り給へ。

 

   挿句に八調經の讃頌。

光榮、第二調、我等は不虔より虔誠に移り、神智の光に照されて、聖詠に言へる如く手を拍ち、感謝して讃美を神に奉りて、壁に、板に、聖にせられし器に描かれたるハリストス、生神女、及び衆聖人の聖像に慎みて伏拜し、不正敎者の不虔の敎を斥けて、(聖像の尊敬はワシリイの言へる如く、原像に歸すればなり、)ハリストス我が神に、其至浄なる母及び衆聖人の祈に由りて、我等に大なる憐を賜はんことを求めん。

 

今も、生神女讃詞、「鳴呼新なる奇蹟」、讃詞「生神童貞女よ、慶ベよ」、二次、及び祭日の、「仁慈なるハリストス神よ、我等爾の至浄なる聖像に伏拜して」、一次。并

---------------------[大齋第一主日 「スボタ」の大晩課 360]---------------------

に其他徹夜の式。

          ~~~~~~

 

 

 第一主日の早課

 

「主は神なり」に復活の讃詞、二次。

   光榮、左の讃詞。第二調。

仁慈なるハリストス神よ、我等爾の至浄なる聖像に伏拜して、我が諸罪の赦を求む、蓋爾は其造りし者を敵の奴隷より救はん爲に、甘じて身にて十字架に升り給へり。故に我等感謝して爾に呼ぶ、世界を救はん爲に來りし我が救世主よ、爾は衆人を欣喜に満て給へり。

今も、生神女よ、爾の奥義は皆智慧に超ゆ、皆至榮なり。貞潔の封ぜられ、童貞の守らるるに、爾は實の母と知られて、眞の神を生み給へり。彼に我等の靈の救はれんことを祈り給へ。

常例の聖詠誦文及び其他の式。

---------------------[大齋第一主日 早課 361]---------------------

規程は、復活の、生神女の、及び三歌經の六句に。フェオファン師の作。第四調。

 

   第一歌頌

イルモス、「古のイズライリは足を濡らさずして」。

信者よ、今日喜び樂しみて呼ばん、我等の同一意同一心を成ししハリストスよ、爾の行爲は何ぞ奇異なる、力は何ぞ大なる。

敬虔の者よ來りて、欣ばしき日を送らん、今天と地とは樂しみ、天使の品位と人人の會とは嚴に祝ふ。

我等は。至大なる恩惠を見て手を拍たん、ハリストスの分れたる肢體は一に合せられたり。我等は和平を賜ひし神を崇め讃めん。

敬虔に敎を守る我が諸王ミハイル及びフェオドラが神より含められたる指麾と旨とに因りて、今日敎會に勝利は與へられたり。

生神女讃詞、至浄至潔なる童貞女よ、不虔なる異端者の武器は顯に絶されたり、蓋我等は聖像にて最美しく飾られたる爾の殿を見て、今神聖に喜ぶ。

共頌、古のイズライリは足を濡らさずして海の紅の淵を渡り、野に於てモイセイの十字形の手にてアマリクの力に勝てり。

 

   第三歌頌

---------------------[大齋第一主日 早課 362]---------------------

イルモス、「ハリストスよ、爾の敎會は」。

今不虔なる異端者の眉は已に高ぶらず、神の力が正敎を堅めたればなり。』

預言者の雲は今日我等に敎の再興の爲に活かす露を天より滴らすべし。』

ハリストスの使徒の奥密の角は朗に呼びて、尊き聖像の再建を傳ふべし。』

敬虔にしてハリストスを愛する女王を其神より戴冠せられたる枝と偕に我等に顯ししハリストスを歌はん。

生神女讃詞、至浄なる者よ、我等信者は爾の聖にせられたる居處に至りて、今光明なる恩寵に照されんことを祈る。

共頌、ハリストスよ、爾の敎會は爾の爲に樂しみて呼ぶ、主よ、爾は我が力と避所と堡障なり。

   坐誦讃詞、第一調。

ハリストスよ、我等は爾の神聖なる姿容を肖像に印して、明に爾の降誕、言ひ難き奇跡、自由なる十字架の苦を傳ふ。之に由りて惡鬼は畏れて逃げ、不正敎者は其關與者として憂ひて泣く。

光榮、母たる上のシオンは諸預言者の容貌、諸使徒の姿容、聖にせられし致命者及び衆聖人の肖像を以て美しく飾られ、神聖なる新郎及び無なる新婦の華麗なる現象

---------------------[大齋第一主日 早課 363]---------------------

を以て、嚴に装飾せらる。

今も、生神女讃詞、潔き者よ、愛を以て爾の聖なる肖像を尊み、一心に爾を神の眞の母と傳へ、熱切に爾に伏拜する者の爲に、爾は保護者及び有能なる轉達者と現れて、能くせざる所なき者として、彼等より凡の患難を遠く除き給ふ。

 

   第四歌頌

イルモス、「敎會は爾義の日が」。

大仁慈なる神の言よ、撫恤者の神聖なる降臨を以て爾の殿を聖にし、其來るを以て異端者の迷を逐ひ給へ。

爾の民を不虔者の甚しき虐より救ひし主宰よ、之を敬虔の熱に燃ゆる者と爲して、信を以て呼ばしめ給へ。主よ、光榮は爾の力に歸す。

我等はハリストス及び生神女の容貌の聖にせられし肖像にて輝ける聖なる居處を見て、神聖に喜ぶ。

戴冠せられたる女王は眞のハリストスの國を望みて、彼の至浄なる肖像及び諸聖人の姿容を描きたり。

生神女讃詞、恩寵を蒙れる者よ、爾は身を取りし神の言を生みて、神に合ふ彼の殿と現れたり。故に我等爾に光明なる殿を奉る。

---------------------[大齋第一主日 早課 364]---------------------

共頌、敎會は爾義の日が十字架に擧げられしを見て、竝び立ちて正しく呼べり、主よ、光榮は爾の力に歸す。

 

   第五歌頌

イルモス、「我が主よ、爾は光」。

主よ、爾の敎會を堅めて、世世に諸異端の暴風に動かされぬ者と爲し給へ。』

上より信者に賜はりたる樂と神聖なる保護との光明は全地に輝けり。

獨仁慈にして仁慈の泉なる主よ、爾の聖像を尊む正敎の諸王の角を高くし給へ。

信なる諸王の神に感ぜらるる命と神智なる指麾とに因りて、我等に醇正の敎の暮れざる光は輝けり。

生神女讃詞、至浄なる神の母よ、我等の爲に古の美しきを新にして、此の爾の家を爾の恩寵にて聖にし給へ。

共頌、我が主よ、爾は光、信じて爾を崇め歌ふ者を闇き無智より引き出す聖なる光にして、世界に來り給へり。

 

   第六歌頌

イルモス、「憐に由りて爾の脅より」。

---------------------[大齋第一主日 早課 365]---------------------

主宰の伏拜せらるる像は描かれて、熱信に尊まれ、敎會は復勇敢を得て、敬虔に救世主を讃榮す。

ハリストスの敎會は憂愁と諸異端の暗昧とを脱して、樂の衣を衣、神聖にして輝ける恩寵にて覆はる。

女王フェオドラ及び其子敬虔なる獨權者ミハイルの指麾に由りて、正敎者の會は古の光照の榮を得たり。

生神女讃詞、童貞女よ、昔證詞の幕を造ることを命ぜし獨至りて讃榮せらるる主は爾靈智なる幕の内に居りて、奇跡を以て爾の殿を榮し賜ふ。

共頌、憐に由りて爾の脅より流れし血にて惡魔の祭の血より浄められし敎會は爾に呼ぶ、主よ、讃揚の聲を以て爾を祭らん。

 

   小讃詞、第二調。自調。

生神女よ、限られぬ父の言は爾より身を取りて己を限り、汚されたる像を神聖なる美麗に合せて、古のに復し給へり。我等は救を承け認めて、行と言とを以て之を顯す。

   同讃詞

古神に感ぜられたる諸預言者は神の定制の奥義を、自ら之に輝かされて、我等

---------------------[大齋第一主日 早課 366]---------------------

世の末に至りし者の爲に預言せり。故に我等は之より神聖なる智識を取りて、惟一の神、三位に於て伏拜せらるる主を知り、獨彼に奉事し、一の信一の洗を有ちて、ハリストスを衣たり。我等は救を承け認めて、行と言とを以て之を顯す。

 

   第七歌頌

イルモス、「アウラアムの少者はペルシヤの爐に」。

天使の軍は神聖なる愛を以て歡べる敎會と偕に祝ひて歌頌すべし、主よ、爾が光榮の殿に於て爾は崇め讃めらる。

慶賀する家子の敎會は今敬虔の民が一意に、主よ、爾が光榮の殿に於て爾は崇め讃めらると歌頌するを見て喜ぶ。

我等は讃めらるべき女王フェオドラの命に因りて先の昧き異端より救はれて歌頌す、主よ、爾が光榮の殿に於て爾は崇め讃めらる。

生神女讃詞、純潔なる者よ、爾は獨造成主の母と爲りて、天上の品位より上に擧げられたり。故に我等喜びて呼ぶ、至りて無なる女宰よ、爾は女の中に、祝福せられたり。

 

共頌、アウラアムの少者はペルシヤの爐に在りて、よりも強く敬虔の愛に

---------------------[大齋第一主日 早課 367]---------------------

れて呼べり、主よ爾が光榮の殿に於て爾は崇め讃めらる。

 

   第八歌頌

イルモス、「ダニイルは獅子穴に在りて」。

我等は先祖より受けたる敎會の法を守りて、ハリストス及び其諸聖人の像を描き、口と心と望とを以て之に接吻して呼ぶ、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

我等は神の言を宣べたる諸神父の敎に遵ひて、尊敬と伏拜とを明に原像に歸して、聖像を尊み、信を以てハリストスに呼ぶ、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

尊き女王は聖神の光照を以て知識を照して、神智の結果を得、ハリストスの敎會の装飾と華麗とを愛して、信者と偕にイイスス神人を崇め讃めたり。』

生神女讃詞、童貞女よ、無形の光の光線にて照さるる爾の神聖なる家は今衆信者を屬神の雲にて覆ひ、之を照して、同心に歌はしむ、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

 

共頌、ダニイルは獅子穴に在りて手を伸ベて、獅子の口を閉し、敬虔の篤き少者は徳を帯び、火の力を滅して呼べり、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

---------------------[大齋第一主日 早課 368]---------------------

 

   第九歌頌

イルモス、「童貞女よ、手にて斫られざる」。

我等皆尊き敎會の復聖にせられし肖像にて飾られたるを見て、敬みて趨り附きて神に呼ばん、三聖の主よ、我等爾を崇め讃む。

主宰よ、敎會は尊貴及び光榮として爾の十字架と尊き聖像及び諸聖人の肖像を獲て、喜び樂しみて爾を崇め讃む。

洪恩なる主宰よ、爾の神聖なる光榮を以て我が諸王を輝かし、天使の軍と全備の武具とを以て之を護りて、夷狄を之に服せしめ給へ。

生神女讃詞、生神女よ、原母エワの定罪は解かれたり、蓋爾潔き者は萬有の主宰を言ひ難く生み給へリ。我等今聖像に於て彼の姿容に接吻す。

 

共頌、童貞女よ、手にて斫られざる隅石ハリストスに爾斫られざる山より斫り分けられて、離れたる性を合せ給へり。故に我等樂しみて、爾生神女を崇め歌ふ。

 

   差遣詞は早課の復活の、一次。

   又左の

手を拍ち、喜びて樂を以て歌ひて呼ベ、ハリストスよ、爾の行爲は何ぞ奇異に

---------------------[大齋第一主日 早課 369]---------------------

して驚くべき。救世主よ、誰か能く爾我等を同意同心に爲して、惟一の敎會に合せし主の異能を言ひ顯はさん。

生神女讃詞、今敵なる異端の武器悉く盡き、其記憶は此と偕に滅びたり。蓋純潔なる者よ、我等皆爾の殿の尊貴なる聖像にて最美しく装飾せられたるを見て、喜に満たさる。

「主よ爾にぶ」に復活の讚頌四、アナトリイの一、及び三歌經の三、第四調。

人を愛する主よ、敎會は爾、其新郎及び造成主、神に合ふ旨を以て之を偶像の迷より救ひ、尊き血を以て己に聘定せし主の爲に今悦びて、聖像の嚴に復興せらるるを得て、樂しく爾を歌ひて、熱信に崇め讃む。

句、「主よ、我心を蓋して爾を讃め揚げ」。

主よ、我等は爾の肉體の肖像を再興し、愛を以て接吻して、爾の定制の大なる奥義を明に悟る。蓋爾は、人を愛する主よ、神の敵たるマネントの諸子の言ふが如く想像を以てするにあらず、乃眞の人性の肉體を以て現れて、我等を爾を愛する愛及び恃頼に升せ給ふ。

句、「至上者よ、我爾の爲に慶び祝ひ」。

今日欣ばしくして樂に満ちたる日は現れたり、蓋至りて眞なる定理の光明は

---------------------[大齋第一主日 早課 370]---------------------

輝き、ハリストスの敎會は今再興せられたる聖像にて最麗しく装飾せられ、信者が神を尊む同一意は堅められたり。

 

次に句を誦す、第六調、主我が神よ、起きて爾の手を擧げよ、苦しめらる者を永く忘るる毋れ。

   本日の自調を歌ふ、第六調。

モイセイは節制の時に法を受けて、民を神に就かしめ、イリヤは齋して天を閉ぢ、アウラアムの三人の少者は齋を以て不法なる暴虐者に勝てり。救世主よ、我等にも齋に因りて復活に至るを得しめ給へ、蓋我等斯く呼ぶ、聖なる神、聖なる勇毅、聖なる常生の者よ、我等を憐み給へ。

光榮、同上。今も、「生神童貞女よ、爾は至りて讃美たる者なり」。大詠頌。發放詞。

   光榮、今も、福音の讃頌、及び第一時課。

          ~~~~~~

 

聖體禮儀に、眞福詞は本調の六句に、又本日の規程の第六歌頌四句に。提綱、第四調、諸祖の歌、主我が先祖の神よ、爾は讃揚せられ、爾の名は世世に讃美讃榮せらる。句、蓋爾は凡そ我等に行ひし事に於て義なり。使徒はエウレイ書三百二十九端の半より「アリルイヤ」、弟八調、司祭の中にモイセイ及びアアロンあり、彼の名

---------------------[大齋第一主日 聖體禮儀 371]---------------------

を呼ぶ者の中にサムイルあり。句、彼等主に呼びしに、主之に聽けり。

福音經はイオアン五端。領聖詞は「天より主を讃め揚げよ」。又、「義人よ、主の爲に喜べ」。

          ~~~~~~

 

 第一主日の晩課

 

「主よ、爾にぶ」に十句を立てて讃頌を歌ふ、八調經の傷感の痛悔の四、及び三歌經の左のイオシフ師の作。第四調。

神萬有の王よ、我今肉慾に耽り、爾より遠ざかり、何れにも恃頼を有たざる者に傷感と諸惡に離るることと、全き更新とを與へ給へ。全能なるイイスス、我が靈の救主よ、多くの仁慈に因りて我放蕩の者を救ひ給へ。

奇異なるモイセイは齋に潔められて、慕ふ所の者を見たり。我が卑微なる靈よ、彼に效ひて、務めて節制の日に於て己を惡より潔めよ、爾に赦免と、潔浄と、拯救とを賜ふ主、仁慈にして人を愛する者を見ん爲なり。

---------------------[大齋第一主日 晩課 372]---------------------

   又、フェオドル師の作。第六調。

兄弟よ、我等今欣ばしく齋の第二の週間を始め、日より日に四の大なる徳を行ひて、フェスワのイリヤの如く、己の爲に火の車を備へ、無慾を以て智慧を高くし、潔浄を以て肉體を竪めて、進みて敵に勝たん。

   又、月課經の三章。光榮、今も、生神女讃詞。聖入「穏なる光」。提綱、第八調、神よ爾は我に爾の名を懼るる者の嗣業を賜へり。第一句、我地の極より爾に呼ぶ。

第二句、我爾が翼の蔭に安ぜん。第三句、是を以て我世世爾の名に歌はん。「神よ、爾は我に爾の名を」。

 

知るべし、此の二の大提綱、「爾の顔を爾の僕に匿す毋れ」、及び「神よ、爾は我に爾の名を懼るる」は其句と共に更乾酪の主日より聖齋の第五週闘の主日までに歌はる。

「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」より拜を始む。

 

  挿句に本日の自調、二次。第八調。

來りて、貧者に於ける惠與と矜恤とを以て己を潔めて、箛を吹かず、我等の慈惠を顯さざらん、左の手が右の手の爲す所を知らざらん爲、虚榮が施惠の果を費さざらん爲なり、乃隠なるを鑒みる者に隠に呼ばん、父よ、我等の諸罪を

---------------------[大齋第一主日 晩課 373]---------------------

赦し給へ、爾は人を愛する主なればなり、

致命者讃詞、主の致命者よ、爾等は凡の處を聖にし、凡の病を癒す。爾等に求む、今も我等の靈を敵の網より脱れしめんことを祈り給へ。

光榮、今も、生神女讃詞、恩寵を蒙れる者、聘女ならぬ母よ、天の者は爾を歌ひ、我等も爾の究め難き産を崇め讃む。生神女よ、我等の靈の救はれんことを祈り給へ。

 

   其他の式は常例の如し。

          ~~~~~~

 

 

 第一主日の晩堂課

 

聖なる諸預言者の規程を歌ふ。其冠詞は、詠隊は敬虔に諸預言者を讃むべし。

フェオファンの作。第五調。

 

   第一歌頌

イルモス、「強き手にて戰を滅すハリストスは」。

---------------------[大齋第一主日 晩堂課 374]---------------------

神の恩寵の諸預言者よ、萬善の原因たるハリストスに祈りて、我爾等の尊き記憶を歌ふ者に聖神の恩寵と諸罪の赦とを賜はんことを求め給へ。

我等は神に感ぜらるる言の同一の器、神聖なる輝煌の鏡、神の顯現を承くる者たる神智なる諸預言者を歌はん。

奇異なる見神者モイセイはシナイ山に於て神より律法の言を受けて、其面輝きて、神を見る恩寵を徴せり。

光榮、諸預言者は神の恩寵の雲として、神智の雨を以て異邦民の多神の海を涸らして、一元の能力を明に傳へたり。

生神女讃詞、至浄なる生神女よ、神の聲の角たる諸預言者は上より爾の秘密を學びて、爾末の世に於て生み給ひし神の母を傳ふ。

 

   第三歌頌

イルモス、「己の命にて虚しき處に地を固め」。

ハリストスよ、屬神の簫たる諸預言者は爾を知る知識の同一の聲を衆に吹きて、敬虔の者をして爾を歌頌せしむ。

ハリストスよ、爾の命に因りて起る所の武器たる諸預言者は、敬虔に爾の神聖なる力と爾の悟り難き權とを鎧ひて、多くの亂を爲す惑を斷つ。

---------------------[大齋第一主日 晩堂課 375]---------------------

 

光榮、神聖なる智識の無形の爵たる諸預言者は全地に飲ませ、明に爾の定制の奥義を預象して、各人各別に爾を傳ふ。

生神女讃詞、至りて無なる童貞女よ、昔定められたる秘密、知らざる所なき神が世の無き先より預知せし者は、末の時に於て爾の胎内に終を成して現れたり。

 

   第四歌頌

イルモス、「ハリストスよ、アウワクムは先知の目にて」。

睿智なる諸預言者は聖神に由りて言を宣ベて、眞實の誠の燈と現れ、生命の光にて萬民を照せり。

神聖なる諸預言者よ、視よ、我等今爾等が言ひし事の成りしを見て、爾等に傳へられて、實行を以て預言を應へし主を讃榮す。

光榮、神聖なる諸預言者は神の睿智に照されて、異邦民の神の恩寵に由りて反正し、イズライリ民の堕落して萬福を失ふを預知せり。

生神女讃詞、至福なる諸預言者は肉體を取る神を見ん爲に、神聖なる守望に立ちて、彼が山たる童貞女より來り給ふを見るを得たり。

 

   第五歌頌

---------------------[大齋第一主日 晩堂課 376]---------------------

イルモス、「光を衣の如く衣る者よ」

睿智なるイサイヤよ、爾の神は最高き寶座に坐する主に朝の祈を奉りて、爾は上の品位と偕に歌頌せり。

聖なる預言者よ、爾等は聖神に由りて舌を揺かして、彼の言を全地に傳へ、神を識る智識の光を以て之を照せり。

光榮、聖なる預言者よ、爾等は神の居處と爲りし者として、天性に超ゆる事を言ひ且行へり、己の中に神を有てばなり。今彼の前に立ちて、我等の爲に祈り給へ。

生神女讃詞、眞實の預言者よ、童貞女より生れし神は獨慈憐なる主として、己の睿智を以て爾等を照し、古の議定を爾等に告げ給へり。

 

   第六歌頌

イルモス、「主宰ハリストスよ、靈を壞る颶風に」。

聖なる預言者よ、爾等は敬虔なる度生と眞實の言とを得て、神が人體を取る秘密の至りて誠なる傳道者と爲り給へり。

爾等は神聖なる力を有ちて、諸王の止め難き怒を止め、猛獸の口を塞ぎ、鯨の腹より身を全くして救はれたり。

---------------------[大齋第一主日 晩堂課 377]---------------------

光榮、至福なる諸預言者よ、爾等は幼き時より聖なる度生を以て輝きて、世界の爲に諸徳の敎導師及び培養者と爲り給へり。

生神女讃詞、潔き女宰よ、諸預言者は神を愛する思念を抱きて、爾の産を種種の形像と例とを以て預象せり。

   坐誦讃詞、第二調、自調。

預言者の會はモイセイ及びアアロンと偕に今日喜びて樂しむ、蓋預言の終なる十字架、爾が此を以て我等を救ひし者は輝く。ハリストス神よ、彼等の祈に因りて我等を憐み給へ。

 

   第七歌頌

イルモス、「尊まるる先祖の主はを滅し」。

主の命の無量の力は洞穴に於て獅子を制したり、蓋預言者は呼べり、神よ、爾は崇め讃めらる。

尊き三位と同數なる爾の睿智なる少者はを滅したり、蓋同一に歌へり、神よ、爾は崇め讃めらる。

光榮、アウラアムの枝たる諸預言者は燈の如く輝きて、諸徳の花を以て地を装飾して歌へり、神よ、爾は崇め讃めらる。

---------------------[大齋第一主日 晩堂課 378]---------------------

生神女讃詞、女宰よ、爾は天性の法に超えたり、法の宰たる主を生みたればなり。我等皆彼に歌ふ、神よ、爾は崇め讃めらる。

 

   第八歌頌

イルモス、「少者は爐に在りて」。

樂園の中に在す諸預言者、神に愛せらるる者よ、ハリストスに歌を奉りて、凡そ信を以て爾等を讃め揚ぐる者が諸難より救はれんことを祈り給へ。

我等衆信者は神の聲たる諸預言者の言に堅められて、會を成して歌を彼等に捧げん、彼等の祈に由りて義とせられん爲なり。

光榮、諸預言者よ、爾等は屬神の香氣の無形の器と爲りて、聖神の恩寵の香を以て諸民を薫らせて、ハリストスを世世に讃め歌はしむ。

生神女讃詞、潔き童貞女よ、爾は父より輝く無原なる光を人體に於て生み給へり、故に我等絶えず爾に慶べよと呼びて、世世に崇め讃む。

   第九歌頌

イルモス、「イサイヤ祝へよ、童貞女は孕みて」。

來りて、今一意に神の至尊なる諸預言者、性に超ゆる奇跡を行ひし者、イアコフの族の尊くして選ばれたる枝を、ハリストスを傳へし者として崇め讃めん。---------------------[大齋第一主日 晩堂課 379]---------------------

爾等は全世界の歡喜を預言せし傳道師、智識の寶蔵、神の睿智の潔き口、聖神の最尊き舌と爲り給へり。

光榮、神に愛せらるる者として、萬有の造成主全能の神を常に仰ぎ、彼より光に照さるる睿智なる諸預言者よ、信を以て敬虔に爾等の記憶を尊む者を諸難より救ひ給へ。

生神女讃詞、潔き童貞女よ、爾人人の救の中保者と爲れり、造成者及び主を身を取りし者として生み給ひしに因る。彼は凡そ爾を崇め讃むる者に爾に由りて潔浄を與へ給ふ。

 

   次に預言者の讃頌、第一調。

至榮なる預言者よ、爾等は王を責め、強暴なる人人に敵し、三位一體の神を傳へて、熱切に地より多神の迷を逐ひ給へり。今は我等の靈に平安と大なる憐とを賜はんことを祈り給へ。

至榮なる預言者よ、爾等は敬虔を抱きて曠野山嶺に徨ひ、飢え、渇き、辛苦を忍びしに因りて、神の悦を得たる者として、ハリストスと共に天に居り給ふ。今は我等の靈に平安と大なる憐とを賜はんことを祈り給へ。

---------------------[大齋第一主日 晩堂課 380]---------------------

讃美たる預言者よ、爾等は忍びて鋸にて解かれ、石にて撃たれ、刃にて殺され、敬虔の爲に苦を以て光明なる者と爲り給へり。今は我等の靈に、平安と大なる憐とを賜はんことを祈り給へ。

光榮、今も、生神女讃詞、神の聘女よ、諸預言者が傳へし爾の産の大事は實に智慧に超えて神妙なり。讃美たる者よ、爾の受孕と産とは皆至榮にして暁り難く言ひ難し、世界は此に由りて救を得たり。

 

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