なごや「聖歌」だより 11  2003年2月号


目で見る聖歌 

迎接祭のトロパリ 

恩寵を満ち被る生神童貞女よ、慶べ、
爾より義の日ハリストス我等の神、
?くらやみ?幽闇?に在る者を照す主は輝き出でたればなり。
義なる翁よ、爾も楽しめ、
爾 我が霊の救主、我等に復活を賜ふ者を抱きたればなり。
(ルカ2章22-39)


口語訳
恩寵に満たされた生神女、童貞女よ、お慶びなさい。
あなたから、正しい太陽である方、救世主であって、私たちの神であるお方、くらやみにいる者たちをその光で照らされる主は、輝き出られました。
心の正しいおじいさん、あなたもお慶びなさい。あなたは私たちのたましいの救い主、私たちに復活をくださるお方を、その手に抱かれたのですから。

降誕祭後40日目に、イイススのお宮参りが祝われます。シメオンというおじいさんは救世主をその目で見るまで死なないと言われていました。マリアに抱かれたイイススが神殿にやってきました。イイススを抱いた老シメオンは、「神よ、今あなたの救いを見ました。おことばどおり平安に去らせてください」(シメオンの祝文)と神をたたえて歌いました。



アンティフォン 

アンティフォンは、聖歌が二つの隊に分かれて歌う隊形による名称です。祈祷書には右列とか左列とか書かれていますが、イコノスタスに向かって右が右列です。日本でも明治時代にはニコライ堂でチハイ師が右列、リウォフスキー師が左列詠隊を指揮して歌ったという記録があります。


聖体礼儀の始まりに三つのアンティフォンが歌われます。日曜日には、第1アンティフォンは旧約聖書の聖詠(詩篇)102番、第2アンティフォンには145番と「神の独生の子」、第3アンティフォンには新約聖書からルカ伝の真福九端が歌われ、主の祭日には、第1、第2のアンティフォンは、選ばれた聖詠と「生神女の祈祷に依って我等を憐れみ給へ」などのくりかえし、第3アンティフォンにはその日のトロパリが歌われます。

かつて、ビザンティン帝国のコンスタンティノープルの街で、教会の聖体礼儀に向かう行列が、途中の広場などで、そこにいた人々も「繰り返し」の部分を一緒に歌い、彼等をまきこみながら目的地に向かいました。
日曜日のアンティフォンでは「我がたましいよ、主を讃め揚げよ」と歌われます。かつて広場にたむろす人々を教会に誘ったように、私たち自身の心に呼びかけます。「心の底から、たましいから、主を讃える歌を一緒に歌おう!」「主に出会い、主のことばを聞き、主の宴会の席に着き、主のご聖体を頂こうよ。」