正教会祈祷・聖歌の 用 語 集  アイウエオ順


アポスティカ 挿句のスティヒラ
aposticha / aposticha /ctichirui na stichovnie
聖詠の句を伴うスティヒラ。
1.祭日平日ともに晩課の終わりに読まれる。
2.平日早課(大頌詠なし)の早課の終わり。

アンティフォン
Antiphon / antiophonon / antifon
左右の詠隊が交互に掛け合いで歌う歌い方の形式。特にアンティフォンと呼ばれるのは以下の通り。

1.聖体礼儀の始まりに大連祷の後歌われる聖詠
2.主日前晩の晩課の第1カフィズマの最初の3つの「光栄は」
3.早課のステペンナ
4.聖大金曜日早課、第5福音までに読まれる15のアンティフォ

アポリティキオン 発放讃詞
apolitikion / apolytikion / otpustitelien

晩課の最後に行われるトロパリで、その日の主要なトロパリ。晩課の終わりに歌われることによってこの名前がついた。その日の祭や記憶される聖人についての内容を持つトロパリ。祭日トロパリ、その日のトロパリとも呼ばれる。

大祭日には以下のようにアポリティキオンが入る。

1.晩課の終わり。五餅(パン)の祝福の直前に3回歌う。この時司祭は餅のあるテーブルを炉儀する。
2.早課の始まり。「主は神なり」に続いて3回。
3.早課の終わり頃、大頌詠のあと1回。
4.聖体礼儀の小聖入と「来たれ」のあと。
5.晩堂大課、時課でも行われる。

イコス 同讃詞
Ikos / oikos / ikos

早課のカノン第6歌頌と第7歌頌の間に、コンダクに引き続いて行われるスタンツァ、節。

イルモス 連接歌
Heirmos / eirmos / irmos, sviaska

カノンの各歌頌の最初のスタンツァ(トロパリ、節)につけられた名称。ギリシアではイルモスに続く残りのトロパリすべてが同じリズムを持っている。内容的には「つなぎの句」、次の二つを結び付ける働きをし、イルモス(鎖)の語源もそこにある。

1.旧約歌頌のテーマ(もともとはカノンの歌頌とともに歌うように作られていた)
2.その日記憶する祭のテーマ(続くトロパリで展開する)

イパコイ 応答歌
Ypakoe < 聞くの意 / ipakoi

大祭主日の早課で歌われるトロパリ。
1.大祭ではカノンの第3歌頌のあと。(しばしば、ここで読まれるトロパリはセダレンと称されている。)
2.主日では聖詠誦読の後。(復活のエフロジタリア「主や爾は崇め讚めらるの」のあと)
3.主日のイパコイは、主日夜半課で聖三のカノンの後にも読まれる。

エクサポスティラリー 差遣詞 光耀歌

Exapostilarion< 退出するの意,eksapostilarii
fotagogikon / cvetilen

早課のカノンの結びに行われるトロパリ。ハリストスは世の光というテーマを発展させたものが多い。「エクサポスティラリ」とは、「カノンの終わり」にここで退出を命じることに由来した名前。フォタゴギコン(光耀歌)とも言われる。
主日のエクサポスティラリーは、その前に読まれる復活の11福音と常に結びついている。たいていの場合エクサポスティラリーは読まれるが、歌われることもある。(例:8/28)

エピクレシス
Epiclesis /

正教会の聖体礼儀において、司祭が神に、このパンとぶどう酒に聖神を降し、それがハリストスの体と血になるように祈る。ローマ教会では「制定の言葉」(これ我が体....」)を成聖の瞬間と考えるが、正教会では聖体機密の祈りの絶頂がエピクレシスであるとする。

エフロジタリア ネポロチニ 「主や爾は崇め讚めらる」
Eflogitaria < 祝福されたの意 / neporochinii

早課の聖詠誦読(カフィズマ)のあと歌われるトロパリで、「主や爾は崇め讚めらる、爾の誡を我に悟らせ給え」という附唱を伴う。
2つの形がある。
1.復活のエフロジタリア
 主日早課、118聖詠(詩編119)またはポリエレイのあとに歌われる。
2.埋葬のエフロジタリア
 死者の早課、118聖詠のあとに歌われる。

歌 頌
canticle, ode /piecn'

1.聖書(聖詠以外)を起源とする祝文、詩。
2.カノンの9区分(元来は旧約の歌頌を伴って歌うように作られていた。)
 早課で用いる9つの歌頌。

1.モイセイ (モーゼ)の歌      (出エジプト記15:1〜9)
2.モイセイ(モーゼ)の歌       (申命記32:1〜43)
3.ハンナの祈り            (列王記[サミュエルI]2:1〜10)
4・アワクム(ハバクク)の祈り    (ハバクク書3:1〜19)
5.イサイヤ(イザヤ)の祈り     (イザヤ書26:9〜20)
6.イオナ(ヨナ)の祈り        (ヨナ2:3〜10)
7.3人の少者(若者)の祈り     (外典・ダニエル3:36〜56)
8.3人の少者の祈り          (外典・ダニエル3:57〜88)benedicite
9.生神女の歌             (ルカ1:46〜55)magnificat
 ザカリアの祈り           (ルカ1:68〜79)benedictus
 
カタワシャ 共頌歌

Katavasia katabasia<katabaino降りてくるの意 / katavasia

カノンの歌頌の結びの節。イルモスをカタワシャとして繰り返すこともある。複数のカノンを行う場合には最後のカノンのイルモスを用いる。主日やある祭日においては各歌頌のカタワシャは、教会の暦に従って選ばれる。主日、祭日には各歌頌の終わりごとにカタワシャを歌うが、普通の平日には、第3第6第8第9歌頌の終わりにのみ歌う。

カタワシャの名称は、もともとこれを歌うときに聖歌隊のメンバーが左右の聖歌隊席から降りて教会中央に集まって歌ったことに由来する。

カノン 規程

canon / kanon / kanon

8つの連続した歌頌。各歌頌は複数のトロパリを含む。早課の聖詠誦読と50聖詠の読みの後に行われる。祭日、主日では「主や爾の民を救い」の連祷の後。
もともと早課のこの箇所では、9つの旧約の歌、「旧約歌頌、オード」が歌われ、その句の間に短いリフレインが挿入されていた。クリトの聖アンドレイ(660−740頃)がこの短いリフレインをトロパリに発展させ特定のテーマを表す方式を編みだした。たとえばアンドレイの大カノンの場合は悔い改めである。そのほか聖人や祭、救主、生神女、死者などのテーマを表す。

時代がくだると、旧約聖書の歌頌を歌う習慣はほとんどなくなってしまったが、大斎期間には修道院などで守られている。また、アトス山、パトモス等では年間通して旧約聖書の歌頌を歌う。

現在ではカノンのトロパリをそのまま誦し、「我等の神や光栄は爾に帰す、光栄は爾に帰す」「至聖なる生神女や我等を救い給え」などの短い附唱をつける。しかし、唯一、生神女の歌(マニフィカト)では歌頌全体が歌われ、大祭日以外は必ず歌われる。

現在では、第2歌頌は大斎期の特定の日にしか行われないので、理論的にはカノンには9歌頌あるが、実際には8つの歌頌が行われる。大斎の平日のカノン(三歌経のカノン)は、歌頌を2つ、3つ、4つしか含まない。

カノンの各歌頌には様々な数のトロパリが含まれる。通常早課のカノンでは、一つ以上のカノンを行うように指示されている。日曜日には4つ、平日には3つ、大祭には2つまたは1つのカノンを行う。複数のカノンを組み合わせる場合には、第1のカノンの第1歌頌を行い、続いて第2のカノンの第1歌頌、第3のカノンの第1歌頌、次に第1のカノンの第3歌頌、第2のカノンの第3歌頌という順で行う。カノンでは各歌頌に組み合わせたトロパリの数は常に14個にする。指示されたカノンのトロパリの総計が多すぎる場合には、どれか2つをまとめて一つに読むか、どれかを省略する。足りない場合には2ー3回繰り返して読む。トロパリの数をあてはめるとき、各歌頌の最初の節(スタンツァ)つまりイルモスは数にいれてよいが最後のカタワシャは含めない。

カノンは早課のみでなく、晩堂課、主日夜半課でも行われ、聖傅機密、領聖予備規程にも含まれる。

カフィズマ  坐誦経

Kathisma / <kathesthai /kafisma すわっているの意 /
1.正教会では聖詠経150篇を20区分しているがその各区分のこと。

2.早課で聖詠誦読の時、各カフィズマの終わりに歌う(または読む)短いトロパリ。

スラブ教会では2.はセダレンsedaren (坐誦讃詞:cf.ラテン語のsedereは座る)と呼ばれる。

カフィズマには上記1、2の二つの用法があるが、現在では混同を避けるために、1をカフィズマと呼び、2はsessional hymnと呼ぶ。

※注:日本の祈祷書には2.はセダレンまたは、セダリナ、坐誦讃詞と書かれており、カフィズマは1.を指す。ティーホン修道院のAbridged Typiconでは、1をカフィズマ、2をカフィスマタと呼んでいる。

※注:誦読の時はこのカフィズマをさらに3区分して光栄讃詞が挿入される。この3区分のひとつが、段あるいはスタチア(スタチイ)と呼ばれる。

「来たれ」
Introit / eisodos /vhodnoe

聖体礼儀における小聖入。司祭と輔祭が至聖所に入るとき歌われる。通常の「来たれ」は「来たれハリストスの前に伏し拝まん」で始まる。大祭日には特別の歌が歌われる。

キノニク 領聖詞
Communion Hymn / koinonikon /kinonik

聖書からとった句。聖体礼儀中、司祭の「聖なる者は聖なる人に」答え「聖なるは唯一人」を歌ったあとに歌う。

※注:現在では、神品(聖職者)の領聖を待つ間に、イルモスや合唱コンツエルトが歌われたりするが、本来は「領聖詞」を歌うべき所。主日の領聖詞は第148聖詠「天より主を讃め揚げよ。至と高きに彼を讃め揚げよ。」

挿句のスティヒラ → アポスティカ

光栄讃詞 ドクサスティコン
Doxastikon

「光栄は」の句のあとに挿入されるトロパリまたはスティヒラ。光栄讃詞がなくて、「光栄は」に続いて「今も」がある場合もしばしばある。

光耀歌 → エクサポスティラリー

コンダク 小讃詞
Kontakio <kontos 柱、軸の意。棒に巻いた羊皮紙)/ kondak

コンダクはもともと、教会で歌うための長編の詩であった。短い導入的なスタンツァ(節)に、18から24節(ストロフ)が続く。各ストロフはイコス(オイコス同讃詞)と呼ばれた。最初のスタンツァと続くストロフは同じ附唱で終わる。時代を経るにつれ、コンダクはカノンにとって代わられた。今日の祈祷書には、始めの短い導入スタンツァだけが残り、これをコンダクと呼び、第1イコスが続く。コンダクはイコスなしで、聖体礼儀の聖入のあとや時課の時に読まれる(歌われる)。コンダクの作者として最も有名なのが、聖歌者聖ロマン(〜556)である。

祭日前期
prefeast

祭日に先立つ1日かそれ以上の準備期間。降誕祭は5日間、神現祭には4日間の祭日前期がある。他の大祭は1日のみ。

差遣詞 → エクサポスティラリー

讃 歌
Megalynarion / velichanie

通常「讚め揚ぐる」megalynonで始まる短い句。早課で歌われる。

1.大祭、ある聖人の日にポリエレイの後で歌う。スラブ系教会のみ。

2.大祭の日に「生神女の歌」(magnificat「我が心は主を崇め」)の代わりに歌う附唱。

※注:日本では1.を讃歌と呼ぶ。「生命を賜う・・・・讚め揚ぐる。」で文末にくる。
2.は「我が霊や・・・・讚め揚ぐる」で、第9イルモス附唱、あるいは「常に福の代わりに」の附唱として扱われる。

讃 詞 → トロパリ

讚 揚 歌 「凡そ呼吸ある者」
Lauds / ainoi / chvalite

年間通して早課の終わりには毎日朝の聖詠(148、149、150聖詠)を用いる。148聖詠の冒頭の「讚め揚げよ」( )による名称。この言葉は聖詠の中で何度も繰り返される。大祭、主日などには讚揚歌の終わりの句の間にスティヒラを挿入する。10スティヒラ、8スティヒラ、6スティヒラ、4スティヒラがあるがその日の指示に従う。讚揚歌は晩課の「主や爾に呼ぶ」と対をなしている。この朝と晩のふたつの聖詠の歌い方は最も古い形で、ユダヤのシナゴーグでの礼拝に起源がある。

※注:平日早課では「天より主を讚め揚げよ」から始める。

坐誦経 → カフィズマ

坐誦讃詞 → セダレン、カフィズマ

シナクサリオン
Synaxarion, Menologion

その日の聖人の生涯を短くまとめたもの、または行われている機密の意味を説明したもの。ギリシア教会では、カノンの第6歌頌と第7歌頌の間、コンダクとイコスの後シナクサリオンが読まれる。シナクサリオンは「シナクサリオン」という本に納められており、ローマ教会の殉教伝にあたる。シナクサリオンはギリシアのミネヤ(月課経)において適切な箇所で読まれる。

シナクシス
Synaxis 集まりの意

大祭の直後の日、または祭のテーマに深くかかわる人物を記念して行うとくべつの記憶。(たとえば、12月26日に生神女を、1月20日に授洗イオアンを、4月8日に天使首ガウリイル)すべての大祭のあとにシナクシスがあるわけでない。

一般的にはシナクシスは祈りのための集まりを表す。

「主や爾によぶ」のスティヒラ
Lord, I have cried / Gospodi Vosbah

140聖詠の最初の言葉がこの晩の聖詠(140、141、129、116聖詠)の総称になっている。一年中毎日晩課で歌われ、早課の讚揚歌の3つの聖詠と対をなしている。その日の指示に従って「主や爾によぶ」の終わりの句から、10、または8、6、4スティヒラが挿入される。

※注:主日は10スティヒラなので「我が霊を獄をより引き出して」のあとから

頌 詠 ドクソロジー
Doxology / slavoslovie

早課の終わり頃に歌われる非常に古い歌。「至高きに光栄神に帰し、地には平安降り、人に恵みは臨めり」という天使の歌(ルカ2:14)で始まる。2つの形がある。

1.大頌詠:大祭日、主日、特定の聖人の記憶日に歌われる。

2.小頌詠:平日に読まれる。歌わない。

生神女讃詞
Theotokion/ Bogorodichen

生神女を記念するトロパリ、スティヒラ。トロパリやスティヒラが続くとき、通常最後の節は生神女讃詞の形をとる。水曜日と金曜日は主の受難を記憶する日なので、生神女讃詞の代わりに、十字架生神女讃詞(stavrotheotokion)になる。これは十字架と生神女の両方を記念するトロパリ。

スティヒラ
Stichira / stichiros / stichira

トロパリと同様にその日のテーマを表す韻文。一節のものをトロパリ、連節のものをスティヒラとおおまかに分類できるが、その区別はあいまいである。晩課の「主や爾にぶ」のスティヒラ、早課の「凡そ呼吸ある者」のスティヒラ、挿句のスティヒラなどがある。

※注:リティヤのスティヒラ、50聖詠後のスティヒラなどは祈祷書によってはトロパリと書かれている場合もある。また主日聖体礼儀の真福詞も元来はスティヒラを挿入して行う。

ステペンナ 登上の歌
Hymns of Degree / gradual psalm / anabathimoi<bathmos 段、登りの意/ steppenna

登上の歌(第119から133聖詠)に基づいて作られた詩。主日祭日の早課にプロキメンと福音の読みの前に行われる。8つの調のそれぞれに異なる登上の歌がある。それぞれが3段のアンティフォン(8調は4つ)に分けられている。大祭日には4調の登上の歌第1アンティフォンを歌う。(第128聖詠から)

聖三讃詞
Trisagion

至聖三者を記念するスタンツァ。一連のトロパリのなかで最後から2番目のトロパリになる。通常最後は生神女讃詞。

主日夜半課では特別の「至聖三者のためのカノン」が行われる。このカノンは各調ごとに八調経に納められている。

聖三祝文
Trisagion /trisviyatoe

「聖なる神、聖なる、聖なる常生なるものよ、我等を憐めよ」通常3回またはそれ以上繰り返される。

1.聖体礼儀、小聖入の後、プロキメンの前
2.早課、大頌詠の終わり
3.ほとんどすべての祈祷において、天主経に先立つ短い祈りの一部として

※注:ローマ・カトリックでは聖大金曜日のみに行う。

セダレン → カフィズマ

先備聖体礼儀
Presanctified, Liturgy of the / leitourgia ton proigiasmenon
liturgia prejde o svyashenuih darov

大斎中の土曜日日曜日以外(基本的には水、金)に行われる聖体礼儀の形。晩課に引き続いて行われ、聖変化はない。ご聖体はその前の日曜日の聖体機密で用意する。

大頌詠 → 頌詠

調 エコス
Tones, mode/echoi / glas

正教会の教会音楽は8個の調に基づいているが、これを4つづ2つのグループに分類する。

1 と 5(1のプラガル)
2 と 6(2のプラガル)
3 と 7(墓の調)
4 と 8(4のプラガル)

各週に調が指定される。光明週間の土曜日(フォマの主日の前日)に1調から周期が始まり、週ごとに1調から8調まで変わり、土曜日の晩から新しい調が始まる。週ごとに変わる調の祈祷文は「八調経」に納められている。

固定祭日のための特別の祈祷文(月課経)、大斎期(三歌斎経)、復活祭期(五旬経)にも様々な調が定められており、これは週の調と一致しない。

正教会ではどの教会も同じ8調の区分を用いているがその歌い方は各教会ごとに大きく異なる。たとえばロシア教会ではギリシア教会とは異なる歌い方をしている。

ティピカ 聖体礼儀代式
Typika

西方教会ではこれに相当する祈祷はないが、ローマ教会のDry Mass(Missa sicca御言葉の祭儀)や聖公会のAnte-Communionに対比されることもあるが、この対比は不正確である。ティピカは聖体礼儀からとられた歌、祝文、読みで構成されており、聖体機密の行われない日において、原理的には聖体礼儀にあたる部分の代わりをなす。現代では、降誕祭神現祭の前日のように聖体礼儀のある日に行われることもある。先備聖体礼儀のある日には必ずティピカが読まれる。

※注:時課経の「聖体礼儀代式」がティピカのこと。大斎第1週奉事式略では9時課の終わりに付属している。

ティピカの聖詠
Typical Psalms

聖体礼儀の始めに歌われる第102、145聖詠。ティピカで歌われるためにそう呼ばれる。

トロパリ 讃詞
Troparion / tropar'

宗教的な韻文のスタンツァを示す一般的用語。特に次のような場合をトロパリと言う。
1.アポリティキオン(発放讃詞)祭のトロパリ、その日のトロパリとも言われる。
2.カノンのスタンツァ(讃詞)

ドグマティク
Dogmatikion/ dogmatik

ある種の生神女讃詞に用いることば。ドグマティクという名称は、これがハリストスの2つの性質というドグマ(教義)を述べていることによる。

ネポロチニ → エフロジタリア

八 調 → 調

発 放
Dismissal / apolysis / otpustitelen'

晩課、早課、聖体礼儀、その他の祈祷の終わりに司祭が行う祝福。
形が2つあり、長い方を大発放Great Dismissal、短い方を小発放Small Dismissalという。

※注:発放は「退出すること」を語源としている。各祈祷の終わりの祝福を示すが、徹夜祷などいくつかの祈祷が続く場合、ウエア主教の祭日経などでは最後の祈祷の祝福のみを発放としているが(徹夜祷ならば一時課)、ティーホンのAbridged Typiconでは各祈祷の最後の祝福に用いており英語の用語法が一致しない。

発放讃詞 → アポリティキオン

プロキメン 提綱
Prokeimenon / prokimen

発せられるもの、読むために選ばれたものの意
聖詠からとられた句で、聖書の読みの前に歌われる。プロキメンが行われるのは

1.晩課、「聖にして福たる」のあと
2.主日祭日早課、福音の読みの前、
3.聖体礼儀、書札の読みの前

ポリエレイ 多油祭

Polyelaios / polielei

もともとは第134聖詠及び135聖詠につけられた名称。このふたつの聖詠は大祭、ある主日(多くの地域では全主日)、ある聖人の日の早課で、3番目の聖詠の読みを構成しする。通常はこの二つの聖詠全体を歌わず、選ばれた句のあとにアリルイヤを1度またはそれ以上繰り返す。「ポリエレイ」の名称は「豊かな憐み」を意味し、135聖詠で何度も繰り返される「憐み」という言葉に由来する。
大斎前の3週間の主日には、上記の二つの聖詠に136聖詠がつけ加えられる。
ギリシア教会では生神女の祭には44聖詠をポリエレイに用いる。

リティヤ
Lity / lite 祈り懇願の意英語のLitanyの語源。/litya

大祭、およびその他の日の前晩の大晩課で行われる行進と厳粛にとりなしを祈る祈祷。
増連祷の後、指定されたトロパリを歌う間に神品は啓蒙所に進み、輔祭は全堂炉儀を行う。トロパリが終わると輔祭は長い連祷を唱え、すべてのキリスト教徒の願いを祈る。挿句のスティヒラを歌うとき神品は堂中央に進み、その日のトロパリの後、五餅の祝福を行う。

リティヤは聖体礼儀の終わり、発放の後によく歌われる死者のための短い祈祷にも用いられる。この死者のための祈祷は大斎の間土曜日日曜日以外の日の1時課の終わりにも行われている。

※注:日本の祈祷書ではリティヤのスティヒラと呼ばれる。

領聖詞 → キノニク

連 祷
Litany / ekteneia / ektenya

様々な内容を祈るとき、輔祭が信者に呼びかける祈りの形。各祈願に答えて詠隊は「主憐めよ」(キリエエレイソン)「主賜えよ」などと答える。この間司祭は祈祷書の祝文を黙誦し、終わりに「高声」(ekfonesis )を大きく唱え連祷を結ぶ。

連祷は晩課、早課、聖体礼儀、などにおいて応答的な形で頻繁に行われ、正教会祈祷の際だった特徴をなしている。

1.大連祷「我等安和にして主に祈らん」で始まる。晩課、早課、聖体礼儀の始まりの部分で行われる。

2.小連祷「我等又々安和にして主に祈らん」で始まる。


3. 重連祷.「我等皆霊を全うして曰わん、」(最初の2つの祈願が省かれることもある。その時は「神や爾の大いなる憐みに因りて」からはじまる。

4.増連祷 「我等主の前に吾が朝(晩)の祈りを増し加えん」

六段の聖詠
Hexarmos / exapsalmos / shestoplsalmie

早課の始まりに毎日読まれる聖詠。第3、37、62、87、102、142聖詠。これを読む間、何人も動かず、また音を立ててはならず、全員立って聴くように教えられる。

「注意」

用語集はカリストスウエア主教編纂のThe Festal Menaion(祭日経)のGlossaryの抄訳であるが、必要に応じて訳注※をつけ加えた。あわせてJ.S.GardnerのRussian Church Singing vol.1のTerminologyからも引用した。参考文献としては上記の2つの他にティーホン修道院発行のティピコン抄(Abridged Typicon)。

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