第七編

 
預言者一人の総奉事



 晩課

 「主よ爾に籲(よ)ぶ」に讃頌(スティヒラ)、第四調。

潔き智慧を以て神元(しんげん)の光照の煇煌(かがやき)を受けし至尊なる(某)よ、爾は神の言の宣伝者、預象者、及び神聖なる預言者と
為り、聖神゜に動かさるる口と現れて、彼より爾に示さるる事を宣べ、衆民に賜はる救とハリストスの国とを伝へたり、求む、我等の霊を照して救は
んことをハリストスに祷り給へ。

見神の恩寵と預言の恩賜とに輝き、神聖なる福楽を得たる神に感ぜられし(某)よ、爾は今至仁なる主の前に勇敢(いさみ)を得て、我等信を
以て爾を讃め揚げ、爾を神に愛せらるる預言者として尊む者の為に絶えず祈りて、我等を諸難より脱れしめて、吾が霊を救はんことを求め給へ。

不死なる神よ、爾は預言者(某)を実に生活の水を流す生ける雲と為し、彼を遣して、豊かに彼に爾全能者父及び爾より輝きし子と同一性な
る至聖神゜を賜へり、此に縁(よ)りて彼はハリストス吾が神の救ひを施す降臨を預言し、衆民に救贖を宣伝せり。

  光栄、今も、生神女讃詞。

我不当の者は我が怠惰(おこたり)と、煩悶(もだへ)と、無知とに由りて、多くの罪の深所(ふかみ)に陥りて、今失望に苦しめらる、至浄なる者よ
、我が為に扶助(たすけ)と潔浄(きよめ)、及び救ひと為りて、我を善に還らしむる慰めを我に与へ給へ。我爾に祈り、爾に求め、俯伏して信を
以て爾に呼ぶ、願はくは我終りに至るまで詭譎(きけつ)の者の喜びと為らざらん。

 十字架生神女讃詞

母よ、我爾の子及び神、地を寄する所なくして水の上に懸け、萬物を造りし者が木に懸れるを見て、泣く毋れ、蓋我起きて光栄を獲、異能を以
て地獄の国を破り、其力を滅ぼし、縛られし者を、慈憐なるに因りて、其暴虐より脱れしめ、仁愛なるに因りて、吾が父の前に携へん。

  もし之あらば、自調。光栄、第六調。

ハリストスの伝道師たる預言者よ、爾は常に威厳なる宝座を離れざれども、病者毎(ごと)に臨みて其祈りを聆(き)く、至(いと)高きに奉事すれ
ども、世界に福を降す。遍(あまね)く栄せらるる者よ、我が霊の為に潔浄(きよめ)を求め給へ。

  今も、生神女讃詞

我等信者は天使首の如く、天の宮及び実に封じたる門を歌はん、衆人の救世主ハリストス、生命を賜ふ主及び神が我等の為に現れし縁由(
ゆえん)の者よ、慶べ、至浄なる女宰、「ハリスティアニン」等の倚頼(たのみ)よ、爾の手を以て残虐者たる我が無神の諸敵を斃(たお)し給へ。

  十字架生神女讃詞

ハリストスよ、爾を生みし者は爾の釘せらるるを見て呼べり、吾が子よ、我が見る所の奥密は何ぞ驚くべき、生命を賜ふ主よ、如何(いかん)ぞ身
にて木に懸けられて死する。

  もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭を行はば、復活の生神女讃詞第六調を誦すべし。

至聖なる童貞女よ、誰か爾を讃美せざらん、誰か爾の至りて浄(きよ)き産を歌はざらん、世の無き先に父より光る獨生の子は爾浄き者より言ひ
難く身を取りて出で、本性の神は我等の為に本性の人と為れり、其位(くらい)一つにして相分れず、其性二つにして相失はず、浄くして至りて
福(さいはひ)なる者よ、我が霊の憐れみを蒙らんことを彼に祷り給へ。

  聖入。本日の提綱(ポロキメン)、及び喩言(パリミヤ)。巻末に載す。

  挿句(くづけ)に讃頌(スティヒラ)、第二調。

至りて奇異なる預言者(某)よ、聖神゜の光は鏡に於けるが如く、爾の潔浄なる智慧に輝きて、神を識る智識にて世界を照し、神聖なる奥密を
預象し、衆人に賜ふべき恩寵を徴(しる)せり。

句 爾メルヒセデクの班に循(したが)ひて司祭と為りて世世に迄(いた)らん。

福たる(某)よ、爾は神の口と為りて、不法を行ふ者を責め、厳しき裁判を以て之を定罪し、義なる教へを宣べ、神の定制を伝へたり、故に我等
爾の睿智なる言の成りたるを見て、宜しきに合(かな)ひて歌を以て爾を讃め揚ぐ。

句 司祭の中にモイセイ及びアアロンあり、彼の名を呼ぶ者の中にサムイルあり。

主宰の宝座の前に立ちて言ひ難き神の光栄を楽しみ、無形の世の華美を仰ぎて光に満てらるる預言者(某)、神の悦(よろこび)を獲たる者よ、
凡そ信を以て爾を尊む者を記念して、彼等の為に諸罪の赦しと霊の救ひとを求め給へ。

  光栄、第一調。

神の宝座を繞(めぐ)る天軍は首(しゅ)として神の言ひ難き光栄を楽しみ、尊貴なる預言者は次ぎて之に與(あづか)る恩寵を得たり、主が己の
光照を以て其役者(えきしゃ)を照し給へばなり。

  今も、復活の生神女讃詞。

視よ、イサイヤの預言應(かな)ひて、童貞女は子を生めり、生みし後も生む前の如く童貞女なり、生れし者は神なるに因る、故に天性は改め易
へられたり。嗚呼神の母よ、爾の諸僕が爾の堂に献ぐる祈祷を棄つる勿れ、恵み深き主を爾の手に抱きし者として爾の諸僕を憐みて、我等の霊
の救はれんことを祈り給へ。

  もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭らずば、左の生神女讃詞を誦せよ。

天上の品位の歓喜(よろこび)、地上の人人の堅固なる轉達、至りて潔き生神童貞女よ、爾に趨り附く我等を救ひ給へ、我等神に次ぎて爾に
恃頼(たのみ)を負はせたればなり。

  十字架生神女讃詞

童貞女は爾が木に懸れるを見し時云へり、嗚呼子よ、剣(つるぎ)は吾が心を貫ぬけり、前(さき)にシメオンの預言せしが如し、然れども祈る、不
死なる主宰よ、復活して、爾の母及び婢(しもめ)を栄せよ。

  讃詞(トロパリ)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の讃詞(トロパリ)を誦せよ。第二調。

主よ、我等は爾の預言者(某)の記憶を祭りて、彼に頼(よ)りて爾に求む、我等の霊を救ひ給へ。

  光栄、今も、生神女讃詞、讃詞(トロパリ)の調に据る。

  早課

  「主は神なり」に讃詞(トロパリ)同上。

  第一の聖詠誦文(カフィズマ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第三調。

神聖なる預言者の中に大いなる(某)、神に感ぜらるる者よ、爾は聖神゜に照されて、言が人体を取ることを預(あらかじめ)伝へたり。故に我等
は爾を預言者として敬(つつし)みて讃揚し、今日爾の記憶を祝ひて、同心に爾に呼ぶ、睿智者よ、我等の霊を救はんことをハリストスに祈り給
へ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

神の恩寵を蒙れる女宰よ、爾に於て行はれたる畏るべき神の奥密は測り難く悟り難し、蓋爾は囲まれぬ者を孕みて、其爾の至浄なる血より身
を取りしを生み給へり、潔き者よ、其爾の子たるに因りて、我等の霊を救はんことを常に彼に祈り給へ。

  第二の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第三調。

福たる(某)よ、爾は撫恤者(ぶじゅつしゃ)の神聖なる楽器として、其恩寵を以て常に鳴らされ、預言者と為りて、知らざることの顕見(あらはれ)
を宣べ、信を以て趨り附く者を照す、光栄なる者よ、ハリストス神に我等に大いなる憐を賜はんことを祈り給へ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

爾が実に生神女たることを預言者は伝へ、使徒は教へ、致命者は承け認(と)め、我等は信じたり、故に亦(また)爾の言ひ難き産を讃め揚ぐ。

  「主の名を讃め揚げよ」の後に附唱。

神の預言者(某)よ、我等爾を讃揚して、爾の聖なる記憶を尊む、爾は我等の為にハリストス我が神に祈り給へばなり。

  抜粋聖詠

「神を畏れ、其誡めを極めて愛する人は福(さいはひ)なり。」

  多燭詞(ポリエレイ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第六調。

至りて睿智なる預言者(某)よ、爾は智慧を汚穢(けがれ)より潔めて、之を聖神゜の光線を受くるに勝ふる神聖なる鏡と為せり、今爾喜びて光
照の泉に至り給へり。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

神の母よ、爾は世世の先に父より母なく生れし神の子及び言を末(すえ)の時に於て爾の潔き血より身を取りし者として夫なく生み給へり、我等
に終りの至らざる先に諸罪の赦しの賜はらんことを祈り給へ。

  品第詞(ステペンナ)、第四調の第一倡和詞(アンティフォン)。

  提綱(ポロキメン)

爾メルヒセデクの班に循(したが)ひて司祭と為りて世世に迄(いた)らん。

句 主我が主に謂へり、爾我が右に坐して、我が爾の敵を爾の足の台と為すに迄(いた)れ。

  「凡そ呼吸ある者。」 次に福音経。巻末に載す。

  第五十聖詠の後に光栄、

憐深き主よ、預言者の祈祷に依りて、我等の多くの罪を潔め給へ。

  今も、
「憐深き主よ、生神女の祈祷に依りて。」 次に「神よ、爾の大いなる憐に因りて。」
讃頌(スティヒラ)第六調「ハリストスの伝道師たる預言者よ。」「主よ爾に籲(よ)ぶ」の光栄に載す。

  規程(カノン)、第六調。

  第一歌頌

イルモス イズライリは陸(くが)の如く淵を踏み渡り、追ひ詰めしファラオンの溺るるを見て呼べり、凱歌(かちうた)を神に奉らん。

預言者よ、我等は爾神の宝座の前に立つ者に祈る、信を以て爾の尊き記憶を歌ふ我等に光照を賜はんことを切に祈り給へ。

至りて睿智なる(某)よ、爾は聖神゜の光照と恩賜とを容(い)るる神聖なる器と現れたり、故に我等信者は喜びて爾を讃揚す。

神に感ぜらるる者よ、預言者として救世主神の前に立ちて、今毅然として祈りて、我等信を以て爾を讃揚する者を恩寵の光線にて照さんことを
求め給へ。

  生神女讃詞

女宰よ、爾の聖なる腹より輝きし日は至りて明(あきらか)なる光にて全地を照す、我等は之に光照せられて、爾神の母を尊む。

  第三歌頌

イルモス 爾が信者の角(つの)を高うし、我等を爾が承認(うけとめ)の石に堅めし仁慈の主、吾が神よ、爾と均(ひと)しく聖なるはなし。

奇異なる者よ、神として一切を見る主は神に合(かな)ふが如く爾に明(あきらか)に将来の事を知り、成らんとする事を悟るを賜へり。

福たる者よ、爾は敬虔なる勇敢(いさみ)を以て爾の智慧を聖神゜に従はしめたり、故に神に感ぜらるるに勝ふる者と為れり。

神の言を宣ぶる者よ、爾は聖神゜の恩賜の海より出づる奥義の水の河と為れり。

  生神女讃詞

視よ、萬世(よろづよ)は信を以て、永遠の言を定期に於て神妙に身にて生み、生みて後亦(また)童貞女に止(とど)まりし者を讃揚す。

  坐誦讃詞、第六調。

至りて睿智なる預言者(某)よ、爾は智慧を汚穢(けがれ)より潔めて、之を聖神゜の光線を受くるに勝ふる神聖なる鏡と為せり、今爾喜びて光
照の泉に至り給へり。

  光栄、今も、生神女讃詞。

我等黙(もだ)さず、心と口にて聖なる天使よりも聖にして、至りて光栄なる神の母を歌ひ、之を承け認(と)めて生神女と為す、其実に人体を取
りし神を生みて、恒(つね)に我等の霊の為に祷り給へばなり。

  十字架生神女讃詞

皆来りて、我等の為に十字架に釘せられし主を歌はん、蓋マリヤは彼が木の上に在るを見て云へり、爾は釘せらるるを忍べども、吾の子及び神
なり。

  第四歌頌

イルモス 尊き教会は浄(きよ)き心より主の為に祝ひ、神に適ひて呼び歌ふ、ハリストスは吾が力と神と主なり。

福たる者よ、爾の預言に應(かな)ひて、萬有の主は我等に現れ、衆人を彼を知る智識に召して、奴隷より解き給へり。

爾は恩寵に照されて、唱へて曰へり、一つの軛(くびき)の下に首(かうべ)を屈めて服すべし、是れ信に順(したが)ひて主に役(つと)むることなり。

預言者として常に光の泉より発する光線に照さるる福たる者よ、愛を以て爾を歌ふ我等を照し給へ。

  生神女讃詞

純潔なるマリヤ、無慾の泉を生みし母童貞女よ、我が思ひを擾(みだ)す諸慾と患難の暴風(あらし)とを我より退け給へ。

  第五歌頌

イルモス 至仁なる神の言よ、切に祈る、爾に朝の祈祷を奉る者の霊を爾が神の光にて照して、爾罪の暗(やみ)より呼び出(いだ)す真(まこと)
の神を知らしめ給へ。

福たる光栄なる預言者よ、爾の祈祷を以て我を不義より徳に轉ぜしめ、諸慾の服役より解きて、敬虔なる行(おこなひ)の光に向はしめ給へ。

爾は諸徳の華美を以て己の霊を飾りて、之を聖神゜の光照を受くるに勝ふる者と為せり、故に預言の恩寵に富める者と為りたり。

爾は潔き度生を為し、聖神゜の器と為りて、神聖なる預言者と為れり、故に見えずして悟らるる者を見るを得たり。

  生神女讃詞

至浄なる者よ、預言者の言は多くの預象を以て爾の産を伝ふ、我等今此等の應(かな)ひしを見て、爾を真(まこと)の生神女と唱ふ。

  第六歌頌

イルモス 誘惑(いざなひ)の猛風(あらし)にて浪の立ち揚がる世の海を観て、爾の穏(おだやか)なる港に著(つ)きて呼ぶ、憐れみ深き主よ、我
が生命を淪亡(ほろび)より救ひ給へ。

光栄なる者よ、爾は聖神゜の光線を受けて、神聖なる預言の光照を鏡に於けるが如く世界の為に輝かし、未来の事を現在の如く宣べたり。

シオンよ、歓(よろこ)びて祝へ、視よ、爾の王は来りて、己の神性の煇煌(かがやき)にて世界を照し、悪鬼の誘惑(いざなひ)を辱かしめたり。

預言者よ、爾は聖神゜の力にて未来の事を見、爾の潔浄なる霊に鏡に於けるが如く神聖なる顕見(あらはれ)の形象(さま)を受けたり。

  生神女讃詞

讃美たる者よ、父の獨一子は爾の胎内に於て塵の身に合せられ、一位二性の者として出でて、爾の潔き童貞を毀損(そこなひ)なく護れり。

  小讃詞(コンダク)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の小讃詞を誦せよ。第四調。
 
福たる預言者、光栄なる(某)よ、爾の潔き心は聖神゜に照されて、至りて光明なる預言を受くる所と為れり、蓋爾は遠きにある事を目前に在る
が如く見る、故に我等爾を尊む。

  同讃詞(イコス)

神に感ぜられたる(某)よ、爾は預言の恩寵に富める者と為り、聖神゜に籍(よ)りて神に適ふが如く教へられて、将来の事を知る智識を獲、衆に
ハリストスの降臨と諸民の救ひに召さるることとを預(あらかじめ)伝ふ。故に我等は爾の尊き記憶を祭り、愛を以て爾を歌ひ、熱心に讃揚して爾
に呼ぶ、光栄なる者よ、ハリストス神に絶えず我等衆の為に祈り給へ。

  第七歌頌

イルモス 神の使(つかひ)は潔き少者の為に爐(いろり)に露を出(いだ)さしめ、ハルデヤ人を焼く神の詔(みことのり)は苦しむる者に呼ばしめたり
、吾が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

預言者よ、爾の記憶は世界の為に日の如く耀き、爾の預言の恩寵を以て我等を照して、信を以て同聲に歌はしむ、吾が先祖の神よ、爾は崇
め讃めらる。

福たる者よ、爾は我等の為に神智の雨を降らす光明なる雲と顕れたり、我等は斯の救ひを施す泉より潤されて呼ぶ、吾が先祖の神よ、爾は崇
め讃めらる。

主より光照せられたる諸預言者は未来の事を預言し、神智を以て太初(はじめ)より有る言を知らしめて、我等をして此に歌はしむ、吾が先祖の
神よ、爾は崇め讃めらる。

  生神女讃詞

祝福せられし潔き童貞女、身にて神を生みし者よ、太初(はじめ)より有る言、萬衆に生命を賜ふ主は神聖なる旨に由りて人を喚(よ)び起さん
と欲して、爾の胎に入り給へり。

  第八歌頌

イルモス ハリストスよ、爾は潔き者の為に焔(ほのほ)より露を注ぎ、義人の祭の為に水より火を出せり、爾は一つの望みにて萬事を行ひ給へば
なり、我等爾を世世に讃め揚ぐ。

神の言を宣べたる預言者よ、爾は全く己を全能者に委ねて、其定制に由りて奥密なる真理を教へられて、諸民を救いに導く者と為れり、故に我
等爾を歌ふ。

神福なる者よ、爾を歌ふ者の為に神に祷りの歌を奉りて、我等を擾(みだ)す患難を退け給へ、我等が爾神の言を宣べたる預言者を歌はん為
なり。

爾は凡そ幽暗(くらやみ)に坐する者の為に火の如く現れ、神聖なる光を以て之を照して、信を以て主を世世に歌はしむ。

  生神女讃詞

至浄なる者よ、爾は生命を賜ふ神及び主を生みて、死の止(とど)め難き残害を止(とど)めて、之を空しくし給へり、故に我等爾を世世に歌ふ。

  第九歌頌

イルモス 天使の品位すら見るを得ざる神は、人見る能(あた)はず、唯(ただ)爾至浄の者に依りて人体を取りし言は人人に現れ給へり、我等
彼を崇めて、天軍と偕に爾を讃め揚ぐ。

至りて睿智なる(某)、神の預言者よ、爾温柔にして恩寵を以て光りたる者は終りの後に温柔の者の地に入りて、諸天使の光明を観る、故に我
等信者は喜びて爾を讃揚す。

至栄なる者よ、我等は明(あきらか)に爾の預言の應(かな)ひしを見て、爾に賜はりたる恩寵と爾の智慧の潔浄とに驚き、爾の霊の神に肖(に)
たるを奇とす。

預言者(某)よ、爾は天使の品位、諸預言者と、太祖と、諸聖人との光る所に入りたり、今彼等と偕に欣(よろこ)ばしく祝ひ、我等の為に主に
祈りて、信を以て爾を讃め揚ぐる者の救はれんことを求め給へ。

生神女讃詞

至りて無玷(むてん)なる神の母よ、古世より一(いつ)も爾の如き者は賜はらざりき、蓋爾は獨衆人の中に竝(ならび)なき神聖と潔浄とを有てり
、故に爾より身を取りし神を受け給へり。

  光耀歌

神智者よ、爾の慶賀の日に於て衆預言者は喜び楽しみて、爾の歓喜(よろこび)と神聖なる光栄とに與(あづか)る、彼等と共に祈りて、爾を歌
ふ者を救ひ給へ。

  生神女讃詞

潔き童貞女よ、爾の洪恩の注ぐを以て吾が霊の汚(けがれ)を洗ひ、我に常に涙を流して、我が諸慾の川を涸らすを得しめ給へ。

  「凡そ呼吸ある者」に讃頌(スティヒラ)、第八調。

聖神゜に動かさるる尊き(某)の預言して云ひし如く、聖神゜は我等信者に注がれて、神聖なる奥義の悟(さとり)を啓く、彼の感孚(かんぷ)を受く
る者は神聖なる光線と神の恩寵とに照されて預言す。二次

主宰よ、奇異なる(某)は神の言に満てられて、爾の家より出づる泉の如く我等の霊に飲ませ、吾が心を楽しましむる甘味を滴らす。其神゜は至
りて高尚にして、彼は徳に由りて神聖なる高所(たかき)に挙げらる。

光栄なる(某)よ、爾の預言者たる勇敢(いさみ)と爾の智慧の神に近づくとに因りて、我等信を以て爾の記憶を行ふ者に神の慈憐を垂れしめて
、我等の為に諸罪の赦と、大いなる憐れみと、神聖なる楽しみに與(あづか)ることとを求め給へ。

  光栄、第四調。

神の言を宣べたる光栄なる(某)よ、爾は主爾の神救世主に於て喜びて、彼所の光照を受け直(ただち)に神の無形なる光に照されて楽しむ。
我等信を以て爾の至りて欣(よろこ)ばしき記憶を行ふ者を爾の祈祷を以て諸々の誘惑(いざなひ)及び災禍(わざはひ)より脱れしめ給へ。

  今も、生神女讃詞。

ハリストス神の母、萬有の造成主を生みし者よ、我等衆を諸々の患難より救ひて、爾に呼ばしめ給へ、吾が霊の獨の轉達よ、慶べ。

  十字架生神女讃詞

純潔なる女宰はハリストスの殺されて、詭譎(きけつ)の者を殺すを見て、彼を其胎内より出でたる主宰として歌ひて泣き、彼の恒忍(ごうにん)を
奇として呼べり、至愛なる子よ、爾の婢(しもめ)を忘るる勿れ、仁愛なる主よ、遅はるなく我を慰め給へ。



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