第二十五編

 神品表信者及び克肖表信者の総奉事



 晩課

 「主よ爾に籲(よ)ぶ」に讃頌(スティヒラ)、第四調。

神に感ぜられし聖なる(某)よ、我等爾を承け認(と)めて、真実の堅立、信の固め、定理の証明、敬虔の器、潔浄の居処(すまひ)、聖神゜の香気(かをり)、教への至大なる宝蔵、及びハリストスの教会の基(もとい)と為す。

讃美たる捧神者、睿智なる(某)よ、我等爾を讃め揚げて、使徒等の後任者、受難者の友、修斎者(しゅさいしゃ)の同労者、諸教師の印証と模範、ハリストスの奥密者、及び神智の川、不法者と褻瀆者(せつどくしゃ)との異説を溺らす者と為す。

尊貴光栄なる(某)よ、爾は智慧の「タラント」を増して、爾の主の歓楽(よろこび)に入るを得、神聖なる光照の恩寵に飾られ、属神゜の光に輝きて、今生(いのち)を施す主の前に立ちて、彼処(かしこ)より発する光明の中に常に楽しみ給ふ。

  光栄、今も、生神女讃詞。

讃美たる潔き生神女よ、我が慾に耽りたる心の汚(けが)れを洗ひ、罪に由る其傷(きず)と膿(うみ)とを浄(きよ)め、吾が動ける智慧を堅め給へ、我不当にして無益なる爾の僕が爾の力と大いなる保護とを崇め讃めん為なり。

 十字架生神女讃詞

至浄なる者は人を愛する主ハリストスの十字架に釘せられ、戈(ほこ)にて脇の刺さるるを見て、哭きて呼べり、吾が子よ、此れ何ぞ、恩を知らざる民は爾が彼等に為しし善に易へて何をか爾に報いたる、至愛なる者よ、胡為(なんす)れぞ我を子なき者として遺す、慈憐なる主よ、我爾が甘んじて受くる釘殺を奇とす。

  もし之あらば、自調。光栄、第六調。

克肖なる神゜父(某)よ、爾の口より恩寵は流れしに、爾はハリストスの教会の牧者と為りて、霊智なる羊に惟一の神性の中に一体なる三者を信ぜんことを教へ給へり。

  今も、生神女讃詞

至浄なる生神童貞女よ、爾に趨り附く者は一人も恥を得て爾より出づるなし、即ち恩寵を求めて、益ある求めに適ふ賜(たまもの)を受く。

  十字架生神女讃詞

至浄なる者は爾が十字架に懸かれるを見て、母として哭きて呼べり、吾が子及び吾が神、吾が甘愛なる産よ、如何ぞ爾恥づべき苦しみを忍ぶ。

  もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭を行はば、復活の生神女讃詞を誦すべし。

至聖なる童貞女よ、誰か爾を讃美せざらん、誰か爾の至りて浄(きよ)き産を歌はざらん、世の無き先に父より光る獨生の子は爾浄き者より言ひ難く身を取りて出で、本性の神は我等の為に本性の人と為れり、其位(くらい)一つにして相分れず、其性二つにして相失はず、浄くして至りて福(さいはひ)なる者よ、我が霊の憐れみを蒙らんことを彼に祷り給へ。

  聖入。本日の提綱(ポロキメン)。克肖者の喩言(パリミヤ)、三篇、巻末に載す。

  挿句(くづけ)の讃頌(スティヒラ)、第八調。

至りて睿智なる(某)、至栄なる神゜父よ、爾は神を歌ひて其歌を以てハリストスの教会を輝かし、聖神゜の気(いき)にて簫(ふえ)を吹き、ダワィドの如く、神聖なる歌にて衆を照し給へり。

句 聖人の死は主の目の前に貴し。

至栄至福にして克肖なる神゜父(某)よ、爾は世の煩はしき紛擾(さわぎ)を避けて、ハリストスの穏静(おんせい)に趨り附き、神聖なる度生に輝きて、神の行為(わざ)を学び、神智に富める者と為りて、之を信者に伝へ給へり。

句 神を畏れ、其誡めを極めて愛する人は福(さいはひ)なり。

地上の者よ、来たりて、今日歌を以て敬虔に克肖なる(某)の聖にせられし尊き慶賀を歌はん、蓋彼は実に神の光照の光を受くるに勝(た)ふる者と為れり。嗚呼主宰よ、爾の慈憐は言ひ難き哉、我等此れに由りて爾至仁なる主を讃栄するを悟れり。

  光栄、第八調。

我等の神゜父(某)よ、修道士の大数は爾を教導師と尊む、爾の途(みち)に由りて実(まこと)に直(なお)く行くことを知りたればなり。福たる哉爾、ハリストスに服従して、敵の力に勝ち、天使等と対話する者、克肖者及び義者の友と為りし者や、彼等と偕に主に我等の霊の憐みを蒙らんことを祈り給へ。

  今も、復活の生神女讃詞。

聘女(よめ)ならぬ童貞女、言ひ難く身にて神を孕みし者、至上なる神の母よ、爾の諸僕の祈祷を受け給へ、衆に諸罪の潔浄(きよめ)を予(あた)ふる純潔なる者よ、今我等の冀願(きがん)を納(い)れて、我等皆救はれんことを祈り給へ。

  もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭らずば、左の生神女讃詞を誦せよ。

聖なる童貞生神女よ、我爾の庇廕(おおい)に趨り附く、我爾に倚(よ)りて救ひを得んことを知る、爾は、潔き者よ、我を援(たす)くるを能(よく)すればなり。

  十字架生神女讃詞

無玷(むてん)なる牝牛は犢(こうし)が木の上に甘んじて釘せらるるを見て、悲しみ泣きて呼べり、哀しい哉最(いと)愛すべき子よ、恩を知らざるエウレイの会は何をか爾に報いたる、至愛なる者よ、何ぞ我を子なき者として遺す。

  讃詞(トロパリ)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の讃詞(トロパリ)を誦せよ。第八調。

醇正の教への教師、敬虔と潔浄との教導師、全地の燈(ともしび)、司祭首等の聖にせられし装飾、属神の簫(ふえ)たる睿智なる(某)よ、爾は己の教へを以て衆人を照し給へり、ハリストス神に我等の霊の救はれんことを祷り給へ。

  光栄、今も、生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞。

  早課

  「主は神なり」に讃詞(トロパリ)同上。

  第一の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第四調。

爾は地上の過ぎ易き逸楽を顧みず、世の華麗と暫時の楽しみとを忌みて、野に居ることを愛せり、此に由りて致命者及び修斎者(しゅさいしゃ)の会に加へらるるを得たり、爾の諸僕を救はんことを彼等と偕に祈り給へ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

純潔無玷(むてん)にして婚姻に與らざる童貞女、獨(ひとり)時に由らざる子及び神の言を時の内に生みし者よ、彼に神聖尊貴なる使徒、致命者、預言者、克肖者と偕に祈りて、我等に潔浄(きよめ)と大いなる憐みとを賜はんことを求め給へ。

  第二の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第四調。

至福なる(某)よ、爾はハリストスに従ひて、世を捨て、節制を以て肉体を治めたり、故に成聖の傅膏を得給へり、今は無形の会に移りて、我等衆爾を讃め揚ぐる者の為に祷り給ふ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

獨萬衆の造成主を生み、獨爾の産を以て人類を装飾せし至浄なる者よ、我を詭譎(きけつ)なるワェリアルの網より救ひ、我をハリストスの戒めの石に立てて、爾が人として生みし主に我が為に熱切に祷り給へ。

  「主の名を讃め揚げよ」の後に、神品表信者に附唱。

成聖者神゜父(某)よ、我等爾を讃揚して、爾の聖なる記憶を尊む、爾は我等の為にハリストス我が神に祈り給へばなり。

  抜粋聖詠

「萬民之を聴け。」

  克肖表信者に附唱。

克肖致命者(某)、修道士の教師、天使等の対話者よ、我等爾を讃美して、爾の聖なる記憶を尊む。

  抜粋聖詠

「我切に主を恃みしに。」

  多燭詞(ポリエレイ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第三調。

至福なる(某)よ、爾は聖神゜に照されて、勇ましく醇正の教へを伝へ、不法なる迫害者を辱かしめて、非義に流刑に処せられたり。克肖なる神゜父よ、愛を以て爾の聖なる記憶を尊む者に諸罪の赦しを賜はんことをハリストス神に祷り給へ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

人は救ひを得(う)る処に義に合(かな)ひて趨り附く、生神女よ、爾の如き避所(かくれが)、我等の霊を蔽(おお)ふ者は亦(また)何処(いづこ)にかあらん。

  品第詞(ステペンナ)、第四調の第一倡和詞(アンティフォン)。

  提綱(ポロキメン)

聖人の死は主の目の前に貴し。

句 我何を以て主の我に施しし悉くの恩に報いん。 

  「凡そ呼吸ある者。」 福音経は、巻末に載す。

  第五十聖詠の後に讃頌(スティヒラ)、第六調。

克肖なる神゜父よ、爾の諸徳の風声(きこえ)は全地に伝はる、爾は悪鬼の群(むれ)を破り、潔浄を以て天使の生命(いのち)に效(なら)ひて、其品位に至れり、故に天に於て爾の勤労の賞(むくい)を獲たり。ハリストス神の前に勇敢(いさみ)を有ちて我等の霊の為に平安を求め給へ。

  規程(カノン)、第六調。

  第一歌頌

イルモス イズライリは陸(くが)の如く淵を踏み渡り、追ひ詰めしファラオンの溺るるを見て呼べり、凱歌(かちうた)を神に奉らん。

救世主よ、聖にせられし(某)は思ひを全うして爾を愛し、勇ましく己を苦難に付(わた)し、憂ひと苦しみと労とを忍びて、終りなき楽しみを得(う)るに至れり。

爾は血を灌(そそ)ぐを以て不信の醎海(しおうみ)を涸らし、ハリストスの川と為りて、常に教会に飲ませ給ふ。

光栄なる(某)よ、爾は地上に大いなる功労を神に捧げて、天国の栄冠と永久の生命(いのち)とを受くるに勝ふる者と為り給へり。

  生神女讃詞

諸徳の華美に飾られたる潔き神の母よ、爾は実在の徳たる真(まこと)の神、神聖なる諸徳を以て我等を照しし主を孕み給へり。

  第三歌頌

イルモス 爾が信者の角(つの)を高うし、我等を爾が承認(うけとめ)の石に堅めし仁慈の主、吾が神よ、爾と均(ひと)しく聖なるはなし。

福たる克肖なる神゜父(某)よ、爾は眶(まぶた)に眠り、目に寝(い)ぬるを許さずして、聖三者の堂と現れ、光明なる教へにて世界を富ます睿智の宝蔵と為るに至り給へり。

神智なる(某)よ、爾は神の命(めい)を守る者として、牢獄(ひとや)に鎖(とざ)されて、信者の為に広き智識に入る教への道の閉鎖(とざし)を啓き給へり。

至りて聖にせられし受難者(某)よ、爾は神聖なる隊の軍士として、神の力に堅められて、堅固なる表信を以て不法者の固(かた)からざる強暴を仆(たお)し給へり。

  生神女讃詞

萬世(ばんせい)の先より在(いま)す父の睿智及び言は末(すえ)の時に言ひ難く爾婚姻に與らざる母より身を取りて、爾を生神女と為し給へり。

  坐誦讃詞(セダレン)、第四調。

天の奥密者(某)、神智なる我等の神゜父よ、光栄なる日は爾を其教会の穹蒼(おおぞら)に暁(あけ)の明星と立てて、爾の言を以て信者を照し給ふ。

  光栄、今も、生神女讃詞。

純潔無玷(むてん)にして婚姻に與らざる童貞女、獨(ひとり)時に由らざる子及び神の言を時の内に生みし者よ、彼に神聖尊貴なる使徒、致命者、預言者、克肖者と偕に祈りて、我等に潔浄(きよめ)と大いなる憐みとを賜はんことを求め給へ。

  十字架生神女讃詞

神の言よ、爾の至浄なる母は爾が十字架に挙げられたるを見し時、母として哭きて言へり、吾が子よ、此の新たなる驚くべき奇跡は何ぞや、如何ぞ爾萬衆の生命(いのち)は、慈憐なる者として、死者を活かさんと欲して死に近づく。

  第四歌頌

イルモス 尊き教会は浄(きよ)き心より主の為に祝ひ、神に適ひて呼び歌ふ、ハリストスは吾が力と神と主なり。

讃美たる(某)よ、爾は己の言を戈(ほこ)の如くにして無神を刺し殺し、己の苦しみを剣(つるぎ)の如くにして悪鬼の隊に勝てり、彼等の悪計より爾を尊む者を救ひ給へ。

神品致命者(某)は呼べり、我は悪鬼を祭らず、死をも苦しみの刑具をも畏れずして、三者に於て識らるる惟一の神を承け認(みと)む。

神゜父よ、主は爾の謙遜(へりくだり)の至栄なる崇高(たかさ)を観て、爾に高妙(こうみょう)なる言を賜ふ、此れに由りて諸異端の甚だしき驕りは卑(ひく)くせらる。

  生神女讃詞

我等は童貞女を神に入る門とし、神聖なる楽園とし、成聖の霊智なる処とし、イアコフの栄えとして讃揚す。

  第五歌頌

イルモス 至仁なる神の言よ、切に祈る、爾に朝の祈祷を奉る者の霊を爾が神の光にて照して、爾罪の暗(やみ)より呼び出だす真(まこと)の神を知らしめ給へ。

至りて睿智にして福たる神゜父(某)よ、爾は涙の流れを以て逸楽の淵を涸らし、爾の教への注ぐを以て諸異端の流れを塞ぎ給へり。

神゜父(某)よ、爾は実に三者を容(い)るる殿と為りて、恩寵に飾られ、尊き諸徳と模範たる謙遜とを以て輝き給ふ。

光栄なる(某)よ、爾は忍耐を以て凶悪者の悉くの謀(はかりごと)を破れり、求む、其害より我を救ひ、我に力を与へて、神に至らしむる路(みち)を行かしめ給へ。

  生神女讃詞

純潔なる者よ、我等は爾より我等の為に苦しみと死とに属する身を受け、見ゆる性に見えざる神性を混淆(こんこう)せずして一位に合せ給ひし主を歌ふ。

  第六歌頌

イルモス 誘惑(いざなひ)の猛風(あらし)にて浪の立ち揚がる世の海を観て、爾の穏(おだやか)なる港に著(つ)きて呼ぶ、憐れみ深き主よ、我が生命(いのち)を淪亡(ほろび)より救ひ給へ。

主の受難者、讃美たる(某)よ、爾は燈(ともしび)と為りて、爾の苦しみの光を以て四極を照し、ハリストスの名を迫害者の前に承け認(みと)め給へり。

神゜父(某)よ、爾の舌は実に迅書者(じんしょしゃ)の筆の如くなりて、心の肉碑(にくひ)の上に属神゜の法を書(しる)す所の至尊なる智慧を承け認(みと)めたり。

神の言を宣べたる神゜父よ、爾の教へに従ふ者は穏静(おんせい)に世を度りて、霊を害する激波(あらなみ)を免れ、信を以て諸異端より反正する者は救ひを得(う)。

  生神女讃詞

純潔無玷(むてん)にして至福なる者よ、爾の童貞を護る聖神゜は爾に臨みて、爾を至上者の子の尊き居処(すまい)と為し給へり。

  小讃詞(コンダク)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の小讃詞(コンダク)を誦せよ。第二調。
 
神智なる(某)、聖にせられし神゜父よ、爾は節制を楽しみて、肉体の望みを眠らせ、信に由りて生長して、楽園の生命(いのち)の樹(き)の如く栄えたり。

  同讃詞(イコス)

聖にせられし神゜父(某)、至栄なる克肖致命者よ、神の前に立ちて、神に悦ばるる爾の祈祷を以て我が口を開き給へ、我が爾の神聖なる度生を歌ひ、宜しきに合(かな)ひて爾の諸徳を宣べん為なり、蓋爾は潔浄を愛し、常に警醒して、節制を修め、且(かつ)動かされぬ信を守り、熱切なる愛を以て堅固なる致命者と為り給へり。

  第七歌頌

イルモス 神の使(つかひ)は潔き少者の為に爐(ゐろり)に露を出ださしめ、ハルデヤ人を焼く神の詔(みことのり)は苦しむる者に呼ばしめたり、吾が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

神智者よ、爾の度生が斎の由りて光明なる者と為りし如く、斯く爾の苦しみを受くる忍耐は堅固なりき、蓋爾は厳かにハリストスを讃栄して呼べり、我が先祖の神は崇め讃めらる。

神に悦ばるる神゜父(某)よ、爾は貞潔の清浄(しょうじょう)と勇敢とを帯びて、恩寵に由りて受難の光明なる栄冠を受けて呼べり、我が先祖の神は崇め讃めらる。

救世主よ、爾の至浄なる聖像に伏拝せざる不虔の者は爾の役者(えきしゃ)を侵害して、之に多くの傷を被らせたり、蓋彼は常に爾に呼びて言へり、我が先祖の神は崇め讃めらる。

  生神女讃詞

至浄なる者よ、父の懐(ふところ)に限られぬ者として坐する主は今爾より出でて、爾の像(すがた)に肖(に)たる者と為り、爾の懐(ふところ)に限らるる者として坐し給ふ、蓋アダムを救はん為にアダムと為り給へり。

  第八歌頌

イルモス ハリストスよ、爾は潔き者の為に焔(ほのほ)より露を注ぎ、義人の祭の為に水より火を出せり、爾は一つの望みにて萬事を行ひ給へばなり、我等爾を世世に讃め揚ぐ。

福たる(某)よ、爾は輝く日の如く現れて、四極に教訓を遣はし、痛悔の光を以て凡の罪の深き幽暗(くらやみ)を散じ給ふ。

神の悦びを獲たる(某)よ、爾は神聖なる教への流れを注ぎて、エデムより出でたる河の如く地の面(おもて)を潤して、不虔の稗(ひえ)を沈め給ふ。

至福なる者よ、爾は言の美(うるは)しきを以て装飾せられたり、蓋聖神゜の筆(ふで)と為りて、敬虔なる信者に神聖なる智識を書(しる)して、ハリストスを世世に讃め揚ぐ。

  生神女讃詞

純潔なる者よ、我今爾の帲幪(おおい)に趨り附きて、我が生命(いのち)の為に保護(まもり)と為らんことを求む、蓋爾は智慧に超えて神言(かみことば)を生み給へり、我等彼を世世に讃め揚ぐ。

  第九歌頌

イルモス 天使の品位すら見るを得ざる神は、人見る能(あた)はず、唯(ただ)爾至浄の者に依りて人体を取りし言は人人に現れ給へり、我等彼を崇めて、天軍と偕に爾を讃め揚ぐ。

爾は月の如く、大いなる日の如く、電(いなづま)の如くハリストスの教会に輝きて、信者の智慧を照し、隠れざる光に入りて、三聖の声を以て造られざる三者を歌ひ給ふ。

讃美たる(某)よ、地は爾の聖躯を安置せる聖にせられし柩を宝の如く蔵(おさ)めたるに、義人等の霊は楽しみ、天使等は爾の神゜を受けたり。福たる者よ、彼等と偕に我等衆爾を歌ふ者を記憶し給へ。

奇異なる(某)よ、爾は至聖神゜の殿、活水(かつすい)を盈(み)つる川、教会の動かざる基(もとい)、正教の固め、常に涌く流れ、神聖なる痛悔の泉なり。

生神女讃詞

神の恩寵を蒙れる童貞女よ、天の滴(したたり)の如く雨は爾の胎内に降(くだ)りて、迷ひの流れを涸らし、爾に由りて衆人の為に不朽と贖罪とを注ぎたり。

  光耀歌

克肖なる神父(某)よ、爾は第一に苦しみにて善く試みられ、第二に斎を以て馳すべき神聖なる程(みち)を尽くし、天に升りてハリストスの前に立ち給ふ。爾を歌ふ我等の為に熱切に祈り給へ。

  生神女讃詞

言ひ難き歓喜(よろこび)たる主を生みし至浄なる者よ、我等衆爾を尊みて、霊より感謝を爾に奉る者を天上の歓喜(よろこび)に與らしめ給へ、祝福せられしマリヤよ、爾の諸僕を忘るる勿れ。

  「凡そ呼吸ある者」に讃頌(スティヒラ)、第四調。

神父(某)よ、聖神゜の恩寵は爾に輝きて、明らかに爾を照せり、此れに由りて爾は諸慾の夜(よ)を過ぎ、無慾の日に至りて、最(いと)潔き光に潔く合せられたり、神言者(しんげんしゃ)よ、其中に居りて、我等信を以て爾の聖にせられし記憶を歌ふ者を忘るる勿れ。二次

神に愛せらるる克肖者(某)よ、爾は望みたる天の恩寵を蒙りて、地上の事を顧みざりき、故に肉体なき者の如く苦しき度生を択(えら)び、永在の甘味(かんみ)の流れを楽しまんと欲して、涙を以て諸慾の濁りたる泉を涸らして、霊を養ふ穂を潤(うるお)し給へり。

克肖なる(某)よ、爾は神の恩寵より宜しきに合(かな)ひて醫治(いやし)の恩賜を受け給へり、故に朽壊に属する世より移りて、求むる者の為に悪鬼の誘惑(いざなひ)を防ぎ、苦しき病を醫(いや)し、爾の恩寵の流れを水の如く注ぎ給ふ、我等之を飲みて、爾の記憶を讃め歌ふ。

  光栄、第五調。

克肖なる神父よ、爾は己の目に寐(い)ね、己の眶(まぶた)に眠るを許さずして、爾の霊と体とを諸慾より解きて、己を聖神の為に居処(きょしょ)に備ふるに至れり、故にハリストスは父と共に来たりて、爾の内に住居(すまひ)を為し給へり。一性なる三者の悦ぶ者と為りし大いなる伝道師、我等の神゜父(某)よ、我等の霊の為に祷り給へ。

  今も、生神女讃詞。

生神童貞女よ、我等信者は爾を讃美し、職として爾動かされぬ城邑(まち)、壊(やぶ)られぬ垣墻(かき)、我等の霊の堅固なる轉達者及び避所(かくれが)を讃栄す。

  十字架生神女讃詞

昔至福なる童貞女は己の羔(こひつじ)及び子の十字架に挙げられしを見て、哭きて呼べり、嗚呼吾が子よ、如何ぞ爾は本性の不死なる神にして死する。

  若し挿句に光栄あらば、晩課の、今も、生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞を誦せよ。


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