第二十四編

 一人の克肖致命女の総奉事



 晩課

 「主よ爾に籲(よ)ぶ」に讃頌(スティヒラ)、第八調。

讃美たる致命女(某)よ、爾は節制を以て肉慾に勝ち、受難を以て敵たる蛇を殺せり。爾の苦しみにて諸天使を驚かし、爾の功労にて人々を楽しませし修道女の飾り、貞潔の器なる者よ、我等の霊を救ひて照さんことを祷り給へ。

光栄なる者よ、我等何を以て爾を称へんか、爾は童貞の美(うるは)しきを以て輝けるハリストスの新婦(はなよめ)、上なるイエルサリムの選ばれたる女(むすめ)、諸天使の同住者及び対話者、無形の宮に楽しめる者なり。大受難女(某)、修道女の飾りよ、我等の霊を救ひて照さんことを祷り給へ。

爾は不法なる窘迫者(くるしめびと)より歯の折(くじ)かるること、手足及び乳房の断たるること、寸断せらるることを忍び、新郎(はなむこ)の華麗を仰ぎて、性に超ゆる苦しみを忍耐し給へり。大受難女(某)、ハリストスの不朽なる新婦(はなよめ)よ、我等の霊を救ひて照さんことを祷り給へ。

  光栄、今も、生神女讃詞。

至浄なる者よ、何者か爾の慈憐より奇異なるあらん、爾は病む者を醫(いや)し、諸慾より援(たす)け、戦ふ者の無慙なる攻撃を退け、爾を歌ふ者を爾の祈祷を以て諸難より救ひ、其憂ひを解き給ふ。童貞女よ、我等の霊を救はんことを祷りて、爾の諸僕に天上の歓喜(よろこび)を獲しめ給へ。

 十字架生神女讃詞

牝羊は羔(こひつじ)が甘んじて十字架の木に伸べられたるを見し時、母として哀しみ、哭きて呼べり、吾が子よ、此の驚くべき顕見(あらわれ)は何ぞ、萬衆に生命(いのち)を与ふる主にして、人人に復活を賜ふ恒忍(ごうにん)なる者よ、如何ぞ殺さるる、吾が神よ、我爾の大いなる寛容を讃栄す。

  もし之あらば、自調。光栄、第二調。

我等は歓喜(よろこび)の声を以て聖詠を唱へて、克肖致命女(某)を歌はん、蓋彼は偶像の迷ひに勝ち、戦ふ敵を勇ましく己の足下に仆(たお)せり、故に終りて後飛びて天に登り、首(こうべ)に栄冠を冠りて呼ぶ、我が新郎(はなむこ)よ、我爾を慕ひ、爾を愛し、爾の為に我が身を苦しみに付(わた)せり、楽しむ者の居る所の尊き居処(すまひ)に入らん為なり。

  今も、生神女讃詞

祝讃せらるる生神女よ、我等は倚頼(たのみ)を爾に負はせたり、願はくは我が求むる所を得ん、憂ふる者の扶助者よ、我等を諸難より救ひ、諸敵の謀(はかりごと)を破り給へ、爾は我等の救ひなればなり。

  十字架生神女讃詞

無玷(むてん)なる牝羊は己の羔(こひつじ)が人の如く甘んじて屠宰(ほふり)に牽かるるを見て、哭きて云へり、ハリストスよ、爾は我爾を生みし者を今子なき者と為さんとす、萬衆の贖罪主よ、何ぞ之を為したる、然れども人を愛する主よ、我智慧と言とに超ゆる爾の至大なる仁慈を歌頌して讃栄す。

  もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭を行はば、復活の生神女讃詞を誦すべし。

恩寵来たりて、法律の影は去れり、蓋燃ゆる棘(いばら)の焚(や)けざりし如く、童貞女は生みし後も永く童貞女なり、焔の柱の代りに義の日は出でて光る、モイセイの代りに我が霊の救者ハリストスは現れたり。

  聖入。本日の提綱(ポロキメン)。致命者の喩言(パリミヤ)三篇、巻末に載す。

  挿句(くづけ)の讃頌(スティヒラ)、第四調。

讃美たる克肖女(某)よ、爾は節制の勤労を受難の血に雑(まじ)へて、二倍の苦しみを忍び給へり、故に美(うるは)しく妝(よそほ)はれて、純潔なる童貞女及び勝たれぬ致命女として、恩を賜ふ主の許に上(のぼ)りし時、彼は二倍の栄冠を爾に賜へり。

句 神よ、爾は爾の聖所に於て厳かなり。

純潔なる新婦(はなよめ)(某)よ、爾の肉体の華美と神聖なる霊の華麗とは合せられしに、爾は義人等の居処(すまひ)に於て潔白に光り、血の流れに染められて、花の如く耀けり、故に天上の美(うるは)しき新郎(はなむこ)も爾を童貞女及び致命女として、永遠の宮に受け給へり。

句 イズライリの源より出づる者よ、教会に於て主神を崇め讃めよ。

讃美たる(某)よ、天使は爾の傍らに在りて爾を護れり、蓋爾は幼き時より主を畏れ、尊き礼物として造成主に捧げらるる者と現れたり、故に爾は堅固に迫害者の無知を踏みて、爾の新郎(はなむこ)ハリストスの許に升り給へり。

  光栄、第六調。

勝たれぬ受難女及び致命女たる童貞女(某)は諸徳を妝(よそほ)はれ、潔浄の油と受難の血とに飾られ、欣ばしく燈(ともしび)を執りて、救世主の右に立ちて彼に呼べり、ハリストス神よ、我爾の香料の香(か)を聞きて趨れり、爾を愛する愛に刺されたればなり、天の新娶者(はなむこ)よ、我を退くる勿れと。全能の救世主よ、彼の祈祷に由りて爾の仁慈を我等に被らせ給へ。

  今も、生神女讃詞。

女宰よ、我心の眼を爾に挙ぐ、我が微小なる歎息(たんそく)を斥くる勿れ、爾の子が世界を審判せん時、我が為に帲幪(おおい)及び扶助(たすけ)と為り給へ。

  十字架生神女讃詞

ハリストスよ、爾を生みし者は爾の釘せらるるを見て呼べり、吾が子よ、我が見る所の奥密は何ぞ驚くべき、生命(いのち)を賜ふ主よ、如何ぞ身にて木に懸けられて死する。

  讃詞(トロパリ)、第四調。

イイススよ、爾の牝羊(某)は大いなる声を以て呼ぶ、吾が新娶者(はなむこ)よ、我爾を愛し、爾を尋ねて苦しみ、爾と偕に十字架に釘せられ、死に於ける洗を以て爾と偕に葬られ、爾の為に難を受く、爾に縁りて王たらん為なり、爾の為に死す、爾と偕に生きん為なり、求む、愛を以て爾の為に屠られし我を無玷(むてん)なる祭として享け給へと。彼の祈祷に因りて、仁慈なる主として我等の霊を救ひ給へ。

  光栄、今も、生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞。

  早課

  「主は神なり」に讃詞(トロパリ)同上。

  第一の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第八調。

大受難女(某)よ、爾は節制の露(つゆ)を以て少者の如く慾の焔(ほのお)を滅(け)し、爾の血の火を以て一切の迷ひを焚(や)きて、新郎(はなむこ)たる言に礼物として尊貴なる貞潔と勇敢なる受難とを捧げたり、故に彼は爾勇ましく戦ひて蛇を踏みたる者を光栄の宮に入れ給へり。ハリストス神に祈りて、愛を以て爾の聖なる記憶を尊む者に諸罪の赦しを賜はんことを求め給へ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

我等萬族は爾童貞女、女の中に獨種なく身にて神を生みし者を讃揚す、蓋神性の火は爾の内に入り、爾は造成者及び主を幼児(おさなご)として乳(ち)にて養ひ給へり、故に天軍及び我等人類は宜しきに合(かな)ひて爾の至聖なる産を讃栄して、同心に爾に呼ぶ、ハリストス神に祈りて、熱切に爾の光栄を歌ふ者に諸罪の赦しを賜はんことを求め給へ。

  第二の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第一調。

奇異なる致命女(某)よ、爾は愛に由りて先には斎を以て、後には受難の血を以て香料を盛れる玉(ぎょく)の盒(うつわ)の如くハリストス爾の新郎(はなむこ)に捧げて、彼より報賞(むくい)として神聖なる不朽の栄冠と神゜の力を以て醫治(いやし)を行ふ恩寵とを受け給へり。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

聘女(よめ)ならぬ聘女、潔き生神童貞女、獨信者の転達者及び帲幪(おおい)たる少女よ、爾の神聖なる祈祷を以て、我等爾に恃頼(たのみ)を負はしむる者を災禍(わざわい)と憂愁(うれい)と、甚だしき誘惑(いざない)より脱れしめて、我等の霊を救ひ給へ。

  「主の名を讃め揚げよ」の後に附唱。

聖なる受難女(某)よ、我等爾を讃揚して、爾の聖なる記憶を尊む、爾は我等の為にハリストス我が神に祈り給へばなり。

  抜粋聖詠

「神は我等の避所なり、能力なり。」

  多燭詞(ポリエレイ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第八調。

睿智なる克肖致命女(某)よ、爾はハリストスを愛する愛を以て霊を縛りて、朽つべき暫時の諸事を心に留めざりき、言の光栄なる門徒として、先には斎を以て諸慾を殺し、後には受難を以て詭譎(きけつ)の者を辱かしめたり、故に造物主の前に二倍の勇(いさみ)を得給へり、熱切に其旨に順(したが)ひたればなり。ハリストス神に祈りて、愛を以て爾の聖なる記憶を尊む者に諸罪の赦しを賜はんことを求め給へ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

讃美たる者よ、爾は造物主の純潔なる聘女(よめ)とし、贖罪主の夫に與らざる母とし、撫恤者(ぶじゅつしゃ)を承(う)くる器として、我自ら知りて不法の汚らわしき居処(すまひ)及び悪鬼の玩弄(がんろう)と為りし者を速やかに其悪計より脱れしめて、諸徳の光明なる居処(すまひ)と為し給へ。光を施す不朽なる童貞女よ、我が慾の雲を散じて、爾の祈祷を以て我を上の晩(く)れざる光に與らしめ給へ。

  品第詞(ステペンナ)、第四調の第一倡和詞(アンティフォン)。

  提綱(ポロキメン)

神よ、爾は爾の聖所に於て厳(おごそか)なり。

句 イズライリの源より出づる者よ、教会に於て主神を崇め讃めよ。 

  「凡そ呼吸ある者。」

  致命女の福音経、巻末に載す。

  第五十聖詠の後に讃頌(スティヒラ)、第六調。

勝たれぬ受難女及び致命女たる童貞女(某)は諸徳を妝(よそほ)はれ、潔浄の油と受難の血とに飾られ、欣ばしく燈(ともしび)を執りて、救世主の右に立ちて彼に呼べり、ハリストス神よ、我爾の香料の香(か)を聞きて趨れり、爾を愛する愛に刺されたればなり、天の新娶者(はなむこ)よ、我を退くる勿れと。全能の救世主よ、彼の祈祷に由りて爾の仁慈を我等に被らせ給へ。

  規程(カノン)、第八調。

  第一歌頌

イルモス 我等其民をして紅(くれない)の海を過(とほ)らせし主に歌はん、彼獨(ひとり)厳かに光栄を顕したればなり。

神智なる者よ、我此の光明なる爾の記憶を尊む者に光照を与へて、吾が霊の幽暗(くらやみ)を散じ給へ。

(某)よ、爾は襁褓(むつき)より己を全く爾の造成主に奉りて、節制の火を以て肉慾を焚(や)き給へり。

致命女よ、爾は身を惜しまずして、苦しみの高きに登りて、童貞女として無形なる婚筵(こんえん)の宮に入るを得給へり。

  生神女讃詞

少女よ、我等は爾を天に至る梯(かけはし)として尊む、神は此の上に立ちて、人人を天の者と為し給へり。

  第三歌頌

イルモス 主よ、爾は爾に趨り附く者の固め、爾は昧(くら)まされし者の光なり、我が神゜は爾を歌ふ。

光栄なる(某)よ、爾は迫害者の裁判所の前に立ちて、萬有の造成者及び主宰たるハリストス、神言(かみことば)を伝え給へり。

光栄なる(某)よ、見ゆる像(すがた)の中に映(えい)じたる心の華美は見る者の為に爾を至りて美(うるは)しき者と顕したり。

女(じょ)よ、爾が自由にハリストスの貧しきを愛せしに因りて、彼は爾に醫治(いやし)の竭(つ)くされぬ富を与へ給へり。

  生神女讃詞

光の母よ、爾の祈祷の火を以て我が諸罪の物質を焚(や)きて、我に神聖なる赦免の露を注ぎ給へ。

  坐誦讃詞(セダレン)、第一調。

霊智の牝羊たる奇異なる(某)よ、爾は修斎(しゅさい)と受難とを以て己を羔(こひつじ)及び牧者に捧げ、信を守りて、馳すべき程(みち)を尽くし給へり、故に我等今日喜びを以て爾の聖にせられし記憶を行ひて、ハリストスを讃栄す。

  光栄、今も、生神女讃詞。

生神女よ、爾の諸僕の祈祷を納(い)れて、我等を諸々の患難より救ひ給へ、爾はハリストス救世主、我等の霊の贖罪主を生みたればなり。

  十字架生神女讃詞

至浄なる者よ、我等衆爾の転達を有ちて、爾の祈祷に因りて諸難より救はれ、爾の子の十字架を以て諸方に護られて、職として敬虔に爾を崇め讃む。

  第四歌頌

イルモス 主よ、我爾が摂理の秘密を聆(き)き、爾の作為(しわざ)を悟り、爾の神性を讃栄せり。

致命女よ、至りて不法なる者は爾少(わか)き時よりハリストスの最(いと)易(やす)き軛(くびき)を負ひし者に重き任(に)を荷(にな)はしめんことを定めたり。

(某)よ、爾の血の滴(したたり)は多神の熾炭(やけずみ)を滅(け)し、爾の奇跡の光線は人人の苦痛を焚(や)く。

致命女よ、火は地より益々高く騰(のぼ)り、爾の胸に至りて、主宰に於ける爾の熱心を彌(いよいよ)高くせり。

  生神女讃詞

童貞女よ、爾は産の前に於けるが如く、産の後にも不朽に止まれり、蓋世世の先よりありし主を嬰児(おさなご)として生み給へり。

  第五歌頌

イルモス 主よ、我等夙(つと)に興(お)きて爾に籲(よ)ぶ、我等を救ひ給へ、爾は我等の神なればなり、爾の外(ほか)他(た)の神を知らず。

致命女(某)よ、爾は物質の火に弱められぬ者と現れたり、神聖なる愛の心の火が爾を堅めたればなり。

致命女(某)よ、爾は打ち傷にて面(おもて)を飾られて、諸敵の醜悪なる無知を斥け給へり。

神智なる(某)よ、爾は木の上に舒(の)べられて、愛を以て爾の新郎(はなむこ)の神聖なる苦しみを形(かたど)り給へり。

  生神女讃詞

讃美たる女宰、至浄なる生神女よ、我等爾を歌ふ、爾は身にて至りて讃美たる神を生みたればなり。

  第六歌頌

イルモス 光を衣の如く衣(き)る慈憐の深きハリストス我が神よ、我に光明の衣を予(あた)へ給へ。

受難女(某)よ、爾の肉体は傷に壊(やぶ)られて、爾の良心のハリストス我等の神の前に義なるを顕したり。

讃美たる致命女(某)よ、爾は高く懸けられ、傷を忍びて、爾の霊の高潔を傷なく守り給へり。

光栄なる克肖女よ、爾は乳房を断たるるを忍びて、信者を神聖なる熱信の乳(ち)にて養ひ給ふ。

  生神女讃詞

人を愛する神を生みし神に愛せらるる女宰よ、我等が「ゲエンナ」の火より救はれんことを彼に祷り給へ。

  小讃詞(コンダク)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の小讃詞(コンダク)を誦せよ。第二調。
 
(某)よ、今日慶賀せらるる爾の神聖なる記憶は日の如く世界に現れて、爾の度生を輝かす、蓋爾は節制を以て肉体の動揺(うごき)を治め、受難の血を以てハリストスの新婦(はなよめ)と為り給へり。求む、爾を讃め揚ぐる者を諸々の患難より救ひ給へ、我等が爾に呼ばん為なり、克肖なる母よ、慶べ。

  同讃詞(イコス)

至福至栄なる克肖致命女よ、神の前に立ちて、神に悦ばるる爾の祈祷を以て我が口を開き給へ、我が爾の神聖なる度生を歌ひ、宜しきに合(かな)ひて爾の受難を宣べん為なり、蓋爾は潔浄を愛し、常に警醒して、節制を修め、且(かつ)動かされぬ信を守り、熱切なる愛を以て勝たれぬ致命者と為り給へり。求む、爾を讃め揚ぐる者を諸々の患難より救ひ給へ、我等が爾に呼ばん為なり、克肖なる母よ、慶べ。

  第七歌頌

イルモス エウレイの少者は爐(いろり)に在りて勇ましく焔を踏み、火を露に変じて籲(よ)べり、主神よ、爾は世世に崇め讃めらる。

受難女(某)よ、爾は慶賀する者の声のある処に童女等と偕に祝ひて、神造物主に歌を奉る、主神よ、爾は世世に崇め讃めらる。

(某)よ、爾は百体の壊(やぶ)られ、爪の抜かるるを忍び、祭として神に捧げられて歌へり、主神よ、爾は崇め讃めらる。

神智なる(某)よ、爾は葡萄樹の如き者と現れ、手と足とを枝の如く斬られて、我等の為に心を慰め、諸慾の酔ひを醒ます霊智の酒を流し給へり。

  生神女讃詞

潔き者よ、無玷(むてん)なる主は罪の外(ほか)に全き人を衣(き)て、爾の胎内より身を有つ者として出で給へり、信を以て爾を尊む者を救はんことを彼に祷り給へ。

  第八歌頌

イルモス ハルデヤの窘迫者(くるしめびと)は怒りに堪へずして、敬虔の者の為に爐(いろり)を七倍熱くしたれども、上の力にて其救はれしを見て、造物主と救世主に呼べり、少者よ、崇め讃めよ、司祭よ、讃め歌へ、民よ、萬世に尊み崇めよ。

至りて讃美たる受難女よ、爾は雄雄しく勇みて、迷ひに対して勝利を得たり、蓋手と足との断たれ、乳房の斬られ、歯の折(くじ)かるるを忍びて、喜びて歌へり、民よ、ハリストスを世世に尊み崇めよ。

致命女よ、爾は光潔なる童貞と受難の華麗とを以て日の如く輝き、世界を照して歌へり、少者よ、崇め讃めよ、司祭よ、讃め歌へ、民よ、ハリストスを世世に尊み崇めよ。

神の聘女(よめ)たる致命女(某)よ、諸慾に汚され、蛇の誘惑(いざなひ)に昧(くら)まされたる吾が霊を爾の祈祷と爾の光明なる帲幪(おおい)とを以て潔め、之を照して呼ばしめ給へ、司祭よ、讃め歌へ、民よ、ハリストスを世世に尊み崇めよ。

  生神女讃詞

生神童貞女よ、致命女は爾純潔無玷(むてん)なる者を慕ひて、体と霊とを玷(きず)なく守り、諸慾の萌芽(きざし)を絶やし、多くの苦しみの誘惑(いざなひ)を忍びて、今爾と偕に天の宮に祝ひて、世世に楽しむ。

  第九歌頌

イルモス 天は懼れ、地の極(はて)は驚けり、神は身にて人人に現れ、爾の腹は天より広き者と為りたればなり、故に天使と人人の群(むれ)は爾生神女を崇め讃む。

潔き(某)、修道女の光栄、致命者の飾りなる者よ、爾は木に懸けられて、神の言の福たる苦しみを形(かたど)り、爾の手と足との断たれ、歯の折(くじ)かれ、舌と乳房との斬らるるを忍び給へり。

(某)よ、爾は新婦(はなよめ)として受難の華美に飾られて、新郎(はなむこ)に聘定せられ、選ばれたる者として、童貞の燈(ともしび)を執りて、光明なる宮に入り、今輝きて、世世に生くる者と偕に王たり。

尊貴なる(某)よ、爾の苦しみは甘味を滴(したた)らして、罪の苦きを滅(け)し、柩は醫治(いやし)の流れを注ぎて、諸慾と甚だしき諸病とを溺らして、救世主の光栄を現す、彼は宜しきに合ひて爾を栄し給ふ。

生神女讃詞

主よ、爾女より身を取りし者を熱切に愛する爾の致命女は童貞の光潔に飾られ、受難の血に染められて、爾の母の後に従ひて、爾萬物の王たる神の前に厳かに携へられたり。

  光耀歌

神に肖たる(某)、童貞の器、人性の美(うるわ)しき花、王の女(じょ)、其光栄を己の内に有つ者よ、爾は信を以て爾の尊き柩に趨り附く者の為に河の如く醫治(いやし)を流し給ふ。

  生神女讃詞

実在の睿智、永在の言、及び霊体の醫師を生みし童貞女よ、吾が霊の傷を治(ぢ)し、吾が心の甚しき病を醫(いや)し給へ。

  「凡そ呼吸ある者」に讃頌(スティヒラ)、第八調。

讃美たる(某)、勝たれぬ致命女、童貞の神聖なる鏡、人性の最(いと)美(うるは)しき花よ、爾は世の栄華を棄てて、大いなる諸徳を以て霊の髙潔を輝かし、度生の時に神の像の恩賜を聊(いささか)も玷(きず)つくるなく守り給へり。二次

至りて睿智なる(某)よ、爾は言と行ひとに於て恩寵と諸徳とを以て霊を飾りて、受難者の群(むれ)及び童貞女の会を童貞女より輝き出でて衆の為に天国に入る門を啓きたる主に携へ給へり。彼等と偕に今も爾の群(ぐん)を救はんことを主に祷り給へ。

ハリストスの新婦(はなよめ)よ、義なる主は爾を潔き童貞女及び光栄なる致命女として、二倍の栄冠を以て最(いと)美(うるは)しく飾りて、光明なる宮を爾に賜へり、爾は彼処(かしこ)に入りて、今楽しみ給ふ。

  光栄、第四調。自調。

睿智なる克肖致命女、修道女の飾り、受難女の誉れなる者よ、爾の体は鐵搭(くまで)にて掻(か)かれて、爾の霊の輝ける華美は彌(いよいよ)美(うるは)しく現れたり、今爾は竒跡の常に流るる泉なり、悪鬼を逐ふ者、爾の記憶を尊む者の為に祈祷する者なり。

  今も、生神女讃詞。

至浄なる生神童貞女よ、我等は爾を垣墻(かき)と穏やかなる港及び固めとして得たり、故に我度生の中に荒らさるる者は祷る、我を導きて救ひ給へ。

  十字架生神女讃詞

母よ、我爾の子及び神、地を寄する所なく水の上に懸けて、萬物を造りし者が木の上に懸れるを見て、泣く毋れ、蓋我起きて光栄を獲、異能を以て地獄の国を破り、其力を滅ぼし、慈憐の者として、俘虜(とりこ)を其悪業より救ひ、人を愛する者として、之を吾が父の許に携へん。

  若し挿句に光栄あらば、晩課の、今も、生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞を誦せよ。


目次に戻る