第二十三編
 二人或は多人の克肖女の総奉事



 晩課

 「主よ爾に籲(よ)ぶ」に讃頌(スティヒラ)、第一調。

爾等は上より輝く光線の如く、無形の光を以て世界を照し、幽暗(くらやみ)を散じ、悪鬼の凶悪なる軍を逐ふ、故に我等は爾等の光明にして
神聖なる慶賀を祭る。

最(いと)尊き者よ、爾等は楽園の華麗を見て、豊かに之に養はれて、世界の為に神聖なる智慧の不朽の花を生じたり、我等今日属神゜の愛
を以て之に與かりて凡の霊の善果(ぜんか)を結ぶ。

最(いと)尊き者よ、爾等は修道女の度生を以て衆人の為に日の如く輝きて、修斎者(しゅさいしゃ)の大数を飾り給へり、故に彼等と偕に栄せら
れ、神聖なる光栄を楽しみて我等の救はれんことを祈り給ふ。

  光栄、今も、生神女讃詞。

神の母よ、我諸罪の海に荒らさるる者は爾の至浄なる祈祷の穏やかなる港に着きて呼ぶ、純潔なる者よ、爾の権能の右の手を伸べて、爾の僕
を救ひ給へ。

 十字架生神女讃詞

視よ、昔我に預言せられし如く、吾が子ハリストスよ、戈(ほこ)は吾が心を貫きたり、是れ我が爾地上の諸子より最(いと)美(うるは)しき者が甘
んじて盗賊と偕に犯罪者の如く十字架に懸けられたるを見し時なり。

  もし之あらば、自調。光栄、第八調。

爾等は涙の流れを以て肉慾の燃ゆるを滅(け)し、神聖なる熱心を起して、ハリストス王を愛して、潔く彼に合はせられたり。故に今天上の宮に
入り、仁愛なる主に爾等を尊む者の為に祷り給へ。

  今も、生神女讃詞

女宰よ、爾の諸僕の祈祷(いのり)を納(い)れて、我等を諸々の災禍(わざわい)と憂愁(うれい)より救ひ給へ。

  もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭を行はば、復活の生神女讃詞を誦すべし。



  聖入。本日の提綱(ポロキメン)。克肖者の喩言(パリミヤ)三篇、巻末に載す。

  挿句(くづけ)の讃頌(スティヒラ)、第四調。

克肖女よ、爾等は生命(いのち)に導く細き路(みち)を行き、穏やかなる風に由りて世を度り、勇ましく悪鬼の攻撃を退けて、修斎女(しゅさいじ
ょ)の誉れと為れり、故に天の国を嗣ぐ者と為りて、絶えず言ひ難き華麗を楽しみ給ふ。

句 神よ、爾は爾の聖所に於て厳かなり。

爾等の至りて光明なる生命(いのち)は諸天使を驚かし、悪鬼の軍を恐れしめ、信者の会を美(うるは)しく飾りて、常に之にハリストスの天上の
居処(すまひ)の往く路(みち)を示す。求む、信を以て爾等の最(いと)尊き記憶を行ふ者の朽壊及び患難より救はれんことをハリストスに祈り給
へ。

句 聖人の死は主の目の前に貴し。

克肖女よ、爾等は野に居りて、心と思ひとを獨神に捧げ、日々に歌頌と讃美とをハリストスに奉りて、大いなるモイセイの如く山上に登り、見えざ
る敵に勝ちて、聖神゜の潔き器と為り給へり。

  光栄、第四調。

克肖女よ、少女等は新郎(はなむこ)たる主を愛して、彼の教へに従ひ、神゜を以て肉体の柔弱を堅めて、敬虔に諸慾を制し、爾等と偕に天上
の宮に入れられて、常に楽しむ。

  今も、生神女讃詞。

滅(け)されぬ燈(ともしび)、義の王の宝座たる至浄なる女宰よ、我等の霊の救はれんことを祷り給へ。

  十字架生神女讃詞

母よ、我爾の子及び神、地を寄する所なく水の上に懸けて、萬物を造りし者が木の上の懸れるを見て、泣く毋れ、蓋我起きて光栄を獲、異能を
以て地獄の国を破り、其力を滅ぼし、慈憐の者として、俘虜(とりこ)を其悪業より救ひ、人を愛する者として之を吾が父の許に携へん。

  克肖女の讃詞(トロパリ)、第二調。

光栄なる者よ、爾等は地上の婚姻を忌みて、熱切なる愛を以てハリストスの新婦(はなよめ)と為り、諸徳の功労に生長して、不朽の高きに登り
、霊の美(うるは)しく善行の富める者にして、修道女の柱及び範(のり)と為り給へり。求む、愛を以て爾等の記憶を祭る我等の為に絶えず祷り
給へ。

  光栄、今も、生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞。

  早課

  「主は神なり」に讃詞(トロパリ)同上。

  第一の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第三調。

聖にして福たる克肖女よ、爾等は世の栄華を棄てて、朽つべき富を過ぎ去らぬ常住なる者に易へたり、故に我等は諸聖人と偕に爾等の聖にせ
られし記憶を讃栄慶賀して、爾等の祈祷に由りて大いなる憐みを得んことを求む。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

神の恩寵を蒙れる女宰よ、爾に於て行はれたる畏るべき神の奥密は量り難く悟り難し、蓋爾は限られぬ者を孕み、之を爾の至浄なる血より身を
衣(き)たる者として生み給へり。潔き者よ、彼に其爾の子たるに因りて、我等の霊の救はれんことを常に祷り給へ。

  第二の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第五調。

福たる克肖女よ、爾等は節制を以て己の生命(いのち)を飾り、肢体を殺して敵の誘惑(いざない)に勝ち、野の住者にして、世界の為に霊智
なる燈(ともしび)と顕れたり。求む、主に我等の霊を憐まんことを祷り給へ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

我等信者は爾を港と垣墻(かき)と、避所(かくれが)、倚頼(たのみ)と、帲幪(おおい)、及び熱切なる転達者として得て、爾に趨り附き、慎みて
呼び、熱心に祷る、生神女よ、爾を頼む者を憐みて、諸罪より救ひ給へ。

  「主の名を讃め揚げよ」の後に附唱。

克肖なる母等(ははたち)よ、我等爾を讃美して、爾等の聖なる記憶を尊む、爾等は我等の為にハリストス我が神に祈り給へばなり。

  抜粋聖詠

「我切に主を恃みしに、彼我に傾きて。」

  多燭詞(ポリエレイ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第八調。

福たる者よ、爾等は警醒して隠(ひそか)なる祈祷を為し、聖書を楽しみ、主の十字架を任ひて、節制を以て彼に従ひ、蛇の悉くの誘惑(いざな
い)に勝ちて、ハリストスに呼べり、天の新郎(はなむこ)よ、爾我等の為に固めと為り給へ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

我等の為に童貞女より生れ、十字架に釘うたるるを忍び、神なるに依りて死にて死を滅ぼし、復活を顕しし仁慈なる主よ、爾の手にて造りし者
を棄つる勿れ、慈憐の主よ、爾が人を愛する愛を顕して、我等の為に祈祷する所の爾を生みし生神女を受け給へ、我が救主よ、望みを失へる
人々を救ひ給へ。

  品第詞(ステペンナ)、第四調の第一倡和詞(アンティフォン)。

  提綱(ポロキメン)

神よ、爾は爾の聖所に於て厳かなり。

句 イズライリの源より出づる者よ、教会に於て主神を崇め讃めよ。 

  「凡そ呼吸ある者。」

  克肖女の福音経、巻末に載す。

  第五十聖詠の後に讃頌(スティヒラ)、第八調。「主よ爾に籲(よ)ぶ」の光栄に載す。

爾等は涙の流れを以て肉慾の燃ゆるを滅(け)し、神聖なる熱心を起して、ハリストス王を愛して、潔く彼に合はせられたり。故に今天上の宮に
入り、仁愛なる主に爾等を尊む者の為に祷り給へ。

  規程(カノン)、第八調。

  第一歌頌

イルモス 昔奇蹟を行ふモイセイの杖は、十字形に撃ちて、海を分ち、車に乗りて追い来るファラオンを沈め、徒歩(かち)にて逃るるイズライリ、神
を讃め歌ふ者を救ひ給へり。 

克肖女よ、爾等は柔弱なる身を以て強き敵を斃(たお)し、神に合せられて、我等衆に救ひの力を賜はんことを祷り給ふ。

爾等は新郎(はなむこ)の華麗を愛して、彼に就きて、生命(いのち)に導く彼の後に従へり、故に敵たる蛇を斃(たお)し給へり。

克肖女よ、爾等は斎の勤労を以て肉体の華美を凋(しぼ)ませ、爾等の霊を飾りて、新郎(はなむこ)ハリストスと偕に光明なる宮に入り給へり。

  生神女讃詞

童貞女よ、爾の腹は仁慈に由りて現れんと欲せし主の為に光明なる宮と為れり、彼は爾より身を取りて出でて、衆を神智の光にて照し給へり。

  第三歌頌

イルモス 主、天の穹蒼(おおぞら)の至上なる造成者、教会の建立者、冀望(きぼう)の極(かぎり)、信者の固め、獨人を愛する者よ、我を爾
の愛に堅め給へ。

尊貴神福なる者よ、爾等は肉体の美(うるは)しきを顧みず、過ぎ易き栄華を夢の如く見て、謙遜(へりくだり)と斎とを以て神を尋ね給へり。

克肖女の聖躯は耀きて、信を以て之に趨り附く者に醫治(いやし)を与ふ、蓋彼等は主の自由なる苦しみに效(なら)ひて、救ひの泉より恩寵を
汲みたり。

爾等は世と肉の念(おもい)とを棄てて、節制と勤労とを以て至浄なる新郎(はなむこ)ハリストスを獲たり、彼は爾等に天の宮及び神聖なる楽し
みを賜ふ。

  生神女讃詞

至浄なる童貞女よ、昔聖なる預言者の聖にせられし角(らっぱ)は預(あらかじ)め爾を知らせて、光を放つ門、活ける巻軸(まきもの)、之に言が
言に超えて手に由らずして録されたる者と為せり。

  坐誦讃詞(セダレン)、第四調。

光明尊貴なる克肖女よ、爾等はハリストスの十字架を肩に任ひ、修斎(しゅさい)の行ひを以て忠信に彼に従ひて、凡その修斎女(しゅさいじょ)
の為に範(のり)と現れたり。神聖なる勤労を以て天上の国を嗣ぎたる者よ、我等の霊の救はれんことを絶えず祷り給へ。

  光栄、今も、生神女讃詞。

生神童貞女、獨祝福せられし者よ、我等は爾より身を取りし者を父の言ハリストス我等の神なりと知れり、故に絶えず爾を歌ひて崇め讃む。

  十字架生神女讃詞

ハリストスよ、爾無原なる父より生れし主を末(すえ)の時に身にて生みし者は爾が十字架に懸れるを見て呼べり、哀しい哉至愛なるイイスス吾
が子よ、如何ぞ爾諸天使より神として讃栄せらるる者は今不法なる人々より甘んじて十字架に釘せらるる、恒忍(ごうにん)なる主よ、我爾を歌
ふ。

  第四歌頌

イルモス 主よ、我爾が摂理の秘密を聆(き)き、爾の作為(しわざ)を悟り、爾の神性を讃栄せり。

克肖なる女等(おんなたち)は節制を以て肉体の華美を凋(しぼ)ませて、己の至愛なる新郎(はなむこ)の至浄なる華麗を仰ぎ給ふ。

聖にせられし女等(おんなたち)よ、爾等は霊の眶(まぶた)より眠りを払いて、節制を以て肉体の動揺(うごき)を眠らせ給へり。

克肖女よ、聖神゜の光に輝ける爾等の光明なる慶賀は信を以て爾等を尊む我等の霊を照す。

  生神女讃詞

主よ、克肖女は爾至浄なる童貞女より身を取りし者を慕ひ、爾を愛する神聖なる愛に刺されて、爾の香料の香気(かおり)逐ひて趨れり。

  第五歌頌

イルモス 隠れざる光よ、何ぞ我を爾の顔(かんばせ)より退けし、外(ほか)の闇は憐れなる我を掩(おお)へり、祈る、我を返して、我が途(みち)
を爾の誡めの光に向はしめ給へ。

最(いと)尊き者よ、爾等は聖神゜の力に籍(よ)りて諸病を解き、爾等の奇跡の至栄なる光線を以て病の幽暗(くらやみ)を逐ひ、信者を天の国
の大いなる光に導く。

尊栄神福なる者よ、爾等は世の為に殺されて、不死の生命(いのち)を嗣ぎ、斎の油を以て爾等の燈(ともしび)を滅(け)されぬ者と守りて、神
聖なる宮に入るを得たり。

福たる者よ、爾等は暫時にして朽つべき生命(いのち)を意とせずして、属神の愛に縛られて、唯(ただ)天の新郎(はなむこ)に至るを重んぜり、
故に今義人等の居住(すまい)のある処に居り給ふ。

  生神女讃詞

至浄なる者よ、神の言 神は爾を童貞女と護りて、甘んじて爾の婚姻に與らざる胎内に入りて、人と見られたり、少女等は彼を慕ひて、斎と光明
なる度生とを以て彼に従へり。

  第六歌頌

イルモス 我祷りを主の前に灌(そそ)ぎ、我が憂ひを彼に告げん、我が霊は悪に満ち、我が生命(いのち)は地獄に近づきたればなり、我イオナの
如く祈る、神よ、我を淪亡(ほろび)より引き上げ給へ。

聖にせられし女等(おんなたち)よ、爾等は節制と謙遜の心、警醒と矜恤(きょうじゅつ)、智慧と信、并(ならび)に全き愛を獲て、神の殿及び奇
跡の尽きざる泉と為り給へり。

尊貴にして奇異なる者よ、爾等は我等の為に地に降りて地上に首(こうべ)を枕する処なかりし主を愛するに因りて、度生の逸楽を疎んじ、斎の
勤労を忍べり、故に彼は爾等を天に其光明なる宮に受け給へり。

最尊き者よ、爾等は多くの警醒を以て霊を害する諸慾を眠らせ、宜しきに合(かな)ひて義なる眠りに眠りて、世界の為に祷り給ふ。

  生神女讃詞

童貞女よ、我爾を神の前の転達者と我が生命(いのち)の堅固なる守護者、及び禍ひの患(うれい)を解き、悪鬼の攻撃を逐ふ者と知りて、常に
祈る、我が諸慾の害より我を救ひ給へ。

  小讃詞(コンダク)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の小讃詞(コンダク)を誦せよ。第二調。
 
爾等は斎を以て己の肉体を疲らせ、眠らざる祈祷を以て造成主に己の罪の為に、其全き赦しを獲んことを祈りしに因りて、神聖なる赦免と天国
とを受けて、ハリストス神に我等衆の為に祷り給ふ。

  同讃詞(イコス)

淵を閉ざし及び之を啓き、水を雲の中に騰(のぼ)せて、雨を地の面(おもて)に与ふる神よ、爾我が果(み)を結ばざる霊に口を啓かん為に調和
したる言語を、吃(ども)る舌に明らかなる言を賜へ、我が宜しきに合(かな)ひて爾の克肖女、爾が親(みづか)ら栄せし者を歌ふを得ん為なり。
蓋彼等は爾の為に此の世の美(うるは)しき諸事を顧みず、己の身を疲らせ、爾の力を以て悪魔に勝ち、爾より忍耐の栄冠を受けて、今衆聖
人と偕に天に爾の前に立ちて、絶えず我等衆の為に祷る。

  第七歌頌

イルモス 昔ワワィロンに於てイウデヤより来たりし少者は、聖三の信を以て、爐(いろり)の焔を踏みて歌へり、先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

克肖女は愛に縁りて朽つべき栄華を不朽の光栄に易へて、常に之を楽しみ、歓び祝ひて歌ふ、我が先祖の神は崇め讃めらる。

爾等は最(いと)明らかなる星と現れて、爾等の功労の光を以て信者の霊を照して歌はしむ、我が先祖の神は崇め讃めらる。

爾等は醫治(いやし)の川と現れて、諸慾の海を溺らし、我が先祖の神は崇め讃めらると歌ふ者を救ひ給ふ。

  生神女讃詞

神の母よ、我が不当なる霊を罪の縲絏(なわめ)より解きて、神の完全なる愛に繋ぎ給へ、我が信を以て爾を讃栄して、世世に歌はん為なり。

  第八歌頌

イルモス 爾の誡めに熱中せし少者は、爾の恩寵に因りて、窘迫者(くるしめびと)及び火焔(ほのお)に勝つ者と為りて籲(よ)べり、主の悉くの造
物は主を崇め讃めよ。

童女等よ、爾等は無智なる諸慾を智慧に服せしめ、霊を全うして新郎(はなむこ)たる言に合せられて歌へり、悉くの造物は主を崇めて、世世に
彼を讃め揚げよ。

聖にせられし童女等よ、爾等は世の為に釘せられ、神聖なる愛に刺されて、逸楽の食を以てエワを害せし者を節制の矢を以て殺して、ハリスト
スを世世に讃め歌ふ。

尊貴なる克肖女よ、爾等は意念を以て無知なる慾情を服せしめて、無玷(むてん)の者として新郎(はなむこ)たる言の新婦(はなよめ)と為りて
歌ふ、悉くの造物は主を崇めて、世世に彼を讃め揚げよ。

  生神女讃詞

爾の浄(きよ)き血より身を取りしイイススを生みたる至浄なる童貞女母よ、爾は衆童女を集めて、彼等と偕に歌ふ、悉くの造物は主を崇めて、
世世に彼を讃め揚げよ。

  第九歌頌

イルモス 潔き童貞女よ、我等爾に依りて、救はれし者は爾を実に生神女と承け認(と)めて、無形の軍と偕に爾を崇め讃む。

美麗にして妙音なる班鳩(やまばと)、美(うるは)しくして清浄(しょうじょう)を好む燕(つばめ)よ、爾等は主宰の許に天の華麗なる処に携へられ
たり。

爾等は天上の品位に合せられ、選ばれたる者の会の中に入りて、愛を以て我等の為に仁慈なる神に祷り給ふ。

克肖女の記憶は日の如く世界に輝きて、信者の思ひを照し、常にハリストスを讃揚せしむ。

生神女讃詞

光の器たる童貞女よ、諸慾に昧(くら)まされたる吾が霊を照して、爾の祈祷を以て我を外の幽暗(くらやみ)より脱れしめ給へ。

  光耀歌

至りて尊き克肖女よ、愛を以て祷りて爾等の記憶を行ふ者を神贖罪主に奉る爾等の祈祷を以て凡の患難より救ひ、我聊(いささか)爾等を歌
頌せし者にも霊の汚(けが)れを洗ひ給へ。

  生神女讃詞

童貞女よ、我等の為に爾の子仁愛なる神に祷るを息(や)むる勿れ、蓋我等信を以て爾を讃栄する者は恃頼(たのみ)を爾に負はしめ、爾の
轉達を以て諸難と諸慾、諸罪と諸病より救はる。

  「凡そ呼吸ある者」に讃頌(スティヒラ)、第四調。

克肖女よ、爾等不朽に己の童貞を守り、清淨(しょうじょう)無垢に生(いのち)を送り、恩寵を蒙りて、ハリストスの戒めを行ひ、地及び之に属す
る事を舎(す)てて、彼に従へり。故に仁愛なるイイスス我等の霊の救主は爾等に天及び天に属する事を賜へり。二次

克肖女よ、爾等は睿智を愛し、霊の不死を尊み、神に奉事せんと欲して、其悦びを獲ん為に常に警醒して、己を凡の罪の汚(けが)れより護れ
り。故に無垢無玷(むてん)の者として天の新郎(はなむこ)の前に立ち給へり。

讃美たる者よ、ハリストスは爾等を己の克肖者とし、矜恤(きょうじゅつ)なる者とし、神に愛せらるる者として栄せしに因りて、爾等の光明なる面(
おもて)は死せし後にも輝く、蓋爾等は地上に諸天使と侔(ひと)しき生(いのち)を送りて、光明なる度生を以て神の悦びを獲給へり。

  光栄、第一調。

克肖なる女等(おんなたち)よ、爾等は肉体に属する事を一切慮(おもんぱか)らずして、節制と勤労とに由りて天の居処(すまい)に登れり、其
内に爾等が愛する所の言ひ難き華麗を楽しみ給ふ。

  今も、生神女讃詞。

聖なる生神童貞女よ、慶べ、全地の潔き転達者、滅(け)されぬ燈(ともしび)、容(い)れられぬ者の容れ処、壊(こぼ)たれぬ殿よ、慶べ、全世
界の罪を任ひし神の羔(こひつじ)を生みたる者よ、慶べ。

  十字架生神女讃詞

無玷(むてん)なる牝羊童貞女は爾が十字架に挙げられたるを見し時、哭きて呼べり、吾が甘愛なる子よ、此の新たにして神妙なる顕見(あら
はれ)は何ぞや、如何ぞ爾萬物を手に有つ者にして、身にて木の上に釘せらるる。

  若し挿句に光栄あらば、晩課の、今も、生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞を誦せよ。

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