第十七編
 二人或は多人の神゜品致命者の総奉事
 


 晩課

 「主よ爾に籲(よ)ぶ」に讃頌(スティヒラ)、第一調。

光栄なる役者よ、爾等は成聖者の衣を実に美(うるは)しく致命の血にて飾り、之に美(うるは)しく飾られて、諸天使と偕に造物主の前に立ち給へり。我等の霊に平安と大いなる憐れみとを賜はんことを彼に祈り給へ。

爾等は実に神に感ぜらるる器として我等に現れて、聖書の言ひ難き神の奥密を伝へ、偶像の無知を論破して、衆をハリストスに携へ給へり。我等の霊に平安と大いなる憐れみとを賜はんことを彼に祈り給へ。

睿智なる者よ、爾等は神智の言を以て人人を無智より引き出して、彼等を救はれし者として、父より輝きし言、生れ給ひしハリストス我等の神に携へ給へり。我等の霊に平安と大いなる憐れみとを賜はんことを彼に祈り給へ。


 光栄、今も、生神女讃詞。

讃美たる潔き童貞女よ、モイセイは前知者の目にて燃えれども焚(や)かれぬ棘(いばら)の中に爾に於ける秘密を見たり、蓋神性の火は爾の腹を焚かざりき。故に我等爾に祷る、我が神の母として、世界の為に平安と大いなる憐れみとを求め給へ。

 十字架生神女讃詞

神の言よ、牝羊及び無玷(むてん)なる爾の母は爾の十字架の側(かたはら)に立ちて、哭きて呼べり、哀しい哉吾が子よ、如何ぞ爾十字架の上に死する、哀しい哉吾が甘愛なる光、衆人に超えて美(うるは)しき者よ、爾の華美の姿は今何所(いづこ)にか隠れたる。

  もし之あらば、自調。光栄、第八調。

暫時の度生(どせい)より遷(うつ)りし光栄なる神゜品致命者よ、爾等は七倍撃たれ鐵搭(くまで)にて裂かれ、ハリストスの為に十字架に釘せられしに、火も、種種の傷も、剣(つるぎ)も爾等の堅固なる霊を弱めざりき、爾等は悪鬼の力を踏み給へり。神に召されたる者よ、我等の霊を救はんことをハリストス神に祈り給へ。

  今も、生神女讃詞。

聖なる童貞生神女よ、我爾の庇廕(おほい)に趨(はし)り附く、我爾に倚りて救ひを得んことを知る、爾は、潔き者よ、我を援(たす)くるを能(よく)すればなり。

  十字架生神女讃詞

主宰イイススよ、童貞女爾の母は爾が甘んじて十字架に釘せられ、苦しみを受くるを見て呼べり、哀しい哉甘愛なる子よ、爾は人類の不能を醫(いや)す醫師、爾の慈憐を以て衆を朽壊より救ふ者にして、如何ぞ非義に傷つけらるるを忍ぶ。

  もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭を行はば、復活の生神女讃詞を誦すべし。

天の王は人を愛するに因りて地に現れ、人と偕に在(いま)せり、蓋浄き童貞女より身を取り、人の性を有ちて生れし者は、二つの性にて一つの位(くらい)ある獨一子なり、故に我等彼が実に全き神及び全き人なるを伝へて、ハリストス吾が神を承け認(みと)む、夫を識らざる母よ、我が霊の憐れみを蒙らんことを彼に祈り給へ。

  聖入。本日の提綱(ポロキメン)。致命者の喩言(パリミヤ)三篇、巻末に載す。

  挿句(くづけ)の讃頌(スティヒラ)、第四調。

光栄なる神゜品致命者よ、爾等は至りて光明なる星として、無形に教会の穹蒼(おほぞら)に輝きて、衆造物を照らし、功労の光と奇跡の光照とを以て幽暗(くらやみ)を逐ひ給ふ。故に我等今日楽しみて、爾等の光を施す聖なる記憶を行ふ。

句 爾の司祭等は義を衣(き)、爾の諸聖者は悦ばん。

使徒と同尊なりし至りて睿智なる司祭首よ、爾等は燃ゆる心を抱きて、無神なる苛虐者(くるしめびと)の残酷を畏れず、乃ち勇ましく救世主を伝へて、多種の苦しみを忍びたり。故に今天上の賞(むくい)を受け給へり。

句 神を畏れ、其誡めを極めて愛する人は福(さいはひ)なり。

福たる司祭首よ、爾等は尊き奉事と無玷(むてん)なる祭とを主宰ハリストスに献じて、又受難者と為りて己を完全なる燔祭として主に捧げ給へり。彼に祈りて、信を以て爾の尊き記憶を行ふ者を患難及び朽壊より救はんことを求め給へ。

  光栄、第四調。

勝たれぬ致命者、讃美たる成聖者、神智なる諸神゜父よ、爾等は全世界の燈(ともしび)、神の教会の動きなき柱、教への範(のり)、敬虔の者の教導師、諸異端の絶滅者、我等の霊の光明なる教師、諸天使の対話者、聖三者の軍士と為り給へり。

  今も、生神女讃詞。

讃美たる潔き生神女よ、我が慾に耽りたる情(こころ)の汚(けがれ)を洗ひ、罪に縁(よ)る其悉くの傷と膿(のう)とを浄(きよ)め、我が動き易き智慧を治め給へ、我不当なる卑しき爾の僕が爾の力と大いなる保護とを讃め揚げん為なり。

  十字架生神女讃詞

至淨なる者は人を愛する主ハリストスの十字架に釘せられ、戈(ほこ)にて脅(わき)の刺さるるを見て、哭きて呼べり、吾が子よ、此れ何ぞ、恩を知らざる民は爾が彼等に為しし善に易へて何をか爾に報いたる、至愛なる者よ、胡為(なんす)れぞ我を子なき者として遺す、慈憐なる主よ、我爾が甘じて受くる釘殺(ていさつ)を奇とす。

  讃詞(トロパリ)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の讃詞(トロパリ)を誦せよ。第四調。

我が先祖の神、常に爾の寛容に由りて我等に行ふ主よ、爾の仁慈を我等より離さずして、彼等の祈祷に因りて、我が生命(いのち)を平安に治め給へ。

  光栄、今も、生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞。

  早課

  「主は神なり」に讃詞(トロパリ)同上。

  第一の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第八調。

克肖なる神智者よ、爾等は睿智の海を窮め、属神゜の深所(ふかみ)を宣べ、三者の惟一の神性を伝へ、諸天使の品位と其光照の奥密とを録(しる)せり、故に又地上の成聖者の職を尽して、惟一の成聖の泉に升せられたり。神品致命者よ、ハリストス神に祈りて、愛を以て爾等の聖なる記憶を尊む者に諸罪の赦しを賜はんことを求め給へ。 二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

霊智なる日の雲、神聖なる光の黄金(こがね)の燈台、無玷(むてん)無垢純潔なる女宰よ、祈る、諸慾の闇に昧まされたる吾が霊を無慾の光線にて照し、我が汚れたる心を傷感の流れ、痛悔の涙にて洗ひ、我が行ひの泥(ひぢ)より我を潔め給へ、我が愛を以て爾に呼ばん為なり、生神女永貞童女よ、我に諸罪の赦しを賜はんことをハリストス神に祈り給へ、我爾の僕が爾を恃頼(たのみ)とすればなり。

  第二の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第五調。

克肖なる神゜品致命者よ、爾等は使徒の言を以て己の智慧を照して、善く信者の会を牧し、我等の為に生神童貞女より身を取りて、光栄を以て復活せし主を窘逐者(きんちくしゃ)の前に承け認(みと)めて、潔き祭として造成主及び王に捧げられたり。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

潔き永貞童女よ、爾に趨り附く者の為に熱切にして勝たれぬ轉達者、堅固にして恥を得ざる恃頼(たのみ)、垣牆(かき)と、帲幪(おほい)と、港なる者よ、諸天使と偕に爾の子及び神に祈りて、世界に平安と、救ひと、大いなる憐れみとを賜はんことを求め給へ。

  「主の名を讃め揚げよ」の後に附唱。

ハリストスの神品致命者よ、我等爾等を讃揚して、爾等の聖なる記憶を尊む、爾等は我等の為にハリストス我が神に祈り給へばなり。

  抜粋聖詠

「萬民之を聴け、全地に居る者皆之に耳を傾けよ。」

  多燭詞(ポリエレイ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第一調。

神品致命者よ、爾等は己の勤労を以て神智の果(み)を生長せしめて、教への耜(すき)を以て無神を根より絶(たや)し、恩寵の香料を塗られて、善く人人を牧し、法に遵(したが)ひて苦しみを受けて、ハリストスより二倍の尊栄を獲給へり。光栄は爾等に力を賜ひし主に帰す、光栄は爾等に栄冠を冠らせし主に帰す、光栄は爾等を以て衆に醫治(いやし)を賜ふ主に帰す。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

至聖なる童貞女よ、仁慈に因りて身を取りし造成主を抱きたる爾の神聖なる手を彼に伸べて、我等を諸々の誘惑(いざなひ)、諸慾及び患難より救はんことを祈り給へ、蓋我等は愛を以て爾を崇め讃めて呼ぶ、光栄は爾の内に入り給ひし主に帰す、光栄は爾より出で給ひし主に帰す、光栄は爾の産を以て我等を救ひ給ひし主に帰す。

  品第詞(ステペンナ)、第四調の第一倡和詞(アンティフォン)。

  提綱(ポロキメン)

聖人の死は主の目の前に貴し。句 我何を以て主の我に施しし悉くの恩に報いん。

  「凡そ呼吸ある者。」神品致命者の福音経、巻末に載す。

  第五十聖詠の後に讃頌(スティヒラ)、第四調。

互(たがひ)に兄弟(けいてい)たる致命者よ、爾等はハリストスの教会の柱として、無神の垣を壊(やぶ)り死の至らざる先に諸異端の暴風(あらし)を鎮め給へり、今我等の霊の為に祈り給ふ。

  規程(カノン)、第四調。

  第一歌頌

イルモス 古(いにしえ)のイズライリは足を濡らさずして海の紅(くれない)の淵を渡り、野にてモイセイの十字形の手にてアマリクの力に勝てり。

神の光に輝かさるる光栄なる者よ、敬虔に此の爾等の光明なる欣(よろこ)ばしき祭を讃栄する者を諸慾の黒暗(くらやみ)より脱(のが)れしめ給へ。

ハリストス王よ、不虔者は爾の受難者及び役者(えきしゃ)に辱かしめられたり、矢を彼等に射て、己の凶悪なる棘(いばら)を空しくしたれども、彼等の力を折(くじ)くこと能はざりき。

爾等は属神゜の活水(かつすい)に盈(み)てられ、之を甚しき無神の旱(ひでり)に由りて弱りたる者に飲ませて、彼等を救ひを施す聖なる泉に向はしめ給へり。

  生神女讃詞

至浄なる者よ、爾の神妙なる産に由りて原祖の犯罪は解かれて、大声にて爾を讃め揚ぐる者は始めの如く楽園に入るを得たり。

  第三歌頌

イルモス ハリストスよ、爾の教会は爾の為に楽しみて呼ぶ、主よ、爾は我が能力(ちから)と避所(かくれが)と堡障(かため)なり。

神゜品致命者よ、爾等は無形に撫恤者の火に燃やされて、勇みを以て甚しき迷ひの熱を滅(け)し給へり。


光栄なる者よ、爾等は神゜の光を以て深き幽闇(くらやみ)に在る者を聖洗の光照に携へ給へり。

聖なる者よ、爾等は苦しみの火に錬られたる黄金(こがね)、致命者の受難の印を押されたる者と現れたり。

  生神女讃詞

純潔至浄なる童貞女よ、爾は人人を敵の虐待(しへたげ)より救ふ有能の神を生み給へり。

  坐誦讃詞(セダレン)、第三調。

讃美たる致命者、全世界の燈(ともしび)よ、爾等は傅膏を以て聖にせられて人人の為に神智なる牧師と為り、潔き羊として屠られて、羔(こひつじ)の如く屠られたる言 牧師長に捧げられたり。故に我等愛を以て爾等の神聖なる記憶を祝ふ。

  光栄、今も、生神女讃詞。

我等の避所(かくれが)及び力、世界の有能の助けたる生神女、獨祝福せられし者よ、爾の祈祷を以て爾の諸僕を凡の危難より覆ひ給へ。

  十字架生神女讃詞

生神女よ、我等は爾の子の十字架を能力の杖として得て、此を以て諸敵の驕りを破り、愛を以て絶えず爾を讃め揚ぐ。

  第四歌頌

イルモス 教会は爾義の日が十字架に挙げられしを見て、竝(なら)び立ちて正しく呼べり、主よ、光栄は爾の力に帰す。

聖にせられし致命者の会は歌はるべし、彼等は聖職の恩寵と苦難とに飾られて、楽しみて歌頌す、主よ、光栄は爾の力に帰す。

捧神なる神゜父等よ、爾等は神の奥密を教へられて、実に聖と義とを以て民を牧し、苦しみを以て己の聖なる生命(いのち)を終へ給へり。

聖使徒及び預言者の恩賜に飾られたる神゜品致命者の神聖なる会は楽しみて呼ぶ、主よ、光栄は爾の力に帰す。

  生神女讃詞

生神女よ、我等は神の言に教へられて、爾に於ける諸預言の應(かな)へるを見て、爾に呼ぶ、無玷(むてん)なる童貞女よ、慶べ、我等は爾の産に由りて救ひを得たり。

  第五歌頌

イルモス 我が主よ、爾は光、信じて爾を崇め歌ふ者を闇(くら)き無智より引き出す聖なる光にして、世界に来たり給へり。

爾等は睿智なる伝道の神聖なる光線を以て迷ひの黒暗(くらやみ)に坐する者に恩寵の光を輝かし給へり。

爾等は今面(おもて)を合せてハリストスを覿(み)て、言ひ難き光を楽しむ、我等の為に彼に祈り給へ。

爾等はハリストスの教へを満てたる神の河にして、迷ひの流れを塞ぎて、信者の智慧に飽くまで飲ませ給へり。

  生神女讃詞

生神女よ、主は萬族の中より獨爾を選び、爾より身を取りて、人類を神成(しんせい)し給へり。

  第六歌頌

イルモス 憐れみに由りて爾の脅(わき)より流れし血にて悪魔の祭の血より浄められし教会は爾に呼ぶ、主よ、讃揚(ほめあげ)の声を以て爾を祭らん。

主よ、爾の聖者の会は勇毅(ゆうき)と睿智、義と祈祷と貞潔とを以て生命を送りて、今爾の為に喜ぶ。

神聖なる諸預言者に效(なら)ひし勇敢なる聖者よ、爾等は、永遠の生命の望みに堅められて、肉体の寸断せらるるを楽しみて忍び給へり。

属神゜の法に養はれたる睿智者よ、爾等は不法の者に救ひを施す法を進めて、彼等を聖教の光に携へ給へり。

  生神女讃詞

至浄なる神の聘女(よめ)童貞女よ、楽園に於て生命より死に墜されたるアダムは爾が生命を施す産に由りて不死を獲たり。

  小讃詞(コンダク)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の小讃詞(コンダク)を誦せよ。第三調。
 
神品致命者よ、我等今日集まりて、歌を以て爾等を霊智なる日の暮れざる光として讃め揚げん、蓋爾等は無智の幽暗(くらやみ)に在る者に輝きて、衆を起して敬虔の高きに召し給へり。故に我等爾等に呼ぶ、衆修斎者(しゅさいしゃ)の基(もとい)よ、慶べ。

  同讃詞(イコス)

イイスス ハリストス、生命を施す主よ、神聖なる華麗を我に耀かして、我に爾の成聖者を歌頌せしめ給へ、蓋彼等は爾の為に死に至るまで勤労して、勇ましく敵の力を破り、神に悖(もと)る不虔を責め、十字架の力に堅められて、宜しきに合(かな)ひて爾より光栄を受けたり。故に我等は彼等に呼ぶ、衆修斎者(しゅさいしゃ)の基(もとい)よ、慶べ。

  第七歌頌

イルモス アウラアムの少者はペルシヤの爐(いろり)に在りて、焔よりも強く敬虔の愛に爇(や)かれて呼べり、主よ、爾が光栄の宮に於て爾は崇め讃めらる。

神智なる者よ、爾等は聖職の香料に聖にせられ、又神聖なる致命の血に輝きて、両(ふたつ)ながら宜しきに合(かな)いて讃栄せられて呼ぶ、主よ、爾が光栄の宮に於て爾は崇め讃めらる。

讃美たる者よ、爾等は地上の思ひを美(うるは)しく整へ、至浄なる光栄の高きに挙げられて呼ぶ、主よ、爾が光栄の宮に於て爾は崇め讃めらる。

光栄なる神品致命者よ、爾等は敵の悪謀を知りて、迫害者の悉くの誘惑(いざなひ)を斥けて歌へり、主よ、爾が光栄の宮に於て爾は崇め讃めらる。

  生神女讃詞

童貞女よ、地に暗(やみ)を天に雲を衣(き)せ給ひし主は爾の血より死に属する肉体を衣て、人人に不死の光栄の衣を衣(き)せ給ふ。

  第八歌頌

イルモス ダニイルは獅子穴に在りて手を伸べて、獅子の口を閉ざし、敬虔の篤き少者は徳を帯び、火の力を消して呼べり、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

神品致命者よ、爾等は種種の肉体の苦しみに付(わた)されて、凡そ生命なき諸神に役(えき)する者の為に不朽の生命を求め得たり。彼等は救はれて、常に爾等と偕に呼ぶ、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

神品致命者よ、爾等は無形なる葡萄の房にして、今醫治(いやし)の酒を流し、凡そ信を以て爾等を讃め揚ぐる者の心を楽しませて呼ばしむ、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

神品致命者の柩は世界の為に奇跡を流して、凶悪なる魔鬼の迷はす幻像(まぼろし)を逐ひ、実体の醫治(いやし)を與へて呼ばしむ、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

  生神女讃詞

至浄なる者よ、永在の主は爾より生れて、人として見られ、二性にして二つの行為 二つの意旨(いし)を有(たも)ち給へり。我等信を以て彼に歌ふ、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

  第九歌頌

イルモス 童貞女よ、手にて斫(き)られざる隅石ハリストスは、爾斫られざる山より斫り分けられて、離れたる性を合せ給へり、故に我等楽しみて、爾生神女を崇め歌ふ。

皆来りて、聖なる神品致命者の聖にせられし記憶を行ひて、属神の歌を以て大声に彼等を尊まん、彼等は吾が大仁慈なる神に我等の為に祷り給へばなり。

爾等は言に慰められて、霊の一切の汚(けがれ)を潔め、苦しみに因りて、皮の衣を脱ぎて、救の美(うるは)しき衣服を衣(き)給へり。

人人は聖なる受難者の記憶に集まりて、勇ましく苦しみを受けて悪の魁(かしら)を斃(たふ)しし勇敢なる神品致命者を歌頌して、恩寵を受く。

生神女讃詞

萬物を其手に持(たも)ち給ふハリストスを己の手に抱(いだ)きたる至浄なる者よ、其爾の子たるに因りて彼に祈りて、我を敵の悪計より脱れしめて、仁慈の淵に囲みて救はんことを求め給へ。

  光耀歌

今最著しき日は我等に至れり、此れ聖使徒の聖にせられし後任者、又捧神なる伝道師、及び勝たれぬ致命者の記憶なり、我等皆信を以て祈りて之を行はん。

  生神女讃詞

讃美たる少女よ、爾は父の大いなる議事の使者たるハリストス光栄の王を生み給へり、神品致命者は彼の十字架を伝へて、諸民を照し、之に爾生神女を讃栄して、爾の産に伏拜することを教へたり。

  「凡そ呼吸ある者」に讃頌(スティヒラ)、第四調。

聖なる傅膏及び致命の血に由りて神に近づきし至栄なる神品致命者よ、爾等は萬象の花、神靈の華美、睿智の峯(みね)、義の鑒(かがみ)、信の範(のり)、完全なる正直(せいちょく)、諸教会の飾りなり。二次

受難者の光栄、致命者の装飾、神智なる神品致命者よ、爾等は堅き信を有ちて、勇ましく己を種種の苦しみに付(わた)して、桎梏(かせ)と縲絏(なはめ)、裸体(らたい)と獄(ひとや)、火と厳寒(げんかん)、無数の傷及び死を忍び給へり。

光栄なる致命者よ、爾等は多種の苦しみに因りて死の状(じょう)を脱して、不朽の衣を衣(き)、今天に居りて、常に神の宝座の前に立ち給ふ。故に我等信を以て爾等の至りて光明なる記憶を祭りて、爾等の不朽体の柩に伏拜す。

  光栄、第八調。

克肖者よ、爾等は成聖者にして忠信なる牧師と現れ、致命者にしてハリストスの爵を飲みたり、故に両(ふたつ)ながらハリストスの悦びを得たる者として、今光の中に居りて、天上の役者(えきしゃ)と偕に我等衆の為に彼に祈り給へ。

  今も、生神女讃詞。

我等は天使首ガウリイルの聲に效(なら)ひて言はん、慶べよ、神の母、世界の為に生命を賜ふ主ハリストスを生みし者や。

  十字架生神女讃詞

無玷(むてん)なる牝牛は犢(こうし)が木の上に甘んじて釘せらるるを見て、悲しみ泣きて呼べり、哀しい哉最(いと)愛すべき子よ、恩を知らざるエウレイの会は何をか爾に報いたる、至愛なる者よ、何ぞ我を子なき者として遺す。

  もし挿句に光栄あらば、其晩課の讃頌(スティヒラ)を誦せよ。
  
  今も、生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞。


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