第十六編
 一人の神品致命者の総奉事


 晩課



 晩課

 「主よ爾に籲(よ)ぶ」に讃頌(スティヒラ)、第一調。

至福なる神智者(某)よ、爾は己の血の紅(くれない)にて爾の聖にせられし神聖なる祭服を飾れり、蓋敬虔を以て力より力に、光栄より光栄に移り給へり。今我等の霊に平安と大いなる憐れみとを賜はんことを祈り給へ。

至尊なる神言者(しんげんしゃ)よ、爾前(さき)には全く法に合(かな)う司祭にして、無血の祭を神に献じ、後(のち)には至りて真(まこと)なる致命者にして、血を流し、嘉(よ)く納れらるる祭として、己の身をハリストスに献じ給へり、彼に爾を歌ふ者の為に祈り給へ。

神智なる父よ、爾は己の教と戒めとを以て教へ又戒めて、且(かつ)顕(あらは)に己を模範と為して、致命者の軍をハリストスの許に携へ給へり、彼等と偕に祈りて、我等の霊に平安と大いなる憐れみとを賜はんことを求め給へ。

 光栄、今も、生神女讃詞。

生神女よ、我諸罪の海に荒らされて、爾の至浄なる祈祷の穏やかなる港に趨り附きて、爾に呼ぶ、至りて無玷(むてん)なる者よ、爾の権能の手を爾の僕に伸べて、我を救ひ給へ。

 十字架生神女讃詞

潔き母よ、爾は己の子及び神の十字架の側(かたはら)に立ち、其恒忍(ごうにん)を見て、哭きて云へり、嗚呼哀しい哉甘愛なる子、神の言よ、胡為(なんす)れぞ此の非義なる苦しみを受くる、此れ人類を救はん為なり。

  もし之あらば、自調。光栄、第六調。

福たる(某)よ、爾は終りに至るまで全く法に合(かな)ふ司祭たりき、蓋神聖なる言ひ難き機密の聖務を行ひて、ハリストス神の為に血を流し、己を嘉(よ)く納れらるる祭として献じ給へり。故に彼の前に勇みを有(たも)ちて、熱切に祈りて、我等信と愛とを以て爾の至尊なる記憶を行ひ、之を尊む者の諸々の誘惑(いざなひ)と、災禍(わざはひ)と、憂愁(うれひ)より救はれんことを求め給へ。

  生神女讃詞

生神童貞女よ、我等は爾より身を取りし者の神なるを悟れり、彼に我等の霊の救の為に祈り給へ。

  十字架生神女讃詞

ハリストスよ、爾を生みし者は爾の釘せらるるを見て呼べり、吾が子よ、我が見る所の奥密は何ぞ驚くべき、生命を賜ふ主よ、如何ぞ身にて木に懸けられて死する。

  もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭を行はば、復活の生神女讃詞を誦すべし。

至聖なる童貞女よ、誰か爾を讃美せざらん、誰か爾の至りて浄(きよ)き産を歌はざらん、世の無き先に父より光る獨生の子は爾浄き者より言ひ難く身を取りて出で、本性の神は我等の為に本性の人と為れり、其位(くらい)一つにして相分れず、其性二つにして相失はず、浄くして至りて福(さいはひ)なる者よ、我が霊の憐れみを蒙らんことを彼に祷り給へ。

  聖入。本日の提綱(ポロキメン)。成聖者の喩言(パリミヤ)三篇、巻末に載す。

  挿句(くづけ)の讃頌(スティヒラ)、第六調。

至栄至福なる(某)よ、爾は己の血を以て爾の聖にせられし衣を赤(あけ)にして、聖なる者と為りて至聖所に入り、苦しみに飾られ輝きて、常に神成(しんせい)せられしことを楽しみ、諸天使の同住者と為り給へり。故に我等爾を尊みて、愛を以て爾の聖なる慶賀を祭る。

句 義人は繁ること棕櫚の如く、高くなることリワンの柏香木の如し。

克肖なる睿智者(某)よ、爾は鐵索(てつさく)にて縛られ、尊き傷にて飾りの如く覆はれて、躓(つまづき)なく天上の城邑(まち)に至らしむる途を行き、其内に真(まこと)の勝利者、勝たれぬ致命者、及び至りて聖にせられし聖務者として入りて、諸天使と共に熱切に神聖なる歌頌を歌ふ、聖、聖、聖なる哉 一性の三者や。

句 彼等は主の宮に植えられて、我が神の庭に栄ゆ。

福たる神品致命者(某)よ、教会は爾の聖にせられし功労を上に升す梯(かけはし)として得て、爾に依りて動きなく残忍なる狼に悩まさるるなく護られて、爾の諸徳を伝へ、爾がハリストスの為に法に遵(したが)ひて忍びし苦しみを崇め讃む。

  光栄、第四調。

尊栄にして福たる(某)よ、爾は神妙に血に蔽(おほ)はれて、天の教会に入り、聖三者の前に立ちて、彼所(かしこ)より発する光照を蒙りて盛んに輝き給ふ。故に我等今日爾の光明なる記憶を行ひて、霊の感覚を照す。

  今も、復活の生神女讃詞。

  もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭らずば、左の生神女讃詞を誦せよ。

人人の無数無量なる不法を慈憐を以て滌(あら)ふ點滴(したたり)たるハリストスを生みし至浄なる童貞女よ、至聖神゜の雨にて我が智慧を湿(うるお)し我が慾の流れを涸らし、爾の祈祷を以て我に生活の喜びの泉に與かるを得しめ給へ。

  十字架生神女讃詞

主よ、牝羊及び爾の母は爾が十字架に釘せられしを見る時、訝(いぶか)りて呼べり、至愛なる子よ、此の顕見(あらはれ)は何ぞ、不信不法なる会、爾の多くの奇跡を楽しみし者は斯く爾に報いたるか、主宰よ、光栄は爾の言ひ難き寛容に帰す。

  讃詞(トロパリ)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の讃詞(トロパリ)を誦せよ。第四調。

神品致命者(某)よ、爾は使徒の風習(ならはし)に遵ひ、其宝座を継ぎて、神に感ぜらるる者として真実の言を伝へ、善行に輝くを以て人人を天に導けり、故に苦しみに付(わた)されて、血を流し給へり。ハリストス神に我等の霊の救はれんことを祈り給へ。

  光栄、今も、生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞。

  早課

  「主は神なり」に讃詞(トロパリ)同上。

  第一の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第三調。

克肖なる神゜父よ、爾は信の承認(うけとめ)を以て拝偶像の無神を責め、教への海にて迷ひの不正を滅(け)し、神聖なる全燔と為りて、奇跡を以て四極を照し給ふ、我等に大いなる憐れみを賜はんことをハリストス神に祈り給へ。 二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

言の神聖なる幕と為りし獨至浄なる童貞女母、潔浄を以て諸天使に超えたる者よ、我衆人に超えて塵と為りて、肉体の諸罪に汚されし者を爾の祈祷の神聖なる水を以て潔めて、我に大いなる憐れみを與へ給へ。

  第二の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第四調。

克肖なる神言者(某)、光明なる致命者の誉れよ、爾は日の光線の如く顕れて、爾の教へを以て明(あきらか)に全世界に輝き給ふ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

童貞女母よ、爾の至浄なる手を伸べて、爾を恃みて、爾の子に、ハリストスよ、爾の慈憐を衆に施せと呼ぶ者を覆ひ給へ。

  「主の名を讃め揚げよ」の後に附唱。

神品致命者(某)よ、我等爾を讃揚して、爾の聖なる記憶を尊む、爾は我等の為にハリストス我が神に祈り給へばなり。

  抜粋聖詠

「萬民之を聴け、全地に居る者皆之に耳を傾けよ。」

  多燭詞(ポリエレイ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第八調。

福たる(某)よ、爾は全能の力に導かれ、十字架の帆に送られて、輙(たやす)く生命の暴風(あらし)を度りて、実に神聖なる港に至り、諸徳の貿易を為し、多くの利を獲て、之を萬有の主宰に携へて、彼より善い哉善(ぜん)なる僕(ぼく)よと、其次の言を聴けり。故にハリストス神に祈りて、愛を以て爾の聖なる記憶を尊む者に諸罪の赦しを賜はんことを求め給へ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

至浄なる生神女よ、我見ゆると見えざる敵に因りて多種の誘惑(いざなひ)に陥り、我が無数の罪過の暴風(あらし)に打たれて、吾が堅固なる保護及び帲幪(おほい)たる爾の仁慈の港に趨り附く。故に至浄なる者よ、種なく爾より身を取りし主に、絶えず爾に祈る爾の衆僕の為に熱切に祈りて、宜しきに合(かな)ひて爾の光栄を歌頌する者に諸罪の赦しを賜はんことを常に求め給へ。

  品第詞(ステペンナ)、第四調の第一倡和詞(アンティフォン)。

  提綱(ポロキメン)

聖人の死は主の目の前に貴し。句 我何を以て主の我に施しし悉くの恩に報いん。

  「凡そ呼吸ある者。」神品致命者の福音経、巻末に載す。

  第五十聖詠の後に讃頌(スティヒラ)、第四調。

我等の為に苦しみを忍びて苦しみなきを流しし主の聖にせられたる受難者(某)よ、爾は霊を諸慾より潔めて、聖神゜の聖にせられし器と為れり、此に由りて聖なる傅膏を受けて、成聖者と為り、人人の神智なる教導師と為り勝たれぬ致命者と為り給へり。

  規程(カノン)、第二調。

  第一歌頌

イルモス 人人よ、来たりて、海を分ちて、エギペトの奴隷より引き出しし民を過(とほ)らせしハリストス神に歌を歌はん、彼光栄を顕したればなり。

ハリストスの光に照さるる至栄至福なる神品致命者(某)よ、爾の祈祷を以て我の昧まされたる霊を照し給へ、我が爾を歌頌せん為なり。

神゜父よ、爾は救ひの伝道の光照を以て爾の潔き心を清き鏡の如く輝かして、衆の為に光線を放ち給へり。

爾は斎を以て諸慾の起こりを止め、節制を以て望みを治め、種種の功労を以て無慾の高きに登り給へり。

  生神女讃詞

童貞女よ、我等は爾より種なく身を取りし者を萬物及び萬世の先より在(いま)す神なりと知れり、故に爾を真の生神女として崇め歌ふ。

  第三歌頌

イルモス 木を以て罪を殺しし主よ、我等を爾の中に堅めて、爾を畏るる畏れを我等、爾を歌ふ者の心に植え給へ。

爾は先に節制を以て己を潔めて、苦しみに因りて、致命者の良心に合(かな)ひて、己を完全なる犠牲(いけにへ)としてハリストスに捧げ給へり。

爾は聖にせられし生命、聖なる言、神聖なる行ひを以て升りて、心の路(みち)を神を見ることに向けたるに、爾之を獲給へり。


克肖者よ、爾は救世主の誡めと神智とを以て爾の智慧を治めて、ハリストスの教への勝たれぬ軍士と為るに勝ふる者と現れたり。

  生神女讃詞

童貞女よ、爾は実在の不死を生みて、我等の智慧より死の状(じょう)掃(はら)ひ、爾の産を以て我等の為に不朽の衣を織り給へり。

  坐誦讃詞(セダレン)、第三調。

神品致命者よ、爾は聖神゜に照されて、牧師の勇敢と睿智とを以て苛虐者(くるしめびと)の残酷を辱め、迷ひの海を済(わた)りて、神聖なる港に到り給へり。克肖なる神゜父よ、我等に大いなる憐れみを賜はんことをハリストス神に祈り給へ。

  光栄、今も、生神女讃詞。

人は救を得(う)る所に義に合(かな)いて趨り附く、生神女よ、爾の如き避所(かくれが)我等の霊を蔽ふ者は亦何所(いづこ)にかあらん。

  十字架生神女讃詞

生神女よ、我等は爾の子の十字架を能力の杖として得て、此れを以て諸敵の驕りを破り、愛を以て絶えず爾を讃め揚ぐ。

  第四歌頌

イルモス 人を愛する主よ、我爾の光栄なる摂理を聞きて、爾の悟り難き能力(ちから)を讃栄せり。

睿智なる神品致命者よ、爾は神聖なる全燔及び潔き祭として救世主に捧げられたり。

克肖者よ、爾はハリストスの牧群を神を識る智識の光に導きて、無神の黒暗(くらやみ)を逐ひ給へり。

神゜父よ、爾は神品致命者として、爾の汗の流れを以て無神の深所(ふかみ)を涸らし給へり。

  生神女讃詞

惟一の実在なる光を生みし至浄なる者よ、爾の光を以て我が昧まされたる霊を照し給へ。

  第五歌頌

イルモス 光を賜ひ、世世を造りし主よ、爾の誡めの光の中に我等を導き給へ、我等爾の外(ほか)に他の神を識らざればなり。

福たる者よ、真の睿智なるハリストスは爾熱心に彼を愛せし者に富と輝ける光栄、寿命の長きと不朽の生命を賜へり。

爾は教への杖を以て諸異端の迷ひを逐ひ、愛の結合を以て爾の牧群を合一にし、望(ぼう)と信とを以て之を害なく護り給ふ。

爾は節制を以て逸楽を退けて、絶えざる祈祷と、敬虔と、神に升らしむる謙遜(へりくだり)とを糧と為して、爾の霊を飽かせ給へり。

  生神女讃詞

潔き者よ、我等皆爾を轉達者と堅固なる恃頼(たのみ)、能力(ちから)と帲幪(おほい)垣牆(かき)
及び天の国に渡す橋として獲たり。

  第六歌頌

イルモス 我罪の淵に溺れて、爾が憐れみの量り難き淵に呼ぶ、神よ、我を淪喪(ほろび)より引き上げ給へ。

爾は祭を捧ぐる者及び祭と為りて、信の為に己を祭として神に献じて、彼の前に汚れなく爾の聖務を守り給へり。

神言者よ、爾は全世界の為に死して、獨神の為に生き、ハリストスに移りて、不朽の生命を獲給へり。

克肖者よ、爾は今地上より終りなき光栄に移りて、我が不当なる霊の諸慾を爾の祈祷の潔むる力にて醫(いや)し給へ。

  生神女讃詞

全世界の罪を任(にな)ふハリストスを生みし純潔無玷なる童貞女よ、爾の諸僕の為に絶えず諸罪の赦しを求め給へ。

  小讃詞(コンダク)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の小讃詞(コンダク)を誦せよ。第四調。
 
神智者よ、爾は成聖者として敬虔に度世(どせい)して、苦しみの途(みち)を過(とほ)り、爾の牧群を防ぎ衛(まも)りて、偶像の祭を絶やし給へり。故に我等爾を尊みて、熱切に爾に呼ぶ、我が神゜父(某)よ、爾の祈祷を以て常に我等を患難より救ひ給へ。

  同讃詞(イコス)

我等は信と愛とを以て今日聖にせられし受難者の記憶に集まりて、歌を以て彼を讃め揚げん、彼より恩寵を受けて楽しまん為なり、蓋彼は致命者とし、忠信なる成聖者及び保護者として、熱心に彼に祷る者の霊を諸慾諸難より救ひ給ふ。故に我等彼に呼ぶ、我が神゜父(某)よ、爾の祈祷を以て常に我等を患難より救ひ給へ。

  第七歌頌

イルモス 黄金(こがね)の偶像がデイラの野に奉事せられし時、爾の三人(みたり)の少者(しょうしゃ)は神に逆(さか)ふ命を顧みずして、火の中に投げられ、涼しくせられて歌へり、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

神智なる神゜父よ、爾は睿智と諸徳とを満てられたる爵と現れて、伝道を以て爾の牧群を呼び集め、高尚なる度世(どせい)を以て之を治め、之と偕に呼ぶ、我が先祖の神は崇め讃めらる。

至福なる神゜父よ、爾は尊き度世を為して、彼所(かしこ)の宮に至り、諸天使と偕に居りて、彼等と共に喜ぶ。故に我等爾を尊みて、勇みを以て呼ぶ、我が先祖の神は崇め讃めらる。

爾は幸(さいはひ)なり、爾は福を獲たり、蓋今義人の軍、致命者の群、睿智なる使徒の会の在(いま)す所に居りて、彼等と偕に呼ぶ、我が先祖の神は崇め讃めらる。

  生神女讃詞

婚姻に與らざる至浄なる童貞女よ、爾は獨萬有を其智慧にて造りし神の母と識られたり。故に我等敬虔に爾に呼びて言ふ、身にて神を生みし者は崇め讃めらる。

  第八歌頌

イルモス 火の爐(いろり)の中にエウレイの少者に降りて、焔(ほのほ)を露(つゆ)に変ぜし神を、造物は主として歌ひて、萬世に崇め讃めよ。

至福なる者よ、爾は敬虔にハリストスの奥密なる聖務を行ひて、自らも霊智なる羊として血を流し、嘉(よ)く納(い)れらるる祭として献げられたり。

睿智者よ、爾は聖にせられし職の衣を爾の徳行にて飾りて、貞潔の則(のり)、節制の鍳(かがみ)、祈祷の教師、痛悔の嚮導師(きゃうだうし)、度世の模範と現れたり。

告解は其果(み)を見(あらは)すべし、果を結ばざる無花果樹(いちじく)は枯るるに定められたればなり、吾が霊よ、詛(のろい)を畏れよ、ハリストスを受けて、之に徳行の果を献ぜよ。

  生神女讃詞

威厳なる轉達者よ、爾の諸僕の声を退くる毋(なか)れ、聖なる童貞女よ、我等衆を凡(およそ)の患難と困苦より脱(のが)れしめ給へ、爾の母たる祈祷は神の慈憐を我等に降せばなり。

  第九歌頌

イルモス 食に縁(よ)りて甚しく朽壊に陥りしアダムを、言ひ難き智慧を以て改めん為に神より来りし神言(かみことば)、我等の為に測り難く聖なる童貞女より身を取りし主を、我等信者は同心に歌を以て崇め讃む。

神゜父よ、爾は節制の火を以て敵の種種の箭(や)を焚(や)き、潔浄の熾炭(やけずみ)を以て肉慾の泥(ひぢ)を涸らして、彼所(かしこ)にある真(まこと)の光照にて盛(さかん)に照されたり。

奇異なる神゜父よ、爾の光明なる記憶は輝きて、敬虔に之を行ふ者の霊を照して、彼等を神の光に與かる者と為す、神智者よ、我等歌を以て宜しきに合(かな)ひて之を崇め讃む。

神゜父よ、我等信者は爾が戦ひを終へて、神の手より栄冠を受け、勝利の尊貴を獲て、神の光に満てらるる者なるを信じて、爾をハリストスの前に熱切なる祈祷者として進む。

生神女讃詞

童貞女言(ことば)の母よ、我等信者は爾我等の為に神の実在の生命及び義の日を輝かしし者を、生神女及び我等の轉達者として、歌を以て同心に崇め讃む。

  光耀歌

福たる者よ、爾は縛り及び釋く権を有つ神゜品致命者として、爾の祈祷を以て我が悪の縲絏(なはめ)を解き、我を神の愛に結びて、其国に與かる者と為し給へ。

  生神女讃詞

潔き童貞女よ、罪に因りて昧みたる吾が霊を照して、爾の轉達を以て我を永遠の焔(ほのほ)及び幽暗(くらやみ)より脱れしめ給へ、我が楽しみて爾の偉大なるを讃美せん為なり。

  「凡そ呼吸ある者」に讃頌(スティヒラ)、第四調。

神゜品致命者(某)よ、聖神の恩寵は爾に輝きて、明(あきらか)に爾を照せり、之に由りて爾は諸慾の夜(よ)を逃れて、無慾の日に至り、自ら潔くして至りて潔き光に合せられたり。其中に居りて、神゜父よ、信を以て爾の記憶を歌ふ者を忘るる勿れ。 二次

神゜品致命者(某)よ、爾は慕ふべき天の恩寵を己の内に有ちて、地上の諸事を顧みざりき、故に無形の者の如く、永在の福楽を楽しまんと欲して、受難者の度生を擇(えら)び、涙を以て諸慾の濁りたる泉を涸らし、霊を養ふ穂を湿(うるほ)して、之を生長せしめたり。

受難者(某)よ、爾は体を傷に付(わた)し、火に委ね、霊を勝たれぬ愛にて仁愛なる主、人類の為に十字架の苦しみを受けし者に向けて、之と親密に結合するを以て堅められたり。故に致命者の華美、成聖者の装飾、天使等の対話者為り給へり。

  光栄、第四調。

神゜品致命者(某)よ、爾は実繁き葡萄の樹の如く、美(うるは)しき橄欖樹(かんらんじゅ)の如く主の庭に植えられたり、爾の受難に因りて主は爾に降福し、爾は上なるシオンの安寧を視て、衆聖人と偕に神聖なる喜びを以て楽しみ給ふ。讃美たる者よ、爾の祈祷を以て我等を之に與かる者と為し給へ。

  今も,生神女讃詞

至淨なる童貞女、萬有の女王(にょわう)、正教者の誉れよ、異端者の驕りを破りて、爾の尊き聖像を尊まず、之に伏拜せざる者の面(おもて)を辱かしめ給へ。

  十字架生神女讃詞

至浄なる者は人を愛する主ハリストスの十字架に釘せられ、戈(ほこ)にて脅(わき)の刺さるるを見て、哭きて呼べり、吾が子よ、此れ何ぞ、恩を知らざる民は爾が彼等に為しし善に易へて何をか爾に報いたる、至愛なる者よ、胡為(なんす)れぞ我を子なき者として遺す、慈憐なる主よ、我爾が甘じて受くる釘殺(ていさつ)を奇とす。

  もし挿句に光栄あらば、其晩課の、今も、生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞を誦せよ。



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