第十四編
 一人の致命者の総奉事


  晩課

「主よ爾に籲ぶ」に讃頌(スティヒラ)、第一調

至尊至福なる睿智者よ、爾は直(なほ)き心を以て囲まれぬ神を悟り、疑ひなく之を信じ、其救ひの誡めを守り、忍耐を以て勇ましく苦しみを受
けて、動きなき国を得たり。

至尊なる者よ、爾は己の尊き血にて地を聖にし、不法にして悪鬼に捧げらるる汚らわしき血を廃して、爾の首(こうべ)に不朽の栄冠を受け給へ
り。故に我等の霊に平安と大いなる憐れみとを賜はんことを祈り給へ。

至尊なる致命者(某)よ、我等慎みて爾の聖にせられし戦闘と功労とを讃栄す、爾は此を以て諸天使の同住者、悉くの受難者の共與者と為り
給へり。彼等と偕に祈りて、我等の霊に平安と大いなる憐れみとを賜はんことを求め給へ。

  光栄、今も、生神女讃詞。

哀しい哉我は諸罪を以て智慧と霊と体とを汚して、如何にか為らん、何をか為さん、如何ぞ勝(た)へ難き焔(ほのお)と永遠に解かれぬ縲絏(な
わめ)とを脱(のが)れん。嗚呼純潔なる者よ、爾の子に祈りて、我に終りの前(さき)に赦免を賜はんことを求め給へ。

  十字架生神女讃詞

牝羊たる無玷(むてん)の女宰は己の羔(こひつじ)が十字架に在りて姿容(すがた)もなく威厳もなきを見て、哭(な)きて言へり、嗚呼甘愛(か
んあい)なる者よ、爾の威厳は何所(いづこ)にか隠れたる、美(うるは)しき貌(かたち)は何所(いづこ)にかある、吾が至愛なる子よ、爾の姿容(
すがた)の輝ける恩寵は何所(いづこ)にかある。

  もし之あらば、自調。光栄、第六調。

今日全地は受難者の光明に照され、神の教会は花に飾られて、爾に致命者(某)よ、呼ぶ、ハリストスの役者(えきしゃ)及び熱切なる轉達者
よ、爾の諸僕の為に息(や)めずして祈り給へ。

  今も、生神女讃詞。

生神童貞女よ、我等は爾より身を取りし者の神なるを悟れり、彼に我等の霊の救ひの為に祈り給へ。

  十字架生神女讃詞。

昔無垢なる牝羊及び無玷(むてん)なる女宰は己の羔(こひつじ)が十字架に挙げらるるを見し時、母として哭(な)き、驚きて呼べり、甘愛(かん
あい)なる子よ、斯の新たにして神妙なる顕現(あらわれ)は何ぞ、如何ぞ恩を知らざる民は爾萬衆の生命(いのち)をピラトの裁判に付(わた)し
て、死に定むる、言よ、我爾の言ひ難き寛容を歌ふ。

  もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭を行はば、復活の生神女讃詞を誦すべし。

至聖なる童貞女よ、誰か爾を讃美せざらん、誰か爾の至りて浄(きよ)き産を歌はざらん、世の無き先に父より光る獨生の子は爾浄き者より言ひ
難く身を取りて出で、本性の神は我等の為に本性の人と為れり、其位(くらい)一つにして相分れず、其性二つにして相失はず、浄くして至りて
福(さいはひ)なる者よ、我が霊の憐れみを蒙らんことを彼に祷り給へ。

  聖入。本日の提綱(ポロキメン)。致命者の喩言(パリミヤ)、巻末に載す。

  挿句(くづけ)の讃頌(スティヒラ)、第四調。

神智なる(某)よ、残酷なる苛虐者(くるしめびと)が爾の善く忍ぶ身を多種の甚しき苦しみに付(わた)ししに、爾は将来の賞(むくい)と不死の栄
とを望みて、ハリストスを諱(い)まず、偶像を祭らずして、他人の身に於ける如く苦しみを忍び給へり。

句 義人は繁ること棕櫚の如く、高くなることリワンの柏香木の如し。

爾は鉄搭(くまで)にて裂かれ、石にて撃たれ、鉄にて傷つけられ、剣(つるぎ)にて斬らるるに、爾の霊を霊智の石の上に堅く立てしに由りて、動
きなく止(とど)まれり、故に天使の会に合せられて、暮れざる光に輝かさるるを得たり。

句 彼等は主の宮に植えられて、我が神の庭に栄ゆ。

光栄なる(某)よ、爾の不朽体は望む者の為に醫治(いやし)の恩賜を流し、苦痛と諸病とを溺(おぼ)らし、悪鬼の群(むれ)を逐ひ、信者の心
を湿(うるほ)して、諸徳の神聖なる果(み)と敬虔の明悟(さとり)とを生ず。
   
  光栄、第六調。

致命者を愛する者皆来たりて、敬虔の心を抱きてハリストスの受難者、馳すべき程(みち)を尽くしし光栄なる(某)を讃栄せん、蓋彼は蛇の首(
かしら)を砕き、己の血にて地を聖にし、地上より永遠の居所(すまい)に移り、全能者の手より功労の尊貴を受けて、我等の霊の為に潔浄(きよ
め)と大いなる憐れみとを求む。

  今も、生神女讃詞。

生神女よ、爾は実の葡萄の枝、我等の為に生命の果を結びし者なり、女宰や爾に祈る聖使徒と共に我が霊の憐れみを蒙らんことを祈り給へ。

  十字架生神女讃詞。

至浄なる者は爾が十字架に懸けられしを見し時、母として泣きて呼べり、吾が神、吾が甘愛なる子よ、如何ぞ爾は恥づべき苦しみを忍び給ふ。

  讃詞(トロパリ)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の讃詞(トロパリ)を誦せよ。第四調。

主よ、爾の致命者(某)は其苦しみに由りて爾我が神より不朽の栄冠を受けたり、蓋爾に堅められて、苛虐者(くるしめびと)を斃(たお)し、悪鬼
の不能なる強暴をも破れり。彼の祈祷に由りて、我等の霊を救ひ給へ。

  光栄、今も、生神女讃詞。或は十字架生神女讃詞。


    早課

  「主は神なり」に讃詞(トロパリ)同上。


  第一の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第一調。

至りて福たる致命者(某)よ、爾は地上の軍職を厭ひ、天上の光栄を慕ひて、苦難及び残虐の死を忍べり。故に我等今日爾の至聖なる記憶
を祭りて、讃美をハリストスに奉る。 二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

我等皆爾神の母、産の後にも実に童貞女と現れし者に祈り、愛を以て爾の仁慈に趨(はし)り附きて、爾の慈憐を求む、蓋我等罪なる者は爾
獨(ひとり)至りて潔き者を轉達者として有ち、爾を誘惑(いざない)の中(うち)に極救(すくい)として獲たり。

  第二の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第四調。

至尊なる(某)よ、爾は誠に馳すべき程(みち)を尽くして、苛虐者(くるしめびと)の悉くの力に勝ち、全能者の手より栄冠を受けて、諸天使の共
與者と為り給へり。 二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

生神童貞女、獨(ひとり)潔く、獨(ひとり)祝福せられし者よ、我等は爾より身を取りし者を父の言ハリストス吾が神なりと知れり、故に絶えず爾を
歌ひて崇め讃む。

  「主の名を讃め揚げよ」の後に附唱。

聖なる致命者(某)よ、我等爾を讃揚して、爾がハリストスの為に忍びし尊貴なる苦しみを尊む。

  抜粋聖詠

「神は我等の避所なり、能力なり。」

  多燭詞(ポリエレイ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第四調。

ハリストスの勝たれぬ軍士、勇ましく諸敵に勝ちし者、大いなる奇蹟を以て輝きし受難者(某)を我等皆常に熱切に讃め揚げん、蓋彼は信を以
て趨(はし)り附く者の為に醫治(いやし)を流して、甚しき苦難を退け、憂ひの中に在る人人を援(たす)け給ふ。 二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

生神童貞女よ、爾は我等「ハリスティアニン」の為に破られぬ墻(かき)なり、蓋我等は爾に趨(はし)り附きて害なくして止(とど)まり、復(また)罪
を犯せば、爾を祈祷者として有つ。故に感謝して爾に呼ぶ、恩寵を蒙れる者よ、慶べ、主は爾と偕にす。

  品第詞(ステペンナ)、第四調の第一倡和詞(アンティフォン)


  提綱(ポロキメン)

義人は繁ること棕櫚の如く、高くなることリワンの柏香木の如し。 句、彼等は主の宮に植えられて、我が神の庭に栄ゆ。

  「凡そ呼吸ある者。」致命者の福音経、巻末に載す。

  第五十聖詠の後に讃頌(スティヒラ)、第六調。

今日全地は受難者の光明に照され、神の教会は花に飾られて、爾に致命者(某)よ、呼ぶ、ハリストスの役者(えきしゃ)及び熱切なる轉達者
よ、爾の諸僕の為に息(や)めずして祈り給へ。

  規程(カノン)、第五調。

  第一歌頌

イルモス 強き手にて戦ひを亡ぼすハリストスは馬と騎者(のりて)とを紅(くれない)の海に落し、凱歌(かちうた)を歌ふイズライリを救ひ給へり。

神福なる者よ、勝たれぬ受難者として勇ましく神の宝座の前に立ちて、爾の祈祷を以て熱心に爾の聖なる受難を祭る者を守り給へ。

至栄至福なる聖致命者よ、爾は己の霊の内に存する活ける水を有ちて、救世主の恩寵に堅められて、凶悪の濁りたる流れを涸らし給へり。

神福なる者よ、爾は神の力に堅められて、敵の驕りを破るを得て、光明なる勝利者及び天上の城邑(まち)の住者と為り給へり。

  生神女讃詞

至聖至浄なる女宰よ、我不当なる者の上に爾の慈憐を顕して、熱切に爾の子に祈り給へ、我が爾の祈祷に因りて永遠の火を免れん為なり。

  第三歌頌

イルモス 己の詔(みことのり)にて虚しき所に地を固め、保ち難く重き者を懸けしハリストス、獨仁慈にして人を愛する主よ、爾が誡めの動かざる
石に爾の教会を堅く立て給へ。

光栄なる睿智者よ、爾は不潔の諸慾を退けて、神聖なる潔淨を以て神に近づき、彼より光照を受けて、光の行為(わざ)を行ふ者として光の子
と為り給へり。

神福なる捧神者致命者(某)よ、爾は地上の軍職と大いなる光栄とを空しき者と為して、ハリストスの軍士となり、致命者の会に加りて楽しみ給
ふ。

奇妙にして尊栄なる者よ、爾は己の足を平和の途(みち)に向はしめて、神の国に、楽園の廣きに、永遠の安息に入り給へり。


  生神女讃詞

潔き女宰よ、爾は萬物の主宰及び造成主を生みて、ヘルワィムとセラフィムより最(いと)尊き者と顕れ給へり、故に我等萬族は職として爾を讃揚
す。

  坐誦讃詞(セダレン)、第五調。

睿智者よ、爾は諸徳の光明に輝き、受難の光に飾られて、日よりも盛んに光照して、信を以て爾の光明なる記憶を行ふ者を実に照し給ふ。至
栄なる受難者(某)よ、爾の不朽体に伏拝する者を救ひ給へ。

  光栄、今も、生神女讃詞。

潔き永貞童女よ、爾の胎孕(はらみ)の奇跡は悟り難く、産の状(さま)は言ひ難しと知られて、我が智慧を驚かし、思ひを訝らしむ。生神女よ、
爾の光栄は衆に顕れたり、我等の霊の救ひの為なり。

  十字架生神女讃詞。

神の恩寵を蒙れる者よ、爾の子の十字架にて偶像の迷ひは悉く虚しくなり、悪鬼の力は踏まれたり、故に我等信者は職として常に爾を歌ひて
崇め讃め、実に生神女と承け認(と)めて爾を讃栄す。

  第四歌頌

イルモス ハリストスよ、アウワクムは先知の目にて爾が神妙の謙遜(へりくだり)を悟り、戦きて爾に呼べり、爾の民を救ひ、爾の膏つけられし者を
救はん為に来たり給へり。

至福至栄なる睿智者よ、爾は主に於ける愛と望みとを以て飾られ、致命者として輝きて、諸天使の同住者と為り給へり。

神福なる睿智者よ、爾は窘逐せられ、一切を奪われて萬有の主宰たる神の為に動かされず撓(たわ)まされざる者と止(とど)まり給へり。

光栄なる者よ、爾は善き戦ひを戦ひて、致命者の華美に飾られ、見えざる華美に移りて、爾の勤労の尊き果(み)を収め給へり。

  生神女讃詞

純潔なる女宰よ、上に父と分れざる子、獨仁慈にして人を愛する主は、大いなる慈憐に因りて、下(しも)に我等の為に爾より身を取り給へり。

  第五歌頌

イルモス 光を衣の如く衣(き)る者よ、我爾に朝の祈を奉りて爾に呼ぶ、ハリストスよ、我が昧(くら)まされし霊を照し給へ、爾は獨仁慈の主なれ
ばなり。

致命者よ、爾は全能者の法に堅められて、不法の者の勧めを退け、法の為に苦しみを受けて、不朽の栄冠を獲給へり。

睿智者よ、爾は己の血の流れにて迷ひの熾炭(やけずみ)を滅(け)したり、今は神の恩寵に因りて醫治(いやし)の水を流して、諸病の焔(ほの
お)を滅(け)し給ふ。

睿智なる致命者よ、爾は弱き肉体に在りて凶悪なる蛇を滅ぼし、恩寵に因りて其多くの悪謀を破るを得たり。

  生神女讃詞

至りて無玷(むてん)なる童貞女、身にて無慾の泉たるハリストス神を生みし者よ、爾に祈る、我が身の諸慾、霊を滅ぼす者を殺し給へ。

  第六歌頌

イルモス 主宰ハリストスよ、霊を壊(やぶ)る颶風(ぐふう)に荒らさるる慾の海を鎮めて、我を淪亡(ほろび)より援け給へ、爾は仁慈の主なれば
なり。

ハリストスの致命者(某)よ、爾は不法者の裁判の前に立ちて、ハリストスの為に裁判せられ、勇ましく迷ひを責めて、之を絶やし給へり。

ハリストスの睿智なる致命者よ、爾は苦しみの中に神聖なる華美に飾られたり、故にハリストスは爾を光照して、不朽の者と為し給へり。

至福なる者よ、爾は己の血にて地を聖にし、聖なる霊にて天に輝きて、致命者の会を楽しみに満て給へり。

  生神女讃詞

至りて無玷(むてん)なる童貞女よ、預言者は聖神゜に教へられて、爾を門と預見せり、身を取り給ふ神は之を過(とほ)りて、復(また)閉された
る者として遺(のこ)し給へり。

  小讃詞(コンダク)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の小讃詞(コンダク)を誦せよ。第二調。

受難者(某)よ、爾は光明なる星と顕れて、世界に日たるハリストスを知らせ、爾の光線を以て一切の迷ひを消し、我等に光を施して、絶えず我
等衆の為に祈り給ふ。

  同讃詞(イコス)

神よ、我に歌を与へ給へ、我が調子善く歌ひて、爾の勇敢なる受難者、睿智なる致命者(某)の功労を尊みて讃め揚げん為なり、彼は苦しみ
の中に勝利者と顕れ、敬虔に於て大いなる者と為り、致命者の会に輝けり、其中に在りて彼は大数の天使と偕に常にハリストスを歌頌し、上よ
り神の光照を受けて、絶えず我等衆の為に祈り給ふ。

  第七歌頌

イルモス 尊まるる先祖の主は焔(ほのお)を滅(け)し、少者を凉しくせり、彼等は心を合せて、神よ、爾は崇め讃めらると歌へばなり。


睿智なる受難者よ、敬虔の民は多くの苦しみを受けたる爾の体を移して、感謝の心を抱きて歌へり、我が先祖の神は崇め讃めらる。

福たる者よ、爾は神の恩寵に因りてエルリンの祭を壊(やぶ)り、甘んじてハリストスの為に苦難を受け、苦しみの時に肉体の縲絏(なわめ)を解か
れて、安息に移り給へり。

讃美たる受難者よ、爾は血を流す苦しみを車として之に乗り、喜びて天上の安息の所に上(のぼ)り給へり。

  生神女讃詞

純潔無玷(むてん)なる童貞女よ、爾は凡そ爾を性に超えて爾の腹より身を取り給ひし神を生みし母と承け認(と)むる者の為に光栄及び堅固(
かため)なり。

  第八歌頌

イルモス 少者は爐(いろり)に在りて爾萬物を造りし主の前に全世界の詠隊と為りて歌へり、悉くの造物は主を歌ひて、萬世に崇め讃めよ。

睿智者よ、爾は窘逐の中に死し、上なるイエルサリムを嗣ぐ者と為りて、絶えず歌ふ、悉くの造物は主を歌ひて、萬世に彼を崇め讃めよ。

福たる者よ、爾は多くの哀しみに遇ひし後、今哀しみなき所に居りて、彼所(かしこ)に呼ぶ、悉くの造物は主を歌ひて、萬世に彼を崇め讃めよ。

致命者よ、爾は神の全能の力に因りてエルリンの迷ひと凶悪なる理論とを破りて、萬有の主宰より不朽の栄冠を受くるに堪ふる者と為り給へり。

  生神女讃詞

潔き童貞女よ、大仁慈なる言は爾より身を取りて、人人に合せられたり、至聖なる者よ、彼に祈りて、吾が肉身の慾を殺して、我が霊を救はんこ
とを求め給へ。

  第九歌頌

イルモス イサイヤ祝えよ、童貞女は孕みて、子エムマヌイル、神及び人なる者を生めり、其名は東、我等彼を崇めて、童貞女を讃め揚ぐ。

信者よ、来たり集まりて、今日ハリストスの至福なる聖致命者(某)の聖にせられし慶賀を行はん、彼は苦しみの中に神の力に因りて衆(おほ)く
の敵に勝ちたればなり。

光栄なる者よ、爾は受難の神聖なる華美に飾られて、爾の血に由りて火の車に乗るが如く楽しみて天に升り、彼所(かしこ)に在りて我が救世
主の言ひ難き華美を仰ぎ給ふ。

至りて讃美たる受難者よ、爾はハリストスの光明なる軍士及び勇敢なる致命者と為りたり、故に今上なる国に居りて、神妙に勝利の栄冠を冠り
給へり。

  生神女讃詞

幽暗(くらやみ)に居る者の為に光照たるハリストスを生みし至聖なる童貞女、凡そ爾を歌ふ者の教導師よ、我が昧(くら)みたる霊を照らして、
我に生命(いのち)に送る途(みち)を行かしめ給へ。

  光耀歌

至栄なる受難者(某)よ、爾は輝ける日の如く奇跡の光線を以て衆人を導き給ふ、故に我等は爾の記憶を行ひて求む、墓より復活せし主に我
等衆を諸難より救はんことを祈り給へ。

  生神女讃詞

潔き童貞女よ、爾の権能の帲幪(おほひ)を以て我等爾の諸僕を常に敵の悪謀に悩まされぬ者として護り給へ、我等獨爾を患難の中に避所(
かくれが)として獲たればなり。

  「凡そ呼吸ある者」の讃頌(スティヒラ)、第四調。

致命者(某)よ、人人は歌頌と詩賦とを以て爾の尊貴なる記憶を崇め讃む、蓋此は美(うるは)しき者、光を施し、光栄と恩寵とに飾られたる者
として輝けり、故に今天軍は祝ひ、致命者は使徒と偕に苦しみの功徳を讃め揚げて、爾を栄せし救世主ハリストス我が神を歌ふ。彼に我等の
霊を救ひて照さんことを祈り給へ。二次

(某)よ、爾はハリストスの全備の武具を衣て,爾を尋ねざる者に現れたり、爾ハリストスの為に心を燃やして、霊を害する虚しき諸神の迷謬(ま
よひ)を辱しめて、其時不法の者に呼べり、我はハリストス我が王の軍士なり、猛獣も、刃輪(はぐるま)も、其他の苦しみも、我を吾がハリストス
の愛より離すこと能はず。彼に我等の霊を救ひて照さんことを祈り給へ。

戴冠者(某)よ、爾は多種の刑具、種種の苦難、懼るべき栲問の器を顧みずして、致命者として敬虔の馳すべき程(みち)を尽くせり、故に我等
は歌の華を以て爾の至りて光明なる記憶に冠らせ、信を以て爾の尊き不朽体に接吻す。主宰ハリストス我が神の宝座の前に立てる者として、
絶えず我等の霊を救ひて照さんことを祈り給へ。

  光栄、第一調。

致命者の誉れなる(某)よ、爾は肉体の誘惑(いざなひ)に対して光明なる勝利を得たるに因りて、爾の熱心は普(あまね)く讃栄せらる。福たる
者よ、勝利者として、今信を以て爾の記憶を尊む者を罪の堕落より起こし給へ。

  今も、生神女讃詞。

生神童貞女よ、慶べ、爾は天の王、我等の霊の救主及び光照者を生みたればなり。

  十字架生神女讃詞

牝羊たる無玷(むてん)の女宰は己の羔(こひつじ)が十字架に在りて姿容(すがた)もなく威厳もなきを見て、哭きて言へり、嗚呼甘愛なる者よ
、爾の威厳は何所(いづこ)にか隱れたる、美(うるは)しき貌(かたち)は何所(いづこ)にかある、吾が至愛なる子よ、爾の姿容(すがた)の輝ける
恩寵は何所(いづこ)にかある。

  もし挿句(くづけ)に光栄あらば、晩課の挿句(くづけ)の光栄を誦せよ。今も,生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞。








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