第十三編
 二人或は多人の克肖者の総奉事



 晩課

 「主よ爾に籲(よ)ぶ」に讃頌(スティヒラ)、第八調。

克肖にして神智なる諸神゜父よ、爾等は信を以て爾等の殿に来りて、助けを求むる者に慈憐を以て傾きて、瞽者(めしひ)に光を、病む者に醫治(いやし)を、跛者(あしなへ)に健康を賜ふ、蓋我等衆信者は爾等を扶助者及び轉達者として得たり、故に爾等を崇め讃む。

克肖にして尊貴なる諸神゜父よ、爾等は諸徳の車に乗りて、神の前に升りて、勝利の尊敬を受け、我等に於ける慈憐として柩に蔵(をさ)めたる爾等の体(たい)を遺して、醫治(いやし)を流し、悪鬼を逐ひ給ふ、故に我等は讃美たる諸神゜父を崇め讃む。

福たる者よ、爾等は修斎者(しゅさいしゃ)の会に加はりて、修斎の度生に飾られたり、故に今天上の居所(すまひ)に諸天使の歓ぶ所在り勇敢(いさみ)を有ちて、我等の霊の為に平安を求め給へ。

 今も、生神女讃詞。

潔き生神童貞女よ、主に祈りて、爾の祈祷に由りて我等の霊に諸罪の赦しと、平安と大いなる憐れみとを賜はんことを求め給へ。

 十字架生神女讃詞

純潔なる生神女よ、爾は我等の生命(いのち)が木に懸れるを見て、母として泣きて呼べり、吾が子、吾が神よ、愛を以て爾を歌ふ者を救ひ給へ。

  もし之あらば、自調。光栄、第六調。

克肖なる諸神゜父よ、爾等の諸徳の風声(きこえ)は全地に伝はる、爾等は悪鬼の群(むれ)を破り、潔浄を以て天使の生命(いのち)に效(なら)ひて、其品位に至り、故に天に於て己の勤労の賞(むくい)を獲たり。主の前にて、神の光に耀かされて楽しみ給ふ。地上に愛を以て爾等を讃揚して、爾等の聖なる祭を行ふ者を記念し給へ。

  光栄、今も、生神女讃詞

吾が思ひは不潔、口には詐(いつはり)あり、行ひは悉く汚らわし、我何をか為さん、如何ぞ審判者に遇はん、女宰童貞女よ、爾の子造成者及び主に祈りて、獨 慈憐なる者として、痛悔に於て我が神゜を受けんことを求め給へ。

  十字架生神女讃詞

無玷(むてん)なる牝牛は犢(こうし)が木の上に甘じて釘せらるるを見て、悲しみ泣きて呼べり、哀しい哉最(いと)愛すべき子よ、恩を知らざるエウレイの会は何をか爾に報いたる、至愛なる者よ、何ぞ我を子なき者として遺す。

  もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭を行はば、復活の生神女讃詞を誦すべし。

至聖なる童貞女よ、誰か爾を讃美せざらん、誰か爾の至りて浄(きよ)き産を歌はざらん、世の無き先に父より光る獨生の子は爾浄き者より言ひ難く身を取りて出で、本性の神は我等の為に本性の人と為れり、其位(くらい)一つにして相分れず、其性二つにして相失はず、浄くして至りて福(さいはひ)なる者よ、我が霊の憐れみを蒙らんことを彼に祷り給へ。

  聖入。本日の提綱(ポロキメン)。克肖者の喩言(パリミヤ)、巻末に載す。

  挿句(くづけ)の讃頌(スティヒラ)、第四調。

神智者よ、爾等は朽つる人を脱ぎて、ハリストスを衣(き)たり、故に常に聖神゜の恩寵に照されて、光れる星の如く世界の為に輝き給ふ。常に信を以て爾等の尊き記憶を行ふ者が朽壊と患難より救はれんことを祈り給へ。

句 聖人の死は主の目の前に貴し。

今福楽を受け、神の光に照されて、永遠の生命を嗣ぎたる神智者よ、爾等に趨り附く者を災禍(わざはひ)と、諸々の誘惑(いざなひ)と、凡の苦悩(なやみ)より救ひ給へ、爾等は神の前に勇敢(いさみ)を得、且真(まこと)にハリストスに似たる愛を有てばなり。

句 神を畏れ、其誡めを極めて愛する人は福(さいはひ)なり。

至りて奇異なる捧神者、三者の軍士よ、爾等は勇敢なる智慧を以て斯(こ)の世の君と戦はん為に己を備へ、堅固なる力を以て之を斃(たふ)して、勝利の栄冠を獲たり、故に我等恩寵に照されて、爾等の神聖にして光明なる記憶を行ふ。

  光栄、第八調。

克肖なる諸神゜父よ、爾等は世上の華美と暫時の逸楽とを深く悪(にく)み、修道士の度生を愛して、天使等の対話者と為り、全地の最(いと)光明なる燈(ともしび)として、奇跡を以て日の如く輝き給ふ。祈る、我等衆爾等の聖なる記憶を行ふ者を記念せよ、蓋我等は爾等の諸子、爾等の教へに養はるる羊群(やうぐん)なり、爾等を扶助(たすけ)の為に呼びて、爾等の由りて平安と大いなる憐れみとを得んことを求む。

  今も、復活の生神女讃詞。

聘女(よめ)ならぬ童貞女、言ひ難く身にて神を孕みし者、至上なる神の母よ、爾の諸僕の祈祷を受け給へ、衆に諸罪の潔浄(きよめ)を予(あた)ふる純潔なる者よ、今我等の冀願(きがん)を納(い)れて、我等皆救はれんことを祈り給へ。

  もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭らずば、左の生神女讃詞を誦せよ。

聖なる童貞生神女よ、我爾の庇廕(おほひ)に趨り附く、我爾に倚りて救ひを得んことを知る、爾は、潔き者よ、我を援(たす)くるを能(よ)くすればなり。

  十字架生神女讃詞

主宰イイススよ、童貞女爾の母は爾が甘んじて十字架に釘せられ、苦しみを受くるを見て呼べり、哀しい哉甘愛なる子よ、爾は人類の不能を醫(いや)す醫師、爾の慈憐を以て衆を朽壊より救ふ者にして、如何ぞ非義に傷つけらるるを忍ぶ。

  讃詞(トロパリ)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の讃詞(トロパリ)を誦せよ。第四調。

我が先祖の神、常に爾の寛容に由りて我等に行ふ主よ、爾の仁慈を我等より離さずして、彼等の祈祷に因りて我が生命(いのち)を平安に治め給へ。

  光栄、今も、生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞。

  早課

  「主は神なり」に讃詞(トロパリ)同上。

  第一の聖詠誦文(カフィズマ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第四調。

ハリストスの真実の至りて光明なる燈(ともしび)よ、爾等は己の教へを以て世界を輝かせり、神の言を宣べたる諸神゜父よ、爾等は不虔なる誹謗者の諸異端を亡ぼし、褻瀆者(せつどくしゃ)の炎の如き強暴を滅(け)したり、故にハリストスの役者(えきしゃ)として衆を照し給ふ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

純潔なる童貞女、永在の神を生みし獨讃美たる者よ、克肖者と偕に絶えず彼に祈りて、我等信と愛とを以て職として爾を歌ふ者に終りの至らざる先に諸罪の赦しと生命(いのち)の更新(あらため)とを賜はんことを求め給へ。

  第二の聖詠誦文(カフィズマ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第八調。

捧神なる諸神゜父よ、爾等はハリストスの為に肉体を忌みて、人人の属神゜の教導師と為り、奥密の教への言を聴きて、修道士等の模範と現れ、勇ましく諸慾を踏みて、悪鬼の姦計を盡(ことごと)く滅ぼせり。愛を以て爾等の聖なる記憶を尊む者に諸罪の赦しを賜はんことを常に祈り給へ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

少女よ、視よ、爾が預言せし如く、萬族は爾を讃栄す、蓋爾は萬有の造成主の宮及び神聖なる殿と為れり、至上者は其内に入りて、肉体を衣(き)給へり、我等を救はん為なり。

  「主の名を讃め揚げよ」の後に附唱。

克肖なる諸神゜父、修道士の教師、天使等の対話者よ、我等爾等を讃美して、爾等の聖なる記憶を尊む。

  抜粋聖詠

「我切に主を恃みしに、彼我に傾きて。」

  多燭詞(ポリエレイ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第八調。

福たる者よ、爾等は己の智慧を神聖なる望みに馳せし時、下(しも)に引く一切の思念(おもひ)を棄て、野に居りて、諸徳の美(うるは)しき花を發(ひら)き、諸慾の荊棘(いばら)を絶やし、爾等の勤労の果(み)を生長せしめたり、故に天に在りて奪はれざる富の禾束(たば)を刈り給へり。克肖なる諸神゜父よ、信を以て爾等の聖なる記憶を尊む者に諸罪の赦しを賜はんことをハリストス神に祈り給へ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

恩寵に満ち被むる者よ、凡の造物、天使の会、及び人の族(やから)は爾に因りて喜ぶ、爾は聖にせられし宮、霊智なる地堂、童貞女の誉れなり、神は爾より身を取り、世世の先より在(いま)す我等の神は嬰児(おさなご)と為り給へり、蓋爾の胎を宝座と為し、爾の腹を天より廣き者と為せり。恩寵を満ち被る者よ、凡の造物は爾に因りて喜ぶ、光栄は爾に帰す。

  品第詞(ステペンナ)、第四調の第一倡和詞(アンティフォン)。

  提綱(ポロキメン)

聖人の死は主の目の前に貴し。

句 我何を以て主の我に施しし悉くの恩に報いん。 

  「凡そ呼吸ある者。」 句 「神を其聖所に讃め揚げよ。」

  克肖者の福音経、巻末に載す。

  第五十聖詠の後に讃頌(スティヒラ)、第六調。

地に於ては天使、天に於ては神の人、世の美(うるは)しき飾り、徳を望む者の教導師、修斎者(しゅさいしゃ)の誉れたる大いなる諸神゜父を尊まん、蓋彼等は主の宮に植えられ、柏香木の如く野に栄えて、聖を以て義を以て霊智なるハリストスの羊群(ようぐん)を繁殖せしめたり。

  規程(カノン)、第二調。

  第一歌頌

イルモス 人人よ、来たりて、海を分ちて、エギペトの奴隷より引き出しし民を過(とほ)らせしハリストス神に歌を歌はん、彼光栄を顕したればなり。

睿智なる者よ、爾等は神性の三日光(さんにちこう)の光照に耀かされ、光体と現れて、信を以て爾等の光明なる記憶を尊む者を照し給ふ。

爾等は全く己を造成主に委ね、属神゜の望みを傾けて彼の前に注げり、故に属神゜の恩寵を受け給へり。

恩寵の光に輝かさるる克肖者よ、信を以て爾等の記憶を祭る者を照して、爾等の祈祷を以て罪の闇より逃れしめ給へ。



  生神女讃詞

身にて身なき者を生みし至浄なる神の母よ、爾の神聖なる祈祷の注ぐを以て我等の体と霊との汚(けがれ)を洗ひ給へ。

  第三歌頌

イルモス 木を以て罪を殺しし主よ、我等を爾の中に堅めて、爾を畏るる畏を我等、爾を歌ふ者の心に植え給へ。

克肖者よ、爾等は涙の流れを霊に飲ませて、之を善く果を結ぶ者と為し、諸々の徳を生じて、奇跡を顕し給へり。

至尊なる者よ、爾等の神聖なる殿は醫治(いやし)を為して、人人の諸病を逐ひ、彼等の思ひを堅めて、爾等の功労を讃揚せしむ。

克肖者よ、爾等は節制を武器と為して、勇ましく敵と戦ひ、之に勝ちて、悪鬼の驕りを仆(たふ)し給へり。

  生神女讃詞

童貞女よ、爾の胎内より至栄にして大いなる日は輝き出でて地上を照せり、克肖者の会は其光と温(あたたかさ)とにて育てられたり。

  坐誦讃詞(セダレン)、第四調。

克肖にして神智なる諸神゜父よ、爾等は節制に由りて無難に生命(いのち)の海を渡りて、無慾の神霊の港に着き給へり。

  光栄、今も、生神女讃詞。

生神女よ、童貞と産とは性と言とに超えて爾の内に合せられたり、蓋爾は身を取りし神、我等の霊の救主を生み給へり。

  十字架生神女讃詞

至浄なる者よ、爾は木の上に爾の子の挙げられしを見て、母として心裂けて呼べり、哀しい哉吾が永久の光よ、何所(いづこ)にか隠れたる。

  第四歌頌

イルモス 人を愛する主よ、我爾の光栄なる摂理を聞きて、爾の悟り難き能力(ちから)を讃栄せり。

爾等はハリストスの謙遜を愛する者として、無慾を以て挙げられて、悪鬼の盡(ことごと)くの驕りを卑(ひく)くし給へり。

克肖者よ、爾等は東より出づる日の如く輝きて、奇跡の光線を以て普天下(ふてんか)を照し給ふ。

克肖者よ、爾等は己の祈祷を香爐の香氣(かおり)として見ざる所なき主に捧げたり、主は之を嘉く納(い)れらるる者として受けて、爾等を栄するを喜び給へり。

  生神女讃詞

至浄なる者よ、克肖者の会と凡の信者の霊とは爾を讃揚す、蓋爾は智慧と言とに超えて神の言を生み給へり。

  第五歌頌

イルモス 光を賜ひ、世世を造りし主よ、爾の誡めの光の中に我等を導き給へ、我等爾の外に他の神を識らざればなり。

至栄なる者よ、爾等は獨ハリストスを愛する愛に霊を委ね、務めて神の誡めを行ふ者と為りて、多くの奇跡の恩寵を受け給へり。

爾等は良善温柔にして、敵の悪計を盡(ことごと)く滅ぼし、常に慈憐なる者と現れて、獨大慈憐なる主より真(まこと)の救ひの恩寵を受け給へり。

爾等は常に善行と、祈祷と、斎とを勤めて、聖神゜の能力に由りて無慾を衣(き)、肉体の念(おもひ)を制し給へり。

  生神女讃詞

新たなる歌を主に歌へ、婚姻に與(あづか)らざる童貞女の腹より神に合(かな)う如く輝き出でたる者の名を歌へよ、彼は己の母を信者の為に堅固なる倚頼(たのみ)及び轉達と為し給へり。

  第六歌頌

イルモス 我罪の淵に溺れて、爾が憐れみの量り難き淵に呼ぶ、神よ、我を淪喪(ほろび)より引き上げ給へ。

克肖なる諸神゜父よ、爾等は我等の為に十字架に釘せられし主に役(えき)して、爾等の大いなる功労を以て悪鬼の面(おもて)を辱かしめて、之に勝ち給へり。

克肖なる諸神゜父よ、爾等は良善なる風習(ならはし)を得て、恩主たる神より豊かに賜(たまもの)を受けて、之を求むる者に與へ給ふ。

諸神゜父よ、爾等は属神゜の恩賜に満てられて、悪神゜に勝ち、睿智なる者として己を全く神に委ね給へり。

  生神女讃詞

己の産を以て克肖なる神゜父の会を照しし童貞女、無慾の泉なる者よ、吾が霊の諸慾を醫し給へ。

  小讃詞(コンダク)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の小讃詞(コンダク)を誦せよ。第二調。
 
神智なる克肖者よ、爾等は足を濡らさずして多くの激浪(あらなみ)を済(わた)り、爾等の涙の流れの中に無形の敵を沈め給へり。奇跡の恩賜を受けて、絶えず我等衆の為に祈り給へ。

  同讃詞(イコス)

克肖者よ、爾等の諸徳の最(いと)多きは美(うるは)しき園に満つる花の如し、爾等は斎と祈祷とに由りて楽園に於けるが如く栄えて、己の許多(あまた)の苦労と聖なる汗との芳ばしきを以て衆を薫らせ給ふ。勤労を以て奇妙に憂ひなき生命(いのち)に移り、勝利の栄冠を冠りて、絶えず我等衆の為に祈り給へ。

  第七歌頌

イルモス 黄金(こがね)の偶像がデイラの野に奉事せられし時、爾の三人(みたり)の少者(しょうしゃ)は神に逆(さか)ふ命を顧みずして、火の中に投げられ、涼しくせられて歌へり、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

克肖者よ、爾等は己の祈祷の武器を以て悪鬼に勝ち、天より恩寵を受けて、諸病を醫し、悪神゜を逐ひて、醫されし者に呼ばしむ、我が先祖の神は崇め讃めらる。

讃美たる睿智なる諸神゜父よ、爾等は己の肉体を神゜に服せしめて、凡の節制を守り、善行を行ひ、天に於けるが如く度生し、潔き良心を有ちて歌へり、我が先祖の神は崇め讃めらる。

福たる者よ、爾等は真実の道を履(ふ)みて、神聖なる安息に進み、神の恩寵に蔭(おほ)はれて、悪鬼の誘惑(いざなひ)を避けて呼べり、我が先祖の神は崇め讃めらる。

  生神女讃詞

潔き童貞女よ、曩(さき)にエデムの門を守りし剣(つるぎ)は斎を以て戦ふ敵を斃(たふ)しし衆の前より退(しりぞ)きたり、故に彼等常に呼ぶ、我が先祖の神は崇め讃めらる。

  第八歌頌

イルモス 昔シナイ山に於て棘(いばら)の中(うち)にモイセイに童貞女の奇跡を預(あらかじ)め示しし者を尊み歌ひ、崇め讃めて、萬世に讃め揚げよ。

至栄なる諸神゜父よ、爾等の涙の滴(したたり)は罪の火を滅(け)して、我等衆爾等に趨り附く者の凡の慾を溺らす奇跡の川を成せり。

諸神゜父よ、爾等は堅き信と望み、真(まこと)の愛と心の慈憐、善き忍耐と謙遜と全き善良、及び属神゜の教訓の言を有てり。

睿智なる者よ、爾等は善き戦ひを戦ひて、凡の敵の悪謀に勝ち、生命(いのち)の終りに栄冠を獲て、悉くの克肖者に加はりたり、我等は彼等と偕に爾等を尊みて、ハリストスを世世に讃め揚ぐ。

  生神女讃詞

世界に救ひの原因を現しし神の母よ、我を救へ、我を不潔なる諸慾の惶擾(みだれ)及び凡の敵の攻撃より脱れしめ給へ、我が萬世に爾を讃栄せん為なり。

  第九歌頌

イルモス 食に縁(よ)りて甚しく朽壊に陥りしアダムを、言ひ難き智慧を以て改めん為に神より来りし神言(かみことば)、我等の為に測り難く聖なる童貞女より身を取りし主を、我等信者は同心に歌を以て崇め讃む。

諸神゜父よ、視よ、爾等善く馳すべき程(みち)を尽くしし者の為に天国は啓(ひら)かれたり、爾等は諸天使の見る所を見る、爾等を尊くせし神は爾等に勤労の賞(むくい)として尊敬を與へ給へり、故に聖なる諸神゜父よ、我等は爾等を讃揚す。

神福なる捧神者よ、爾等は傷感(しょうかん)の情を以て神に奉事して、悪鬼の姦計を滅ぼし、彼等に傷(そこな)はれし者を改め給へり、故に我等熱信に爾等を讃揚して、爾等の不朽体の柩に伏拝す。

克肖なる捧神者諸神゜父よ、爾等は思ひを上に神に馳せて、地の事を棄て、爾等の勤労と撓(たわ)まざる節制との為に天の事を受け給へり、故に我等爾等を尊む。

生神女讃詞

主よ、我を憐み、爾が審判する時に我を憐みて、火に定むる毋(なか)れ、爾の憤(いきどほり)を以て我を責むる毋(なか)れ、ハリストスよ、爾を生みし童貞女と、天使の軍と、克肖者の会とは之を爾に祈る。

  光耀歌

諸神父よ,爾等はダウィドの言ふ所の棕櫚の如く繁りて、至聖神の居所(すまひ)と現れ、全地に光栄なる者と為り給へり。克肖者よ、我等信を以て爾等の至尊なる記憶を貴む者の為に常にハリストスに祈り給へ。

  生神女讃詞

生神童貞女よ、我等黙(もだ)さざる歌を以て爾を讃美す、蓋爾は聖三者の一(いつ)を生みて、変易なき永在なる言を爾の神聖なる手に抱き給へり。

  「凡そ呼吸ある者」に讃頌(スティヒラ)、第四調。

福たる克肖者よ、爾等の至りて厳(おごそか)なる記憶は日の如く最(いと)明(あきらか)に光りて、爾等の徳行の光線を耀かし、爾等の奇跡の光にて信者の感覚を照す。我等は欣ばしく祝ひて、爾等を讃め揚げて、熱心に爾等の至りて厳かなる記憶を讃揚す。二次

至栄なる聖神゜父等よ、爾等は地上に天使の如く度生して、節制と、警醒と、死の念(おもひ)とを以て己の肉体を抑制し、常に髙尚なる望みを以て天上に升りて、実に隅石たるハリストスに邇(ちか)づきたり。

竒異なる克肖の諸神゜父よ、爾等は節制と熱切なる祈祷とを以て肉慾を制し、涙の流れを以て詭譎(きけつ)なる蛇を溺らし、他人より多く神の悦びを獲たり。故に仁愛なるイイスス、我等の霊の救主は天の恩賜を以て爾等を飾り給へり。

  光栄、第八調。

克肖なる諸神゜父よ、爾等は晝夜(ちゅうや)主の法を思念して,活ける樹の如く植えらるるを得、爾等の苦労の果として栄冠を受けたり。勤労者を賞する神の前に勇(いさみ)を有ちて、我等の為にも赦罪と大いなる憐れみとを求め給へ。

  今も、生神女讃詞。

女宰よ、爾の諸僕の祈祷(いのり)を納れて、我等を諸(もろもろ)の災禍(わざはひ)と憂愁(うれひ)より救ひ給へ。

  十字架生神女讃詞

言よ、至淨なる者は爾が身にて十字架に懸れるを見て、心裂かれて泣きて呼べり、至愛なる主イイスス吾が子よ、何所(いづこ)にか隠るる、ハリストスよ、我爾を生みし者を獨として遺す毋れ。

  もし挿句(くづけ)に光栄あらば、之を誦せよ。今も、晩課の生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞。 
 

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