第一編

 我が主イイスス ハリストスの祭日、其前期及び後期の総奉事



 晩課

 「主よ爾に籲(よ)ぶ」に讃頌(スティヒラ)、第六調。

神性を以て満たざる所なく、仁慈に由りて人人に合せられたる一位二性の主よ、爾は見えざる者にして、潔き童貞女より出でて見ゆる者と為り、爾の肉体の像(すがた)を爾の(祭名を挙ぐ)を以て示し給ふ、我等は此の祭日に来りて、爾主宰に伏拝し、爾を造成主と知りて祷る、崇め讃めらるる救世主よ、我等を憐み給へ。二次

主よ爾は来りて、古世より預言せられたる爾の定制の悟り難き奥義を顕し、之を信ぜしめて、世界に爾の神聖なる(祭名)を示し、此れを以て萬衆を喜びに満たし、人の性を救はんと欲して、之を新たにし給へり、崇め讃めらるる神よ、我等を憐み給へ。二次

主よ、爾の慈憐の寛容は至栄なる哉、爾は至(いと)高きに形どり難く悟り難く父の懐(ふところ)に居る主にして、地上の者に降り、見らるる者と為りて、我等罪に由りて死せし者を活かし給へり、我等爾の(祭名)の祭日を尊む、願はくは主宰よ、爾は此れに縁りて我等を諸慾より脱れしめん、崇め讃めらるる救世主よ、我等を憐み給へ。二次

主よ、爾は望みし如く身を取り、我が貧しきを受けて、爾が慈憐の富を顕して、我塵なる者を神成し給へり。人を愛する主よ、我等は爾の(祭名)を瞻(み)て、爾の定制の状(さま)を讃栄す、救世主よ、此れに縁りて爾の諸僕の罪過を顧みずして、彼等に礙(さまたげ)なくエデムに入るを得しめ給へ。二次

  光栄、今も、第八調。

主宰人を愛する主よ、爾の定制の深處(ふかみ)は大いなり、爾は父の懐(ふところ)を離れずして、世世に爾の造物に恩を施し、身を取りて地上に人と現れて、衆人を痛悔に呼び給ふ。我等は爾王及び神に伏拝す、蓋爾は我等の諸敵を滅ぼし、爾の選ばれたる民、爾の尊き(祭名)を祭る者を救ひ給ふ。

  本日の提綱(ポロキメン)。

  エギペトを出づるの記の読 二十四章

主はモイセイに謂へり、爾山に我の許に登りて、 ―(第三巻百十六頁二百十九喩言をうつすべし)

  申命記の読 四章

モイセイ民に謂へり、イズライリよ、今我が爾等に教ふる法度と ―(第三巻百二十四頁二百二十五喩言をうつす)

  申命記の讀 五章

モイセイ イズライリの衆民を集めて、彼等に謂へり、イズライリよ、今日 ―(第三巻百二十五頁二百二十六喩言をうつす)

  挿句(くづけ)に讃頌(スティヒラ)、第二調。

光照は来り、恩寵は現れ、贖罪は成り、世界は照されたり、人人よ、歓喜(よろこび)に満たされよ。

句 神は南より来り、聖なる者は樹蔭繁き山より来らん。

諸民の諸族よ、歌へ、讃美と光栄とをハリストス神に帰して、熱切に彼の(祭名)を讃栄せよ。

句 主よ、我爾の風聲(おとづれ)を聞きて懼れたり。

父の言、萬物の造成者、一位にして二性なる主は人類を救はん為に来り給へり。

  光栄、今も、第八調。

主よ、爾は永遠より定めしことを成就せんと欲して、凡の造物より爾の奥密の役者(えきしゃ)を受け給へり、諸天使よりガウリイルを、人人より童貞女を、天より星を、地より山を、野より芻槽(かいばぶね)を、水よりイオルダンを、此の中に爾は衆人の不法を滅ぼし給へり。我が救世主よ、光栄は爾に帰す。

  本祭日の讃詞(トロパリ)。若し此れなくば、讃詞(トロパリ)第二調、「仁慈なるハリストス神よ、我等爾の至浄なる聖像に伏拝して」を誦す。

  早課

  「主は神なり」に同上の讃詞(トロパリ)、三次。

  第一の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第一調。

悟り難き救世主よ、爾見るべき者と為りたるに、爾の恩寵は我等の上に注がれて、迷ひの暗(やみ)は滅(き)えたり、故に我等の足を爾の顔(かんばせ)の光の中に固め給へ、我等が爾の誡めを行ひて、爾近づき難き光を観るを得ん為なり。

  光栄、今も、同上。

  第二の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第五調。

主宰よ、爾は父と同無原なる永遠の子、本性の見るべからず触るべからざる者にして、言ひ難き慈憐に由りて、年に順(したが)ふ者と為りて、爾の限りある身の至愛なる像(すがた)を(祭名)の祭を以て遺し給へり、我等の霊の救の為なり。

  光栄、今も、同上。

  本祭日の讃揚詞。

  多燭詞(ポリエレイ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第四調。

アダムの面(おもて)には已(すで)に憂ふる色なし、蓋アダムを造りし者は彼を衣(き)て、面(おもて)を以て己(おのれ)を衆に肖(に)たる者と顕し、敬虔者の会の愛を起して、同心に歌はしむ、人を愛する主宰よ、光栄は爾の至大なる寛容に帰す。

  光栄、今も、同上。

  品第詞(ステペンナ)、第四調の第一倡和詞(アンティフォン)。

  提綱(ポロキメン)。

主よ、我等は爾が顔(かんばせ)の光の中に行き、世世爾の名に因りて歓ばん。

句 凡そ地の極(はて)は我が神の救を見たり。

  本祭日の福音経。

  第五十聖詠の後に讃頌(スティヒラ)、第八調。

主よ、爾は永遠より定めしことを成就せんと欲して、凡の造物より爾の奥密の役者(えきしゃ)を受け給へり、諸天使よりガウリイルを、人人より童貞女を、天より星を、地より山を、野より芻槽(かいばぶね)を、水よりイオルダンを、此の中に爾は衆人の不法を滅ぼし給へり。我が救世主よ、光栄は爾に帰す。

  規程(カノン)、第四調。イルモス二次、讃詞(トロパリ)十二句に。

  第一歌頌

イルモス 昔ファラオンの奴隷より逃るるイズライリを導きて、野に養ひし我等の救主神に歌はん、彼光栄を顕したればなり。

人人よ、我等の祭の特殊なる日に於て口を開き、舌を爽やかにして、ハリストス我が神の(祭名)の神聖なる顕見(あらはれ)を欣ばしく歌はん、彼光栄を顕したればなり。

永遠の光なる子は父の旨を行ひ、己の恩寵を示さんと欲して、我等の為に僕の形を受け、其神聖なる(祭名)の状(さま)に於て現れて、光を以て我等を照し給へり。

皆来りて、信を以てハリストスの(祭名)を祭り、熱切に属神゜の歌頌を捧げて、讃栄して同心に呼ばん、ハリストスは幽暗(くらやみ)に在る者を照さん為に来り給へり、彼に歌はん、其光栄を顕したればなり。

  生神女讃詞

至浄なる者よ、我等は爾に由りて実に神人の産の顕見(あらはれ)を知ることを得、爾を尊む者は今日爾の子の(祭名)の祭を見るに任(た)ふる者と為れり。我等を凡の患難より救はんことを彼に祈り給へ。

  共頌(カタワシャ)は、本祭日の「イルモス」、或は左の「イルモス」。

神妙の黒闇(くらやみ)に蔽はれたる口鈍(にぶ)き者は神の録(しる)しし律法を述べたり、蓋彼は智慧の目より不浄を掃ひて、永在者を見、聖神゜を知る智識を蒙りて、神聖の歌を以て之を崇め讃む。

  第三歌頌

イルモス ハリストスよ、我等は智慧と能力(ちから)と富裕(とみ)とを以て誇るにあらず、乃(すなはち)爾、父と一性なる智慧を以て誇る、人を愛する主よ、爾の外に聖なる者なければなり。

神性に由りて永在なる主宰ハリストスよ、爾は身を以て諸僕に合せられて、見らるる者と為り、多種の行為を以て我等に救を得しめ給ふ、我等今爾の(祭名)を讃栄す、人を愛する主よ、爾の外に聖なる者なければなり。

ハリストスよ、爾を信ずる信に照されたる爾の人人は欣ばしく爾の神聖なる(祭名)を祭る、我等之を尊みて、諸難より救はる、救世主よ、我等を天の国にも與る者と為し給へ。

実在の生命たるハリストスよ、爾は身にて死を嘗めて、爾の復活を以て死者に生命を流し給へり、今爾の(祭名)の祭を以て我等の為に之を確證し給ふ。

  生神女讃詞

神の母よ、先に爾に由りて救は身を以て世界の中に輝き、今は爾に由りて信者の為に生(いのち)を施す光明なるハリストスの(祭名)の祭は現れたり、生神女よ、此れに縁りて爾の子に我等を諸々の禍(わざはひ)及び永遠の苦しみより救はんことを祈り給へ。

  共頌(カタワシャ) 昔砕きたる心を懐(いだ)ける預言女アンナが、主宰睿智の神に奉りし一つの祈りは、果(み)を結ばざる腹の縛(なはめ)を釈(と)き、子多き者より受くる勝(た)へ難き辱めを除きたり。

  坐誦讃詞(セダレン)、第四調。

仁慈なる主宰救世主よ、爾に祈る、我等信と愛とを以て神聖なる(祭名)を祭る者を悉くの見ゆると見えざる敵、及び諸々の災禍(わざはひ)と誘惑(いざなひ)より脱れしめて、我等を永遠の福の楽しみを享くるに堪ふる者と為し給へ。

  光栄、今も、同上。

  第四歌頌

イルモス 預言者アウワクムは爾至上者が童貞女より身を取り給ふ神の測り難き定制を洞察(みとほ)して籲(よ)べり、主よ、光栄は爾の力に帰す。

肉体を以て人人に近づきし主の耀ける神聖なる(祭名)の祭は新たに選ばれたるイズライリに至りて、今日世界の四極を照す、主よ、光栄は爾の力に帰す。

昔モイセイは神の顕見(あらはれ)の光栄の徴を見るを得て、其面(おもて)輝けり、新たなるイズライリは今面(おもて)を合せて明らかに爾贖罪主を覿(み)る、主よ、光栄は爾の力に帰す。

衆人よ、奇異なる事を仰ぎて、今霊に楽しみて、地上に人人の救の為に現れしハリストスの(祭名)の祭を歌へ、主よ、光栄は爾の力に帰す。

  生神女讃詞

至浄なる生神女よ、我等爾に趨り附きて、爾の子の神聖なる(祭名)を祭る者を救ひ給へ、常に彼に諸罪の赦を我等に賜はんことを祈り給へ。

  共頌(カタワシャ) 諸王の王、斯く大いなる者よりする惟一の斯く大いなる者、無原の父より生れし言よ、爾は恩主として、実に爾が同能の聖神゜を以て、主よ、光栄は爾の権柄に帰すと歌ふ使徒等に遣し給へり。

  第五歌頌

イルモス 原始(はじめ)の光の輝きを発(ひら)きて、造物をして光の中に爾造物主を歌はしむるハリストスよ、爾の光の中に我等の途(みち)を向はしめ給へ。

我等今日手を拍ち、声を挙げて讃美を主に呼ばん、蓋視よ、彼は実に其至浄なる肉体を以て来り現れて、神聖なる(祭名)を以て衆信者を照し給ふ。

今日正教者の会は照され、異端者の群(むれ)は辱められたり、贖罪主ハリストスが肉体に現れしを證する其(祭名)の伏拝せらるるを見ればなり。

奥密の慶賀は至り、神聖なる主の(祭名)の厳かなる祭は主の顔(かんばせ)より発する光として世界に輝きて、嘗て俘囚(とりこ)と為りし衆に和平と歓楽とを與ふ。

  生神女讃詞

至聖なる童貞女よ、爾の転達に由りて雲は上より地上の者に甘味(かんみ)を注ぐべし。爾の子我等の神は世界を憐み、「ハリスティアニン」等の角を高くして、今日其神聖なる(祭名)を以て信者に救を賜へり。

  共頌(カタワシャ) 教会の光を負う諸子よ、諸罪を除く潔浄(きよめ)、火の噴き出したる聖神゜の露を受けよ、今シオンより律法たる聖神゜の恩寵は、火の舌の形を以て出でたればなり。

  第六歌頌

イルモス 神の信者よ、来りて、神の母の此の神妙なる至りて尊き祭を祝ひ、手を拍ちて、彼より生れし神を讃栄せん。

ハリストスの光明なる(祭名)に由りて死者に生命は輝き、瞽者(めしひ)に光は来り、痛く病める者に醫治(いやし)は啓かれ、衆人に救は近づきたり。

凡の霊は今迎へたる神聖なる(祭名)の祭を祝ふべし、之に伏拝する者に光照を流せばなり。

主イイスス ハリストスよ、天は爾を見て、爾の光栄を伝へ、真の痛悔を知る衆信者を集めて、爾の神聖なる(祭名)を歌頌せしむ。

  生神女讃詞

神の母よ、爾の子の尊き(祭名)の光に由りて地の四極に救は輝けり、潔き童貞女よ、彼に祈りて、爾を尊む我等を凡の患難及び誘感より救はんことを求め給へ。

  共頌(カタワシャ) 主宰ハリストスよ、爾は我等の為に浄めと救にして、童貞女より耀き給へり、預言者イオナを海獣の腹より救ひし如く、アダムを其悉くの陥りし族(やから)と偕に腐敗より救はん為なり。

  祭日の小讃詞(コンダク)
  若し此れなくば、左の小讃詞(コンダク)を誦すべし、第二調。
 
像(かたど)られぬ父の言よ、我等人人に於ける爾が言ひ難き神聖なる摂理を熱信に承け認め、爾が実に人体を取りしことを像(かたど)れる神印(しんいん)の聖像を勝利を與ふる者と知りて、之を尊みて接吻す。

  同讃詞(イコス)

主は其人体を取りしことの奥密を人人に信ぜしめん為に、己の神人(かみびと)の像(すがた)を自ら印(しる)し、其原像を父と偕に宝座に坐せしめて、無形なる天使等に伏拝せしめ、原像の形象(かたどり)を我等に賜ひて、伏拝せしむ、我等は霊と心とを以て之を抱きて、尊みて接吻す。

  第七歌頌

イルモス 昔アウラアムの少者はワワィロンに於て爐の焔を踏みて、歌を以て呼べり、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

凡の城邑(まち)と地方とは新たなるシオンと偕に喜びて、熱切に祝ふ、蓋光栄の王ハリストスは己の尊き(祭名)の祭の状(さま)を以て来りて、彼に伏拝して、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらると呼ぶ者を救ひ給ふ。

神の言を宣べし諸預言者の神聖なる書は成就せられたり、今我等は其應ふを見る、蓋ハリストスは其(祭名)にて世界を照し、耀ける光を以て、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらると歌ふ者を救ひ給ふ。

  生神女讃詞

天上の者は地上の者と偕に楽しみ、衆聖人の大数は共に喜び、諸王と諸侯、富める者と貧しき者は皆祝ふ、蓋視よ、ハリストスは我等の為に光照として、童貞女より受け給ひし人性を像(かたど)る祭を備へ給へり。

  共頌(カタワシャ) 楽器の調和したる声は、金(こがね)にて鋳(い)たる霊なき偶像を敬う為に響けり、撫恤者(ぶじゅつしゃ)の光を施す恩寵は、慶賀を設けて斯く籲(よ)ばしむ、惟一にして同能なる無原の三者よ、爾は崇め讃めらる。

  第八歌頌

イルモス 少者はワワィロンに於て神聖なる熱心に灼かれて、苛虐者(くるしめびと)と焔との嚇しを勇ましく踏み、火の中に擲(なげう)たれて、露に湿(うるほ)されて歌へり、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

本性の完全なる神は亦完全の人と為りて、二性の本質を以て人人を救ひ、神として神聖なる(祭名)を以て人体を取りしことを信ぜしめ給ふ、我等彼に伏拝して歌ふ、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

神の言よ、爾を神及び人と承け認めて、爾の(祭名)を讃栄する者の角を高くせよ、爾は此れを以て衆信者に永遠の生命を賜ひ、爾の神聖なる能力(ちから)を悪(にく)む諸敵の驕慢(おごり)を滅ぼし給へり。

新たなる法は光り、教会は飾らる、蓋ハリストス神よ、爾は己の神聖なる光栄の光を耀かして、爾の光明なる顔(かんばせ)を爾の(祭名)を以て顕し給へり、爾に主の悉くの造物は主を崇め讃めよと呼ぶ人人の救の為なり。

  生神女讃詞

陥る者の再興、憂ふる者の喜悦(よろこび)、迷ふ者の嚮導者、病む者の醫治(いやし)、衆「ハリスティアニン」の救なる女君生神女よ、我等爾の子の(祭名)を尊む者を護りて、彼に我等を見ゆると見えざる諸敵より救はんことを祈り給へ。

  共頌(カタワシャ) 至上神(しじょうしん)の三光(さんこう)の像(すがた)は縲絏(なはめ)を釈き、焔に露を注ぐ、少者は歌ひ、凡そ造られし者は惟一の救世主及び造成主を恩者として崇め讃む。

  第九歌頌

イルモス 生神女よ、爾の産は不朽なり、神は爾の腹より出で、地上に肉体ある者と現れて、人と偕に在せり、故に我等皆爾を崇め讃む。

我等感謝の歌を神に歌ふ、蓋彼は我等に至大なる宝として、我等を大いに戦ひの為に固むる其神聖なる肉体の(祭名)を賜へり、我等信者は之を祝ひて、神を崇め讃む。

嗚呼主よ、我等爾を恃む者の為に爾が行ひし奇跡は智慧に超ゆ、蓋爾が言ひ難く有ち給へる人性を(祭名)の祭を以て厳かに像(かたど)りて、衆人に現し給ふ、之を尊む者を凡の苦難と誘感より救ひ給へ。

嗚呼神の言と、智慧と、能力(ちから)、及び父の像(すがた)や、爾の(祭名)の祭の欣ばしき慶賀を我等に善行の光の中に中心より爾を讃栄して行はしめ給へ。

  生神女讃詞

至浄なる童貞女よ、爾に於ける神の奥義は実に高し、神の睿知の深きは実に測り難し、蓋至上者は言ひ難く爾より生れ、見るべからざる者は其肉体の(祭名)を以て見るべき者と為り給へり、我等信者は彼に伏拝して、爾を崇め讃む。

  共頌(カタワシャ) 女王、至栄の母たる童貞女よ、慶べ、如何に滑らかなる能弁の口も、弁を尽し、宜しきに合ひて爾を歌ふ能はず、如何なる智慧も爾の産を悟るを得ず、故に我等心を一(いつ)にして爾を讃栄す。

  光耀歌

父の善旨と聖神゜の行動とに因りて至大なる奥密、天使等にも悟られぬ者は諸預言に應ひて行はれ、始なき言は始を受けて、人として童貞女より生れ給へり、世界の救及び人人の贖罪の為なり。三次

  「凡そ呼吸ある者」に讃頌(スティヒラ)、第一調。

皆来りて、ハリストスの(祭名)を熱切に祝ひ、歌頌を捧げ、讃美を奉りて、同心に呼ばん、地上の者の拯救(すくひ)及び更新(あらため)なるハリストスは来り給へり。二次

来りて、祝ひの歌と霊の直きを以てハリストスの(祭名)を讃栄せん、蓋彼、父及び聖神゜と同尊なる主は、己の慈憐に由りて、言ひ難く我等の合成を衣(き)給へり、我等諸天使と偕に彼を崇め讃めん。

我等は和聲(くわせい)の鈸(ばつ)を以て大聲(たいせい)の歌頌を以てハリストスの(祭名)を讃め揚げん。諸預言者の伝は終を成せり、蓋彼等が預(あらかじめ)示しし者は肉体を以て人人に現れ給へり、我等の救及び更新(あらため)の為なり。

  光栄、今も、第一調。

人人よ、来りて、ハリストスの(祭名)を祭り、智慧と心とを挙げて、潔き童貞女より身を取りし、神性に於ても人性に於ても完全なる子を仰がん。又歌頌して呼ばん、聖なる神、無原の父、聖なる勇毅、身を取りし子、聖なる常生の者、撫恤者聖神゜、聖なる三者よ、光栄は爾に帰す。

  大詠頌、并に発放詞。

  聖体礼儀に真福詞、規程(カノン)の第三及び第六歌頌。


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