9月8日/21日

至聖なる我が女宰生神女永貞童女マリヤの誕生祭


小晩課

「主よ、爾にぶ」に四句を立てて左の讃頌を歌ふ、第一調。

イオアキム及びアンナは我等の救の始たる惟一の生神女を生みて祝ふ。彼等と偕に我等も今日祭りて、彼のイエッセイの根より出でたる潔き童貞女を讃揚す。

今日アンナより神の賜ひし花たる生神女、人々の救なる者は生じたり。是より萬有の造成主は悟り難く生れて、仁慈なるに因りて、其仁慈を以てアダムの悉くの穢を浄め給ふ。

誰か宜しきに合ひて言ひ難くアンナより生れたる童貞女を歌ふを得ん。山と邱とは今日甘味を滴らせよ、蓋衆人の生命及び潔浄なる潔き生神女は乳にて養はる。

先の不毛なる地は豊作の田を生ず、荒れたる胎より聖なる実は出でて、乳にて養はる。畏るべき奇蹟なる哉、我が生命の養育者、其腹に天の餅を受けし者は乳房より乳にて養はる。

  光栄、今も、第四調。

至聖至潔なる童貞女よ、天には天使の多数、地には人の族は爾の最尊き誕生を讃揚す、蓋爾は萬有の造成者ハリストス神の母と為れり。婚姻に與らざる、至りて讃美たる生神女よ、求む、我等神に次ぎて爾に憑恃を負はせし者の為に息めずして彼に祈り給へ。

  挿句に讃頌、第二調。

イオアキム及びアンナよ、慶べ、衆人よ、慶べ、蓋喜悦と拯救(すくい)との代求者たる生神女は胎の荒れたる者より我等の為に生れ給ふ。

句、女よ、之を聴き、之を観、爾の耳を傾けよ。

爾は独地に在る者の救と現れたり、言及び性に超えて言を生みたればなり、故に我等爾を讃揚す、

句、民中の富める者は爾の顔を拝まん。

アダム及びエワよ、悉くの憂を除け、蓋喜悦の母は今日神妙に胎の荒れたる者より生れ給ふ。

  光栄、今も、同調。

神の殿たる惟一の生神女は胎の荒れたる産まざる者より出で給ふ、アダムは喜びて呼ぶ。

  讃詞、第四調。

生神童貞女よ、爾の誕生は全世界に歓喜を知らせたり、蓋爾より義の日たるハリストス我が神は輝けり。彼は詛を解きて祝福を與へ、死を滅して我等に永遠の生命を賜へり。

 

大晩課

第一「カフィズマ」の第一段を歌ふ。

「主よ、爾にぶ」に八句を立てて讃頌を歌ふ、第六調。(總主教セルギイの作)。

霊智なる宝座に息ふ神は今日己の為に地上に聖なる宝座を備へ、睿智を以て天を固めし者は仁愛に因りて生ける天を造れり。蓋果を結ばざる根より生命を施す植物として我等の為に其母を生ぜしめたり。奇蹟の神、憑恃なき者の憑恃なる主よ、光栄は爾に帰す。一次。

斯の日は主の日なり、人々よ、喜べ、蓋視よ、光の宮、生命の言の書は腹より出で、東に向ふ門は現れて、大なる司祭長の入るを候つ、独にして独のハリストスを世界に入るる者なり、我等の霊の救の為なり。一次。

神の望に因りて胎の荒れたる高名の婦等は生みたれども、マリヤは悉くの生れし者に秀でて神妙に輝けり、蓋胎の荒れたる母より至栄に生れて、性に超えて種なき腹より身にて萬有の神を生めり。彼は独生の神の子の独一の門なり、神の子は之を過りて閉ぢたるままに守り、親ら知るが如く睿智を以て一切を理めて、衆人の救を為し給へり。二次。

  (聖城のステファンの作)。

今日生まざる門は啓け、神聖なる童貞女の門は前に出づ。今日恩寵は始めて果を生じて、世に神の母を顕す。此に因りて地の者は天の者に合せらる、我等の霊の救の為なり。二次。

今日は全世界の歓喜の始なり、今日救を前兆する風は吹きたり、吾が性の不結果は解かる、蓋胎の荒れたる者は母と為りて、造成主の生れし後にも童貞女たる者を生む。此より本性の神は己に属せざる者を取りて、己の有と為し、仁愛なるハリストス、我等の霊の贖罪主は其肉体を以て迷ひし者の救を成し給ふ。一次。

今日胎の荒れたるアンナは萬族より預め選ばれたる神女を、萬有の王及び造成主、ハリストス神の居處として生む、神の定制を成就せん為なり。之に因りて我等地に生るる者は改め造られて、朽壊より終なき生命に新にせられたり。一次。

  光栄、今も、第一の讃頌。

霊智なる宝座に息ふ神は云々

  聖入。本日の提綱。

  喩言三篇。(生神女就寝祭の奉事に載す、第776頁を看よ)。

  「リティヤ」に讃頌、第一調。(聖城のステファンの作)。

人々よ、今日我等の救の始は成れり。蓋視よ、古代より預言せられし母并に童貞女、神の器は胎の荒れたる者より生れたり、イエッセイより華は出で、其根よりする杖は芽を出せり。原祖アダムは歓ぶべし、エワは喜びて楽しむべし、視よ、アダムの脅より造られし者は其女及び裔を明に讃美して云ふ、我の為に救は生れたり、我之に因りて地獄の縛より釋かれんと。ダワィドは喜びて琴を弾じ、神を讃め揚ぐべし。蓋視よ、童貞女は産まざる胎より出でたり、我等の霊の救の為なり。

  第二調

童貞を愛し、潔浄を慕ふ者、皆来れ、来りて、熱心を以て童貞の誉、堅き石より流るる生命の泉、子を生まざる者より我が霊を浄め且照す無形の火の棘を接けよ。

  同調。(總主教アナトリイの作)。

祭る者の声は何ぞや、イオアキム及びアンナは奥密に祝ひて曰ふ、アダム及びエワよ、今日我等と偕に悦べ、蓋爾等が昔破誡を以て閉しし楽園の門を、衆の為に啓く所の神女マリヤは、至栄なる果として我等に賜はりたり。

光明なるアンナの果を結ばざる胎より今日預見せられたる衆の女王、神の居處、永在者の神聖なる殿は出でたり。彼に因りて耻なき地獄は践まれ、原母エワは福たる生命に入れられたり。我等宜しきに合ひて彼に呼ばん、爾は女の中に福なり、爾の腹の果は祝福せられたり。

  光栄、今も、第八調。(總宗教セルギイの作)。

我が祭の吉徴の日に於て我等神霊の角(らっぱ)を吹かん。蓋今日ダワィドの裔より生命の母、黒暗を解く者は生る、此れアダムの復新、エワの喚起、不朽の泉、朽壊の削除なり、彼に因りて我等神成せられ、死より脱れたり。故に我等信者はガウリイルと偕に彼に呼ばん、恩寵を蒙れる者、慶べよ、主は爾と偕にす、爾に因りて我等に大なる憐を賜ふ者なり。

  挿句に讃頌、第四調。(總主教ゲルマンの作)。

全世界の喜悦は義なるイオアキム及びアンナより我等に輝けり、此れ至りて讃美たる童貞女、其至大なる潔浄に因りて神の生ける宮と為りて、独誠に生神女なりと識らるる者なり。ハリストス神よ、彼の祈祷に因りて世界に平安、我等の霊に大なる憐を降し給へ。

句、女よ、之を聴き、之を観、爾の耳を傾けよ。

天使の預言に由りて、今日義なるイオアキム及びアンナより至浄の果たる童貞女は出でたり、此れ天及び神の宝座、潔浄の器、全世界に喜悦を與ふる者、我等の生命の轉達者、呪詛を解き、祝福を施す者なり。故に神に召されたる童貞女よ、爾の誕生に於て、世界に平安、我等の霊に大なる憐を賜はんことを祈り給へ。

句、民中の富める者は爾の顔を拝まん。

胎の荒れたる子なきアンナは今日欣然として手を拍つべし、地に在る者は喜ぶべし、諸王は祝ふべし、成聖者は祝福を以て楽しむべし、全世界は祭るべし。蓋視よ、女王及び父の無てんなる聘女はイエッセイの根より生じたり。是より婦女は悲しみに於て子を生むことなからん、蓋欣喜は華さけり、衆人の生命は世に居るなり。是よりイオアキムの礼物は返されず、アンナの憂は喜に変じたればなり。彼云ふ、選ばれたるイズライリ民よ、皆我と偕に喜べ、蓋視よ、主は我に其神聖なる光栄の生ける宮を與へ給へり、萬衆の楽と喜及び我等の霊の救の為なり。

  光栄、今も、第八調。(總主教セルギイの作)。

信者よ、皆来りて、童貞女に趨り附かん、蓋視よ、未だ孕まざる前に預見せられし我が神の母は生る。是れ童貞の宝蔵、イエッセイの根より出でたるアアロンの杖、華を生ぜし者、諸預言者の伝、義なるイオアキム及びアンナの産なり。彼生れて、世界は彼と偕に改めらる、彼生れて、教会は其の美しきを以て飾らる。彼は聖なる殿、神性の容具、童貞の器、王の宮なり。其内に於てハリストスに在る二性の言ひ難き結合の至栄なる秘密は行はれたり。我等彼に伏拝して、至浄なる童貞女の誕生を讃め歌ふ。

  餅の祝福に、讃詞。

生神童貞女よ、爾の誕生は云云 三次。(小晩課に載す)。

 

早課

「主は神なり」に祭日の讃詞、三次。

  「カフィズマ」の第一の誦文の後に坐誦讃詞。第四調。

ダワィド、告げよ、神は爾に何を誓ひしか、答へて曰ふ、我に誓ひし所は已に行ひたり、我が腹の果より童貞女を賜へり、此より造成主ハリストス、新なるアダム、我が宝座に坐する王は生れて、今王たり、其國は動かざらん。胎の荒れたる者は生神女、我が生命の養育者を生む。

  光栄、今も、同上。

  至聖生神女の祭日の頌詞の誦読。

  第二の誦文の後に坐誦讃詞、第四調。

イエッセイの根及びダワィドの裔より今日我等に神女マリヤは生る、萬有は喜びて新にせらる。天と地とは共に喜べ、異邦の諸族は彼を讃め揚げよ。イオアキムは楽しみ、アンナは祝ひて呼ぶ、胎の荒れたる者は生神女、我が生命の養育者を生む。

  光栄、今も、同上。

  多燭詞の後に坐誦讃詞、第八調。

天は歓ぶべし、地は楽しむべし、蓋神の天は地上に顕れ、此の神の聘女は許約に因りて生れたり。胎の荒れたる者は赤子マリヤに乳を哺ませ、イオアキムは産の為に喜びて云ふ、我にダワィドの根より杖は出で、是より華なるハリストスは生じたり。実に至栄なる奇蹟なり。

  光栄、今も、同調。

アダムよ、改まれ、エワよ、喜べ、ダワィドよ、楽しめ、アンナよ、祝へ、蓋爾の造成主の母は至栄にして生る。全地は新にせられて祝ひ、妝はれて歓ぶ。萬族は楽しみてマリヤに呼ぶべし、ダワィドの家は福なり、我が生命の養育者を養へばなり。

  修道司祭グリゴリイの説教を読む。

讃歌
右、
至聖なる童貞女よ、我等爾を讃揚して、爾の聖なる父母を尊み、爾の至榮なる誕生を讃榮す。
  次ぎて同詠隊又歌ふ。
右、主よ、ダワィド及び其全き温柔を記憶せよ。
左、彼は主に誓ひ、イアコフの神に約したり。
右、視よ、我等之をエフラフに聞き、之にイアリムの田に遇へり。
左、神の城邑よ、光榮の事は爾に於て傳へらる。 神は其中に在り、其れ撼かざらん。 主は眞實を以てダワィドに誓ひて、之に背かざらん、 曰く、我爾が腹の果を以て爾の寶座に坐せしめん。 蓋主はシオンを擇び、此を以て其住所とするを望めり。 至上者は其住所を聖にせり。 能力と美好とは其聖所に在り。 爾が選び近づけて、爾の庭に居らしむる者は福なり。 主よ、聖徳は爾の家に属して永遠に至らん。 我爾の名を萬世に誌さしめん。 主は崇め讃められて世より世に迄らん。
  光榮、今も、「アリルイヤ」、「アリルイヤ」、「アリルイヤ」、神よ、光榮は爾に帰す。三次。

  品第詞、第四調の第一倡和詞。

  提綱、第四調。

我爾の名を萬世に誌さしめん。句、我が心善言を涌き出せり。

「凡そ呼吸ある者は主を讃め揚げよ」。福音經はルカ4端。

  第五十聖詠の後に、光栄、

生神女の祈祷に依りて、憐深き主よ、我等の多くの罪を浄め給へ。

  今も、同上。

次に「神よ、爾の大なる憐に因りて」。

  祭日の讃頌、第六調。

斯の日は主の日なり、人々よ、喜べ、蓋視よ、光の宮、生命の言の書は腹より出で、東に向ふ門は現れて、大なる司祭長の入るを候つ、独にして独のハリストスを世界に入るる者なり、我等の霊の救の為なり。

規程二篇。両規程の「イルモス」各二次、其讃詞共に十二句に。

第一の規程、ダマスクのイオアン師の作。第二調。

  第一歌頌

イルモス、人々よ、来りて、海を分ちて、エギペトの奴隷より引き出しし民を過らせしハリストス神に歌を歌はん、彼光栄を顕したればなり。

信者よ、来りて、聖神゜に依りて喜びて、今日胎の荒れたる者より人々の救の為に生れ給ひし永久童貞の少女を歌を以て讃美せん。

慶べよ、ハリストス神の最尊き母及び婢、人類の為に轉達して原始の福楽を獲しめし者よ、我等皆宜しきに合ひて歌を以て爾を讃栄す。

今日生命の橋は生る、死すべき者は是に依りて地獄の深處より上るを得て、歌を以てハリストス、生命を施す主を讃栄す。

第二の規程、クリトのアンドレイ師の作。第八調。

  第一歌頌

イルモス、我等は、其手にて敵を敗り、イズライリに紅の海を過らせし者を、吾が救主神として歌はん、彼光栄を顕したればなり。

悉くの造物は祝ひ、ダワィドも楽しむべし、其族及び裔より主、萬有の造成者たる華を發く杖は出でたればなり。

諸聖の至聖なる者は幼くして聖堂に入れらる、天使の手に由りて養はれん為なり。故に我等皆信を以て其誕生を祝はん。

産まざるアンナは胎荒れたれども、神の前には子なきに非ず、蓋彼は已に古世より萬物の造成主を僕の形に生まんとする潔き童貞女の母と為らん為に預定せられたり。

爾アンナより生れし無てんの牝羊、其腹より羔たるハリストスを我が性の赤子として生みし者を、我等皆歌を以て讃め揚ぐ。  聖三者讃詞

我は三の無原のものを讃栄し、三の聖なる者を歌ひ、三の同永在の者を一の性に於て伝ふ、蓋父と子と聖神゜に於て惟一の神は讃頌せらる。

  生神女讃詞

誰か父なくして生れし子が乳にて養はるるを見たる、抑何處に童貞女母は見られしか、潔き生神女よ、斯の二の者は誠に智慧に超えたり。

共頌、モイセイは杖を以て十字架の縦を象りて、徒歩にて行けるイズライリの為に紅の海を撃ち分ち、ファラオンの兵車に向ひては、勝たれぬ武器の横を記して、海を撃ち合せたり。故に我等ハリストス吾が神に歌はん、彼光栄を顕したればなり。

  第三歌頌

イルモス、木を以て罪を殺しし主よ、我等を爾の中に堅めて、爾を畏るる畏を我等、爾を歌ふ者の心に植え給へ。

てんに神の為に日を送りし者、我等の造成主及び神を生みし童貞女の神智なる父母は衆人の為に救を生めり。

萬衆に生命を流す主は胎の荒れたる者より童貞女を生ぜしめたり、其の内に甘じて入りて、生るる後にも之を損はるるなく護り給へり。

我等今日アンナの果たるマリヤ、生命を施す葡萄を生みし者を、生神女及び衆人の轉達者并に扶助者として讃め歌はん。

  又

イルモス、我が心は主の中に堅められ、我が角は我が神に在りて高くなり、我が口は我が敵に向ひて開け、我は爾の救の為に楽しめり。

至浄なる童貞生神女よ、爾は至聖所に養はれて、造物に超ゆる者と現れたり、造物主を肉体にて生みたればなり。

貞潔なるアンナよ、爾の腹は祝福せられたり、蓋爾は童貞の果として、造物の養育者及び救世主たるイイススを種なく生みし者を産育せり。

永貞童女よ、一切の造物は爾今日アンナより生れし者、イエッセイの根より出でたる至浄の杖、華たるハリストスを生ぜし者を讃め揚ぐ。

至浄なる生神女よ、爾の子は爾を一切の造物に超ゆる者と現して、爾がアンナよりせし誕生を尊き者と為し、今日衆人を楽しましめ給ふ。

  聖三者讃詞

本性の始なき父よ、我等爾を拝み、爾が永遠の子を歌ひ、爾と偕に永在なる聖神゜を尊みて、三位一体の神を崇め讃む。

  生神女讃詞

光を施す主、人の生命の首を生みし潔き生神女よ、爾は我等の生命の宝蔵及び近づき難き光の門と現れ給へり。

共頌、杖は秘密の預象として受けらる、蓋芽を出すに因りて司祭を指し示せり。嘗て実を結ばざる教会にも今十字架の木は華さきて、其の権力及び堅固と為れり。

  坐誦讃詞、第四調。

童貞女マリヤ、実の生神女は今日光の雲の如く我等に輝きて、義なる者より我等の光栄の為に現る、是よりアダムは定罪せられず、エワは縛より釋かれたり。故に我等毅然として独の潔き者に呼びて曰ふ、爾の誕生は全世界に喜を知らしむ。

  光栄、今も、同上。

  第四歌頌

イルモス、主よ、我爾が摂理の風声を聞きて、爾の独人を愛する者を讃栄せり。

主宰よ、我等爾、衆信者に救を得しむる避所として爾を生みし者を賜ひし主を讃め歌ふ。

神の聘女よ、ハリストスは、信を以て爾の秘密を讃め歌ふ衆人の為に光栄及び権力として、爾を顕し給へり。

婚姻を識らざる女宰よ、我等爾の祈祷を以て諸罪より援けらるる者は、皆感謝の心を抱きて、爾を崇め讃む。

  又

イルモス、主よ、預言者アウワクムは霊智の眼にて爾の降臨を預見せり、故に呼べり、神は南より来らん、光栄は爾の能力に帰し、光栄は爾の寛容に帰す。

救世主よ、太祖イアコフは明に爾の摂理の大事を預見して、聖神゜に藉りて呼びて奥密にイウダに言へり、子よ、爾は我が枝より生ぜりと、是れ爾童貞女より生れし神の事を告げしなり。

今ダワィドの根より生ぜしアアロンの杖なる浄き童貞女はアンナより出づ。天と地、異邦の諸族と、アンナ及びイオアキムは共に奥密に祝ふ。

潔き者よ、今天は楽しむべし、地は喜ぶべし、イオアキム及びダワィドは、一は、爾誠に神を生みし者の父として、一は爾の大なる事を伝へし爾の先祖として祝ふべし。

神智なるアンナよ、今日全地は爾と偕に喜ぶ、蓋爾は之を救ふ主の母ダワィドの根より出でて、我等に華たるハリストスを開きし能力の杖を生じたり。

  聖三者讃詞

無原の神、父と子と聖神゜、一性にして造られざる三者、セラフィム等が其前に立ちて、敬みて聖、聖、聖なる哉神やと呼び歌ふ者を我崇め讃む。

  生神女讃詞

生神女よ、始なき始は世の時を以て爾より始を受け、人体を取りたれども、神たる本位を保ちて、父と共に始なく、聖神゜と共に永在なる言たるを失はず。

共頌、主よ、我爾が摂理の秘密を聆き、爾の作為を悟り、爾の神性を讃栄せり。

  第五歌頌

イルモス、ハリストスよ、爾文の預象の朦朧なる影を散し、神女に藉りて真実の来るを以て信者の心を照して、我等をも爾の光にて導き給へ。

人々よ、萬有の起原者が我等に現れし所以の起原女を讃め歌はん。嘗て諸預言者は其預象を見て欣べり、其結びたる果として真の救を獲たればなり。

枯れたる杖が華を發きしはイズライリに司祭の預選を示せり。今も胎の荒れたる者の至りて光栄なる産は生みし者の光れる徳を奇妙に顕す。

  又

イルモス、主我が神よ、我等に平安を賜へ、主我が神よ、我等を獲よ、主よ、我等爾の外に他の者を識らず、爾の名を稱ふ。

てんなる童貞女、聘女ならぬ聘女よ、爾の誕生は潔く、爾の受孕は言ひ難く、爾の産は悟り難し、蓋爾の中に我を衣たる全き神は在せり。

今日天軍は楽しむべし、アダムの子孫は歌を以て祝ふべし、蓋華たるハリストス、我等の惟一の救世主を發きし杖は生じたり。

今日爾の誕生に由りてエワは定罪を免れ、胎の荒れたるは解かれ、アダムも古の詛を釋さる、蓋爾に依りて我等は朽壊より脱れたり。

光栄は爾今日胎の荒れたる者を栄せし主に帰す、蓋彼は許約に由りて常に華さく杖、我が生命の華たるハリストスを出しし者を生めり。

  聖三者讃詞

聖なる父、生れざる神よ、光栄は爾に帰す、永在にして独生なる子よ、光栄は爾に帰す、神聖にして同座なる神゜、父より出で、子に居る者よ、光栄は爾に帰す。

  生神女讃詞

童貞女よ、爾の腹は日の宿る所と為れり、爾の潔浄は故の如く損はれず、蓋日たるハリストスは、新郎が宮より出づる如く、爾より出で給へり。

共頌、嗚呼ハリストス王及び主が懸りたる木は三重に福なる哉。木を以て誘ひし者は爾に誘はれて墜ちたり、神我が霊に平安を賜ふ者は身にて爾の上に釘せられしに因る。

  第六歌頌

イルモス、イオナは鯨の中より主にべり、祈る、我を地獄の深處より引き上げ給へ、我が讃美の声と真実の神゜とを以て爾救主に祭を献げん為なり。

神の母の神智なる父母は生まざる悲に於て主にびしに、代代の為に一般の救及び光栄として之を生めり。

神の母の神智なる父母は神に適ふ天の賜を受けたり、是れヘルワィムよりも最高き宝座、言及び造物主を生みし者なり。

  又

イルモス、人を愛する主よ、我海の水の如く世の浪に荒らさる、故にイオナの如く斯く爾にぶ、慈憐の主よ、我が生命を淪滅より引き上げ給へ。

潔き者よ、爾の貞潔なる父母は爾諸聖の至聖なる者を主の堂に入れたり、爾が虔誠に養はれて、其母として備へられん為なり。

諸の胎の荒れたる者及び母よ、祝へ、子なき者よ、勇みて喜べ、蓋胎の荒れたる子なき者は、エワを産の病より、アダムを詛より脱れしめんとする生神女を生めり。

我ダワィドの爾に歌ふを聞く、諸童女は爾に従ひて導かれて、王の殿に入らんと、彼と偕に我も爾王の女を歌ひ讃む。

神に選ばれたる聘女、童貞女よ、我等爾の聖なる誕生を歌ひ、爾の種なき懐孕を尊む。天使の軍、諸聖の霊も我等と偕に爾を讃栄す。

  聖三者讃詞

潔き者よ、爾に於て聖三者の奥義は歌はれて讃栄せらる、蓋父は許し、言は爾の内に入り、聖神゜は爾を庇ひ給へり。

  生神女讃詞

潔き生神女よ、爾は金の香爐と為れり、蓋火たる言は聖神゜に由りて爾の腹に入り、爾に藉りて人の形を以て現れ給へり。

共頌、イオナは海の猛獣の腹の内に手を十字形に伸べて、明に救を施す苦を象れり、三日の後に出でて、身にて釘うたれ、三日目の復生を以て世界を照ししハリストス神の天然に超ゆる復活を預象せり。

  小讃詞、第四調。

至浄なる者よ、爾の聖なる誕生に因りてイオアキム及びアンナは子なき辱、アダム及びエワは死の朽壊を免れたり。定罪より釋かれし爾の民も之を祭りて、爾にぶ、胎の荒れたる者は生神女、我等の生命の養育者を生む。

  同讃詞

イオアキム及びアンナの胎荒れて子なきに因る祈祷と歎息とは.善く納れらるる者として、主の耳に入りて、生命を施す果を世界の為に生じたり。蓋一は山に在りて祷を献げ、一は園に於て辱を忍べり、然れども喜を以て胎の荒れたる者は生神女、我等の生命の養育者を生む。

  第七歌頌

イルモス、神の聘女よ、山に於て火に焚かれざりし棘と、露を出ししハルデヤの爐とは、明に爾を像れり、蓋爾は神聖なる無形の火を有形の腹に焚かれずして受けたり、故に我等爾より生れし者に歌ふ、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

至尊なる者よ、昔律法者は形ある顕現に因りて爾の大なる秘密を悟ることを許されざりき、唯徴を以て世の情に循ひて爾の事を測るべからざるを教へられたり。故に奇蹟に驚きてべり、我が先祖の神は崇め讃めらる。

神聖なる会は山と、天の門と、神霊の梯とを以て宜しきに合ひて爾を預象せり、蓋爾より人の手に藉らずして石は截り分けられたり、爾は主、奇蹟を行ふ我が先祖の神の過り給ひし門なり。

  又

イルモス、ハルデヤの爐は火に燃さるるに、神の摂理に因りて神゜にて露を注がれ、少者は歌へり、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

至浄なる者よ、我等祭りて、信を以て爾の聖なる誕生に伏拝して、爾の子を讃め歌ふ、之に由りて我等今アダムの古の定罪より脱れたり。

今アンナは楽しみ、誇りて呼ぶ、我胎の荒れたる者は神の母を生めり、彼に藉りて、エワの定罪と産苦とは釋かれたり。

アダムは赦され、エワは祝ひ、神゜を以て爾生神女に呼ぶ、ハリストス現れしに、我等は爾に藉りて始の詛より釋かれたり。

嗚呼神を涵るる者を己の内に涵れし腹や、嗚呼天より廣き者、至るべからざる宝座、聖品の聖にせられしひつを宿しし胎や。

  聖三者讃詞

我等は神性の惟一に於て父と子と聖神゜、別れず、造られず、同永在にして一体なる至聖三者を讃栄せん。

  生神女讃詞

童貞女よ、爾は独神妙に神を生めり、マリヤよ、爾は産を以て萬性を新にせり、潔き生神女よ、爾はエワを始の詛より釋き給へり。

共頌、不虔なる苛唐者の威嚇と聞くに堪へざる神に於けるそしりとを吐く無智なる命令は民を擾せども、三人の少者は残忍の怒と滅亡の火とを懼れずして、露を送る風に涼しくせらるる焔の中に在りて歌へり、讃詠せらるる先祖と我等との神よ、爾は崇め讃めらる。

  第八歌頌

イルモス、主よ、昔爾は少者の爐に於て爾の母を預象し給へり、此の預象は彼等を火より援けて、燬かれずして歩ましめたり、我等今彼、爾に藉りて地極に現れし者を歌ひて、萬世に崇め讃む。

我等を神と和睦せしむる預定の幕は今生存を創む、我等の為に物質の体に現れし言を生まん為なり。我等言に藉りて無より生存を受けし者は彼を歌ひて、萬世に崇め讃む。

父母の産まざるを啓きし者は世界が善を産まざるを啓きて、明に奇跡たるハリストスが死すべき者に臨み給ひしを顕せり。我等ハリストスに藉りて無より生存を受けし者は彼を歌ひて萬世に崇め讃む。

  又

イルモス、水の上に、己の宮を建て、沙を以て海の界を定め、一切を持つ主よ、日は爾を歌ひ、月は爾を讃め、造物は皆世々に爾萬有の造成主に歌頌を献つる。

荒れたる腹に奇妙なる事を行ひ、アンナの産まざる胎を啓きて、之に果を賜ひし者、爾聖なる神よ、爾童貞女の子よ、爾は彼常に華の如く栄ゆる童貞生神女より人体を取り給へり。

淵を閉ぢ又之を啓き、水を雲に騰せて雨を賜ふ者、爾主よ、爾は聖なるアンナに果を結ばざる根より至りて潔き果を結びて、生神女を生むを賜へり。

我等の思を耕作し、我等の霊を植え附くる者よ、爾は荒れたる地を沃壌に変じ、爾は先に槁れたる田を善く実り、穂の美しき、産の豊なる者と為して、聖なるアンナに至りて潔き実たる生神女を生むを賜へり。

我等皆来りて、小き宮よりするが如く今生るる神の城を見ん、彼は胎の門より出でたれども、交感の入るを知らざりき、蓋独造物主のみ此の奇妙の途を過り給へり。  聖三者讃詞

嗚呼実在の三者、同無原の惟一者よ、天使の軍は爾を歌ひ、爾に慄き、天と地と地獄とは爾の前に戦ひ、人々は爾を崇め讃め、火は爾に務め、一切の造物は畏を以て爾聖三者に順ふ。  生神女讃詞

嗚呼新なる風聞や、神は女の子なり、嗚呼種なき産や、夫なき者は母にして、生れし者は神なり、嗚呼畏るべき顕現や、嗚呼童貞女の奇異なる受孕や、嗚呼言ひ難き誕生や、実に皆智慧と観察とに超ゆ。

共頌、聖三者と同数なる少者よ、神父造物主を崇め讃め、降りて火を露に変ぜし言を讃め歌ひ、萬有に生命を施す至聖神゜を世々に尊み崇めよ。

第九歌頌には「ヘルワィムより尊く」を歌はずして、「イルモス」及び諸讃詞の前に左の附唱を歌ふ。

我が霊よ、神の母の至栄なる誕生を讃め揚げよ。

  第九歌頌

イルモス、日より前に光り輝きし神、肉体にて我等に臨みし者を、貞潔の腹より言ひ難く生みし讃美たる至浄き生神女よ、我等爾を崇め讃む。

順はざる人々の為に石より水を出しし者は、順ふ諸民の為に荒れたる胎より我等の喜として爾至浄なる神の母を賜ふ。我等宜しきに合ひて爾を崇め讃む。

生神女よ、我等爾古の厳しき定罪より救ひし者.原母を起しし者、人類と神との和睦の縁由の者、造物主に渡す橋なる者を崇め讃む。

他の附唱、我が霊よ、胎の荒れたる者より生れし童貞女マリヤを讃め揚げよ。

  又

イルモス、母には童貞は適はず、童貞女には生産は合はず、生神女よ、爾に於ては両ながら行はれたり、故に我等地上の萬族は常に爾を崇め讃む。

神の母よ、爾は許約に由りて爾の潔浄に合ふ誕生を得たり、蓋爾は嘗て胎の荒れたる者に神の結びたる果として賜はりたり、故に我等地上の萬族は常に爾を崇め讃む。

ぶ者の預言は應へり、曰く、我ダワィドの聖所のやぶれたる幕を起さんと、至浄なる者よ、此れ爾を預象せり、蓋爾に藉りて人体を成す塵は神の肉体と為れり。

生神女よ、我等爾の襁褓に伏拝し、嘗て果を結ばざる者に果を賜ひ、産まざる腹を奇妙に啓きし主を讃栄す、蓋彼は全能の神として欲する所行はざるなし。

生神女よ、我等信を以て爾アンナより生れし者に献物として讃詠を奉り、諸の母は母を、諸の童貞女は惟一の童貞女を讃美して、爾に伏拝し、爾を歌ひ、爾を讃栄す。

  聖三者讃詞

不法の者には、無原なる三者、父と子と聖神゜、造られざる全能、其有力の瞬にて全世界を治むる者を讃栄することは適はず。

  生神女讃詞

童貞女母よ、爾は己の腹に三者の一位たるハリストス王、萬物の歌ひ、天軍の戦く者を涵れ給へり。純潔なる者よ、彼に我等の霊の救はれんことを祈り給へ。

共頌、祭日の附唱と共に、

生神女よ、爾は奥密なる楽園、耕作せられずしてハリストスを生育せし者なり、彼は地上に生命を施す十字架の木を植え給へり、故に今之を挙ぐる時、我等之を拝みて、爾を崇め讃む。

又イルモス、木の果を食ふに縁りて人類に入りし死は今十字架にて空しくせられたり、蓋原母に藉る一般の詛は潔き神の母の産にて滅されたり。天軍皆彼を崇め讃む。

  光耀歌

今日果を結ばざるアンナより華たる生神女、地の四極に神聖なる馨香を充て、一切の造物に歓喜を満つる者は生じたり。我等彼を歌ひて、地に生るる者より至りて秀でたる者として宜しきに合ひて讃め揚ぐ。二次。

  光栄、今も、

アダムよ、新になれ、エワよ、振ひ興れ、諸預言者よ、使徒及び義人等と偕に祝へ、蓋今日義なるイオアキムとアンナより諸天使及び人々の一般の歓喜たる生神女マリヤは輝き出でたり。

「凡そ呼吸ある者」に四句を立てて讃頌を歌ふ。第一調。

嗚呼至栄なる奇蹟や、生命の泉は胎の荒れたる者より生れ、果を結ばしむる恩寵は輝きて現る。生神女の父と為りしイオアキムよ、楽しめ、神の選びし者よ、地上の者の中爾に似たる父なし、蓋爾に因りて神を容るる少女、神の居處、至聖なる山は我等に賜はりたり。二次。

嗚呼至栄なる奇蹟や、萬有の造成主及び全能者の命に因りて胎の荒れたる者より果は輝き出でて、世界の善徳の荒を解きたり。母たる者よ、生神女の母と偕に祝ひてべ、恩寵を蒙れる者、慶べよ、主は爾と偕にす、爾に因りて我等に大なる憐を賜ふ者なり。

光明なるアンナは潔浄の生ける柱、恩寵にて輝ける清き器と現れて、実に童貞の栄冠、神聖なる花を生じたり。是れ凡の貞潔の者及び童貞を慕ふ者に賜として明に童貞の美飾を與へ、並に衆信者に大なる憐を賜ふ者なり。

  光栄、今も、第六調。

斯の日は主の日なり、人々よ、喜べ、蓋視よ、光の宮、生命の言の書は腹より出で、東に向ふ門は現れて、大なる司祭長の入るを候つ、独にして独のハリストスを世界に入るる者なり、我等の霊の救の為なり。

大詠頌。聖三祝文の後に祭日の讃詞一次。聯祷。發放詞。

 

聖体礼儀

真福詞は第二調の規程の第三歌頌四句に。又第八調の規程の第六歌頌四句に。聖入の後に祭日の讃詞。光栄、今も、小讃詞。

  提綱、生神女の歌、第三調。

我が霊は主を崇め、我が神゜は神我が救主を悦べり。句、「蓋其婢の卑しきを顧みたり」。使徒の誦読はフィリッピ書240端。「アリルイヤ」、第八調、女よ、之を聴き、之を観、爾の耳を傾けよ。句、民中の富める者は爾の顔を拝まん。

  福音經の誦読はルカ54端。

「常に福にして」に代へて「イルモス」、「母たる者には童貞は適はず」、祭日の附唱と共に。本祭期の末日に至るまで此くの如し。

領聖詞、我救の爵を受けて、主の名をばん。「アリルイヤ」。(115:4三次。

【注】知るべし、至聖生神女の誕生祭若し主日に當らば、其の奉事式は之を至聖生神女の就寝祭797頁に看よ。唯共頌には「モイセイは杖を以て十字架の縦」の「イルモス」を歌ふ。