1月6日/19日

主神我が救世主イイススハリストスの神現祭


晩課

定刻に及びて大鐘を撞き、次ぎて連鐘を鳴す、衆堂に聚りて後、晩課を始めて常例の聖詠を歌ふ。次ぎて大聯祷。其後、もし「スボタ」ならば、第一「カフィズマ」全文を誦す。若し主日ならば、此の「カフィズマ」の第一段のみを歌ふ。若し其他の諸日ならば、聖詠を誦せずして、大聯祷の後直に「主よ、爾にぶ」を歌ふ、第二調に依る。此の時司祭奉獻禮儀を行ふ。次ぎて輔祭堂中に爐儀を行ふこと常の如し。

詠隊祭日の讃頌を歌ふ、八句を立つ、第二調。(修士イオアンの作)。

前駆は我裸の光照者、凡の人を光照する者が洗を受けん為に来れるを見て、霊悦び且慄き、手を以て彼を指して人々に謂ふ、此れイズライリを贖ひ、我等を壊滅より救ふ者なり。嗚呼罪なきハリストス我等の神よ、光榮は爾に帰す。二次。

我等の贖罪主が僕より洗を受け、聖神゜の降臨にて證せらるるを見て、天使の軍は驚けり。時に天より父より聲至りて曰ふ、前駆が手を按せて洗を施す者は、此れ我の至愛の子、我が喜べる者なりと。ハリストス我等の神よ、光榮は爾に帰す。二次。

イオルダンの流は爾泉なる者を納れ、撫者は鴿の形にて降れり。天を側けし者は首を側け、塵は造物主にびて曰ふ、何ぞ我に超ゆることを我に命ずる、我爾より洗を受くるを要す。嗚呼罪なきハリストス我等の神よ、光榮は爾に帰す。二次。

贖罪主よ、爾は迷へる人を救はんと欲して、僕の像を衣ることを卑しとせざりき、蓋爾主宰及び神には、我等の為に我等の事を受くるは宜しきに合へり、爾身にて洗を受けて、我等に釋を賜ひたればなり。故に我等爾にぶ、ハリストス我等の神よ、光榮は爾に帰す。二次。

   光榮、今も、同調。(ワィザンティイのノ作)。

救世主よ、爾は首を前駆の前に側け、蛇の首を砕き、流に入りて、萬有を光照せり。我等爾我が霊の光照者を讃栄す。

福音經捧持の聖入。「穏なる光」。本日の提綱。喩言。

   創世記の讀。(一章)。

元始に神天地を造れり。地は形なく虚しくして、暗は淵の面に在り、神の神゜水の面に覆育せり。神曰へり、光あるべし。即光成れり。神光を観て善とせり、神光を暗より判てり。神光を晝と名づけ、暗を夜と名づけたり。夕あり、朝あり、是れ一日なり。神曰へり、水の中に穹蒼ありて、水を水より判つべし。即斯く成れり。神穹蒼を造りて、穹蒼の下の水を穹蒼の上の水より判てり。神穹蒼を天と名づけたり。神之を観て善とせり。夕あり、朝あり、是れ第二日なり。神曰へり、天下の水は一区に匯りて、陸顕るべし。即斯く成れり。天下の水其区に匯りて、陸顕れたり。神陸を地と名づけ、水の匯を海と名づけたり。神之を観て善とせり。神曰へり、地は青草と、種を其類其肖に従ひて蒔く草と、地上に其類に従ひて己の内に核を懐く実を結ぶ所の果の木とを生ずべし。即斯く成れり。地は青草と、種を其類其肖に従ひて蒔く草と、地上に其類に従ひて己の内に核を懐く実を結ぶ所の果の木とを生ぜり。神之を観て善とせり。夕あり、朝あり、是れ第三日なり。

   エギペトを出づる記の讀。(十四章)

主はモイセイに謂へり、爾何ぞ我にぶ、イズライリの諸子に告げて、彼等を行かしめよ、爾杖を挙げ、爾の手を海の上に伸べて、之を分て、イズライリの諸子は海の中に乾ける地に入るべし。視よ、我ファラオンと総てのエギペト人の心を剛愎にせん、彼等は其後に入らん、而して我はファラオン及び其全軍、其戦車、其騎兵に因りて光栄を顕はさん、我がファラオン、其戦車、其騎兵に因りて光栄を顕はさん時、エギペト人皆我の主なるを知らん。モイセイ其手を海の上に伸べたれば、主は終夜強き東風を以て海を退かしめて、海を陸と為し、水分れたり。イズライリの諸子は海の中に乾ける地に入りたるに、水は彼等の為に右に壁と為り、左に壁と為れり。エギペト人等、ファラオンの馬、戦車、騎兵、皆彼等の後を追ひて、海の中に入りたり。モイセイ手を海の上に伸べたれば、旦に及びて、水故の處に返れり、エギペト人水の下を奔れるに、主はエギペト人を海の中に揺り墜せり。水流れ回りて、戦車、騎兵、及びファラオンの全軍後に従ひて海に入りし者を覆ひて、彼等の中に一も遺れる者なかりき。惟イズライリの諸子は海の中に乾ける地を行けり。

   エギペトを出づる記の讀(十五、十六章)

モイセイはイズライリの諸子を紅海より導きて、スルの野に入りしに、彼等野を行くこと三日にして、飲まん為に水を得ざりき。メッラに至りしがメッラの水を飲むこと能はざりき、其苦きを以てなり、故に此の處はメッラ(苦)と名づけられたり。民はモイセイに怨言して曰へり、我等何を飲まんか。モイセイ主にべり、主は彼に一の木を示したれば、之を水に投ぜしに、水甘くなれり。彼處に神は民の為に律例と規定とを立て、彼處に彼を試み、且曰へり、爾若し慎みて主爾の神の聲を聴き、其悦ぶ所を行ひ、其誡に耳を傾け、其悉くの律例を守らば、我は我がエギペト人に加へし病を一も爾に加へざらん、蓋我は主爾を醫す者なり。彼等エリムに至れり、其處に水の井十二、棕櫚七十株あり、彼等彼處に水の旁に幕を張れり。エリムより出でて、イズライリの諸子の会衆はシオンの野、即エリムとシナイ山との間に在る處に来れり。

   讃詞、第五調。

世界を造りし者は世界に現れ給へり、幽暗に坐する者を照さん為なり。人を愛する主よ、光榮は爾に帰す。

第一句、神よ、我等を憐み、我等に福を降し、爾の顔を以て我等を照し給へ、爾の途の地に知られ、爾の救の萬民の中に知られん為なり。

末辞、幽暗に坐する者を照さん為なり。人を愛する主よ、光榮は爾に帰す。

第二句、神よ、願はくは諸民爾を讃揚し、諸民悉く爾を讃揚せん。願はくは諸族楽しみ歓ばん、蓋爾は義を以て諸民を審判し、地上の諸族を治む。

末辞、幽暗に坐する者を照さん為なり。人を愛する主よ、光榮は爾に帰す。

第三句、神よ、願はくは諸民爾を讃揚し、諸民悉く爾を讃揚せん。地は其果を出せり、願はくは神我が神は我等に福を降さん。願はくは神は我等に福を降し、地の極は悉く彼を畏れん。

末辞、幽暗に坐する者を照さん為なり。人を愛する主よ、光榮は爾に帰す。

   光榮、今も、

世界を造りし者は世界に現れ給へり、幽暗に坐する者を照さん為なり。人を愛する主よ、光榮は爾に帰す。

   イイススナワィンの記の讀。(三章)

主はイイススに謂へり。今日我始めて爾をイズライリの衆の前に高くす、彼等が我のモイセイと偕に在りし如く、爾と偕にも在らんことを知らん為なり。今爾約櫃を舁く所の司祭等に命じて曰へ、爾等イオルダンの水に入りたらば、イオルダンの中に立つべしと。イオルダンは麦の収穫の頃常に其岸に溢るれども、主の約櫃を舁ける司祭等イオルダンに入り、櫃を舁ける司祭等の足イオルダンの水に浸りたれば、上より下る水は止まりて、遙に遠き處まで、即アダミ邑よりカリアフィアリムの地に至るまで、積もり立ちて堆くなり、下に流るる水はアラワの海、即塩海に下りて、全く竭きたり。民はイエリホンに向ひて立てり。主の約櫃を舁ける司祭等イオルダンの中の乾ける地に堅く立ちたれば、イズライリの諸子皆乾ける地を済りて、遂に民悉くイオルダンを済り終れり。

   列王紀の讀。(第四巻二章)

イリヤはエリセイに謂へり、此に止まれ、蓋主は我をイオルダンに遣せり。エリセイ曰へり、主は活く、爾の霊も活く、我爾を離れず、二人偕に行けり。預言者の門徒五十人往きて遙に立ちて望めり、彼等二人はイオルダンの濱に立てり。イリヤ其ウワギを取りて之を巻き、此を以て水を撃ちたれば、水は此旁彼旁に分れて、二人乾ける地を済れり。既に済りて、イリヤはエリセイに謂へり。我が取られて爾を離れざる先に、我が爾の為に何を為すべきかを求めよ。エリセイ曰へり。願はくは爾に在る所の神゜は二倍我に在らんことを。イリヤ曰へり、爾難き事を求む。然れども若し爾我が取られて爾を離るるを見ば、爾に是くの如く成らん、若し見ずば成らざらん。彼等仍行きて語れる時、視よ、火の車及び火の馬現れて、二人を隔てたり。而してイリヤは旋風の中に天に於けるが如く升れり。エリセイ仰ぎて呼べり、父よ、父よ、イズライリの車及び其騎兵よ。遂に彼を見ざりき。エリセイ己の衣を執りて、之を二片に裂けり。エリセイはイリヤの身より堕ちたるウワギを拾い、返りてイオルダンの岸に立ち、イリヤの身より堕ちたるウワギを執りて水を撃ちたれども、水分れざりき。エリセイ曰へり、イリヤの神、彼親ら安にか在る。而して再び撃たれば、水分れて、彼は乾ける地を済れり。

   列王紀の讀(第四巻五章)

アッシリヤ王の軍長ネエマン其馬と車とを従へ、来りてエリセイの家の門に立てり。エリセイ使を彼に遣して曰へり。往きて、七次イオルダンに身を洗へ。然らば爾の體舊に復りて、爾潔まらん。ネエマン怒りて、退きて曰へり、視よ、我は彼自ら出でて我に就き、其主神の名を呼び、其手を癩の上に置きて、之を我が身より除くならんと意へり。ダマスクの河アワナ及びファルファはイオルダン及びイズライリの凡ての水に愈るに非ずや、我此等に身を洗ひて潔まることを得ざらんや。乃身を轉じて、怒りて去れり。其僕等近づきて彼に謂へり、父よ、若し預言者爾に大なる事を語らば、爾之を行はざらんや、况んや彼僅に爾に身を洗へ、然らば潔まらんと言へるをや。是に於てネエマン下りて、神の人の言の如く、七次イオルダンに身を洗ひしに、其體舊に復り、嬰児の體の如くになりて、彼潔まれり。

   讃詞、第六調。

我が救世主よ、爾は憐の多きに因りて罪人及び税吏に現れ給へり、蓋爾の光は若し幽暗に坐する者に輝くにあらずば、亦何の處にか輝かん。光榮は爾に帰す。

第一句、主は王たり、彼は威厳を衣たり、主は能力を衣、又之を帯にせり、故に世界は堅固にして動かざらん。爾の寶座は古より堅く立ち、爾は世世の前より在せり。

末辞、蓋爾の光は若し幽暗に坐する者に輝くにあらずば、亦何の處にか輝かん。光榮は爾に帰す。

第二句、諸川聲を騰げ、主よ、諸川其聲を騰げ、諸川其浪を騰ぐ。然れども主が最高きに於て強きは、多くの水の聲に勝り、海の強き浪に勝れり。

末辞、蓋爾の光は若し幽暗に坐する者に輝くにあらずば、亦何の處にか輝かん。光榮は爾に帰す。

第三句、爾の啓示は誠に正し。主よ、聖徳は爾の家に属して永遠に至らん。

末辞、蓋爾の光は若し幽暗に坐する者に輝くにあらずば、亦何の處にか輝かん。光榮は爾に帰す。

   光榮、今も、

我が救世主よ、爾は憐の多きに因りて罪人及び税吏に現れ給へり、蓋爾の光は若し幽暗に坐する者に輝くにあらずば、亦何の處にか輝かん。光榮は爾に帰す。

   イサイヤの預言書の讀。(一章)

主是くの如く言ふ、己を洗ひ、己を浄めよ、爾等の悪業を我が目の前より去れ、悪を行ふを罷めよ、善を行ふを学べ、義を求めよ、虐げらるる者を救へ、孤子を護れ、寡婦の訟を理めよ。主云く、其時来りて論議せん、爾等の罪若し紅の如くならば、我之を雪の如く白くせん、若し丹の如く赤くば、羊の毛の如く白くせん。爾等若し肯ひて順はば、地の善物を食はん、若し肯はずして逆はば、剱爾等を齧まん、蓋主の口之を言ふ。

   創世記の讀。(三十二章)

イアコフ目を挙げて陣を張れる神の軍を見たり、神の使等彼を迎へたり。イアコフ彼等を見て曰へり、是れ神の陣営なり。故に其處の名を二営と名づけたり。イアコフ己に先だちて、シイルの地、エドムの郷に、其兄イサフに使者を遣して、彼等に命じて曰へり、斯く我が主イサフに謂へ、爾の僕イアコフ斯く云ふ、我ラワンの所に寓りて、今に至るまで留まれり、我に牛、驢、羊、及び僕婢あり、我人を遣して我が主イサフに告げしむ、願はくは爾の僕は爾の前に恩を獲んと。使者イアコフに帰りて曰へり、我等爾の兄イサフに往けり、彼自ら爾を迎へん為に来る。四百人彼と偕にせり。イアコフ大に懼れて心惑ひ、彼と偕に在る人々、及び羊と牛と駱駝とを二隊に分てり。イアコフ曰へり、若しイサフーの隊に来りて之を撃たば、他の一隊は逃るるを得ん。イアコフ又曰へり、吾が父アウラアムの神、吾が父イサアクの神、我に、爾の生れし地に帰れ、我善く爾を遇せんと言ひし主よ、爾が其僕に施しし恩恵と眞實とは、我ーも之を受くるに堪へず、蓋我は杖のみを持ちてイオルダンを済れり。

   エギペトを出づる記の讀。(二章)

ファラオンの女水浴せん為に河に下り、其婢等河の畔に歩めり。彼蘆の間に箱の在るを見て、婢を遣して之を取れり。之を啓けば、箱の中に啼ける児を見たり。ファラオンの女之を憐みて曰へり、此れエウレイ人の子なり。時に其姉ファラオンの女に謂へり、我が往きて、エウレイの婦の中より此の子を爾の為に養ふべき乳媼を呼ばんことを欲するか。ファラオンの女彼に謂へり、往け。童女往きて、子の母を呼べり。ファラオンの女彼に謂へり、此の子を取りて、我が為に之を養へ、我其値を爾に與へん。婦子を取りて之を養へり。子の長ずるに及びて、之をファラオンの女に攜へたれば、則其子と為れり、彼其名をモイセイと名づけたり、蓋曰へり、我彼を水より取れり。

   士師記の讀。(六章)

ゲデオン神に謂へり。若し爾曾て言ひし如く我が手を以てイズライリを拯はば、視よ、我羊の毛を禾場に舗かん、若し露毛にのみありて、地皆燥きをらば、我之に因りて、爾が曾て言ひし如く我が手を以てイズライリを拯ふを知らん、是くの如く成れり。次日ゲデオン夙に興きて、毛を搾りたれば、露は毛より流れ出でて、一の盂に盈ちたり。ゲデオン神に謂へり、求む、我に怒る勿れ、我今一次言はん。今一次毛を以て試みん、願はくは毛のみ燥きをりて、地には皆露あらんことを。是の夜神是くの如く行へり、毛のみ燥きて、地には皆露ありき。

   列王紀の讀。(第三巻十八章)

イリヤ民に謂へり、我に近づけ、民皆彼に近づけり。イリヤはイズライリの諸子の十二族の数に循ひて、十二の石を取り、此の石を以て主の名に託して壇を築き、壇の四周に種子二「サタ」を容るべき溝を作り、壇の上に薪を陳べ、犢を截り分ちて、薪の上に載せて曰へり、四の桶に水を盈てて、燔祭と薪との上に沃げ。彼等斯く為せり。又曰へり、再之を為せ。彼等再之を為せり。又曰へり、三たび之を為せ。三たび之を為せり。水は壇の四周に流れ、溝は水にて盈ちたり。晩の祭を獻ぐる時に方りて、預言者イリヤ近づきて、天を仰ぎてびて曰へり、アウラアム、イサアク、イアコフの主神よ、我に聴き給へ、火を以て今日我に聴きて、此の衆民に爾は獨主イズライリの神、我は爾の僕にして、此れ皆爾に頼りて行ひしを知らしめ給へ、求む、斯の民の心を轉じて、爾に従はしめ給へ。時に主の火天より降りて、燔祭と薪と石と塵とを焚き盡し、溝の中の水をもり盡せり。民皆其面に俯伏して曰へり、實に主は神なり、彼は神なり。

   列王紀の讀。(第四巻二章)

イエリホンの邑の人人エリセイに謂へり、視よ、爾主の見る所の如く、此の邑の地位は善し、唯水悪しくして、地物を産せず。エリセイ曰へり、新しき瓶に塩を盛りて我に予へよ。乃予へたり。彼出でて水の源に至り、塩を彼處に投じて曰へり、主是くの如く云ふ、我此の水を愈せり、此れよりして復死或は不産あらざらんと。其水はエリセイの言ひし言に遵ひて、愈えて今日に迄れり。

   イサイヤの預言書の讀。(四十九章)

主是くの如く言ふ、納るべき時に我爾に聴き、救の日に爾を助けたり、又我爾を守りて民の約と為さん、地を興し、荒れたる嗣業を以て継ぐ者に還し、俘囚に出でよ、幽暗に在る者に顕れよと言はん為なり。彼等は路の旁に牧し、悉くの陵に彼等の牧場あらん、彼等は飢えず、渇かず、熱と日と彼等を撃たざらん、蓋矜恤する者は彼等を導き、彼等を水の泉に攜へ至らん。我凡の山を途と為し、凡の大路を彼等の為に牧場と為さん。視よ、彼等は遠方より来らん。或者は北及び海より、或者はペルシヤの地より来らん。天は楽しむべし、地は喜ぶべし、諸の山は楽を傳へ、諸の陵は義を傳ふべし。蓋神は其民を憐み、苦しむ者を慰めたり。シオンは云へり。主は我を棄て、神は我を忘れたりと。豈に婦は其哺乳児を忘れんや、或は其腹の産みたる者を憫まざらんや、然れども縦使婦此等を忘るとも、我は爾を忘れざらん。主之を言ふ。

小聯祷、「我等復又安和にして」。

高聲、「蓋我が神よ、爾は聖なり」。

   高聲の後に聖三祝文を歌ふ。

次に提綱、第三調、主は我が光、我が救なり、我誰をか恐れん。句、主は我が生命の防固なり、我誰をか懼れん。

他徒の誦讀はコリンフ書143端、「兄弟よ、我衆に對して自主なりと雖」。

祭の前日若し「スボタ」或は主日に當らば、同端の半より始む。「兄弟よ、我爾等が知らざるを欲せず」、「アリルイヤ」、第六調、我が心善言を湧き出せり、我曰ふ、我が歌は王の事なり。句、爾は人の子より美し。

福音經の誦読はルカ九端、、「ティワェリイ ケサリ在位の十五年」。

次ぎて序を逐ひて大ワシリイの聖體禮儀を行ふ。「常に福にして」に代へて、「恩寵を満ち被むる者よ」を歌ふ。領聖詞は「天より主を讃め揚げよ」。

升壇外の祝文の後、神品王門を出でて、聖水處、或は河に往く。聖務長は首に十字架を戴き、幇堂者は燭を持ち、輔祭は香爐を執りて前行す。聖務長十字架を修飾したる案に置く、案上に亦一盤水を備へ、側に燭臺を置く。聖務長は司祭等に蝋燭を予へ、香爐を執りて、案を環りて爐儀を行ひ、亦諸聖像、神品、及び衆人の前に行ふ、輔祭蝋燭を持ちて前行す。此の時詠隊左の諸讃詞を歌ふ、第八調。

主の聲は水の上に呼びて曰ふ、皆来りて、睿智の神゜、知識の神゜、現れしハリストス神を畏るる神゜を受けよ。三次。

今水の性は聖にせられ、イオルダンは分れ、主宰が洗を受くるを見て、其水の流を停む。二次。

ハリストス王よ、爾は人の如く河に来給へり、善にして人を愛する主よ、爾は我等の罪の為に前駆の手より僕の洗禮を受けんことを願ふ。二次。

   光榮、今も、同調。

主よ、爾は僕の形を受けて、主の道を備へよと野に呼ぶ者の聲に就き、罪を知らざる者にして洗禮を求め給へり。水は爾を見て懼れ、前駆は戦きて呼びて曰へり、如何ぞ燈臺は燈を照さん、如何ぞ僕は主宰に手を按せん、世界の罪を任ふ救世主よ、我と水とを聖にせよ。

   イサイヤの預言書の讀。(三十五章)。

主是くの如く言ふ、荒野と枯れたる地とは楽み、沙漠は喜びて百合の如く華を開かん。盛に咲きて喜び、祝ひて歌はん、リワンの光栄、カルミルとサロンとの華美は彼に與へられん、彼等は主の光栄と我が神の大なる事とを見ん。弱りたる手を強くし、顫へる膝を固くせよ、心の卑怯なる者に言へ、強くなれ、懼るる毋れ、見よ爾等の神は此に在り、復讐は来り、神の報は来らん。彼来りて爾等を救はん。其時瞽者の目は明き、聾者の耳は啓かん。其時跛者は鹿の若く躍り、唖者の舌は歌はん、蓋荒野に水涌き出で、沙漠に川流れん。水の幻像は変じて湖となり、乾きたる地は水の源とならん、野犬の臥す所の棲處には、葦ととの茂る處あらん。彼處に大路あり。其道は聖なる道と名づけられん、不浄の者は之を過ぎざらん、此れ唯彼等の為に備へらる、是の道を行く者は未熟なりとも迷はざらん。彼處には獅無く、猛獣も之に登らず、彼處に於て之に遇はざらん、唯贖はれたる者は行かん。主に依りて救はれし者は帰り、歓び呼びてシオンに来らん、永遠の喜は其首の上に在り、彼等は喜と楽とを得ん、哀と歎とは離れ去らん。

   イサイヤの預言書の讀。(五十五章)

主是くの如く言ふ、渇く者よ、水に往け、銀なき者も往きて沽へ。銀なく價なくして酒と油とを食ひ飲め。爾等何ぞ糧ならざる者の為に銀を権り、かしむ能はざる者の為に劬労して獲たる者を権らん、我に聴け、然らば爾等嘉物を食ひ、爾等の霊福を以て楽まん。爾等の耳を傾けて我の道に従へ。我に就きて聴け、然らば爾等の霊は福に在りて活きん、我爾等に永遠の約、ダヴィドに許しし易らざる恵を賜はん。視よ、我彼を立てて諸民の為に證者と為し、諸民の統帥及び師と為せり。視よ、爾は嘗て識らざりし民を召し、嘗て爾を識らざりし諸民は爾に趨り附かん、主爾の神の故、イズライリの聖なる者の故に縁りてなり、蓋彼は爾を栄せり。主を尋ね得べき時に於て彼を尋ねよ、其近きに在る時に於て彼をべ。不虔の者は其途を棄て、不法の人は其念を棄てて主に向ふべし、然らば主は彼を憐まん、我等の神に向ふべし、其宏恩なるに因る。蓋我の念は爾等の念の如きに非ず、我の道は爾等の道の如きに非ず、主之を言ふ。即天の地より遠きが如く、是くの如く我の道は爾等の道より遠く、我の念は爾等の念より遠し。雨或は雪の天より降りて復彼處に返らず、即地を潤し、之をして萌し長ぜしめて、其播く者に種を與へ、食ふ者に糧を與へしむるが如く、是くの如く我が口より出づる所の我が言も空しく我に返らず、即我が欲する所を行ひ、我が遣して命ぜし事を成す。是を以て爾等は楽みて出で、平安を以て送られん、山と陵とは爾等の前に歌を歌へ、野に在る樹は皆爾等に手を拍たん、荊棘に代へて扁柏は生ひ、蕁麻に代へて岡拈樹は生ひん、是は主の光栄となり、永遠にして絶えざる徴とならん。

   イサイヤの預言書の讀。(十二章)

主是くの如く言ふ、楽を以て救の泉より水を汲め。彼の日に於て爾言はん、主に歌へ、其名をべ。諸民の中に其光栄を傳へよ、其名の高く挙りたるを記念せよ。主に歌へ、蓋彼は大なる事を為せり、之を全地に傳へよ。シオンに住む者よ、喜びて楽め、蓋イズライリの聖なる者は其中に高く挙りたり。

   提綱、第三調。

主は我が光、我が救なり、我誰をか恐れん。句、主は我が生命の防固なり、我誰をか懼れん。

   使徒の誦讀はコリンフ書百四十三端の半より。

兄弟よ、我爾等が知らざるを欲せず、我等の先祖は皆雲の下に在り、皆海を過れり、皆モイセイに於て雲と海とに洗を受けたり、皆同じき属神゜の食を食ひ、皆同じき属神゜の飲料を飲めり、蓋属神゜の後来の磐より飲めり、此の磐は即ハリストスなり。

「アリルイヤ」、第四調、主の聲は水の上に在り。句、光榮の神は轟けり、主は多水の上に在り。

   福音經の誦読はマルコ二端。

彼の時イイスス ガリレヤのナザレトより来りて、イオルダンに於てイオアンより洗を受けたり。直に水より上る時、天開け、聖神゜鴿の如く其上に降るを見たり。又天より聲ありて云へり、爾は我の至愛の子、我が喜べる者なり。

   輔祭聯祷を誦す。

我等安和にして主に祷らん。「上より降る安和」。「全世界ノ安和」。「此の聖堂」。「教会を司る要聖なる會院」。「我が今上皇帝及び皇后」。「我が皇太子皇太子妃皇族」。「皇帝を助け」。「此の城邑」。「気候順和」。「航海する者」。

此の水が聖神゜の能力と、挙動と、庇蔭とに藉りて聖にせらるるが為に主に祷らん。

此の水に、永在三者の潔を為す挙動の降るが為に主に祷らん。

此に聖神゜の能力と、挙動と、庇蔭とに藉りて救の恩寵、イオルダンの祝福の賜はるが為に主に祷らん。

速にサタナが我等の足下に殪され、凡そ我等に構ふる悪しき計の敗らるるが為に主に祷らん。

主神が我等を仇敵の悉くの悪謀と誘感より拯ひて、許約せられし幸福を受くるに堪ふる者と為すが為に主に祷らん。

我等が聖神゜の庇蔭に藉りて睿智と敬虔との光に照さるるが為に主に祷らん。

主神がイオルダンの祝福を遣して、此の水を聖にするが為に主に祷らん。

此の水が成聖の賜、諸罪の赦、霊體の醫、及び悉くの善益を成す者となるが為に主に祷らん。

此の水が涌きて永生に至らしむる者となるが為に主に祷らん。

此が見ゆると見えざる諸敵の悉くの悪謀をくる者と顕るるが為に主に祷らん。

此を家屋の成聖の為にみ取る者の為に主に祷らん。

此が凡そ信を以て此をみ及び飲む者の霊體の潔となるが為に主に祷らん。

我等が此の水を飲むに縁りて、聖神゜の見えざる顕見を以て、成聖に満てらるるに堪ふる者となるが為に主に祷らん。

主神が我等罪人の祷の聲を聆きて、我等を憐むが為に主に祷らん。

「我等諸の憂愁と忿怒」。「神よ、爾の恩寵を以て」。「至聖至潔にして至りて讃美たる」。

   右の聯祷を誦する時、司祭左の祝文を黙誦す。

主イイススハリストス、父の懐に居る獨生の子、眞の神、生命と不死との源、光よりする光、世を照さん為に来りし者よ、爾の聖神゜にて我等の念を照し、我等爾に、古世より有りし爾の奇妙なる大業、及び季世に顕れし爾が救を施す摂理の為に、讃栄と感謝とを奉る者を納れ給へ。蓋爾萬有の王は、柔弱にして貧賤なる我等の合成を衣、僕の量にまで降り、甘じてイオルダンに於て僕の手より洗を受け給へり、爾罪なき者が水の性を聖にして、我等に水と聖神゜とに由る復生の途を備へ、我等を初の自由に返さん為なり。主宰、人を愛する者よ、我等此の神聖なる機密の記憶を祭りて、爾に祷る、爾が神聖なる許約に因りて、我等爾が不當の諸僕にも潔を成す水、爾が仁慈の賜を灑ぎ給へ、此の水の上に捧ぐる所の我等罪人の諸願が爾の慈憐に因りて善く納れられん為、是に因りて爾の降福が我等と爾の諸の信者とに賜はりて、爾の拝まるべき聖なる名の榮せられん為なり。蓋凡の光榮・尊貴・伏拝は爾と、爾の無原の父と、至聖至善にして生命を施す爾の神゜とに帰す、今も何時も世々に、「アミン」。

   輔祭聯祷畢りて後、司祭高聲にして左の祝文を誦す。

主よ、爾は至大なり、爾の行事は奇異なり、爾の奇蹟を讃榮するに堪ふる言なし。三次。

蓋爾望を以て萬物を無より有と為しし者は、爾の権能を以て造物を保ち、爾の摂理を以て世界を治む。爾四行を以て造物を合成せし者は、四季を以て周年を全うせり。霊智の萬軍は爾の前に慄き、日は爾を歌ひ、月は爾を讃め、星は爾に伴ひ、光は爾に従ひ、淵は爾の前に戦ひ、泉は爾に勤む。爾天を幔の如くに張り、爾地を水の上に固め、爾砂を以て海を限り、爾呼吸の為に空気を漑げり。天使の軍は爾に奉事し、天使首の隊は爾に伏拝し、多目のヘルワィムと六翼のセラフィムとは環り立ち、周り飛びて、爾の近づき難き光榮を畏れて、面を蔽ふ。爾は像り難き、始なき、言ひ盡されぬ神にして、地に来りて、僕の形を受け、人の像を成せり。蓋主宰よ、爾は慈悲の多きに因りて、人類が悪魔に苦しめらるるを視るに忍びず、乃来りて我等を救ひ給へり。我等は恩寵を承け認め、慈憐を傳へ、恩賜を蔽はず。爾は我が性の族を自由にし、爾の降誕にて童貞女の胎を聖にせり。悉くの造物は爾現れし者を讃め歌ふ、蓋爾我が神は地に現れて、人と偕に在せり。爾は又天より爾の聖神゜を遣してイオルダンの流を聖にし、其中に棲む蛇の首を砕けり。

人を愛する王よ、今も親ら爾が聖神゜の庇蔭に藉りて来りて、此の水を聖にせよ。三次。

此の句を三誦する時、司祭毎一次手を以て水に祝福す。

此に救の恩寵、イオルダンの祝福を與へ給へ。此を不朽の泉、成聖の賜、諸罪の赦、諸病の醫、悪魔を滅す者、敵軍の近づき難き者、天使の力に満たさるる者と為し給へ、凡そ此をみ、此を飲む者が之に由りて霊體の潔、諸慾の醫、家屋の成聖、及び悉くの善益を獲ん為なり。蓋爾は我等の神、水と聖神゜とを以て罪に由りて古びたる我等の性を新にせし者なり。爾は我等の神、水を以てノイの時に罪を溺らしし者なり。爾は我等の神、海を以てモイセイに藉りてエウレイの族をファラオンの奴隷より救ひし者なり。爾は我等の神、野に於て磐を鑿ちし者なり、即水は流れ、渓は溢れ、爾は渇ける爾の民を飽かしめ給へり。爾は我等の神、水と火とを以てイリヤに藉りてイズライリをワアルの迷より改めし者なり。

主宰よ、今も親ら爾の聖神゜を以て此の水を聖にせよ。三次。

凡そ此に觸れ、此を飲み、此を傅くる者に成聖、壮健、潔浄、降福を與へ給へ。

主よ、萬世一系の帝位を践む我が今上皇帝を救ひ給へ。三次。

我が皇后、皇太子、皇太子妃、及び皇族を救ひ給へ。

主よ、教会を司る至聖なる會院を救ひて憐み給へ。

彼等を爾が庇蔭の下に平安に護り、彼等に悉くの敵と仇とを制服せしめ、彼等に凡そ救に務むる願を應はせ、及び永生を與へ給へ。四行と、人々と、天使等と、見ゆると見えざる物に藉りて、爾の至聖なる名が父及び聖神゜と偕に讃栄せられん為なり、今も何時も世々に、「アミン」。

司祭、衆人に平安。

輔祭、爾等の首を主に屈めよ。

司祭首を屈めて黙誦す、

甘じてイオルダンに洗を受けて、水を聖にせし主よ、爾の耳を傾けて我等に聆き、凡そ我等、己の首を屈むるを以て僕たる状を顕す者に福を降し、我等を、此の水を飲み及び灑ぐに因りて、爾の成聖に満てらるるに堪ふる者と為し給へ。主よ、願はくは此は我等の霊體の壮健を為す者とならん。

   高聲

蓋爾は我等の成聖なり、我等光榮・感謝・伏拝を爾と、爾の無限の父と、至聖至善にして生命を施す爾の神゜とに獻ず、今も何時も世々に、「アミン」。

次ぎて司祭雙手に聖十字架を執りて、十字形に水に祝福して、此を直線に水中に降し、復之を挙ぐ。是の時左の讃詞を歌ふ、第一調。

主よ、爾がイオルダンに洗を受くる時、聖三者の敬拝は顕れたり、蓋父の聲爾を證して至愛の子と名づけ、聖神゜も鴿の形に顕れて言の確なるを示せり。現れて世界を照ししハリストス神よ、光榮は爾に帰す。

第二次復前の如く十字架を以て水に祝福し、第三次にも此くの如くす。之を為す時聖務長及び他の神品右の讃詞を歌ふ。次に両詠隊之を歌ふ。此の時司祭聖水を盤に盛り、左手に十字架を持ち、右手に灌帚を執りて、四方に十字形に聖水を灑ぐ。後西に嚮ひて立ち、先ず神品次を逐ひて、続ぎて衆人来りて、聖十字架に接吻し、司祭灌帚を以て其面に十字形に聖水を傅く。時に讃詞、「主よ、爾がイオルダンに洗を受くる時」を聯唱して、衆人悉く灌水を以て聖にせらるるに至る。

次ぎて聖堂に回る、回りて左の讃頌を歌ふ。光栄、今も、第六調。

信者よ、我等に賜はる神の恩の大なるを歌はん。蓋彼は我等が罪に陥りしに因りて人と為り、獨潔浄不朽なる者、我と水とを聖にし、又水の中に蛇の首を砕く者にして、イオルダンに於て我等の潔にて潔めらる。兄弟よ、此の故に楽しみて水をまん、蓋聖神゜の恩寵は、信を以てむ者に、見えずしてハリストス神、我が霊の救主より賜はる。

次ぎて歌ふ、願はくは主の名は崇め讃められて今より世々に至らん。三次。

誦經、第三十三聖詠、「我何れの時にも主を讃め揚げん」を誦す。

此の時衆先づ聖水を飲みて、司祭より代聖錫を受く。嗣ぎて發放詞。

聖體禮儀の有無に関らず、發放詞の後、堂中に燭臺を置き、両詠隊進みて共に立ちて、祭日の讃詞、「主よ.爾がイオルダンに洗を受くる時」を歌ふ。光榮、今も、小讃詞、「主よ、爾は今日世界に現れ」。畢りて後皇帝、聖「シノド」、主教、修道院長の萬寿詞を歌ふ。

其後食堂に入りて油を加へたる植物性の煮物を食す、乾酪及び其類の物并に魚類を許さず。

神現祭の前日若し齋の日に當らば、奉事の次第右に載する所の如し。

 

【注意】知るべし、神現祭の前日若し「スボタ」或は主日に當らば齋なし、金口の聖體禮儀を常の如く定刻に行ふ。發放の後に餅一片を食して晩課の時を俟つ。大ワシリイの聖體禮儀は祭日に於て之を行ふ、其中「常に福にして」に代へて、祭日の第九歌頌の「イルモス」を歌ふ。

晩課の時に及びて大鐘を撞き、次ぎて連鐘を鳴らす、衆堂に聚まりて、司祭の祝福の後、晩課を始めて、常例の如く「我が霊よ、主を讃め揚げよ」の聖詠を歌ふ。若し「スボタ」の晩ならば、第一の「カフィズマ」の全分を誦す。若し主日ならば、其第一段のみを誦す。「主よ、爾にぶ」に八句を立てて、祭日の讃頌、第二調、「前駆は我等の光照者」、光榮、今も、同調、「救世主よ、爾は首を前駆の前に側け」を歌ふ。福音經捧持の聖入。「穏なる光」。本日の提綱。序を逐ひて喩言、其讃詞及び句と共に。畢りて後聖三祝文を歌はず、蓋聖體禮儀を行ふなし、即喩言に次ぎて小聯祷を誦す。高聲の後に提綱、使徒及び福音経の誦読、上述の如し。重聯祷、「我等霊を全うして曰はん」。次ぎて「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。増聯祷、「我等主の前に吾が晩の祷を増し加へん」。高聲の後に讃詞、「主の聲は水の上に呼びて曰ふ」を歌ひて聖水處に出で、聖水式を行ふ、前に載する所と異なることなし。聖水を灌ぎて後聖堂に入り、光榮、今も、讃頌、第六調、「信者よ、我等に賜はる神の恩」を歌ひて後發放詞。次ぎて上述の如く祭日の讃詞、及び光榮、今も、小讃詞を歌ふ。畢りて聖水を飲む。是に於て食堂に入りて常食を為し、油を加へたる植物性の煮物を食ふ。

 

晩堂大課

知るべし、主の神現祭、何の日に當るに論なく、晩堂大課を行ふこと左の如し。

定刻に及びて大鐘を撞き、次ぎて連鐘を鳴らす。司祭は輔祭と偕に祭服を著、誦し始むること主の祭日の常例の如し。輔祭曰く、君よ、祝讃せよ。司祭、「我等の神は崇め讃めらる」。誦經、「アミン」。我等の神よ、光榮は爾に帰す」。「天の王」。聖三祝文。其他晩堂大課の式の如し。此の時司祭爐儀を行ふ。「神は我等と偕にす」に至りて之を歌ふ。常例の諸讃詞、「ハリストス神よ、我が目を明にして」に代へて、祭日の讃詞を誦し「主よ、我等を憐めよ、我等を憐めよ」に代へて、祭日の小讃詞を誦す。「至高に光榮神に帰し」を誦し畢りて、前院に出でて、常の如く「リティヤ」を行ふ。

   「リティヤ」の讃頌を歌ふ、第四調。(修士コスマの作)。

光を衣の如く衣る者は我等の為に我等に似たる者と為りて、今日イオルダンの流を衣る、自ら潔の為に之を求むるにあらずして、己を以て我等に復生を建てん為なり。嗚呼奇蹟や、ハリストス神我等の霊の救者は火を用いずして練り、毀たずして改め造り、彼に由りて光照せらるる者を救ひ給ふ。

惟一人を愛する主よ、授洗者は爾聖神゜と火とを以て世の罪を浄むる者の己に来るを見て、懼れ慄きてびて曰へり、我爾の至りて潔き首に觸るるに堪へず。主宰よ、爾神聖なる爾の現にて我を聖にせよ。

来りて、智なる處女に效はん、来りて、現れし主宰を迎へん、蓋彼は新娶者の如くイオアンに来れり。イオルダンは爾を見て畏れて停まり、イオアンは呼べり、我不死の首に觸るるに堪へず。聖神゜鴿の形にて水を聖にせん為に降り、且天より聲ありき、是は我の子、人類を救はん為に世に来りし者なりと。主よ、光榮は爾に帰す。

ハリストスは洗を受けて水より上り、己と偕に世界を上せて、曾てアダムが己及び彼と偕にする者の為に閉ぢたる天の開くを見る。聖神゜は其神たるを證す、己と等しき者に臨めばなり。又天より聲あり、蓋證せらるる我が霊の救者は彼處よりす。

惟一人を愛する主よ、授洗者の手は爾の至浄なる首に觸れし時顫へり。イオルダン河は爾に奉事するに任へずして後へ退けり、蓋イイススナワィンに耻ぢたりし者は、何如ぞ己の造成主に畏れざるを得ん。然れども我が救世主よ、爾は一切の摂理を行ひ給へり、爾の現を以て世界を救はん為なり。

   光榮、第八調。(修士イオアンの作)。

主よ、爾は古世より建てし事を行はんと欲して、悉くの造物より爾の秘密に役むる者を受け給へり、天使等よりはガウリイルを、人々よりは童貞女を、天よりは星を、水よりはイオルダンを、此の中に爾世の不法を滅し給へり。我が救世主よ、光榮は爾に帰す。

   今も、同調。(アナトリイの作)。

今日造物は照され、今日天上地下の物は咸楽しみ、天使等及び人々は相交る、蓋王の来る所には秩序も整ふ。我等皆イオルダンに趨りて、イオアンを観ん、何如に彼は手にて造られざる無罪の頂に洗を授くる。故に我等使徒の聲を以て歌ひて、同心に呼ばん、神の恩寵、衆人に救を施し、光照して、信者に大なる憐を賜ふ者は現れたり。

   挿句に讃頌、第二調。(アナトリイの作)。

ハリストス神よ、イオアンはイオルダンの河に於て爾が己に来るを見て曰へり、汚なき主よ、何為れぞ僕に来りし。我誰の名に因りて爾に洗を授けん、父に因らんか、爾之を己の中に有つ。子に因らんか、爾人體を取りし者自ら是なり。聖神゜に因らんか、爾之をも口を以て信者に予ふるを知る。現れたる神よ、我等を憐み給へ。

句、海は見て走り、イオルダンは後へ退けり。

神よ、水は爾を見、水は爾を見て懼れたり、蓋ヘルワィム等も爾の光榮を直に視る能はず、セラフィム等も之に目を注ぐを得ず、唯畏懼を以て前に立ちて、或者は爾を戴き、或者は爾の力を讃榮す。仁慈の主よ、我等も彼等と偕に爾の讃美を唱へて言ふ、現れたる神よ、我等を憐み給へ。

句、海よ、爾何事に遭ひて走りしか、イオルダンよ、爾何事に遭ひて後へ退きしか。

今日天地の造成主は肉體を以てイオルダンに来り、罪なき者にして洗禮を求む、世界を敵の誘惑より浄めん為なり。萬有の主宰は僕より洗を受けて、水に由る潔浄を人類に賜ふ。我等彼に呼ばん、現れたる我が神よ、光榮は爾に帰す。

   光榮、今も、第六調。(フェオファンの作)。

産まざる者より出でし光明なる燈は、童貞女より出だたる日のイオルダンに於て洗を求むるを見て、畏れ且喜びて彼にべり、主宰よ、爾は神聖なる爾の現にて我を聖にせよ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひ」。聖三祝文。「天に在す」の後に、

   祭日の讃詞、第一調。

主よ、爾がイオルダンに洗を受くる時、聖三者の敬拝は顕れたり、蓋父の聲爾を證して至愛の子と名づけ、聖神゜も鴿の形に顕れて言の確なるを示せり。現れて世界を照ししハリストス神よ、光榮は爾に帰す。三次。

常例に依りて盤上の五餅等を祝福す。

詠隊、「願はくは主の名は崇め讃められて」。三次。及び第三十三聖詠、「我何の時にも主を讃め揚げん、何の幸福にも缺くるなし」。并に祭日の誦読。畢りて後常式に循ひて早課の六聖詠を誦す。

 

早課

「主は神なり」に祭日の讃詞、「主よ、爾がイオルダンに洗を受くる時」。三次。次ぎて常式の誦文。

   第一の誦文の後に坐誦讃詞、第三調。

救世主よ、爾がイオルダンに現れ、ハリストスよ、爾が前駆より洗を受くる時、爾は至愛の子と證せられたり、故に父と同無原の者と現れたり。聖神゜は爾の上に降り給へり、我等彼に照されて呼ぶ、光榮は聖三者なる神に帰す。

   光榮、今も、第四調。

ハリストス我が神よ、爾はイオルダンの流を聖にして、罪の権を滅せり、己を前駆の手の下に屈めて、人類を迷惑より救ひ給へり。故に我等爾に祈る、我が霊を救ひ給へ。

   并に祭日の誦読。

   第二の誦文の後に坐誦讃詞、第五調。

至榮に光を衣る神の言よ、爾はイオルダンの流に纏はれて、其中に悪なる不順に因りて壊られたるアダムの性を改め給へり。故に我等皆爾を崇め讃めて、爾の聖なる現を讃榮す。

   光榮、今も、第四調。

イオルダン河よ、何ぞ見て驚きたる、曰へり、我見えざる者の裸なるを見て慄けり、蓋何如ぞ之を畏れざらん、又退かざらん、天使等は彼を見て畏れ、天は驚き、地は震ひ、海及び見ゆると見えざる者は皆蕩けり。ハリストスは水を聖にせん為にイオルダンに現れ給へり。

   并に祭日の誦読。

   多燭詞の後に坐誦讃詞、第四調。

信者よ、来りて、ハリストスの洗を受けし處を見ん。イオルダン河に、野に呼ぶ聲に随ひて、彼處にアダムの造成主が、言ひ難き慈憐に由りて、僕の手を按せらるるを見て、大聲を以て彼に呼ばん、爾は来りて、水を聖にせん為にイオルダンに現れ給へり。

   光榮、今も、同上。

讃歌

右、生命を賜ふハリストスよ、我等爾今我等の為に身にてイオアンよりイオルダン水に洗を受け給ひし主を讃揚す

  次ぎて同詠隊又歌ふ。

右、神よ、我等を憐み、我等に福を降し、

左、爾の顔を以て我等を照し給へ。

右、目を挙げて彼を仰ぐ者は照されたり、

左、彼等の面は愧を受けざらん。 河の流は神の邑を楽しましむ。 主の聲は水の上に在り、 主は多水の上に在り。 諸川聲を騰げ、主よ、諸川其聲を騰ぐ、 主が最高きに於て強きは、多くの水の聲に勝れり。 故に我イオルダン及びエルモンの地より爾を記憶す。 蓋生命の源は爾に在り、 我等爾の光に於て光を見る。 海は見て走り、イオルダンは後へ退けり。 爾は己の力を以て海を裂き、 爾は蛇の首を水の中に砕けり。 神よ、水は爾を見、水は爾を見て懼れたり。 爾の途は海にあり、爾の径は大水にあり。 主よ、爾の工業は何ぞ多き、皆智慧を以て作れり。

  光榮、今も、「アリルイヤ」、三次。

   品第詞、第四調の第一倡和詞。

   提綱、第四調。

海は見て走り、イオルダンは後へ退けり、句、海よ、爾何事に遭ひて走りしか、イオルダンよ、爾何事に遭ひて後へ退きしか。

凡そ呼吸ある者は云々、福音經はマルコ二端。

第五十聖詠の後に、光榮、第二調。萬有は今日喜ぶべし、ハリストスはイオルダンに現れ給へり。

   今も、同上。

   次ぎて讃頌、第六調。

神言は身を以て人類に現れ、洗を受けん為にイオルダンに立ち給へり。前駆は彼に謂へり、如何ぞ我手を舒べて、萬物を持つ者の頂に觸れん。爾はマリヤより生れし者なりと雖、我爾が永久の神なるを知る、地に歩めども、セラフィムより讃美せらる、僕は主宰に洗を授くるを学ばざりき。悟り難き主よ、光榮は爾に帰す。

   規程二篇

両規程の「イルモス」各二次、讃詞共に十二句に。共頌に右列詠隊第一の規程の「イルモス」を歌ふ、左列は第二の規程の「イルモス」。

第一の規程、修士コスマ師の作。其冠詞は、洗禮は地に生るる者の諸罪の潔なり。第二調。

   第一歌頌

イルモス、戦に能力ある主は深處の底を闢きて、己の人々を乾ける地に導き、敵軍を其中に掩ひ給へり、彼光榮を顕したればなり。

世世の王たる主はイオルダンの流を以て朽ちたるアダムを新にし、彼處に住む蛇の首を砕き給ふ、彼光榮を顕したればなり。

童貞女より身を取りし主は神性の形なき火に形ある身を衣て、イオルダンの水に覆はれ給ふ、彼光榮を顕したればなり。

主は神の性を變へずして、甘じて人々と同じき者となり、彼等の為にイオルダンに浄められて、彼等の穢を洗ひ、黒暗にある者を照し給ふ、彼光榮を顕したればなり。

第二の規程、ダマスクの聖イオアンの作。第二調。

   第一歌頌

イルモス、イズライリは俄に乾ける地と顕れし海の浪たつ淵を過り、暗き海は、主宰の右の手の強き力にて、エギペトの騎を水の柩の如く全く覆へり。

今野より人々に光明なる朝の現れしに、爾は、日の王よ、己の首をイオルダンの流に俯し給へり、原祖を暗き會より脱し、造物を凡の汚穢より潔めん為なり。

始なき言よ、爾は迷に因りて壊られし人、爾と偕に流の中に葬られたる者を新にして援き出し給ふ、蓋爾は父より厳なる證を言ひ難く受けたり、曰ふ、此は本性の我と均しき我の至愛の子なり。

   弟三歌頌

イルモス、我が諸王に能力を與へ、己の膏せし者の角を高くする主は、童貞女より生れて、洗禮の為に来り給ふ。我等信者は彼にばん、我が神とrしく聖なるはなし。

曩に妊まずして、子なきを憂ひたるハリストスの教会は今楽しめ、蓋水と聖神゜とに藉りて爾に諸子は生れたり。彼等信を以てぶ、我が神とrしく聖なるはなし。

前駆は野に於て聲を揚げて呼ぶ、ハリストスの為に道を備へ、我が神の為に径を直くせよ、且信を以てべ、我が神とrしく聖なるはなし。

   又

イルモス、我等は頤の壊られたる残忍なる獅の古の網より放たれて喜び、口を開きて、言を以て調の克く諧ひたる歌を綴らん、此は吾が獻物の中に特に納れらるる者なり。

狡猾なる動物の性を衣て、初より死を造物の中に植え付けし者は、ハリストスが肉體を以て来るに藉りて昏まされ、現れし光なる主宰に着きて、己の悪逆なる首を砕く。

主宰は地に生るる者を再興する大事を行ひて、神の造りし性、苦しむる者の腹に呑まれたる者を己に引きて更生せしむ、此を愈さん為に来り給へばなり。

   應答歌、第五調。

爾が己の顕現にて萬有を照しし時、不信の鹹き海は走り、下に流るるイオルダンは回りて、我等を天に登す。ハリストス神よ、生神女の祈祷に因りて爾の神聖なる誡の高きを以て我等を守りて、我等を憐み給へ。

   第四歌頌

イルモス、主よ、我爾の聲、爾が野に呼ぶ聲と名づけし者を聞けり。爾が多水の上に轟きて、爾の子の事を證せし時、彼は現れし聖神゜に満てられてべり、爾はハリストス、神の智慧と能力なり。

傳道者呼びて曰ふ、誰か本性に由りて光れる日を磨くを見たる、如何ぞ我水を以て爾光榮の光、永在の父の像たる者を洗はん、如何ぞ我草にして、爾が神性の火に觸れん、蓋爾はハリストス、神の智慧と能力なり。

モイセイは爾に邇づきて、抱きたる聖なる敬を顕せり、蓋彼は爾が棘より宣ふを覚りし時、忽其面を避けたり。我は如何ぞ顕に爾を見、或は手を爾に按せん、蓋爾はハリストス、神の智慧と能力なり。

我は智識ある霊と言の尊き才能とを有ちて、霊なき者に耻づ、蓋若し我爾に洗を施さば、火にて烟れる山、両に分れたる海、退きたる斯のイオルダンは我を罪せん、蓋爾はハリストス、神の智慧と能力なり。

   又

イルモス、奥密なる異象の火に浄められし預言者は死すべき者の更新を歌ひ、手を拍ちて、聖神゜に喩さるる信、強き者の権柄を敗る言ひ難き言が身を取り給ふ報を述べたり。

父より遣されし至りて光明、至りて福たる言よ、爾の来り給ふは、夜の有害なる黒暗を逐ひ、死すべき者の諸罪を滅し、爾の洗禮を以てイオルダンの流より光明なる諸子を出さん為なり。

傳道者は光榮なる言を見て、朗に造物に呼ぶ、是の我より先なる者は我より後に肉體を衣て、我等の至りて悪むべき罪を滅さん為に神聖なる力にて輝き出でたり。

神言は我等を其生活を施す草場に導き、多くの網を以て蛇の巣に就きて之を捕へ、全人類の踵を刺したる者を縛りて、造物を拯ひ給ふ。

   第五歌頌

イルモス、生命の首たるイイススは始めて造られしアダムの定罪を釋かん為に来り、神なるに由りて潔浄を要めずして、陥りし者の為にイオルダンに潔められ、彼處に仇を殺して、凡の悟に超ゆる平安を賜ふ。

無数の人々がイオアンより洗を受けん為に集まりし時、彼は其中に立ちて之に呼べり、不順の者よ、誰か爾等に将来の怒を避くることを示したる。ハリストスに合ふ果を結べ、蓋彼は今現れて平安を賜ふ。

農夫たる造物主は衆人の中に、彼等と等しき者の如く立ちて、其心を試し、手に箕を執り、睿智を以て世界の禾場を浄めて、實を結ばざる者を燬き、實を結ぶ者に永生を賜ふ。

   又

イルモス、我等は聖神゜の潔浄を以て、暗くして汚れたる敵の毒より滌はれて、新なる直き路に入れり、是れ近づき難くして、惟神が和睦せし者のみ近づくべき喜に至らしむる途なり。

造成主は其指にて造りし者が諸罪の黒暗、断ち難き縛に在るを見て、之を挙げて肩に荷ひ、今多水の流に於て之をアダムの疾の古き沾汚より洗ひ給ふ。

不朽の者より肉體を取りて、仁慈にして世界の疾を醫し、神聖なる渇を止むる言を我等仰ぎ視て、敬みて救を施す流の清き泉に速に趨り附くべし。

   第六歌頌

イルモス、言の聲、光の燈臺、日の暁たる前駆は野に於て萬の人に呼ぶ、悔改して預め己を浄めよ、蓋視よ、世界を壊より拯ふハリストスは茲に立ち給ふ。

前駆の教ふる如く、其革帯の、即言が我等より受けし合性の解き難きハリストスは不朽に神父より生れて、汚なく童貞女より身を取り給ふ、地に生るる者を迷より救はん為なり。

ハリストスは滅亡の火を以て、抗敵して彼を神と承け認めざる者を洗し、聖神゜の恩寵を以て、水に藉りて、彼の神性を承け認むる者を新にして、諸罪より救ひ給ふ。

   又

イルモス、父は最喜ばしき聲を以て其腹より生みたる至愛の者を顕し給へり、曰ふ、此は實に我が一性の子、摂理に因りて、我が生活の言及び人として、人類より輝き出でたる者なり。

預言者は奇妙に三夜海獣の腹に居て、新に出でて、末の時に再生を以て殺人者なる蛇より救はるることを衆人に預象せり。

天の明るき穹蒼の開けし時、秘密を見る者は、父より出でて至浄なる言に止まる聖神゜が言ひ難く鴿の形にて降り給ひしを見、人々に示して主宰に就かしむ。

   小讃詞、第四調。

主よ、爾は今日世界に現れ、爾の光は我等に印されたり、我等爾を承け認めて歌ふ、近づき難き光よ、爾来り、爾現れ給へり。

   同讃詞

異邦のガリレヤ、ザワゥロンの地及びネファリムの地には、預言者の言ひし如く、大なる光ハリストスは輝けり。昏まされし者にはワィフレエムより光り出づる光明なる暁は現れたり。マリヤより生れし主、義の日たる者は全世界に光線を輝かす。故にアダムより出でたる裸體の者は皆来りて、彼を衣ん、身を温めん為なり、蓋彼は裸體の者を掩ひ、暗き者を照す。近づき難き光よ、爾来り、爾現れ給へり。

   弟七歌頌

イルモス、露を含む鳴れる風と神の使の降臨とは、火の爐に在りし敬虔の少者を傷はるるなく守れり、故に彼等は焔の中に涼しくせられ、感謝して歌へり、讃美たる主、先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

天使の軍は天に於けるが如く、戦き驚きてイオルダンに立ち、神の此くの如き寛容を覘へり、如何にして彼、天上の水の合成を其手に保つ主、我が先祖の神は、肉體にて水中に立ち給へる。

古の民は旅する時、立法者に因りて雲と海とに洗を受けたり、斯の二の者は神聖なる洗禮の機密を預象せり、海は水を像り、雲は聖神゜を像れり。我等此に成聖せられてぶ、主神よ、爾は世々に崇め讃めらる。

我等衆信者は孰に依りて成聖を受けしかを敬みて宣ぶる時、諸天使と偕に黙さずして父と子と聖神゜とを讃栄せん、蓋此れ位に於て三者にして、一體なる惟一の神なり。我等彼に歌ふ、主神よ、爾は世々に崇め讃めらる。

   又

イルモス、敬虔の少者を圍みたる爐の大なる焔を涼しくせし者は、流水にて蛇の首を焚き、凡そ罪の浄め難き汚を聖神゜の露にて洗ひ給ふ。

ハリストスよ、爾を預象せしアッシリヤの強き焔を、爾變じて露となせり、此くの如く今爾は水を被りて、我等を淪滅の路に引く所の潜みたる最悪しき敵を焚き給ふ。

昔イズライリの民はイオルダンの分れし後乾ける地を過りて、爾全能者、今造物に障なく流の中を過らしめて、之を直くして最宜しき途に導く者を預象せり。

嗚呼至大至妙なる事を行ふハリストスよ、我等知る、爾は初に悉くの者を痛ましく滅さん為に衆をそこなふ洪水を起せり、今爾は慈憐に因りて人々を救はん為に罪を溺らし給へり。

   第八歌頌

イルモス、ワワィロンの爐は露を注ぎて、至榮なる秘密を像れり、此れイオルダンが其流に形なき火を受けて、身にて洗せらるる造物主、人々が崇めて萬世に讃め揚ぐる者を圍まんことなり。

贖罪主は前駆に謂へり、一切畏懼を棄てて我に順へ、我性に因りて善なる者に近づけ、我が命を聴きて、我降りし者、人々が崇めて萬世に讃め揚ぐる者に洗を授けよ。

授洗者は主宰の言を聞き、戦きて手を伸ぶ、然れども己の造成主の頂に觸れて、洗を受けし者に呼べり、我を聖にせよ、蓋爾は我の神、人々が崇めて萬世に讃め揚ぐる者なり。

イオルダンに於て聖三者の顕現はありき、蓋神の本性たる父は呼べり、此の洗を受くる者は我の至愛の子なりと、聖神゜も己とrしき者、人々が崇めて萬世に讃め揚ぐる主と偕に在せり。

   又

イルモス、造物は自主の者として、又先に昧まされし者は光の子として識られ、獨黒暗のは呻く、今此等の事の起原者を先に苦しみたる諸民諸族は熱心に崇め讃むべし。

神に肖たる三人の者は火の中に露に湿されて、詳に至上なる神性、至りて光明に聖なる三位を以て輝き、人類と合せらるるを以て、露が火を滅す如く、凡の迷を滅す者を象れり。

今墜つるより天に升せらるる地の性は皆白まるべし、蓋萬物の因りて護らるる言にて流水に浄められ、全く洗はれて、先の罪悪より釋かれたり。

   第九歌頌

「ヘルワィムより尊く」を歌はずして、祭日の附唱を歌ふこと左の如し。

我が霊よ、天軍より尊き童貞女、至浄なる生神女を讃め揚げよ。

イルモス、生神女よ、爾の位に合ひて能く爾を讃美する舌なし、天上の智慧も如何に爾を歌頌するを知らず。唯爾、仁慈の者として、我等の信を納れ給へ、我等の熱切なる愛を知ればなり、蓋爾は「ハリスティアニン」等の轉達なり、我等爾を崇め讃む。

左列詠隊も亦右の附唱及び「イルモス」を歌ふ。

以下の六附唱は讃詞の前に歌ふこと各一次。

我が霊よ、前駆に洗を求むる主を讃め揚げよ。

我が霊よ、イオルダンに洗を受けん為に来りし主を讃め揚げよ。

ダワィドよ、神゜を以て光照せらるる者に来りて、歌ひて云へ、今神に就きて、信を以て光照せられよ、蓋此の貧しき者たる陥りしアダム呼びたれば、主は之を聆き、来りて、イオルダンの流を以て朽ちたる者を新にし給へり。

我が霊よ、父の聲にて證せられし者を讃め揚げよ。

我が霊よ、三者の一、首を俯して洗を受けし者を讃め揚げよ。

イサイヤ曰く、己を洗ひ、己を潔くせよ、主の前に作す所の悪を棄てよ、渇く者は活水に往け、蓋ハリストスは信を以て之に就く者に活かす水を灑ぎ、聖神゜を以て老いざる生命の為に洗す。

預言者よ、我に来れ、手を伸べて、急に我を洗せよ。

預言者よ、今姑く許せ、我が望に依りて我を洗せよ、蓋我は凡の義を盡さん為に来れり。

信者よ、願はくは聖神゜の恩寵と印とは我等を護らん、蓋昔エウレイ民がに血の塗られし時に、亡より救はれし如く、斯く我等の為にも此の神聖なる復生の洗は救と為らん、之に因りて我等は三者の入らざる光を観るを得ん。

次ぎて右列詠體第二の規程の附唱を歌ふ。

今日主宰は前駆の手の下に頸を俯し給ふ。

イルモス、嗚呼至浄なる聘女、讃美たる母よ、爾が産の奇蹟は何ぞ智慧に超ゆるの甚しき、我等爾に依りて完き救を得、爾を恩者として、宜しきに合ひて讃め揚げ、感謝の歌を獻物として奉る。

左列詠隊も亦右の附唱及び「イルモス」を歌ふ。

以下の五附唱を讃詞の前に歌ふ、其一は二次。

今日イオアンは主宰にイオルダンの流に洗を授く。

今日主宰は水中に人の罪を葬り給ふ。

我等は棘に於てモイセイに示されしことの茲に奇妙に應ひたるを覚れり、蓋彼の火に燃ゆる者の如く、光を施す恩主を生みし童貞女も、彼を受けしイオルダンの流も守られたり。

今日主宰は上より至愛の子と證せられ給ふ。

今日主宰は水の性を聖にせん為に来り給へり。

今日主宰は前駆の手より洗を受け給ふ。

無原なる王よ、爾は人の性を完全に升せんと欲して、之を清き流に洗ひて、聖神゜の共與を以て之に膏し、黒暗の高ぶりたる力を辱かしめて、今終なき生命を與へ給ふ。

次ぎて両詠隊共に祭日の第一の附唱及び「イルモス」。「生神女よ、爾の位に合ひて」を歌ふ。

畢りて後第二の規程の附唱及び「イルモス」、「嗚呼至浄なる聘女」を歌ふ。終りて躬拝す。

   光耀歌

恩寵及び眞實たる救世主はイオルダンの流に現れて、幽暗と蔭とに寝ぬる者を照せり、蓋近づき難き光は来りて現れ給へり。三次。

「凡そ呼吸ある者」に四句を立てて讃頌を歌ふ、第一調。(總主教ゲルマンの作)。

光よりの光ハリストス我が救世主、現れし神は、世界に輝き給へり。我等人々彼に伏拝せん。

ハリストスよ、我等諸僕は如何に宜しきに合ひて爾主宰を尊まん、蓋爾は水の中に我等衆を新にし給へり。

我が救世主よ、爾はイオルダンに洗せられて、水を聖にせり、僕の手を按せられて、世界の諸慾を醫し給へり。爾の顕現の奥義は大なる哉。人を愛する主よ、光榮は爾に帰す。

眞の光は現れて、衆に光照を賜ふ。一切の潔浄より上なるハリストスは我等と共に洗せられて、成聖を水に容れ給ふ、此は霊の為に潔浄と為る、現るることは地に属し、思はるることは天に超ゆ。洗盤に藉りては拯救、水に藉りては聖神゜、浸没に藉りては我等が神に升ることなり。主よ、爾の所為は奇異なり、光榮は爾に帰す。

   光榮、第六調。(アナトリイの作)。

光を袍の如く衣る救世主よ、爾はイオルダンの流を衣たり、指尺にて天を測る者にして、首を前駆の前に俯し給へり、世界を迷より反して救はん為なり、人を愛する主なればなり。

   今も、第二調。作者同上。

今日ハリストスは洗を受けん為にイオルダンに来り、今日イオアンは主宰の頂に捫る。天の軍は至榮なる秘密を見て驚き、海は見て走り、イオルダンは見て退けり。我等は照されてぶ、現れて地上に見られ、世界を照しし神に光榮は帰す。

大詠頌。聖三祝文の後に祭日の讃詞。聯祷。發放詞。

第一時課に祭日の讃詞。聖三祝文の後に祭日の小讃詞。其他。最後の發放詞。

 

聖體禮儀

   第一倡和詞。第百十三聖詠。第一調。

第一句、イズライリ エギペトより出で、イアコフの家異邦民より出でし時、

附唱、救世主よ、生神女の祈祷に因りて我等を救ひ給へ。

第二句、イウダは神の聖所となり、イズライリは其領地となれり。附唱、救世主よ云々

第三句、海は見て走り、イオルダンは後へ退けり。 救世主よ云々

第四句、海よ、爾何事に遭ひて走りしか、イオルダンよ、爾何事に遭ひて後へ退きしか。救世主よ云々

光榮、今も、救世主よ云々

   第二倡和詞。第百十四聖詠。第二調。

第一句、我喜ぶ、主の我が聲、我が祈りを聴きしに因る。

附唱、イオルダンに洗を受けし神の子よ、我等爾に「アリルイヤ」を歌ふ者を救ひ給へ。

第二句、彼は其耳を我に傾けたり、故に我在世の日に彼を呼ばん。附唱イオルダンに洗を受けし云々

第三句、死の病は我を圍み、地獄の苦は我に臨み、我辛苦艱難に遭へり、其時我主の名を呼べり。イオルダンに洗を受けし云々

第四句、主は仁慈にして義なり、我が神は慈憐なり。 イオルダンに洗を受けし云々

光榮、今も、神の獨生の子并に言よ云々

   第三倡和詞。第百十七聖詠。第一調。

第一句、主を讃榮せよ、蓋彼は仁慈にして、其憐は世々にあればなり。

讃詞、主よ、爾がイオルダンに洗を受くる時、聖三者の敬拝は顕れたり、蓋父の聲爾を證して至愛の子と名づけ、聖神゜も鴿の形に顕れて言の確なるを示せり。現れて世界を照ししハリストス神よ、光榮は爾に帰す。

第二句、イズライリの家今言ふべし、彼は仁慈なり、其憐は世々にあればなり。

讃詞、主よ、爾がイオルダンに洗を受くる時云々

第三句、アアロンの家今言ふべし、彼は仁慈なり、其憐は世々にあればなり。

主よ、爾がイオルダンに洗を受くる時云々

第四句、主を畏るる者今言ふべし、彼は仁慈なり、其憐は世々にあればなり。

主よ、爾がイオルダンに洗を受くる時云々

聖入の句、主の名に依りて来る者は崇め讃めらる、我等主の家より爾等を祝福す。主は神なり、我等を照せり。讃詞、主よ、爾がイオルダンに洗を受くる時云々

   光榮、今も、小讃詞、第四調。

主よ、爾は今日世界に現れ、爾の光は我等に印されたり、我等爾を承け認めて歌ふ、近づき難き光よ、爾来り、爾現れ給へり。

   聖三詞に代へて歌ふ、

ハリストスに於て洗を受けし者はハリストスを衣たり。「アリルイヤ」。

   提綱、第四調。

主の名に依りて来る者は崇め讃めらる。主は神なり、我等を照せり。句、主を讃榮せよ、蓋彼は仁慈にして、其憐は世々にあればなり。

使徒の誦読、ティト書302端。「アリルイヤ」、第四調、神の諸子よ、主に獻ぜよ、光榮と尊貴とを主に獻ぜよ。句、主の聲は水の上に在り、光榮の神は轟けり、主は多水の上に在り。

福音經の誦読、マトフェイ6端。領聖詞、神の恩寵、衆人に救を施す者は現れたり。「アリルイヤ」。三次。

主の神現祭若し水曜日或は金曜日に遇ふとも、俗人は肉食し、修道士は乾酪及び鶏卵を食ふ。