第一調


「スボタ」の小晩課

「主よ、爾によぶ」に四句を立てて、八調経の主日の讃頌三章を歌ふ、其の第一は二次、第一調。克肖なる吾が神父ダマスクのイオアンの作。

句、我が霊主を待つこと、番人の旦を待ち、番人の旦を待つより甚し。

聖なる主よ、我が晩の祷を納れて、我等に罪の赦を与へ給へ、爾は独世界に復活を顕しし者なればなり。

人々よ、シオンを廻り、之を圍みて、是の中に死より復活せし主に光栄を帰せよ、彼は我等を不法より救ひし吾が神なればなり。

人人よ、来れ、歌ひてハリストスを拝み、其死より復活せしを讃栄せん、彼は敵の誘惑(いざない)より世界を救ひし吾が神なればなり。

  光栄、今も、生神女讃詞。定理歌。

兄弟よ、今日は童貞の慶賀なり。造物は喜ぶべし、人類は楽しむべし、蓋聖なる生神女、童貞の無垢なる宝は我等を呼び集めたり。彼は第二のアダムの霊智なる楽園、二性の結合の宝蔵、救を為す和睦の成就、言が実に人体に配偶せし宮、ヘルワィムの上に在る者を身と共に乗せし軽き雲なり。ハリストス神よ、彼の祈祷に因りて我等の霊を救ひ給へ。

次ぎて「穏なる光」。提綱、「主は王たり」、其句と共に。「主よ、我を守り、罪なくして此の晩」の後に司祭連祷を誦せず、我等直に主日の挿句の讃頌を歌ふ、左の如し。

ハリストスよ、爾の苦にて我等は苦を免れ、爾の復活にて我等は淪滅(ほろび)より救はれたり。主よ、光栄は爾に帰す。

  至聖なる生神女の他の讃頌

句、我爾の名を萬世に誌さしめん。

童貞女・母・生神女マリヤ、世界の転達よ、爾は萬世に讃栄せらる。少女よ、爾は実に父と同無原なる子、聖神と同永在なる主を身にて生み給へり。彼に我等の救はれんことを祷り給へ。

句、女よ、之を聴き、之を観、爾の耳を傾けよ。

潔き童貞女よ、我等不慮の災害に圍まるる者は、独爾を転達者と有ちて、感謝の心を懐きて呼ぶ、至聖なる神の聘女(よめ)よ、我等を救ひ給へ、爾は世界の避所、我が族の防護なればなり。

句、民中の富める者は爾の顔を拝まん。

神の母よ、爾の産に因りて世界は新にせられたり。至浄なる少女、信者の救、敬虔に爾に祷る者の眠らざる転達よ、爾を歌ふ衆人の為に息めずして切に祷り給へ。

  光栄、今も、定理歌(ドグマティカ)、同調。

童貞女よ、預言者は爾を永在なる光と雲と名づけたり。蓋雨が羊の毛に降りし如く、爾より父の言は降り給へり、爾より輝きしハリストス我が神は世界を照し、迷惑を亡し給へり。至聖なる者よ、祈る、爾を真の生神女と承け認むる我等の為に息めずして切に彼に祷り給へ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に主日の讃詞。光栄、今も、其の生神女讃詞。小聯祷。発放詞。

 

「スボタ」の大晩課

首誦聖詠の後に常例の聖詠経の誦文

「主よ、爾によぶ」に十句を立てて、八調経の主日の讃頌三章、アナトレイの四章、月課経の三章或は六章を歌ふ。若し聖人の祭日なれば、光栄、月課経の、今も、本調の第一の生神女讃詞。

  八調経の主日の讃頌、第一調。

句、我が霊を(ひとや)より引き出して、我に爾の名讃栄せしめ給へ。

聖なる主よ、我が晩の祷りを納れて、我等に罪の赦しを与へ給へ、爾は独り世界に復活を顕しし者なればなり。

句、爾恩を我に賜はん時、義人は我を環らん。

人々よ、シオンを廻り、之を圍みて、是の中に死より復活せし主に光栄を帰せよ、彼は我等を不法より救ひし吾が神なればなり。

句、主よ、我深き(ところ)より爾に呼ぶ。主よ、我が声を聴き給へ。

人々よ、来れ、歌ひてハリストスを拝み、死より復活せしを讃栄せん、彼は敵の誘惑(いざない)より世界を救ひし吾が神なればなり。

  又讃頌、總主教アナトリイの作、第一調。

句、願はくは爾の耳は我が(いのり)の声を聴き納れん。

諸天は楽しめ、地の基は角を吹け、諸山は歓びて呼べ、蓋視よ、エムマヌイルは我等の罪を十字架に釘せり、生を賜ひ、アダムを復活せしめし者は死を殺り、人を愛する主なればなり。

句、主よ、若し爾不法を糾さば、主よ、孰か能く立たん。然れども爾に赦あり、人の爾の前に敬まん為なり。

甘じて我等の為に身にて十字架に釘せられ、苦を受け、葬られ、死より復活せし主を歌ひて曰はん、ハリストスよ、正教を以て爾の教会を堅め、我等の生命(いのち)を平安ならしめ給へ、爾は仁慈にして人を愛する主なればなり。

句、主を望み、我が霊主を望み、彼の言を恃む。

ハリストス我が神よ、我等不当なる者は生命(いのち)を籠むる爾の墓の前に立ちて、爾の言ひ難き慈憐に讃栄を奉る。蓋爾は、罪なき者よ、世界に復活を賜はん為に、十字架と死とを受け給へり、人を愛する主なればなり。

句、我が霊主を待つこと、番人の旦を待ち、番人の旦を待つより甚し。

父と同無原・同永在なる言、言ひ難く童貞女の胎より出でて、我等の為に甘じて十字架と死とを受け、光栄の中に復活せし者を歌ひて曰はん、生命(いのち)を賜ふ

主、我が霊の救者よ、光栄は爾に帰す。

他の讃頌、至聖なる生神女に捧ぐ、アモレイのパウェルの作、月課経の讃頌の無き所、或は「リティヤ」に歌ふ所の者。

  讃頌、第一調。

句、願はくはイズライリは主を恃まん、蓋憐は主にあり、大なる贖も彼にあり、彼はイズライリを其の悉くの不法より贖はん。

聖なる衆軍より聖にして一切の造物より尊き生神女、世界の女宰、救世主を生みし者よ、爾の祈祷を以て我等を諸の罪と疾病(やまい)災禍(わざわい)より救ひ給へ。

句、萬民よ、主を讃め揚げよ、萬族よ、彼を崇め讃めよ。

慈憐の門なる少女よ、切に爾に祈る、我が卑微なる霊を棄つるなく、速かに憐を垂れて、之を我が諸罪の淵より救ひ給へ。潔き童貞女よ、爾の恩寵を新たにして、我の上に輝かし給へ。

句、蓋彼が我等に施す憐は大なり、主の真実は永く存す。

女宰よ、爾は神を人人に合せ給へり、爾は独死に属する性を神聖なる不朽に(のぼ)せたり。爾は地上の者に救いを流し給へり。爾、生神女よ、我等を諸の苦難より脱れしめ給へ。

   光栄、月課経の。今も、生神女讃詞。

人より生れて主宰を生みし全世界の光栄と天の門なる童貞女マリヤ、諸天使の歌、諸信者の飾なる者を讃め歌ふべし。彼は天と(ひと)しく、神の宮と(ひと)しき者として顕れたり、彼は仇の隔てを破りて和睦を締び、国を開けり。我等は彼を信の固と為し、彼より生れし主を扞ぎ衛る者と為す。勇めよ、神の民よ、勇めよ、主は敵に勝たん、全能者なればなり。

聖入。「穏なる光」。本日の提綱を歌ふ、主は王たり、彼は威厳を衣たり。句、主は能力を衣、又之を帯にせり、句、故に世界は堅固にして動かざらん。句、主よ、聖徳は爾の家に属して永遠に至らん。

次ぎて常例の聯祷。「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。「我等主の前に吾が晩の(いのり)」。高声の後本堂の讃頌を歌ひて、前院に出で、熱衷公祷を行ふ。此の中にアモレイのパワェルの讃頌、或は聖務長の示す所を歌ふ。常例の祝文の後堂に入る、其の時左の讃頌を歌ふ。第一調。

ハリストスよ、爾の苦にて我等は苦しみを免れ、爾の復活にて我等は淪滅(ほろび)より救はれたり。主よ、光栄は爾に帰す。

   又讃頌

句、主は王たり、彼は威厳を衣たり。

造物は喜ぶべし、諸天は楽しむべし、諸民は楽しみて手を拍つべし。蓋吾が救世主ハリストスは我等の罪を十字架に釘し、死を殺して、我等に生を賜ひ、萬族の原祖たる陥りしアダムを復活せしめ給へり。人を愛する主なればなり。

句、故に世界は堅固にして動かざらん。

悟り難き主よ、爾は天地の王にして、仁愛に因りて甘じて十字架に釘せられたり。地獄は下に爾を迎へて哀しみ、義人等の霊は爾を()けて喜び、アダムは爾造成主を(いと)下なる(ところ)に見て復活せり。嗚呼奇蹟や、萬有の生命(いのち)は如何ぞ死を()めたる、是れ世界を照さんと欲せし故なり。此に由りて世界は呼びて云ふ、死より復活せし主よ、光栄は爾に帰す。

句、主よ、聖徳は爾の家に属して永遠に至らん。

携香女は香料を携へ、急ぎ且()きて爾の墓に至りしに、爾の至浄なる体を得ずして、天使に因りて新しき至栄なる奇蹟を知りて、使徒等に謂へり、世界に大なる憐を賜ふ主は復活し給へり。

光栄、若し之あらば、月課経の。若しなくば、光栄、今も、

   生神女讃詞

視よ、イサイヤの預言(かな)ひて、童貞女は子を生めり、生みし後も生む前の如く童貞女なり、生れし者は神なるに因る、故に天性は改め()へられたり。嗚呼神の母よ、爾の諸僕が爾の堂に献ぐる祈祷を棄つる勿れ、恵み深き主を爾の手に抱きし者として、爾の諸僕を憐みて、我等の霊の救はれんことを祈り給へ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に、

   主日の讃詞、第一調。

救世主よ、イウデヤの人墓を封じて、兵卒爾の潔き躯を守る時、爾は三日目に

復活して、世界に生命(いのち)を賜へり。故に天軍は爾生命(いのち)を施す主に呼べり、ハリストスよ、光栄は爾の復活に帰し、光栄は爾の国に帰す。独人を慈む主よ、光栄は爾の慮に帰す。

   生神女讃詞

童貞女よ、ガウリイルが爾に慶べよと告げし時、其声に従ひて萬有の主宰は爾聖なる約櫃に身を取り給へり、義なるダワィドの言ひしが如し。爾の造成主を妊みて、爾は天より広き者と現れたり。光栄は爾に入りし者に帰し、光栄は爾より出でし者に帰し、光栄は爾の産にて我等を()き給ひし者に帰す。

其他の次第。「主は神なり」にも同讃詞。

 

「スボタ」の晩堂課

司祭誦す、「我等の神は恒に崇め讃めらる」。誦経者、我等の神よ、光栄は爾に帰す、光栄は爾に帰す。「天の王」。聖三祝文。「天に在す」の後に、主憐めよ、十二次光栄、今も、「来れ、我等の王」、三次。第五十聖詠、「神よ、爾の大なる憐に因りて」。第五十九聖詠、「神よ、速に我を救へ」。第百四十二聖詠、「主よ、我が(いのり)を聆き」。其の後、「至高きには光栄神に帰し」。「主よ、爾は世世に我等の避所」。「主よ、我等を守り、罪なくして此の夜」。次ぎて「我信ず一の神」。

其後至聖なる生神女の規程を歌ふ。第一調。

   第一歌頌

イルモス、イズライリは苦しき奴隷より脱れて、渉られぬ(ところ)を陸の如くに過れり、敵の溺るるを見て、恩主たる神、高き臂を以て奇蹟を行ふ者に歌を奉る、彼光栄を顕したればなり。

附唱、至聖なる生神女よ、我等を救ひ給へ。

萬有の女王よ、天使の首品は驚き懼れて爾を讃め揚げ、凡の智慧は爾を仁慈なる造物主の母として歌ふ、爾はハリストスを生みて、一切の讃美の量に超えたればなり。

我不当の者は甚しき攻撃に苦しめられ、諸敵に悩まされて、涙と共に呼ぶ、慈憐に富める者よ、上より爾の手を我に伸べて、我を援け、爾の祈祷を以て無難に生を度らしめ給へ。   光栄

生神女よ、慈憐の治療を以て、我が霊の穏なる罪過を醫し、肉体の進撃を鎮め、諸敵の戈と矢とを返して、強く彼等の心に刺し給へ。

   今も

童貞女の胎はハリストスを生みて、古の兇殺(ひとごろし)の草場を絶せり。故に、至浄なる者よ、今造物皆生かされしに因りて喜びて同心に爾の子及び神を讃め歌ふ。

   第三歌頌

イルモス、死すべき者は己の智慧と富とを以て誇るべからず、主を信ずる信を以て誇りて正しくハリストス神に呼びて、常に歌ふべし。主宰よ、爾の誡の石に我を固め給へ。

童貞女よ、大なるイアコフは昔途に眠りて梯に縁りて上より地に諸天使の降るを見て驚き、寤め興きて、明に爾を天の門として預見せり。

我不当なる者は迷ひて諸難に遇ひ、艱難の暴風に悩まされて呼ぶ、哀しい哉我や、神を生みて、我等の角を高くせし者よ、爾の祈祷を以て我を救ひ給へ。

   光栄

嗚呼萬有の王、吾がハリストスイイススよ、天より強き手を伸べて、有形無形の敵の首を爾の母を正しく生神女と伝ふる者の足下に置き給へ。

   今も

慈憐に富める童貞女よ、イサイヤは昔神のよ炭に潔められて、明に爾の胎より子の生れんことを呼べり。爾は末の時に於て我が為に夫なくして之を生み給へり。

   第四歌頌

イルモス、ハリストスよ、昔アウワクムは爾の奇妙なる風声を聞きて、懼れて呼べり、神は南より来り、聖なる者は樹蔭繁き山より来りて、其の膏つけられし者を救はん。主よ、光栄は爾の力に帰す。

神の母よ、叡智なる王は爾女の中に美しくして最尊き者が野より出づる如く出でて、子ハリストスを手に抱くを預象して、呼べり、主よ、光栄は爾の力に帰す。

慈愛なる者よ、我に爾の耳を傾け、我の憂患と災害の多きとを見よ。女宰よ、我今爾に霊の目を注ぎて、涙と共に膝を屈めて、祈りて呼ぶ、我を擾す侵害を鎮め給へ。  光栄

嗚呼慈憐に富める者よ、我爾の僕は爾を壊られぬ垣と識りて、今祈りて、爾に趨り附き、敵の矢を幼児の玩具の如く無效の者と為す。故に歓びて呼ぶ、神の母よ、光栄は爾の産に帰す。  今も

童貞女よ、聖神の臨むに因りて至上者の能は爾を蔭へり。其の時性に超えて、萬有の主は神の性を易へずして、体と霊とを生ける者として己に合せ給へり。

   第五歌頌

イルモス、ハリストスよ、我等信を以て爾を歌ふ者の心に爾の入らざる光を輝かして、智慧に超ゆる平安を我等に与へ給へ、我等が爾の光に由りて無知の夜より日に趨りて、爾人を愛する者を讃栄せん為なり。

讃美たる者よ、昔ダニイルは爾を神聖なる截られざる山と預見して、明に爾よりハリストス救世主、神産の石の截られんことを呼べり。神の聘女(よめ)よ、我等信者は今彼を尊みて、爾を崇め讃む。

我不當なる爾の役者は多くの誘惑(いざない)に陥りて、心の痛と涙とを以て切に祷りて呼ぶ、神の母よ、卑微なる我を圍める艱難より脱れしめて、我を楽しみに満て給へ。   光栄

慾に与からずしてハリストスを生みし仁慈なる者よ、爾の力ある祈祷を以て我が諸慾の荒れたる海を鎮め給へ、我が今より生命(いのち)の餘日を霊の安静の中に送りて、歌を以て爾を讃め揚げん為なり。

   今も

嗚呼至りて福なる童貞女よ、言へ、如何に爾の手に神を抱く、如何に其の手を以て萬物を持つ者を乳にて養ふ。言へり、我はハリストス神を生みて、アダムと原母との債を除きて、産の後にも潔浄に止まる。

   第六歌頌

イルモス、我全身無量の慾に圍まれて、諸悪の淵に陥れり。祈る、神よ、曩にイオナを救ひし如く、我を淪滅(ほろび)より引き上げて、信に由りて、我に無慾を賜へ、我が讃美の声と真実の神とを以て爾を祭らん為なり。

永遠の子は父の懐の座を離れずして、母の懐に在り。世世の先より父と偕に在す者は末の時に童貞女の胎より出でて、言ひ難き仁慈を以て萬衆を不死の生命(いのち)に升せ給へり。

哀しい哉、我悪事に因りて敵の械に縛られて、地獄の門に墜ちたり。潔き神女よ、天より現れて、前に立ち、爾の祈祷を以て爾の役者を起して、爾の神聖なる産を歌ふ者に援助の手を授け給へ。
  光栄

我不當の者滅亡の穴に陥りて、多くの猛獣は我を環る。女宰よ、爾の祈祷を以て石を除きて、爾の僕を害なく護り給へ、爾は隅石たるハリストスを爾の胎に宿したればなり。
  今も

童貞女よ、昔預言者の神聖なる会は爾の産の状を像りて、爾ハリストスを生みし者を、光る雲と燈、壺と筵、天の露と餅と「マンナ」、門と宝座と宮、杖と楽園と為せり。

   主憐めよ。三次、光栄、今も、

   坐誦讃詞、第一調。

我等皆爾が神の母にして、産の後にも実に童貞女と現れしを識りて、愛を以て爾の仁慈に趨り附く。蓋我等罪なる者は爾を転達者として有ち、爾独純潔なる者を患難の中に拯救(すくい)として獲たり。

   第七歌頌

イルモス、昔敬虔に由りて明に聖なる者と現れし少者は、婚筵の宮を過るが如く、(いろり)の堪へ難き焔を渉り、声を合せて歌を歌へり、先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

萬有の女王よ、永在の者は爾の過られぬ門を過りて、産の後にも爾の潔き童貞を全くして護り給へり。故に我等呼ぶ、吾が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

我霊を殺す患難の(いろり)に投げられて、七倍の焔に焚かる。慈愛なる女宰よ、爾の祈祷を以て親ら我に露を降して、呼ばしめ給へ、吾が先祖の神は崇め讃めらる。
   
光栄

我諸慾及び間断なき誘惑(いざない)と憂患との中に老いて、我が生の西に至り、諸徳に与らず、怠惰に囓まれて、爾に呼ぶ、地上の者の慰藉なる女宰よ、我を憐み給へ。
   今も
潔く母童貞女よ、我等地上の者は一体に於て三者に忠信に奉事し、爾を身にて神を生みし者と伝へて、敬虔に歌ふ、吾が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

   第八歌頌

イルモス、昔火と露との(いろり)は天然に超ゆる奇蹟の象を示せり、蓋火は少者を焚かずして、ハリストスの童貞女よりの種なき神聖なる産を顕せり。故に我等歌ひて呼ばん、悉くの造物は主を崇めて萬世に讃め揚げよ。

童貞女よ、司祭の真実なる言は爾の産を象れり、蓋爾は実に神の言を生みて、神が過り給ひし童貞の門は啓かざりき。故に我等喜びて、職として爾生神女を同心に歌ひて、潔き者を萬世に讃め揚ぐ。

至りて潔き者よ、神聖なる火を以て我が霊の中に生じたる(いばら)を焚き、爾の祈祷を以て我を諸徳の為に起して、果を結びてハリストスに献ぜしめ給へ。蓋爾より常に活ける花は生じて、一切の造物を飾れり。故に我等潔き神の母を萬世に尊む。 
  
光栄
神の母よ、我に諸病の中に疾く醫治を与へ給へ。蓋我不當の者は憂愁患難に陥りて、泣きて爾の速かなる援助を呼ぶ。故に至浄なる者よ、急ぎて我を凡の苦しみより脱れしめて救ひ給へ、我が爾の産を崇め讃めて歌はん為なり。
   今も
童貞女よ、昔芽を出したるアアロンの杖は爾を像れり、蓋爾独夫なく、天の雨を腹に受けて、芽を生じ給へり。故に我等皆楽しみて、宜しきに合ひて爾生神女を同心に歌ひて、萬世に讃め揚ぐ。

   第九歌頌

イルモス、童貞女の秘密は言ひ難し、蓋彼は天と現れ、ハリストス神全能者のヘルワィムの宝座及び光を放つ宮と現れたり。我等敬虔に彼を生神女として崇め讃む。

童貞女の秘密は至栄なり、蓋天上の大なる者等が容るる能はざりし主を彼は其腹に容れ給へり。故に我等集まりて彼を讃美し、楽しみて忠信に崇め讃む。

無よなる童貞女よ、我等地上の者は独爾を天より高き者、神の曙、ヘルワィムの宝座、宮、及び聖なる榻と見て、讃め揚げて、爾が潔き胎より生み給ひしハリストス吾が神を崇め讃む。
   光栄
多くの危難は、我を環り、甚しき攻撃は我に逼り、諸病諸罪は我を穴に陥れたり。故に我が霊の憂の中に爾に祈る、至聖なる生神女よ、我に援助を獲しめ給へ。
   今も
ハリストスよ、潔き神女のー祈祷に因りて世界を穏にせよ。敵の力を忠信なる諸王の足下に斃し、之に因りて絶えざる平安を致して、世世に之を護り給へ。

次ぎて「常に福にして」。聖三祝文「天に在す」の後に本調の小讃詞。主憐めよ、四十次。祝文、「何の日何の時にも」。主憐めよ、三次。光栄今も「ヘルワィムより尊く」。神父よ、主の名を以て福を降せ。次ぎて祝文、「穢なく誘はるるなく」。其他常例の如し。発放詞并に赦罪。

 

主日の朝、夜半課

司祭、「我等の神は恒に崇め讃めらる」。誦経者誦す、「アミン」。我等の神よ、光栄は爾に帰す、光栄は爾に帰す。「天の王」。聖三祝文「至聖三者」。「天に在す」。司祭、「蓋国と権能」。主憐めよ、十二次。光栄、今も、「来れ我等の王」、三次。第五十聖詠、「神よ、爾の大なる憐に因りて」。

次ぎて生を施す聖三者の規程。其の冠詞は、惟一なる三日の神性よ、爾を歌ふ、ミトロファンの作。

   第一歌頌

イルモス、死せざる主よ、勝を獲る爾の右の手は、神に適ふが如く、能力にて光栄を顕せり、其全能なるに因りて、敵を滅し、イズライリ人の為に新なる深水の路を開きたればなり。

附唱、至聖なる三者我等の神よ、光栄は爾に帰す。

惟一の三位なる本原、始めなき、永在なる、萬有の造成者、悟られぬ者を、セラフィム等は黙さずして讃栄す、凡の民も歌を以て忠信に彼を尊む。

初に人を造りし主よ、爾は人人に惟一にして三光なる爾の神性を現さん為に爾の像に循ひて之を造りて、之に智慧と、言と、神とを賜へり、人を愛する主なればなり。
   光栄
父よ、爾は神元なる三位に惟一の権柄の属するを上より示して爾と(ひと)しく行為する子及び神に言へり、我等降りて、彼等の言語を淆さん。
   今も、生神女讃詞
叡智なる者等は像りて云へり、智慧は生れざる父なり、同無原の言は同一性の子なり、聖神は童貞女の内に言の為に身を造りし者なり。

   第三歌頌

イルモス、独人の性の弱きを知りて、憐を以て之を衣たる者よ、我の上よりの力を帯びて、爾に呼ばしめ給へ、人を慈む主よ、爾の言ひ難き光栄の生ける宮は聖なり。

爾は神性に於て惟一にして、昔明にアウラアムに三位の者と現れて、形象を以て神学の大なる真理を示し給へり。我等醇正に爾一元なる三光の神を歌ふ。

父よ、神に適ふず如く無窮に爾より生れたる変易なき子は光よりする光として輝き、神聖なる神も光として出で給へり。我等醇正に惟一なる神性の三位の光明に伏拝して、之を讃栄す。
   光栄
惟一者三者、萬性より上にして、言い難く、悟り難き主を無形の者は讃美して、聖三の声を以て黙さざる讃美を奉る。我等も同一の声を以て心を合せて三位なる主を讃め歌ふ。
  生神女讃詞
生神女よ、時より上なる者は時に及びて種なく爾より出で、見えざる主は我等に似たる者と為りて、父と、子と、聖神との惟一なる性、惟一なる権柄を教へたり。故に我等爾を讃栄す。

主憐めよ、三次

坐誦讃詞、第一調。

我等皆父と子及び同尊にして義なる神に伏拝せん。光栄は造られざる三者、至りて神聖なる能力に帰す、無形の者の品位は之を讃栄す。我等地に生るる者も今日畏を以て醇正に之を讃め揚ぐ。

      光栄、今も、生神女讃詞

婚姻に与からざる讃美たるマリヤ、失望する人の避所、神の居處(すまい)よ、我等常に諸悪の無道に迷ひて、至仁なる主を怒らしむる者を痛悔の途に向はしめ給へ。

      第四歌頌

イルモス、アウワクムは先知の目にて爾、神の恩寵に覆はるる山を見て、イズライリの聖なる者が我等を救ひ改めん為に、爾より出づるを預言せり。

三日の神元よ、爾の神功の光照のW煌にて我を照し給へ、我が心の目にて智慧に超ゆる爾の神聖なる光明の華麗を仰ぎ、之に与ることの甘美を感想せん為なり。

主よ、爾は始に萬事を行ふ爾の言と爾の口の同一性の気とを以て天及び其全軍を造りて、神性の三光の独一の権を以て万有を宰り給ふ。

   光栄

万事を宰制する全能の三者、混淆せざる惟一者よ、我を爾の像と肖とに循ひて造りしに因りて、我を照して、爾の聖にして仁愛且純全なる旨を行ふを教へ給へ。
   生神女讃詞
至浄なる者よ、爾は聖三者の一、神元なる子を生み給へり。彼は我等の為に爾より身を取りて、三日の神性の暮れざる光と輝とを以て地に生るる者を照し給ふ。

     第五歌頌

イルモス、己の降臨の光にて世界の極を照し、己の十字架にて之を輝かししハリストスよ、爾が智慧の光にて正しく爾を歌ふ者の心を照らし給へ。

爾の華麗の近づき難き光線にて天使の首品を直に輝かす独一有権なる聖三者よ、爾の光明を以て醇正に爾を歌ふ者を照し給へ。

単一なる三日の神元よ、爾が仁慈に因りて生を賜ひし性は今爾を歌ひて、諸の罪と誘惑(いざない)、災害と憂愁より脱れしめんことを求む。

      光栄
父と、子と、聖神、惟一の神性、分れ、又分れざる者、見ゆると見えざる萬物の惟一の神を我等信を以て讃栄す。  生神女讃詞

至浄なる者よ、諸預言者の言語は皆爾の言ひ難く解き難き産を預録せり。我等斯の産を単一にして三日なる神性の奥義に導く者なりと知れり。

     第六歌頌

イルモス、今を限の淵は我等を圍めり。脱れいむる者なし、我等は屠所の羊の如し、吾が神よ、爾の民を救へ、爾は弱る者の力と更新なればなり。

永在なる三者よ、爾は意旨の同一に於て同等の能力を有つ、爾は単一にして分れざる惟一者なり。爾の能力を以て我等を護り給へ。二次

   光栄

悟られぬ三者よ、爾は仁慈なるに因りて己の意旨を以て萬世を無より出し、亦人をも造れり。今も我を凡の危難より救ひ給へ。

   生神女讃詞

至浄なる童貞女神の聘女(よめ)よ、爾は入らざる日、全能を以て大なる光体を造りて排列せし者の家と為れり。今も我を諸慾の昏昧より救ひ給へ。

     主憐めよ、三次。

     坐誦讃詞、第一調。

聖なる三者、分れざる性、截られずして三位に截らるれども、神性に於て分るるなく止まる主に我等地上の者は畏を以て伏拝し、造物主及び主宰として至仁なる神を讃栄す。

     光栄、今も、生神女讃詞
至りて無よなる者よ、我が不當なるれ曰く治め、其の罪の多きに因りて淪滅(ほろび)の深(ところ)に跌きしを憐み、畏るべき死の時にも我を罪する悪鬼と凡の苦より脱れしめ給へ。

第七歌頌

イルモス、生神女よ、我等信者は爾を見て属神の(いろり)と為す、蓋先祖の尊まれて崇め讃めらるる神は、三人の少者を救ひし如く、斯く爾の腹に於て全世界を改め給へり。

神の言、全能者神の同一性の輝煌よ、爾が約せし如く、仁慈なるに因りて、爾の父及び聖神と共に我の内に神功の住居を為して、我を悪鬼と諸慾との為に畏るべき者と現し給へ。二次。
   光栄
主宰よ、爾は己の仁慈の海を我等に示さん為に、爾の子を我が卑微に遣して、我等を変じて初始の光明に回せり。今も神聖なる神を以て我を教へ給へ。

      生神女讃詞
至浄なる者よ、ヘルワィムの宝座に舁はるる萬有の王は爾の童貞の腹に入りて、人を愛する主なるに因りて、衆を壊滅より救へり。今も爾の祈祷を以て我を護り給へ。

       第八歌頌

イルモス、昔火と露との(いろり)は天然に超ゆる奇蹟の象を示せり、蓋火は少者を焚かずして、ハリストスの童貞女よりの種なき神聖なる産を顕せり。故に我等歌ひて呼ばん、悉くの造物は主を崇めて萬世に讃め揚げよ。

萬有の主、三位なる全能者よ、爾は神功の瞬を以て天を幔の如くに張り、又爾の全力の手を以て地の重きを懸けたり。人を愛する主よ、爾に於ける愛と信とを以て爾の諸僕をも堅め給へ、我等が切に爾を世々に讃栄せん為なり。二次。
   光栄

位にては三日の光、性にては惟一の神よ、爾の神元なる光を以て爾を歌ふ者を照して、常に爾の輝ける光明を仰がしめ給へ、我が之に因りて爾の甘美にして、光を施す、至りて盛んなる光栄に飽かせられて、醇正に爾を世々に讃め揚げん為なり。
      生神女讃詞
至浄なる生神女よ、爾の子は変易なく人の性を受けて、至大なる仁慈に因りて、之を古の朽壊より救ひて、天に上せ給へり。我等感謝の心を懐きて彼に歌ふ、悉くの造物は主を崇めて萬世に讃め揚げよ。

第九歌頌

イルモス、生神女よ、燃ゆれども焼かれぬ(いばら)は爾が潔き産の象を顕せり。祈る、今も我等を攻め圍む誘惑(いざない)(いろり)を撲ち滅して、常に爾を崇めさせ給へ。

至聖なる一体の三者、造物の救主よ、形体及び神霊なる爾の諸僕を敵の悪謀と攻撃より救ひて、常に爾の牧群を害なく護り給へ。二次
     光栄
三日にして一元なる全能の神よ、爾は己の大仁慈の無量なる深を示さん為な、我等爾の諸僕に救を施す誡命を賜へり、我等を之を行ふに堪へさせ給へ。
   生神女讃詞
神元なる三位に於て惟一者と確信せらるる神よ、我等の祷を眷みて、爾の諸僕に至浄にして讃美たる神の母の祈祷に因りて、慰藉を与へ給へ。

次に聖三者の規程の後に主日毎に誦する所のグリゴリイ、シナイトの聖三者讃詞、「爾神言を讃栄するは誠に當れり」、本書の末に載す。及び其の他夜半課の式、并に発放詞。

 

主日の早課

六段の聖詠畢りて「主は神なり」、第一調に依りて歌ひ、後主日の讃詞二次、生神女讃詞一次、大晩課に載す。次ぎて聖詠経の常例の誦文。

      第一の誦文の後に主日の坐誦讃詞、第一調。

救世主よ、爾の墓を守る兵卒は女等に現れて復活を伝ふる天使の光輝に因りて死せし如くなれり。我等爾朽壊を滅す者を讃栄し、爾墓より復活せし我等の惟一の神に伏拝す。

句、主我が神よ、起きて、爾の手を挙げよ、苦しめらるる者を永く忘るる毋れ。鴻恩の主、生命(いのち)を施す有能者よ、爾は甘じて十字架に釘せられ、死者として墓に置かれて、爾の死を以て権柄を破り給へり。蓋地獄の門衛(かどもり)は爾を畏れて慄き、爾は古世より死せし者を己と偕に起し給へり、独人を慈む主なればなり。

      光栄、今も、生神女讃詞
我等皆爾を神の母、産の後にも実に童貞女なりと知りて、愛を以て爾の慈憐に趨り附く。蓋我等罪なる者は爾を転達として有ち、爾独純潔なる者を誘感の中に救として得たり。

      第二の誦文の後に坐誦讃詞、第一調。

女等朝早く墓に来り、天使の顕現(あらわれ)を見て慄けり。墓は生命(いのち)を輝かし、奇蹟は彼等を驚かせり、故に彼等は往きて門徒に復活を伝へたり。ハリストスは独り有能有権なる者として、地獄を虜にし、朽ちたる者を皆己と偕に起し、十字架にて定罪の畏懼(おそれ)を解き給へり。

句、主よ、我心を盡して爾を讃め揚げ、爾が悉くの奇迹を伝へん。

萬有の生命(いのち)よ、爾は十字架に釘せられたり、不死の主よ、爾は死者の中に入りたり、救世主よ、爾は三日目に復活して。アダムを己と偕に朽壊より起し給へり。故に天軍は爾生を施す主に呼べり、ハリストスよ、光栄は爾の神聖なる苦に帰す、光栄は爾の復活に帰す、独人を愛しむ主よ、光栄は爾の寛容に帰す。

     光栄、今も、生神女讃詞

マリヤ、主宰の尊き住居よ、我等甚しき失望と、諸罪と、憂患との淵に陥りし者を起し給へ。蓋爾は罪なる者の守護と、扶助と、堅固なる転達にして、爾の諸僕を救ひ給ふ。

次ぎて「道にきずなくして」。其の後諸讃詞、「救世主よ、天使の軍」、本書の末に載す。次に小聯祷。

応答歌、第一調

盗賊の悔は楽園を奪ひ、携香女の哀は喜びを知らせたり、蓋爾、ハリストス神よ、復活して、世界は大なる憐みを賜へり。

      品第詞。第一倡和詞、第一調。毎句復唱す。

我が憂の時、我の痛歎(なげき)を聴き給へ、主よ、我爾に呼ぶ。

野に居りて虚しき世の外に在る者には恒に神聖なる望あり。

   光栄

聖神には父及び子と(ひと)しき尊敬と光栄とは適ふ。故に我等同一権能の聖三者を歌はん。   今も、同上

   第二倡和詞

神よ、爾は我を爾の律法の山に登せたり。諸徳にて我を飾り給へ、我が爾を歌はん為なり。
言よ、爾の右の手に我を取りて、我を蔭ひ、我を守り給へ、罪の火が我を焚かざらん為なり。
   光栄
聖神に因りて凡の造物は新にせられて、復初の状に還る、父及び言と(ひと)しく有能なればなり。 
   今も、同上

   第三倡和詞

人我に向ひて、主の家に往かんと云ふ時、我が神は楽しみ、心も共に喜ぶ。
ダワィドの家には大なる畏懼(おそれ)あり、蓋彼処に宝座は立てられて、地上の萬族萬民は審判せられん。
  
光栄
聖神には父及び子と(ひと)しき尊敬、伏拝、光栄、権柄を帰すること当然なり、蓋聖三者は性にて惟一なり、唯位にては然らず。
      今も、同上。

提綱、第一調。

主曰く、我今興き、執へられんとする者を危ふからざる(ところ)に置かん。句、主の言は浄き言なり。

「凡そ呼吸ある者は」。順序の早課福音経。

ハリストスの復活を見て、聖なる主イイスス独り罪なき者を拝むべし。ハリストスよ、我等爾の十字架を拝み、爾の聖なる復活を歌ひ讃む、爾は我等の神なればなり、爾の外他の神を知らず、唯爾の名を称ふ。信者よ、皆来りて、ハリストスの聖なる復活を拝むべし、十字架にて歓喜は全世界に臨みたればなり。我等恒に主を讃め揚げて、其の復活を崇め歌はん、主は十字架に釘うたるるを忍びて、死を以て死を滅ししに因る。

第五十聖詠、「神よ、爾の大なる憐に因りて」。
   光栄
使徒の祈祷に依りて、憐深き主よ、我等の多くの罪を浄め給へ。
   今も
生神女の祈祷に依りて、憐深き主よ、我等の多くの罪を浄め給へ。
      次ぎて、第六調。
神よ、爾の大なる憐に因りて我を憐み、爾が恵の多きに因りて我の不法を抹し給へ。

   讃頌

預め言ひし如く、イイスス墓より復活して、我等に永遠の生命(いのち)と大なる憐とを賜へり。
「神よ、爾の民を救ひ」。高声、「爾が独生子の仁慈と慈憐と」。

規程四編、主日の、讃詞四章、十字架復活の、三章、生神女の、三章、月課経の、四章。若し聖人の祭ならば、聖人の、六章、十字架復活の、二章、生神女の、二章。

   主日の規程、第一調

   第一歌頌

イルモス、死せざる主よ、勝を獲る爾の右の手は、神に適ふが如く、能力にて光栄を顕せり、其の全能なるに因りて、敵を滅し、イズライリ人の為に新なる深水の路を開きたればなり。

附唱、主よ、光栄は爾の聖なる復活に帰す。
   讃詞
元始に至浄なる手にて神の力を以て我を土より作りし主は、十字架に手を伸べて、童貞女より取りし我が朽ち易き身を土より喚び起せり。二次。
   光栄
神聖なる吹嘘を以て我に霊を入れし主は、我が為に殺され、霊を死に付して、我を永遠の鎖より解き、己と偕に復活せしめて、不朽の栄えを賜へり。
   今も、生神女讃詞
恩寵の泉よ、慶べ、天の梯と門よ、慶べ、燈台と金の壺、及び截られざる山、生命(いのち)を賜ふハリストスを世界の為に生みし者よ、慶べ。

      又十字架復活の規程

   第一歌頌、同調。

イルモス、「ハリストス生る」。

附唱、主よ、光栄は爾の尊き十字架と復活に帰す。
ハリストスは人体を取りて我を神成し、ハリストスは卑くなりて我を高くし、ハリストス生命(いのち)を賜ふ主は身にて苦みを受けて我を苦みより解き給ふ。故に我感謝の歌を奉る、彼光栄を顕したればなり。

ハリストスは十字架に釘せられて我を上せ、ハリストスは殺されて我を己と偕に復活せしめ、ハリストスは我に生命(いのち)を賜ふ。故に我楽しみて手を拍ちて、救世主に凱歌を奉る、彼光栄を顕したればなり。

   生神女讃詞
童貞女よ、爾は神を孕めり、至浄なる者よ、爾は童貞に於てハリストスを生めり。彼は爾より身を取りて、一位二性の独生子と識らる、光栄を顕したればなり。

   又至聖なる生神女の規程

      第一歌頌、同調。

イルモス、「死せざる主よ、勝を獲る爾の右の手」。

附唱、至聖なる生神女よ、我等を救ひ給へ。

我等の不能は爾に適ふ何の歌をか爾に奉らん、唯悦ばしむる歌、ガウリイルが奥妙に我等に教へし者なり、生神童貞女、聘女(よめ)ならぬ母よ、慶べ。

我等信者は永貞童女、上なる軍の王の母に最浄き心より熱切に呼ばん、生神童貞女、聘女(よめ)ならぬ母よ、慶べ。

純潔なる者よ、爾の悟り難き産の奥義の淵は量られず。故に我等疑なき信を以て切に爾に歌を奉りて云ふ、生神童貞女、聘女(よめ)ならぬ母よ、慶べ。

次ぎて月課経の規程。

共頌、「我が口を開きて」。

   第三歌頌

イルモス、独人の性の弱きを知りて、憐を以て之を衣たる者よ、我に上よりの力を帯びて、爾に呼ばしめ給へ、人を慈しむ主よ、爾の言ひ難き光栄の生ける宮は聖なり。

仁慈なる主よ、爾は我の神にして、陥りし者を憐みて、甘じて我に降り、十字架に釘せらるるを以て我を升せて、爾に呼ばしめ給ふ、人を慈しむ主よ、爾の言ひ難き光栄の生ける宮は聖なり。

本原の生命(いのち)たる主宰ハリストスよ、爾は慈憐なる神にして、我朽ちたる者を衣、死に属する塵に下りて、死の権を滅し、三日目に死より復活して、我に朽ちざるを衣せ給へり。 
  
生神女讃詞
童貞女よ、爾は至聖神に因りて神を孕みて、焼かれざる者と止まれり、蓋立法者モイセイに顕れし(いばら)は爾堪へ難き火を受けし者の燃えて焼かれざるを明に前兆せり。

又 イルモス、「世の無き前に分離なく父より」。

己の肩に迷へる羊を任ひて、木を以て其罪を滅ししハリストス神に呼ばん、我等の角を高くせし主よ、爾は聖なり。

大なる牧者ハリストスを地獄より上せて、其聖務に因りて使徒等を以て厳かに諸民を牧せし主に、我等信者は真実と神聖なる神(シン)とを以て務むべし。

童貞女より種なく甘じて身を取りし子、生みし者を産の後に神聖なる力を以て潔き童貞女と護りし者、萬有の上に在る神に呼ばん、主よ、爾は聖なり。

又 イルモス、「独人の性の弱きを知りて」。

童貞女よ、我等預言者の言に循ひて、正しく爾を軽き雲と称ふ。蓋主は爾に抱かれて、エギペトの迷惑の手造を滅して、之に事ふる者を照さん為に来り給へり。

讃美たる者よ、預言者の会は爾を実に封じたる泉、閉じたる門と称へて、爾が産の後にも守りし童貞の徴を明かに我等の為に像れり。

至りて無よなる童貞女よ、至上の智慧を能するに循ひて悟るに堪へたるガウリイルは爾に欣ばしき報信を携へたり、明かに言の降孕(はらみ)を知らせ、言ひ難き産を伝ふる者なり。

   第四歌頌

イルモス、アウワクムは先知の目にて爾、神の恩寵に覆はるる山を見て、イズライリの聖なる者が我等を救ひ改めん為に、爾より出づるを預言せり。

斯の救主、エドムより出で、(いばら)の冠を冠り、血に染みたる衣を衣、木に懸かるれる者は誰ぞ、是れイズライリの聖なる者、我等を救ひ改むる主なり。

頑しき人人よ、視て愧づべし、蓋爾等が無智に因りてピラトの明かに言乞ひて、犯罪者として十字架に懸けし者は死の力を破りて、神に適ふが如く墓より復活せり。

   生神女讃詞

童貞女よ、我等爾が生命(いのち)の樹なるを識る、蓋爾より生ぜし者は、人の死を致す果に非ず、乃永き生命(いのち)の楽にして、爾を歌ふ我等を救ふ者なり。

又 イルモス、「イエッセイの根より生ぜし枝」。

斯の美しき者、エドムより出で、其衣の赤きはワォソルの葡萄に染みたるが如き者は誰ぞ、神としては美しく、人としては肉体の血に赤みたる衣を衣たる者なり。我等信者は彼に歌ふ、主よ、光栄は爾の能力に帰す。

ハリストスは将来の福の司祭長と現れて、我等の罪を滅し、己の血を以て更に美しく、更に全備なる幕に入る奇妙なる途を示して、我等の前駆として聖所に入り給へり。

   生神女讃詞
讃美たる者よ、爾は我等の為に現れし新なるアダムよりエワの古の債めを赦さんことを求め得たり。蓋潔き降孕(はらみ)に因りて己に知り霊ある肉体を合せたるハリストスは爾より出で給へり、二性にして一位なる主なり。

又 イルモス、「アウワクムは先知の目にて」。

天よ、奇蹟を聴け、地よ、耳を傾けよ、蓋塵なる陥りたるアダムの女は神己の造成主の為に母と為るに定められたり、我等の拯救(すくい)なる贖罪主、生を施す主は輝き出でたり。爾の諸僕の救はれんことを彼に祈り給へ。

   第五歌頌

イルモス、己の降臨の光にて世界の極を照し、己の十字架にて之を輝かししハリストスよ、爾が智慧の光にて正しく爾を歌ふ者の心を照し給へ。

イウデヤ人は大なる羊の牧者及び主を十字架の木にて殺したれども、彼は地獄に葬られたる死者を羊の如く死の権より救ひ給へり。

ハリストス吾が救世主よ、爾は十字架にて和睦を福音し、虜に赦を伝へ、権ある者を辱かしめ、爾の神聖なる復活を以て其裸体にして貧しくなりたるを顕し給へり。

   生神女讃詞
讃美たる者よ、切に爾に求むる者の(いのり)を斥くる毋れ。至浄なる者よ、之を受けて、爾の子なる神、一の恩主に捧げ給へ、我等爾を転達者として得たればなり。

又 イルモス、「和平の神、仁慈の父よ」。

嗚呼神の智慧の富と深みや。智者を執ふる主は其悪謀より我等を救へり、蓋甘じて身の弱きを以て苦を受けて、己の力を以て死者を活かして、之を起し給へり。

実在の神ハリストスは我等の為に肉体に合し、十字架に釘せられ、死し、葬られ、又復活し、己の肉体と偕に厳かに父に升り、之と偕に来りて、敬虔に彼に事ふる者を救はん。

   生神女讃詞
諸聖の聖なる潔き童貞女よ、爾は諸聖の聖にして、衆を聖にするハリストス贖罪主を生み給へり。故に我等爾萬物の造成者の母たる者を萬有の女王及び女宰として伝ふ。

又 イルモス、「己の降臨の光にて」。

生神童貞女よ、天の軍は爾を見て楽しみ、人人の会は彼等と共に喜ぶ、蓋爾の産に因りて合せられたり。我等宜しきに合ひて之を讃栄す。

人人の舌と思念とは実に人類の飾なる者の讃美に動くべし。童貞女は前に立ちて、信を以て彼の奇蹟を歌ふ者を明に栄し給ふ。

叡智者の歌頌と讃美とは神の母童貞女に捧げらるべし、蓋彼は至りて神聖なる光栄の宮と為れり。我等宜しきに合ひて彼を讃栄す。

   第六歌頌

イルモス、今を限の淵は我等を圍めり、脱れしむる者なし、我等は屠所の羊の如し。吾が神よ、爾の民を救へ、爾は弱る者の力と更新なればなり。

主ハリストスよ、我等は始めて造られし者の愆にて痛く傷つけられ、爾が我等の為に受けし傷にて癒されたり、爾は弱る者の力と更新なればなり。

全能の主よ、爾は己の権にて衆を呑む鯨の力を破り、之を殺して、我等を地獄より引き上げたり、爾は生命(いのち)と光と復活なればなり。

   生神女讃詞

至浄なる童貞女よ、我が族の原祖は罪に因りて失ひしエデムを爾に因りて復の聖堂得て、爾の為に楽しむ、爾は産の前にも産の後にも潔き者なればなり。

又 イルモス、「海の猛獣はイオナを」。

無慾無形の智慧なるハリストス神は人の知恵、即神の性と肉体のよ笨とを接合せしむる者に合せられ、変易なくして我全人と全く合一になれり、十字架に釘せられて、我陥りたる全人に救を賜はん為なり。

昔アダムは神たらんとする望に欺かれて、躓きて仆れたり。今言に合せらるるに因りて神成せられて興き、苦に因りて苦なきを得、子として父及び聖神と偕に宝座に坐して讃栄せらる。   生神女讃詞

義を以て王たる神は無原なる父の懐を離れずして、潔き少女の懐に入り、先に母なく生れし者は父なくして人体を取り給ふ、其来歴は畏るべくして、悟り難く、言ひ難し。

又 イルモス、「今を限の淵は」。

永貞童女よ、天の品位は僕として爾の子の前に立ち、宜しきに合ひて爾の種なき産を奇とす、爾は産の前にも産の後にも潔き者なればなり。

至りて潔き者よ、先に無形なる言、其の旨を以て一切を行ひ、全能者として無形の軍を無より有と為しし主は爾より身を取り給へり。

神の恩寵を蒙れる者よ、爾が生を施す産にて敵は殺され、地獄は明に践まれ、我等桎梏に在る者は解かれたり。故に我呼ぶ、我が心の慾を滅し給へ。

   小讃詞、第一調。

主宰よ、爾は神なるに因りて光栄の中に墓より復活し、世界をも共に復活せしめ給へり。人の性は爾を神として讃め歌ひ、死は滅され、アダムは楽しみ、エワは今縛より釋かれて、歓びて呼ぶ、ハリストスよ、爾は衆人に復活を賜ふ主なり。

   同讃詞

我等三日目に復活せし主を全能の神として歌はん。彼は地獄の門を破り、古世よりの死者を墓より起し、嘉せし如く、携香女に現れて、先づ彼等に慶べよと云ひ、独生命(いのち)を施す主として、使徒等に歓喜を報らせ給へり。故に女等は信を以て門徒に勝利の表章を福音し、地獄は呻き、死は泣き、世界は楽しみ、衆は共に悦ぶ、蓋爾は、ハリストスよ、衆人に復活を賜へり。

   第七歌頌

イルモス、生神女よ、我等信者は爾を見て属神の(いろり)と為す、蓋先祖の尊まれて崇め讃めらるる神は、三人の少者を救ひし如く、斯く爾の腹に於て全世界を改め給へり。

地は畏れ、日は隠れ、光は暗み、殿の神聖なる幔は裂け、石は砕けたり、義なる者にして、先祖の尊まれて崇め讃めらるる神が十字架に懸かり給へばなり。

爾は援助なき者の如くなりて、甘じて我等の為に傷つけられ、死に付されたれども、萬の者を釋き、権能の手を以て己と偕に復活せしめ給へり、先祖の尊まれて崇め讃めらるる神なればなり。

   生神女讃詞
常生の水の泉よ、慶べ、楽の天堂よ、慶べ、信者の垣よ、慶べ、婚姻に与らざる者よ、慶べ、全世界の歓喜よ、慶べ、先祖の崇め讃めらるる神が爾に依りて我等に輝きたればなり。

又 イルモス、「偕に敬虔に養はれし少者は」。

昔弟を殺しし手に由りてアワェリの血に赤く染みたる地は詛はれたり、今爾の神たる血を注がれ、祝福せられて、楽しみて呼ぶ、先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

神に逆ふイウデヤの民はハリストスを殺しし狂暴の為に泣くべし、異邦民は楽しみて、手を拍ちて呼ぶべし、先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

視よ、輝ける天使は携香女に呼べり、来りて、ハリストスの復活の表章なる布及び墓を見て呼べ、先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

又 イルモス、「生神女よ、我等信者は爾を見て」。

生神女よ、イアコフは豫知して梯を爾なりと悟れり、蓋先祖の尊まれて崇め讃めらるる神は、嘉せし如く、爾に縁りて地に現れて、人々と偕に住ひ給へり。

潔き者よ、慶べ、爾より量り難き仁慈に因りて、実にアダムの皮肉、即我全き人を衣たる牧者は出で給へり、此れ先祖の尊まれて崇め讃めらるる神なり。

永遠なる神は爾の潔き血に由りて実に新なるアダムと為り給へり。彼に今我古びたる者を新にせんことを祈り給へ、蓋我呼ぶ、先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

   第八歌頌

イルモス、イズライリの少者は(いろり)に在りて、坩堝に在るが如く、敬虔の美しきを以て黄金よりも明に輝きて云へり、主の悉くの造物は主を崇め讃め、歌ひて萬世に讃め揚げよ。

己の旨に循ひて萬物を造り、又の聖堂変化し、己の苦にて死の蔭を易へて永遠の生命(いのち)と為す神の言よ、我等悉くの造物は絶えず爾を主として歌ひて、萬世に讃め揚ぐ。

ハリストスよ、爾は地獄の門及び其の防固の中に哀と苦とを滅して、三日目に墓より復活し給へり。悉くの造物は絶えず主を崇め讃め、歌ひて萬世に讃め揚ぐ。
   生神女讃詞
種なくして性に超えて神聖なる輝に由りて最高き真珠なるハリストスを生みし者を歌ひて呼ばん、主の悉くの造物は主を崇め讃め、歌ひて萬世に讃め揚げよ。

又 イルモス、「露を出す(いろり)」。

人々よ、来りて、至浄なる足の立てと(ところ)、衆人の救の為に木の上にハリストスの生を施す神聖なる手の伸べられし(ところ)に伏拝して、生命(いのち)の墓を環りて歌はん、悉くの造物は主を崇めて萬世に讃め揚げよ。

神を殺ししイウデヤ人の至りて不法なる讒言は露れたり、蓋彼等が惑はす者と名付けし主は有能者として無智の封印を辱かしめて起き給へり。故に我等歓びて歌はん、悉くの造物は主を崇めて萬世に讃め揚げよ。

   聖三者讃詞
至浄なるセラフィム等は聖三の歌を以て惟一の主を讃美して、僕に適ふが如く畏を以て三位の神性を讃栄す。彼等と偕に我等も敬虔に歌はん、悉くの造物は主を崇めて讃め揚げよ。

又 イルモス、「イズライリの少者は(いろり)に在りて」。

新娶者の出づる如く、萬有の主宰ハリストスが出で給ひし輝ける宮を我等皆歌ひて呼ばん、主の悉くの造物は主を歌ひて萬世に讃め揚げよ。

神の至栄なる宝座よ、慶べ、信者の垣よ、慶べ、爾に依りて幽暗に在る者に光なるハリストスは輝けり。故に彼等爾を讃美して呼ぶ、主の悉くの造物は主を歌ひて萬世に讃め揚げよ。

我等救ひの起源者なる主を生みし讃美たる童貞女よ、衆の為に祷り給へ。蓋皆切に呼ぶ、主の悉くの造物は主を崇め讃め、歌ひて萬世に讃め揚げよ。

次ぎて生神女の歌を歌ふ、「我が霊は主を崇め」、附唱と共に、「ヘルワィムより尊く」。

   第九歌頌

イルモス、生神女よ、燃ゆれども焼かれぬ(いばら)は、爾が潔き産の象を顕せり。祈る、今も我等を攻め圍む誘惑(いざない)(いろり)を撲ち滅して、常に爾を崇めさせ給へ。

嗚呼不法不順の民よ、何ぞ悪しきを謀りて、不義不虔の者を義と為し、義なる光栄の主を木に懸けんことを定めたる。我等宜しきに合ひて彼を崇め讃む。

救世主、世の罪を任ひしよなき羔よ、我等三日目に復活せし者を父及び爾の神聖なる神(シン)と偕に讃栄し、光栄の主と伝へて崇め讃む。

   生神女讃詞

人を愛する主よ、爾の尊き血にて得たる爾の民を救ひ、皇帝に敵に對して能力を賜ひ、爾の諸教会に平安を与へ給へ、生神女の祈祷に因りてなり。

又 イルモス、「我奇異にして至栄なる秘密」。

主よ、爾の十字架は爾の言ひ難き能力に因りて栄を獲たり、蓋爾の弱きは衆の為に力に超ゆる者と顕れたり。此にて強き者は地に仆されたり、卑しき者は天に升せらる。

ハリストスよ、畏るべき我等の死は殺されたり、蓋爾は地獄に在る者に現れて、死よりの復活を賜へり。故に我等爾を生命(いのち)と復活、及び本原の光と歌ひて崇め讃む。

   
聖三者讃詞
無原無極なる性は三の神元の位に於て識らる、父と子と、聖神との中に惟一の神性なり。敬虔なる皇帝は之を頼みて救はる。

又 イルモス、「生神女よ、燃ゆれども焼かれぬ(いばら)」。

童貞女よ、爾は神の先祖たる預言者ダワィドの根より生ぜり、然れども爾は実にダワィドにも栄を被らせたり、預言せられし光栄の主を生みたればなり。我等宜しきに合ひて彼を崇め讃む。

嗚呼至浄なる生神女よ、爾の光栄の大なるは凡の讃美の法に超ゆ。然れども女宰よ、寛容にして爾の不當なる諸僕より愛を以て爾に捧ぐる讃歌を受け給へ。

嗚呼智慧に超ゆる爾の奇蹟や、蓋爾は、純潔なる童貞女よ、独日よりも輝きて、衆に爾の悟り難き産の新なる奇蹟を顕し給へり。故に我等皆爾を崇め讃む。

共頌の後に小聯祷。次ぎて主我等の神は聖なり。三次

早課の差遣詞。

「凡そ呼吸ある者」に主日の讃頌、第一調。

句、彼等の為に記されし審判を行はん為なり、斯の栄は其悉くの聖人に在り。百四十九聖詠を読み畢りて此の末節を歌ふ。

ハリストスよ、我等爾が救を施す苦を歌ひ、爾の復活を讃栄す。

句、神を其聖所に讃め揚げよ、彼を其有力の穹蒼に讃め揚げよ。

十字架を忍びて、死を空しくし、死より復活せし主よ、我等の生命(いのち)を平安ならしめ給へ、爾独全能の主なればなり。

句、其権能に依りて彼を讃め揚げよ、其至厳なるに依りて彼を讃め揚げよ。

地獄を虜にし、爾の復活にて人を復活せしめしハリストスよ、我等に潔き心を以て爾を歌ひ、爾を讃栄するに堪へさせ給へ。

句、角の声を以て彼を讃め揚げよ、琴と瑟とを以て彼を讃め揚げよ。

ハリストスよ、我等爾が神に合ふ寛容を讃栄して、爾を歌ふ。爾は童貞女より生れて、父に離れざりき、人として苦を受け、甘じて十字架を忍び、宮より出づるが如く墓より復活し給へり、世界を救はん為なり。主よ光栄は爾に帰す。

   又讃頌、アナトリイの作、同調。

句、鼓と舞とを以て彼を讃め揚げよ、絃と簫とを以て彼を讃め揚げよ。

爾が十字架の木に釘せられし時、敵の権は滅され、造物は爾を畏るるに因りた戦ひ、地獄は爾の力にて虜にせられたり。爾は死者を墓より復活せしめ、盗賊の為に楽園を開き給へり。ハリストス我が神よ、光栄は爾に帰す。

句、和声のばつを以て彼を讃め揚げよ、大声のばつを以て彼を讃め揚げよ、凡そ呼吸ある者は主を讃め揚げよ。

尊き女等は泣きて急ぎて爾の墓に詣り、墓の開けたるを観、天使より新なる至栄の奇蹟を知りて、使徒等に報らせて云へり、主は復活して世界に大なる憐を賜へり。

句、主我が神よ、起きて爾の手を挙げよ、苦しめらるる者を永く忘るる毋れ。

ハリストス神よ、我等は爾の苦の神聖なる傷、又シオンに在りし主宰の聖務、世の末に神妙に現れし者に伏拝す、蓋爾義の日は幽暗に寝ぬる者を照して、暮れざる光に向はしめ給へり。主よ、光栄は爾に帰す。

句、主よ、我心を盡して爾を讃め揚げ、爾が悉くの奇蹟を伝へん。

乱を好むエウレイの族よ、耳を傾けよ、ピラトに来りし者等は何処にか在る、守る兵卒は云言ふべし、墓の印は何処にか在る、葬られし者は何処にか移されたる、賣られぬ者は何処にか売られたる、宝は如何ぞ盗まれたる。不法なるイウデヤ人は何ぞ救世主の起くるを讒言する。死者の中に自由なる者は復活して、世界に大なる憐を賜ふ。

   光栄、早課の福音の讃頌。今も、

生神童貞女よ、爾は至りて讃美たる者なり、爾に身を取りし主は地獄を虜にし、アダムを喚ぎ起し、詛を壊り、エワを釋句し、死を滅し、我等を生かせり。故に我等歌ひて呼ぶ、斯く行ひ給ひしハリストス神は崇め讃めらる、光栄は爾に帰す。

   大詠頌。次ぎて復活の讃詞。

今救は世界に及べり。我等墓より復活せし吾が生命(いのち)の首なる主に歌ふ、其死にて死を滅し、我等に勝利と大なる慈憐とを賜へばなり。

   発放詞

 

聖体禮儀には代式の真福詞、第一調。

敵は食物を持ってアダムを楽園より引き出し、ハリストスは十字架を以て盗賊を其中に入れ給へり、主よ、爾の国に来らん時我を懐ひ給へと呼べばなり。

句、心の清き者は福なり、彼等神を見んとすればなり。

我爾の苦に伏拝し、アダム及び盗賊と共に復活を讃揚し、朗なる声にて爾に呼ぶ、主よ、爾の国に来らん時我を憶ひ給へ。

句、和平を行ふ者は福なり、彼等神の子と名づけられんとすればなり。

罪なき者よ、爾は甘じて十字架に釘せられて、墓に蔵められたれども、神なるに由りて復活し、アダムを己と偕に起し給へり、爾の国に来らん時我を懐ひ給へと呼べばなり。

句、義の為に窘逐せらるる者は福なり、天国は彼等の者なればなり。

爾の肉体の殿を三日目の葬りの後に復活せしめしハリストス神よ、爾はアダムとアダムよりする者とを偕に復活せしめ給へり、爾の国に来らん時我等を憶ひ給へと呼べばなり。

句、人我の為に爾等を詬り、窘逐し、爾等の事を譌りて諸の悪しき言を言はん時は、爾等福なり。

ハリストス神よ、携香女は涙を垂れて、朝早く爾の墓に来りしに、白き衣を着て坐せる天使に逢ひたり、彼は呼べり、何を尋ぬるか、ハリストス復活せり、今より泣く勿れ。

句、喜び楽しめよ、天には爾等の賞多ければなり。

主よ、爾の使徒は命ぜられし山に来り、爾救世主を見て伏拝せり。爾彼等を萬民に教を伝へ、洗禮を授けん為に遣し給へり。

   光栄、聖三者讃詞

我等父に伏拝し、子を讃栄し、聖神を共に讃頌して、呼びて云はん、至聖なる三者よ、我等衆人を救ひ給へ。

   今も

ハリストスよ、爾の民は祈祷の中に爾の母を転達として爾に捧ぐ。仁慈なる主よ、彼の(いのり)に因りて爾の恵を我等に垂れて、爾墓より我等に輝きし主を讃栄せしめ給へ。

   提綱、第一調。

主よ、我等爾を頼むが如く、爾の憐を我等に垂れ給へ。

句、義人よ、主の為に喜べ、讃栄するは義者に適ふ。

「アリルイヤ」、願はくは我が為に仇を復し、我に諸民を従はしむる神は讃頌せられん。

句、大なる救を王に施し、憐を爾の膏つけられし者ダワィド、及び其裔に世世に垂るる者よ、我爾の名に歌はん。