痛悔のスティヒラ (八調経の主日晩課と月曜早課の挿句から2句ずつ)

<第1調>
救世主よ、我が罪の淵は深し、我罪悪の為に甚しく沈めらるるに因りて、ペトルに於けるが如く、神よ、我に手を授けて、我を救ひ、我を憐み給へ。(主日晩課)
神救世主よ、我悪しき思ひと行ひとに於て定罪せられしに因りて、我に反正の意念を与へて、爾に呼ばしめ給へ、仁慈なる恩主よ、我を救ひ、我を憐み給へ。霊(たましい)よ、他の世界は爾を待つ、審判者は爾の隠なる事と甚しき諸罪とを顕さん。故に此等に耽(ふけ)る勿(なか)れ、速かに審判者に向ひて呼べ、神よ、我を潔め、我を救ひ給へ。(月曜日早課)
我が救世主よ、罪悪の怠惰にて縛られたる我を棄つる勿れ。我が思を痛悔の為に起し、我を爾の葡萄園の善き工人(はたらきびと)と顕し、我に第十一時の報いと大なる憐みとを与へ給へ。

<第2調>
ハリストス救世主よ、我放蕩の子の如く爾の前に罪を獲たり、父よ、我痛悔する者を納(い)れよ、神よ、我を憐み給へ。(主日晩課)
ハリストス救世主よ、我税吏の声を以て爾に呼ぶ、神よ、我を彼の如く潔めて、我を憐み給へ。
仁慈の主よ、我は行ひし不当なる我が行為(おこない)を思ひて、税吏と、泣きたる淫婦と、放蕩の子に效(なら)ひて、爾の慈憐に趨(はし)り附き、爾に俯伏して祈る、神よ、我を定罪せざる先に我を宥(なだ)めて、憐み給へ。(月曜日早課)(月曜日早課)
童貞女より生れし主よ、我が不法を顧みずして、我が心を潔めて、之を爾の聖神の殿と為し給へ。無量なる大仁慈を有つ主よ、我を爾の顔より退くる勿れ。

<第3調>
ハリストスよ、我等は暮れの歌を香爐及び属神゜の詩賦と共に爾に奉る、我等の霊(たましい)を憐みて救ひ給へ。(主日晩課)
主我が神よ、我を救ひ給へ、爾は衆人の為に救なればなり。諸慾の烈風(あらし)は我を擾(みだ)し、我が不法の重負(おもに)は我を溺らす。我に援助の手を授けて、我を痛悔の光に升(のぼ)せ給へ、爾 独り慈憐にして人を愛する主なればなり。
主よ我が散らされたる思を聚(あつ)め、我が荒れたる心を潔め給へ。ペトルに於けるが如く我に痛悔を、税吏に於けるが如く歎息を、淫婦に於けるが如く涙を与へ給へ、我が大なる声を以て爾に呼ばん為なり、神よ、我を救ひ給へ、爾 独り仁慈にして人を愛する主なればなり。(月曜日早課)
我屡(しばしば)歌頌を献じて、罪を犯すと顕れたり、蓋舌にて歌頌を唱へ、霊(たましい)にて不当の事を思ふ。ハリストス神よ、痛悔を以て両(ふたつ)ながら之を改めて、我を救ひ給へ。

<第4調>
主よ、我涙を以て吾が罪の書券(かきつけ)を滌(あら)ひ、吾が生命の余日の痛悔を以て爾を悦ばしめんと欲したれども、敵は我を誘ひて、吾が霊(たましい)を攻む、主よ、我が未だ全く亡びざる先に我を救ひ給へ。(主日晩課)
主よ、誰か颶風(ぐふう)に遭ひて、爾の停泊に着きて救を獲ざらん、或は誰か病に遇ひて、爾萬有の造成主及び病む者の醫師の治療を求めて愈ゆるを得ざらん、主よ、我が未だ全く亡びざる先に我を救ひ給へ。(注:颶風=あらし)
救世主よ、我が涙にて我を滌(あら)ひ給へ、我多くの罪に由りて汚されたればなり。故に爾の前に俯伏す、神よ、我罪を犯せり、我を憐み給へ。(月曜日早課)
我は爾の霊智なる群れの羊にして、爾善き牧者に趨り附く。神よ、我迷ひし者を尋ね獲て、我を憐み給へ。

<第5調>
主よ、我罪を犯して息めず、仁愛を蒙りて覚らず、独り仁慈なる主よ、我が心の頑陋(かたくな)なるに勝ちて、我を憐み給へ。(主日晩課)
主よ、我爾の威厳を畏るれども、悪を行ふを息(や)めず、誰か審判に遇ひて審判者を畏れざる、或は誰か醫(いや)されんと欲して医師を怒らすること我の如くなる。恒忍の主よ、我が劣弱に慈憐を垂れて、我を憐み給へ。
童貞女より生れし主よ、祈る、我が多くの罪過を顧みずして、我に痛悔の心を與へて、我が悉くの罪を潔めて我を憐み給へ、爾独り人を愛する主なればなり。(月曜日早課)
過なる哉、我執にか似たる者と為りし、果なき無花果樹の如くなりて、詛いと斫(き)られることとを畏る。祈る、天の耕作者ハリストス神よ、我が荒れたる霊(たましい)を果(み)を結ぶ者と為し、我を蕩子の如くけて、我を憐み給へ。

<第6調>
ハリストスよ、願はくは我等は爾の畏るべき降臨の時に、我爾等を識らずと言ふを聞かざらん。救世主よ、我等は怠惰に因りて爾の命を守らざりきと雖も、恃頼(たのみ)を爾に負はせたり。祈る、我等の霊(たましい)を宥(なだ)め給へ。(主日晩課)
ハリストス神よ、我痛悔をも涙をも得ざりき、故に爾に祈る、終りの至らざる先に我を転ぜしめて、我に傷感を与へ給へ、我が苦しみより脱れん為なり。
敵は我を徳行に裸体なる者と見て、罪の矢にて傷つけたり。神よ、霊体の医師として、吾が霊(たましいの傷を医(いや)して、我を憐み給へ。(月曜日早課)
多くの罪に由りて吾が心の傷は益々加はる、救世主よ、霊体の医師として之を医し給へ。求むる者に諸罪の赦しを与ふる主よ、常に我に痛悔の涙と債めの赦しとを与へて、我を憐み給へ。

<第7調>
仁慈なる神よ、我蕩子の如く来れり、人を愛する主よ、我俯伏する者を爾が傭人(やといびと)の一の如く納れて、我を憐み給へ。(主日晩課)
盗賊に遇ひたる者の傷つけられし如く、斯く我も多くの罪に陥りて、吾が霊(たましい)傷つけられたり。我罪なる者は誰にか趨(はし)り附かん、唯 爾 慈憐なる霊の医師に就きて祈る、神よ、我に爾の大いなる仁慈を沃ぎ給へ。
救世主よ、果を結ばざる無花果樹(いちじく)の如く、我罪人を斫(き)る勿れ、求む、多年之を待ちて、吾が霊(たましい)を痛悔の涙にて潤し給へ、我が爾に矜恤の果を捧げん為なり。
義なる日として爾を歌ふ者の心を照し給へ、主よ、光栄は爾に帰す。

<第8調>
諸天使は絶えず爾 王及び主宰を歌頌す、惟(ただ) 我は爾の前に俯伏して、税吏の如く呼ぶ、神よ、我を潔め、我を憐み給へ。(主日晩課)
不死なる我が霊(たましい)よ、度生(どせい)の浪に覆はるる勿れ、乃ち起(た)ちて爾の恩主に呼べ、神よ、我を浄め、我を救ひ給へ。
我 行ひたる悪の多きを思ひの中に入れ、又彼の畏るべき詰問を思ふ時、恐れ戦きて爾仁愛なる神に趨(はし)り附きて祈る、独り罪なき主よ、我を棄つる毋れ、終りの先に我が卑微なる霊(たましい)に傷感を賜ひて、我を救ひ給へ。(月曜日早課)
神よ、昔の罪ある婦に於けるが如く、我に涙を与へて、迷ひの途(みち)より我を去らしめたる爾の足を潤し、痛悔を以て潔めたる生命を匂い膏として爾に奉るを得しめ給へ、我も爾の慕ふべき声、爾の信は爾を救へり、安然として往けと云ふを聞かん為なり。