9、長袍(マンティヤ)

 司祭品が聖体礼儀において身に着ける祭袍が、イイスス・ハリストスが受難の時に着せられた「鮮やかな上着」を原型としていることは、前号においてすでに述べた。この十字架の分かち合いを日常生活から求める修道者は、普段からこれを身に着ける。ただし修道士が日常身に着ける上着は、司祭品が奉神礼執行時に着用するものと異なり、黒色で体全体を蔽う長い上着となっている。これは通常長袍(マンティヤ)と呼ばれる。したがって、マンティヤもフェロンも元々同じ原型を持ち、しかも初代教会時代から用いられていたものであった。この事は、聖使徒の証言からもうかがい知れる。ティモフェイ後書4:13で使徒パウェルが述べている「外服(マントール)」とは、現代のフェロン、ないしはマンティヤの事をさしている。ハリストスの苦難をこの世の生活において分かち合うことは、時代がどんなに異なってもけして変わることがない事を知ることができる。
 修道士が身に着ける所から、当然主教品もこのマンティヤを着用する。ただし主教品が身につけるマンティヤには主教がはたすべき義務である「牧会者」「教導者」「奉神礼主管者」に対して、神の恩寵が降っている証である三本の線が入っている。さらに胸元には、旧約と新約を表す長方形の固い布が貼られている。マンティヤによって示されるイイススの受難・復活こそ旧約・新約両方の聖書が示唆する主題である事を表現している。主の十字架をともに分かち合っている証であるマンティヤにこれが貼られる事で、主教品が旧約と新約をともに司り、その真意を伝える責務を担っている事を示しているのである。
 尚、ロシヤ正教会では主教品が着用するマンティヤを管轄区の大きさによって主教・大主教=紫、府主教=水色、総主教=緑、と言う形で色分けしている。