聖エウドキヤ

 聖エウドキヤはサマリヤ人でフィニキヤの町、イリオポリの出身でした。異教の教えに惑わされ、長い間自分の美貌を利用して罪深い生活を送っていました。彼女の魂は生命を失い、心は残酷になっていきました。

 ある時、夜中に彼女が目を覚ますと、同じ建物の中のキリスト教の信者たちが住んでいる方から、祈祷の歌と聖書の誦経が聞こえてきました。祈りの声は義人を待っているあの世での永遠の至福と、罪人を待っている永遠の苦痛について語っていました。主・神の恩寵がエウドキヤの魂に触れ、彼女は自分の犯している罪悪によって魂が重苦しくなっていることを感じました。朝になると、彼女は昨夜祈祷していた修道士、長老ゲルマンに会い、魂が天の国に入るためにはどうすればよいのかと熱心に尋ねました。

 長老ゲルマンは神の慈悲について、痛悔の力について、どのようなことが神のみ心にかなうかについて、またそれらを得るためには洗礼を受けて新たな生命をもって生まれかわらなければならないことを語りました。

 洗礼を受ける前、エウドキヤは一人自室に籠もり、斎と祈祷を行って十七日間を過ごしました。その時、神の使いが現れて、彼女を祝福して言いました。

 「罪人が心から悔い改める時、天上の喜びは大変大きいのです。なぜなら天にいます父は、ご自分の像に似せて自らの清い手で造られた人間の魂が滅びることを望まれないからです。また神使たちも人間が己の魂を徳と修行をもって飾るのを見ると大変嬉しいのです」

 洗礼機密を受け、新たな生命に生まれかわったエウドキヤは、再びこの世の誘惑に心を奪われることはありませんでした。長老ゲルマンの祝福を得て修道院に行き、昼も夜も自分の罪過を悔い、涙を流して祈祷し、厳粛に祈祷に励みました。

 修道院長の要職に就いてからも、この世の誘いの嵐は様々な形でエウドキヤに迫りました。しかし彼女の強い信仰の力は主・神の助けを得て、罪に陥っている人びとに痛悔の心を与え、彼らをハリストスの教えに向かわせました。晩年、キリスト教の迫害が激しくなった時、拷問の後、斬首されて致命しました。二世紀のことです。